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「バイファム」第22話感想

聞き慣れぬ声、見慣れぬ船。その船は気のせいかブリッジが暗い。そのブリッジのメインスクリーンに映し出された船は、まぎれもなくジェイナスだ。ヘルメス級2番艦ジェイナス。
「ジェイナス! ほかには?」「ほかに船影は見えません」この「ほかには」は「ほかの可能性は」のつもりだったのに、その船のコンピュータ、クラウドがコンピュータらしくずれた返事をしたのだと僕は解釈している。
この時点で両艦の距離が7光秒。第19話のジェイナスは5光秒進むのに25時間要したのだから、この艦(レーガン)はジェイナスをはるかに上回る(後から追いつくくらいだから)速度で航海していることになる。まあ、それを言ったら、第1話からこの時点まで二ヶ月くらいしか経過していないはずなのに、この艦はいったいどこからイプザーロンにやって来たのか、などタイムラグに関しては「バイファム」はいい加減(第4話とか)。超光速航行できる世界ではあるとはいえ……。
同じころのジェイナスは相変わらずの日々が続いている。トレーニング・ルームで体を鍛えるバーツ。「体がなまっちまう」から(上半身裸の彼に女性ファンはきっと……)。一汗かいたバーツは女の子たちがこそこそ何か探しているらしいのを見かける。「男ものばっか。PXになきゃ探してもムダかな」(つくづく(成人)男性向けの品揃えを誇る購買ではあるらしい。)
やっとスコットのナレーション。「ここ2、3日、あれだけ激しかった敵の攻撃が突然やみ」――前回から何日すぎたのかは読みとれない。バーツがさっきの件を報告。「なんでもないことならそれでいいし」と、様子を見に行く。
例の艦では、ジェイナスとコンタクトが試みられようとした、味方の識別信号を出しているとはいえ、万が一敵の手に渡っていることも考えて、慎重に。後方に本隊がいるようだ。
「ちょっといいかい、入っても?」顔を赤らめるクレア。そしてマキ、ペンチ(マキが赤くなるのは、すごくいい、とってもいい)。「やあ、みんなで何やってるんだい?」さすがに顔を見あわせて口ごもる一同。「ちょっとね」とマキ。勝手に話を進めるスコット。「ああ、絵を描いてるのか。それにしても何の絵だい、これ?」「おめー、パンツも知んねーのか?」ペンチはキャン!とばかりに型紙で顔を隠す。「え、パンツ!?パンツねー」「ズボンに見える? パンツ作ってんだよ、みんなで」「シャロン!」パンツ、パンツ何度も言うなってところか。さすがにカチュアの顔も赤い。合点して今度は一転スコットの顔が赤くなる。「このこのこのーっ!!」相変わらずのシャロン。
しゃべる言葉を探してスコットがやっと見つけたのが、「ミシンが、ミシンがあるだろう?」。いくらミシンでも型紙はいるだろうとつっこみたいところだが、この時代のミシンはもっと便利なんだろう。しかしよく考えるとパンツの生地はどうするんだろうか。「まいっちゃうなー」「え、何が?」「いや、そういう意味じゃなくて」言えば言うほど余計に立場がまずくなるスコット(でも、「そういう意味」って?)。ここのカチュアの二の腕が素肌になっていた。
「ごめんなさい、あなたに余計なことで頭を使わせたくなかったから話さなかったけど、現実問題として困ってるの」って本当はそんなこと話せるわけないんでしょ? 年頃の女の子がパンツがないからって男に相談できるかぁ? スコットだって内心、聞いてくれなくてよかったと思っているに違いない。「わかるよ、君たち女の子は特に」「わかるってどういうふうに?」あわわわわ、またもややぶへび。しかも男子はどうやってまかなっているかまで聞かれてしまった。どうしてるって、クレアたちに洗濯してもらってるんじゃないの? スコットが「適当に」とかお茶を濁していたところを見ると、さすがに自分たちでどうにかしているのかな? スコットは「とにかく、くじけずにがんばってくれたまえ、じゃ」と面目は保ったつもりで、ほうほうの体で退散。「変なの、パンツ作るのにがんばれだって」吹き出す一同(カチュアまで)。
