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後立山連峰5日間の山旅
No.68 五竜岳から鹿島槍ヶ岳
平成10年(1998年)8月14日〜18日 第1日〜2日 曇り第3日〜4日 雨と風と霧

「五竜岳から鹿島槍ヶ岳」の略図
唐糸草:バラ科バラ亜科ワレモコウ属の多年草
カライトソウ(八方池)

駒草:ケシ科ケマンソウ亜科コマクサ属の多年草
コマクサ(唐松岳にて)

眼前の五竜岳が大きい
五竜岳

ここまでは何とか視界があった
五竜山荘へ下る

キレット小屋裏のクサリ場に取り付く
鎖場(八峰キレット)

二等三角点2889.21m(点名:鹿島入)
鹿島槍ヶ岳(南峰)の頂上


唐松岳〜五竜岳〜鹿島槍ヶ岳〜爺ヶ岳
雨と風と霧の八峰キレット

第1日=JR大糸線白馬駅-《バス》-八方口-《ゴンドラリフト》-第1ケルン・八方池山荘 第2日=八方池山荘〜(八方尾根)〜唐松山荘〜唐松岳2696m〜唐松山荘〜白岳2541m〜五竜山荘 第3日=五竜山荘〜五竜岳2814m〜G4〜G5〜口ノ沢のコル〜キレット小屋 第4日=キレット小屋〜八峰キレット〜鹿島槍ヶ岳南峰2889m〜布引山2683m〜冷池山荘〜爺ヶ岳2670m〜種池山荘〜(柏原新道)〜扇沢(柏原新道入口)-《タクシー》-大町温泉 第5日=大町温泉-《バス》-信濃大町駅
 【歩行時間: 第1日=15分 第2日=7時間20分 第3日=5時間10分 第4日=8時間50分
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ(五龍岳)へ


 第1日目(8/14): 今年の夏はおかしい。北陸や東北には梅雨明けがなさそうだ。…本州は、向こう一週間は前線の影響をもろに受けるとの天気予報だった。
 新宿午前8時発の「スーパーあずさ3号」に不安な気持ちで乗車。思った通り、中央本線の車窓からは南アルプスも八ヶ岳もなんにも見えず。白馬駅着11時40分。松本電気鉄道バス5分にて八方口に到着。ここで食った蕎麦が旨かった。
 ゴンドラリフトと2本のリフトを乗り継いで、第1ケルン駅前の八方池山荘に着いたのは午後2時頃だった。今冬行われた長野オリンピック大滑降のスタート台を見学したり、観光客でごった返すリフト駅前広場の売店で買ったソフトクリームやリンゴを食べたりした。それから稜線を少し登ったり下ったり、風景や高山植物を楽しんだりして時間を過ごした。ゴージャスな花のタカネマツムシソウが見事だった。そして、釣り鐘形で薄紫の花をつけたハクサンシャジンがとても愛くるしくてきれいだった。時折、雲と霧が僅かに切れて、薄ぼんやりと周辺の山々の姿が見えていた。

 第2日目(8/15): 未明、再び八方池山荘裏の稜線へ出てみた。薄暗く曇ってはいたが、くっきりと白馬三山が見えた。左の方向へ目をやると、五竜岳と鹿島槍の双耳峰がスッキリドカーンと見えた。北アルプスに来たんだな、と実感した。
 午前5時10分、山荘発。八方尾根を暫らく歩いて、白馬三山の姿が美しく映っている八方池で朝食。タカネマツムシソウやハクサンシャジンが相変わらず可憐で美しい。アザミやカライトソウも咲いている。
 唐松山荘への途中、ミヤマトリカブトの群落を通過した。鮮やかな濃紫だが、派手ではないその花の姿に思わずカメラを向けた。花崗岩のガレに咲く小さくて可愛らしい白い花はイワツメクサだろうか。眺めも花も超一級品だ。雷鳥にも出会った。
 先ほどより、不帰ノ嶮から天狗ノ頭にかけての上空を、一台のヘリコプターがしきりに旋回している。滑落事故があったらしい。
 唐松山荘から唐松岳山頂を50分ほどかけてゆっくりと往復。稜線上のザレに咲くコマクサを発見した。咲いていたのは僅かだったが、本物を見たのは初めてだ。眼前の五竜岳が大きい。何時の間にか風が出てきた。
 休憩代一人500円を支払って、唐松山荘で昼食。自炊のベーコンエッグが美味かった。
 五竜山荘への尾根道の途中、とうとう雨が降ってきた。お花畑にはハクサンフウロが咲いていた。
 五竜山荘着は15時15分。

