いつまでも歩いていたい雲上のプロムナード
第1日=会津高原駅-《バス85分》-駒ヶ岳登山口〜駒ノ小屋〜会津駒ヶ岳2132m〜中門岳2060m〜駒ノ小屋 第2日=駒ノ小屋〜大津岐峠〜キリンテ〜桧枝岐温泉-《バス90分》-会津高原駅 【歩行時間: 第1日=5時間40分 第2日=4時間】
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真夏の会津駒ヶ岳: 平成19年8月の山行記録です。
●第1日目(9/11): 前夜、東武鉄道浅草駅23時50分発の「尾瀬夜行」に乗車。走る電車の座席で眠るのはなかなか難しく、ちょっとストレスだ。未明の会津高原駅前からバスに乗り、駒ヶ岳登山口に着いたのは明るくなった午前5時30分頃だった。
第1日目
素敵なブナ林
ブナの木の刀痕
会津駒ヶ岳の山頂部
会津駒ケ岳の山頂
この一帯を中門岳と云う…
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第2日目
桧枝岐の六地蔵
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暫く登って行くと素敵なブナ林を通過。このブナ林の殆どの幹に、ナイフなどで削った「イタズラ書き」がされていた。昭和16年とか昭和20何年とか、かなり古いものばかりだ。50年以上も経っているのに、この「イタズラ書き」の鮮明さは一体何だろうか、と、怒るのも忘れて考えてしまった。桧枝岐や会津駒ヶ岳がまだ秘境だった頃の、古き良き時代の、この「イタズラ書き」を…、まぁ善し、としようか…。
* あとで分かったことですが、田中澄江さんの「新・花の百名山」の会津駒ヶ岳の項によると、登路で見た「イタズラ書き」だと思ったブナの木の刀痕は、そこでクマをしとめたというしるし、とのことでした。
花の季節には少し遅かったが、濃紫のオヤマリンドウがあちこちに開かない花をつけていた。登りがゆるくなり、さらに歩いて黒木(針葉樹)の背丈も低くなる頃、傾斜湿原が右手前方に広がり、その上方にめざす会津駒ヶ岳のたおやかな山容が見えてきた。長い山稜の左端には駒ノ小屋も見えている。平地からはどこからも見えないと言われる会津駒。 「こういう山だったのね」 と妻の佐知子が感動を込めて言っている。今日明日と、これから2日間に亘って、なだらかな山上湿原の山旅を堪能することになる。
駒ノ池ほとりの高台に建つこじんまりとした駒ノ小屋に着いたのは午前10時22分。小屋に荷物の大半を預け、中休止の後、会津駒とそのさらに先の中門岳を往復。笹で囲まれた思ったより狭い会津駒の山頂に着いたのは11時丁度だった。木製の大きくて立派な頂上標識が立っていて、この傍らの地面から一等三角点の標石がピョコンと出ていた。生憎の曇空だったこともあり、眺望は利かなかった。
先へ進んで中門ノ池に着いたのは11時45分。ここで昼食。少し寒くなってきたので雨具の上着を着た。池の前に立つ標柱に、「この一帯を中門岳と云う」と書いてあったが、何か判然としない。食後、木道をさらに北へ向かって歩き、池塘が点在する山頂部とおぼしき木道の終点に出た。山頂標識を探してみたけれど、やはり見つからない。グルッと一回りして往路を引き返す。どうやらこの中門岳の山頂というのはかなりアバウトで、おおらかなものであるらしい。
復路は霧が晴れて、左手の後(北東)に見える三岩岳が大きい。右手前方(南南西)には幽かに燧ヶ岳が見えていた。黄土色に色付き始めた湿原に、辛うじて咲いていたのは秋の花、オヤマリンドウやアキノキリンソウなどごく僅かだった。いつまでも歩いていたい、素晴らしい雲上のプロムナードだ。
駒ノ小屋に戻ったのは午後1時半頃。要予約で素泊りのみのこの小屋は、案外快適だった。改装中で小屋の周りには足場が組んである。無骨で飾り気のない小屋の若い管理人さんの話によると、工事の職人さんたちはヘリコプターで往復(通勤?)しているとのことだった。
小屋前のベンチで早めの夕食。コンロで米を炊いて、ボンカレーだ。持参した赤ワインが旨い。時折夕霧が晴れて、会津駒の山頂部がはっきりと見えてくる。他の泊り客は、3人の中年女性パーティー、4〜5人の男女のパーティー、単独行の中高年男性3人、のみで、室内はゆったりとしている。