ケンツvs.フレッドで、ブリッジの床で将棋(?、いくらケンツだからって軍人将棋ではないと思う)。フレッドなら、ディスプレイ上でやりそうなもんだが。待ったとか、盤をひっくり返すなどの裏技(?)ができないから。ギャラリーはジミー。さすがにパンツを縫うところまでカチュアにつきあうわけにはいかなかったってことかな(違う)。
ジェイナスでも船が近づいているのは察知している。カールビンソンタイプ、つまり地球軍の軍艦=味方だ。このままなら72分後に遭遇。はしゃぎかえるブリッジ。「おい、マルロ、ルチーナ、スコットにこのことを知らせてきてくれ」クレアの部屋にも知らせるバーツ。彼女がまず第一に考えたのは、下着の補給。クレアの部屋もわきかえる。「ほんじゃやーめた」とせっかく縫ったパンツを投げ出すシャロン(にしても縫製早いね)。
円周通路で「これから色々と厄介な問題が起きてくるだろうな」と一人呟くスコットのもとにも吉報が。
「ウナバラ ニ カモメ マウ」ジェイナスに入電。声がコンピュータということは文字情報だけ送られてきてそれをこちらで読み上げているのだろう。ケンツ以外の子にはさっぱり分からない内容。「相手は味方かどうか確認しているんだよ」とここばかりはケンツの独壇場。「カモメ ニ アラズ ウミネコ」と返信。ケンツ、軍事機密を漏洩。いくら親父が軍人だからって…。
今度は「貴艦の任務についてご説明願いたい」。と尋ねられても返事に窮する。「どうすりゃいいんだ?」そういえばさっきからバーツはちゃっかり艦長席に座っている、スコットがいないからだが。とにかくロディが相手に通信を試みる。「こちらジェイナス、ここには艦長はいません」子どもの悲しさ。返事は「意味不明」。子どものような声というか本当に子どもと話しているとはレーガンの通信士も夢にも思わなかっただろう。レーガンの艦長フレデリック・ローデンからジェイナスに「プライオリティ・コール」が請求される。「プライオリティ・コール」が何なのかさっぱり分からない。そしてレーザー回線での通信方法も知らない。
遅れてブリッジに入ってきたスコット。彼が来たときには通信はうち切られていた。「どうしてちゃんと説明しなかったんだ?」したけど、相手が聞く耳を持たなかったのだ。ケンツが、事態がそれほど喜べるものではないのを悟る。「ちょっと待ってよ。やばい、やばいよ、これは」ジェイナスは「一応」軍艦。それを勝手に使っているのだ。強制送還されるだろうし、刑務所行きもあるかもしれない(もし地球へ向けて避難しているならそれはなかっただろうけど)、そして何よりジェイナスの没収はまぬがれない。
早くも泣き出すマルロ、ルチーナ。年長の子どももショックを受けた様子。最悪の事態回避のためにマキが一計を案じる。「ま、まかせておきなって」と目をパチリ。
ブリッジにカメラがしつらえられる。映しだすは艦長席。"Laser Direct Linkage Link 13"と、通信方法もどうやら調べられたらしい。戻ってきたスコットは、軍服に軍帽それに手袋。ようするに変装だ。「似合うじゃないか」「素敵だわよ」「ばっちりだよ、スコット」「かっこいい」「艦長さんみたい」――マキの発案というのがこれだ。いかにも子どもらしい。学芸会ののりというか。「自信ないよ、僕には」スコットが不安なのももっともだ。本人の意思とは無関係に(?)、クレアがサングラス、それにシャロンがヒゲ――ジミーが菜園から持ってきたトウモロコシのヒゲにペンキで着色したもの――をつける。「とても15歳には見えない」「でもまさかこんなにうまく変装できるなんて思わなかったね」とブリッコなしぐさで嬉しがるマキ。スコットはカメラ映りもいいらしい。「これならばれっこないよ」