 第3日目(8/16): 雨と風と霧のバラード。午前6時10分、気合いを入れて完全武装で(つまりカッパに身を包んで)出発。岩稜と鎖の連続。「強い西風に身体のバランスを崩されないように、慎重に進もう。要は、技術より根性だ!」…、すさまじい山旅となってきた…。
 「シマッタ!」、五竜岳の頂上付近で大失敗。深い霧(視界はほとんどゼロ)と不親切な道標のおかげで、山頂の標識と三角点を見過ごしてしまったのだ。G5(*)の下りで、はっきりとそれに気がついたのだが、流石に登り返す気力はなかった。下山後にガイドブックを読み返して分かったのだが、五竜岳の山頂は細長く、私達がただの道標だと思って通過したその先約20メートルに、三角点の置かれた頂上があったようだ。 「まぁいいか、登ったことにしておこう…」
* G5のGはドイツ語のgrat(グラート:痩せ尾根・岩稜の意)の頭文字とのことです。穂高岳で有名なseitengrat(ザイテングラート:支稜)を連想させますね。
 梯子や鎖が続く。緊張の連続だ。霧が一瞬引くことがある。深い谷底が見えたり、でっかい岩塊が目の前にあったり、切り立った稜線の鋸の歯のような登山道を振り返ったりしていると、「スゲーところを私達は歩いているんだなぁ」 と思ってしまう。
 歩いていて、眼前の雷鳥に気がつかなかった。驚いた雷鳥が10メートルほど飛んだ。飛ぶ雷鳥を初めて見た。誰だ、雷鳥は飛ばない、なんて言った奴は。
 キレット小屋到着はちょうど昼の12時。冷池(つべたいけ)山荘までの予定を変更し、ここに宿をとった。風も雨も強かったけれど、それほど冷たくなく、何とか限界の二歩くらい手前だった。
 この日、尾根道で出遭ったのは30歳くらいの男性一人だけで、キレット小屋に辿り着いたのは私達夫婦だけだった。12〜3人いた小屋の客はすべて沈澱組だ。私達のとった行動は勇気ではなく無謀だったのか。会う人毎に登山道の様子を尋ねられた。答えは同じだった。 「軟弱な私達が歩いてこれたのだから、大丈夫ですよ…」

 第4日目(8/17): カロリーメイトを食べて、必死の覚悟でキレット小屋を出たのは午前5時10分。相変わらずの雨。風はいくぶん弱くなったか。小屋の裏手から岩場に取り付き、鎖と梯子の八峰キレットを無事通過。鹿島槍北峰を巻き、吊り尾根を辿り、今回の山旅の最高峰・鹿島槍南峰2889mまで誰にも出遭わなかった。岩場にチシマギキョウが咲いていた。思わずシャッターを押した。イワギキョウとの違いを調べたので、多分間違いないと思う。)
 霧のため何にも見えない鹿島槍山頂を早々に引き上げて、急に歩きやすくなった道を下り始めると、数組のパーティーとすれ違った。八峰キレットを通過する登山者は予想以上に少なく、五竜岳と鹿島槍ヶ岳を別々に登るのが主流のようだ。難所を通過してきたことに対し、何か誇りのようなものを少し感じた。(キレット小屋で登山記念バッチを買ってしまったのだ。記念バッチを買ったのは、槍・穂高の縦走以来、何と30年ぶりだった。)
 午前9時10分、ずぶ濡れで冷池山荘に到着。サーモスの熱い珈琲が美味しい。
 爺ヶ岳の最高点のある中峰を経て、なだらかな下り。下山方向(南方)の霧が少し晴れてきた。種池山荘でタクシーを予約。降ったり止んだりの柏原新道を下り、扇沢へ着いたのは午後3時20分。ほとんどコースタイムどおりに歩けた。雨と霧で、景色に見とれている時間を省略できたから…。
 ガスっても、雨っても、山は山。それなりの「良さ」を堪能した。でも、ちょっと空しい。眼前に大きく聳えていたはずの鹿島槍ヶ岳や立山連峰などは、とうとう最後までその全容を私達には見せてくれなかった。
 扇沢下山口(柏原新道入口)から待たせていたタクシーに乗った。大町温泉の宿に着いた途端、私の40Lザックの肩紐が縫い目の処でプッツンと切れた。もしもこれが鎖場の登攀中だったら、と考えてぞっとした…。

大町温泉「ホテル山田屋」: 浴室等に成分表が掲示されていなかったが、後日調べてみたら、泉質は単純泉(アルカリ性高温泉)とのことだった。内湯外湯とも石造り、浴槽は大きい。落ち着いた和風旅館。靴下などの衣類がずぶ濡れで、部屋は「物干し部屋」となった。
 * 「ホテル山田屋」は、R5年2月現在、ずぅ〜っと休業中のようです…。[後日追記]

 第5日目(8/18): 一路、東京へ。



八方尾根にて

八方池から白馬三山を望む
八方池から白馬三山を望む
(左から: 鑓ヶ岳〜杓子岳〜白馬岳)
後方に見える山:鹿島槍(左)、五竜岳(右)
ハクサンシャジン

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