寝不足で疲れていたので、6時過ぎにはもうぐっすりだった。
●第2日目(9/12): 午前4時20分、起床。暑くもなく寒くもなく、熟睡できた。体調は絶好調。しかし一面の霧。おまけに懐中電灯の電球が切れた。予備の電球は持ってきたのだが、薄暗い中、付け替えのやり方がよく分からず、モタモタしているうちに完全に夜が明けた。
パンにソーセージエッグとスープの朝食。小屋発は6時5分。稜線上の富士見林道を南へ進む。林道とはいっても山道だ。それにしても霧がなかなか晴れない。樹林や湿原の木道や小さな池塘をいくつか越え、大津岐峠を通過したのは7時35分だった。ここから歩きやすい尾根通しの下りに入る。やがて尾根から離れてキリンテ沢をなおも下ると、ヒョッコリと車道に出た。午前9時50分だった。何時の間にか日が射していた。
車道を左に折れ、北東に向かう。キリンテのバス停を通過し、40分も歩くと桧枝岐温泉の共同浴場に着いた。ここでひと汗流してから近くの食堂で昼食。この食堂で食べた「裁ちそば」が旨かった。赤キノコやシソやヨモギなどのてんぷらも旨かった。食後、バスの待ち時間を利用して村を散歩。鎮守神社の境内にある桧枝岐歌舞伎の舞台や、天明・天保の大飢饉で犠牲となった幼児の霊を祀る六地蔵などを見物した。
帰路のバスの車中、試しに何度も左後方を振り仰いでみたけれど、手前の山々に固く閉ざされて、会津駒は全くその姿を見せなかった。
桧枝岐温泉「第一公衆浴場」: 昭和49年に発掘に成功したアルカリ性単純泉、45度。桧枝岐ではどの旅館や民宿にも温泉が引かれている、とのことだ。山行後にひと汗流すにはもってこいだ。アルカリ性ということだが、ヌルヌルした感じはなく、さっぱりしている。黄色のレモン石鹸が妙に懐かしかった。露天風呂あり。入浴料500円。
* 翌年の秋、燧ヶ岳からの帰路、桧枝岐の温泉民宿に宿泊する機会を得ました。そのときの詳細については燧ヶ岳の項を参照してみてください。
* その後(平成19年8月)、またまた当地を訪れる機会に恵まれましたが、ちょっと堅すぎると思っていた「第一公衆浴場」のネーミングは消えていました。このときの尾瀬檜枝岐温泉の公衆浴場は、温水プールを備えた「アルザ尾瀬の郷」、内風呂と露天風呂を備えた「燧の湯」と「駒の湯」、の3箇所の温泉施設がそれぞれ“棲み分け”していました。 [後日追記]
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真夏の 会津駒ヶ岳 平成19年8月13日〜15日
中門岳にて
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森林インストラクターの仲間たち(Oリーダー以下総勢5名)とこの山域をウロウロしてきました。主稜線上ではワタスゲが風にそよぎ、キンコウカが群生して緑の草原を黄色に染めていました。この季節には珍しく透き通った大気に恵まれて、日光や尾瀬などの近くの山々は勿論のこと、越後の峰々や那須・飯豊・朝日などの連峰、それになんと富士山までが見えていました。素晴らしいお天気と素晴らしい仲間に恵まれた、雲上のプロムナードでした。
1日目〜2日目は本項と同じコースを辿り、2日目の夜はキリンテのキャンプ場でテントを張りました。そして3日目は早朝のバスに乗り御池まで行き、燧裏林道を進み、田代湿原などを半日散策しました。各種の樹木や花たちをじっくりと観察することができ、非常に有意義な時間を過ごしました。今までどうしても分からなかった樹種名などが先輩たちによっていとも簡単に同定されて、私は目からウロコの三日間でした。
帰路、再度檜枝岐でバスを途中下車して、日帰り温泉「駒の湯」で山の汗を流しました。あの懐かしのレモン石鹸はもう使われておらずボディシャンプーになっていたのは、まぁご時世とはいえ、ちょっと寂しい感じがしました。
* 会津鉄道・野岩鉄道の会津高原駅は昨年(H18年の3月に)、会津高原尾瀬口駅と名を変えていました。また、「檜枝岐温泉」の名称も「尾瀬檜枝岐温泉」と変更されていて、「尾瀬」のネーミングを前面に打ち出しているような印象を受けました。日帰り温泉施設のレモン石鹸の件といい、この地もどんどん変化しているようです。
雲上のプロムナードにて
会津駒から中門岳へ向かう