ケンツが(汚い字の)アンチョコを渡して、いよいよカチンコが鳴る(鳴らないって)。「やっとお目通りがかなうかな」とローデン。
ヘルベルト・G・フォン・シュタイン大佐とスコットは名乗る(本名でも困らないと思うけど)。ローデンがまず尋ねたのは、ジェイナスの任務だ。クレアド星奪還作戦の指揮するクレービス中将とやらの名前が出る。早速ケンツのアンチョコが役にたち、スコットは「FQランダム作戦であります」滑り出しはなかなかうまくいっている。見守るロディたちは「意外とノリやすいんだよね」
ジェイナスの艦長は、グレード・バーナス大佐だったのでは?、ベルウィック方面軍がどうなったのかなどの質問もどうやら切り抜ける。「断腸の思い」などそれらしい言い回しもできた。
ところが、クレアとマキのお願いで物資の援助――コンピュータミシン、子どものものでいいから下着――を頼んでから雲行きが怪しくなる。変装しているのだから、通信は短いに越したことはないのだ。「それはあなたの作戦に必要な物資なのですか!?」(=あんたの趣味じゃないの?……ウソ) 「まずい、ねえ、まずいよー」とあせったフレッドの腕がカメラのスイッチに触り、アングルが変わっていき、その先にはかわいい女の子が……。「おかしいと思いましたよ」と1人の軍人がつぶやく。ジェイナスまで3ミリ光秒。
泣きじゃくるフレッドをなじってももう遅い。「まちがいなくバレたぜ」レーガンから2機の青いRVがジェイナスに向かう。ジェイナスはおとないくハッチを開けて待っている。
ジェイナスのブリッジには4人の軍人が立っていた。「大した名演技だったよ。すっかりだまされたよ」船には13人しかいないのが確認される。口々に説明を始める子どもたち。自分たちの両親やほかのおおぜいの地球人がタウト星に囚われている。自分たちは彼らの救出に行くのだと(ローデンは「タウト星」という固有名詞に疑問を持たなかった)。
そんなことは聞けぬ相談だし、そもそもできっこないのだ。ジェイナスは彼らの指揮下に入ると宣言される。「いやです! 僕たちはどうしてもタウト星にいかなくてはならないんです」ロディの叫びもむなしい。レーガンに通信を入れようとする兵士にフレッド、ペンチ、シャロン、マキがかじりつく。フレッドが突きとばされ、バーツはローデンに銃を向けた。ロディが兵士に飛びつき、ケンツが彼のライフルを取りあげる。「きさまら、子どもだと思って……!」しかしジミーが武器のつまった箱をどこからか持ち出した。「でかしたぞジミー」たって、あまり誉められたことではない。
さすがに冷静に「お前たち子どもだけで何ができる?」と問うローデン。しかし驚くべき答が返ってきた。敵の中継ステーションを破壊したのは自分たちだと。「ハッタリです!」とロディに倒された兵士。だが、ほかに可能性はないのだ。「ママに会いたい」とペンチ、マルロ、ルチーナは泣き落としに出る(ウソ、狙って泣いたのではない)。
ローデンは銃にもかまわず歩き出す。「そうか、お前たちだったのか」「動かないで」「いくつだね、その小さな子は?」「4歳です」「そうか、遊びざかりだな。着るものには困っているだろう」
子どもたちが中継ステーションを破壊した事実に何を思ったのだろうか、ローデンは考えを変えた。「わたしもまだ命はおしいのだよ」は決して本音ではないだろう。いくら途中までレーガンと行動をともにするという条件つきとはいえ、ローデンは嘘の報告までしたのだ。
ともあれ、ジェイナスは下着類1グロス、コンピュータミシン3台の補給を受けることになった。
原画
平田智浩、青木康直、長岡康史、藤川太、岩永しのぶ、伊藤富士子

Vd: 1999.10.2, Vd: 1998.2.27