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三岩岳とコバイケイソウ
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*** おまけのコーナー ***
* 観察のできた植物 平成19年8月13日〜15日
[NさんとFさんのメモを拝借しました]
オトギリソウ
ハクサンコザクラ
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<樹林帯>
【木本】 リョウブ(花がきれい!)、アクシバ、ウラジロナナカマド、タムシバ(実)、ハリブキ(赤い実がテンナンショウみたい)、シラビソ、オオシラビソ、マルバマンサク、ヒメモチ、オオバクロモジ、ヒメユズリハ、ブナ、ミズナラ、オオカメノキ、イタヤカエデ、ハウチワカエデ、ミネカエデ、コミネカエデ、ウリハダカエデ、ヤマモミジ、アオダモ(翼果を観察)、ハリギリ、コシアブラ、ダケカンバ、ウダイカンバ、カツラ、トチノキ、ホウノキ、スノキ、クロマメノキ、クロウスゴ、コケモモ、アカモノ(実)、オガラバナ、ネコシデ、ハイイヌツゲ、アカミノイヌツゲ、ノリウツギ、ハナヒリノキ、クロズル、エゾアジサイ、ヤマウルシ、ツタウルシ、イワガラミ、ミヤマガマズミ、ウリノキ、コメツガ、ヒロハツリバナ、イケマ(アサギマダラの食草)、ベニバナイチゴ(実)、イワナシ、ホツツジ、ミヤマホツツジ、ハクサンシャクナゲ、など
【草本】 (花か実を観察できたもの) キオン、オトコエシ、キンミズヒキ、ソバナ、ハナニガナ、ツルリンドウ、ツルアリドオシ、ツクバネソウ(実)、オオバユキザサ(実)、ゴヨウイチゴ(実)、エンレイソウ(実)、ヨツバムグラ(実)、ギンリョウソウ(実も白い)、マイズルソウ(実)、サラシナショウマ、ミヤマシシウド、サンカヨウ(実)、オヤマリンドウ、アキノキリンソウ、オトギリソウ(写真)、オオバタケシマラン(赤い実がとってもきれい!)、タケシマラン(実)、シロバナノヘビイチゴ(実)、メヤブマオ、ツバメオモト(実)、カニコウモリ、ツリフネソウ、キツリフネ、オニノヤガラ、ノブキ、ジャコウソウ、ズダヤクシュ(実)、サルトリイバラ、ヤマウド、シロネ、フジアザミ、サワオトギリ、ヤナギラン、ツマトリソウ、オカトラノオ、ヤマハハコ、ハンゴンソウ、オオハンゴンソウ、クルマバハグマ、オオイタドリ、ソバナ、ツルアリドオシ、ツクバネソウ(実)、ゴゼンタチバナ(花・実)、ミヤマカタバミ、ベニバナイチゴ、コバイケイソウ、ハクサンコザクラ(写真)、シラネニンジン、イワカガミ、ミツバオウレン、イケマ、トウバナ、ヤグルマソウ、*チシマザサ、など
<湿原>
【木本】 ダケカンバ、ブナ、トウヒ、ヒバ(1本だけ)、ネズコ、ハイマツ、オオシラビソ、ヒメコマツ、レンゲツツジ、ミヤマホツツジ、ハウチワカエデ、サルトリイバラ、ミネカエデ、ミヤマガマズミ、ウワミズザクラ、ネコシデ、ウリノキ、クロウスゴ、クロマメノキ、ヒメシャクナゲ(実)、チングルマ(木本です!)、など
【草本】 イワカガミ(実)、ネバリノギラン、キンコウカ、イワショウブ、ワタスゲ(実)、イワイチョウ、タテヤマリンドウ、ハクサンフウロ、モミジカラマツ、ハクサンコザクラ(写真)、ミヤマキンポウゲ、チングルマ、ツボスミレ、ミヤマアキノキリンソウ、ニッコウキスゲ、ツボスミレ(季節外れですが・・)、ツリガネニンジン、ミヤマコゴメグサ、マルバダケブキ、ゼンマイ、ホタルイ、オゼヌマアザミ、アブラガヤ(実)、ショウジョウバカマ(実)、ミゾソバ、アカバナ、サワオトギリ、ゴゼンタチバナ、サワギキョウ、ミズバショウ(実)、オニシオガマ、オオバギボウシ、コバギボウシ、ミズギボウシ、オタカラコウ、オゼミズギク、コオニユリ、トリカブト類、タムラソウ、ワレモコウ、ヨツバヒヨドリ、モウセンゴケ(花)、アキタブキ(葉)、オオバタケシマラン(実)、ズダヤクシュ(実)、ヤマウド、シロネ、サンカヨウ(実)、マイヅルソウ(実)、ツルリンドウ、ハリブキ(実)、エンレイソウ(実)、オオバユキザサ(実)、イワガラミ、*リョウメンシダ、など
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