秋山二十六夜山から望む
倉岳山992m
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桂川を渡る
冬枯れの雑木林
高畑山の山頂
倉岳山の山頂
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アイスバーンにちょっと苦戦
JR中央本線鳥沢駅〜小篠貯水池〜石仏分岐〜仙人小屋跡〜高畑山982m〜天神山876m〜穴路峠〜倉岳山992m〜立野峠〜(月屋根沢)〜中央本線梁川駅 【歩行時間:
5時間40分】
→ 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ(倉岳山)へ
JR中央本線で新宿から大月方面へ向かうとき、高尾を過ぎる頃から私達夫婦は急にそわそわして、辺りをキョロキョロ見回すようになる。車窓から眺める山々が、トンネルを抜けるたびに深くなってくるからだ。上野原を過ぎて、四方津(しおつ)から鳥沢(とりさわ)にかけてその左(南)側に連なって見えているのは、桂川と秋山川に挟まれた前道志(秋山山稜)の山々だ。山梨県東端の、標高1000メートルに満たない山並みだが、山歩きを趣味としている私達にとっては何時も気になる存在だ。
四方津駅と鳥沢駅は、車窓右(北)側の扇山(おうぎやま・大菩薩連嶺)登山の際に利用しているし、その中間に位置する梁川(やながわ)駅は秋山二十六夜山からの帰路(寺下峠越え)に利用している。駅は各駅で山歩きに利用しているのだけれど、何故か、駅から駅への交通の便の良い前道志の山の頂には、今まで立ったことがなかった。調べてみたら、この山域(前道志)の最高峰は倉岳山(くらたけやま・992m)だった。
というわけで、前置きが長くなってしまったが、今回はその2駅(鳥沢駅と梁川駅)を結ぶ前道志の人気者、高畑山(たかはたやま)から倉岳山へのトレイルを歩いてきた。冬たけなわの晴天の一日だった。
鳥沢駅から歩き始めたのは午前9時30分頃。車道(国道20号線=甲州街道)を東へ歩き、中央本線の踏切を南へ渡り、虹吹橋で桂川を渡る。前方にはこれから歩く前道志の山稜が立ちはだかり、後ろを振り返ると扁平な扇山が大きい。小篠貯水池を過ぎると、いよいよ山道だ。所々の残雪やアイスバーンなどで少し歩きにくい。
石仏分岐で穴路峠への道を左に分ける。この石仏分岐には馬頭観音がある筈だけれど、私達は随分と探したが見つからなかった。見落としてしまったのかもしれない。ジグザグと急登を続け、仙人小屋跡の小平地で2回目の小休止。かつて高畑仙人と呼ばれる老人が暮らしていたというが、今はその面影は無い。何処かで小鳥がチチチッと鳴いている。
この山域は、スギ・ヒノキの植林地帯に、コナラ、イヌブナ、クリ、クヌギ、シデ類、ホオ、リョーブ、アカマツ、モミの幼木などの雑木林(二次林)が入り交ざっている。私達は一昨年の初夏に当地(寺下峠越え)を歩いたときの新緑の美しさを思い出していた。・・・あのときは、斜面から斜めに林立する広葉樹の新葉が頭上を明るく覆い、パステルカラーの緑に溺れてしまうと思ったほどの美しさだった。[→秋山二十六夜山]・・・
三等三角点のある高畑山の山頂で大休止。南側にヒノキの幼木、北側はコナラ等の樹木に囲まれているけれど、それらの木々の隙間からけっこうな展望を得ることができる。冬枯れの山も捨てたものじゃない。
* 高畑山からの展望: 南面右手には三ツ峠山や御正体山などの御坂・道志の山々を従えた富士山が矢張り大きくて美しい。倉岳山とともに「大月市秀麗富嶽十二景」に指定されているというのも頷ける。左手には大室山などの丹沢の山々もくっきりと見えている。北面には雁ヶ腹摺山や滝子山などの大菩薩連嶺の山々が、更にその奥には奥多摩や奥秩父の山並みが、ぎっしりと連なっている。西の大月市街の遥か後方頭上に真っ白に聳えているのは、あれは南アルプスの白峰三山と甲斐駒だ。
冬の山歩きのご褒美には、このすっきりとした山岳展望があるからたまらない。私達は木々の隙間を求めて、それほど広くない山頂部を行ったり来たり、背伸びしたり屈み込んだり、ため息をつきながら随分と長いこと幸せな時間を過ごした。
高畑山から倉岳山へ続く雑木林の稜線歩きは、けっこうアップダウンはあるけれど楽しかった。天神山の地味なピーク876mから少し下った処の狭い鞍部が穴路峠で、標板(山梨県林務部)の説明によると、昔、桂川沿いの集落(大月市)と秋山川沿いの集落(秋山村)はこの峠を中心に行き交っていたらしい。
アカマツの目立つ倉岳山の山頂でも木々の隙間から展望を楽しんだ。東の方向に東京のビル群も見えていたのにはびっくりした。流石に二等三角点の山だ、と思った。この倉岳山から立野峠へ向かっての急坂の区間、コナラに混じってクヌギもけっこうあったけれど、夏になるともしかして、この辺りでカブトムシやクワガタが捕れるかも、と、ふと少年の心に戻る自分自身が可笑しかった。
トチノキが生い茂る渓谷美の月屋根沢を下り、麓近くのササ(シノダケの仲間?)林を抜け、静かな里のアスファルト道へ出る。そして桂川に架かる梁川大橋を渡るとほどなく、梁川駅へ着いた。日没間近の午後4時30分頃だった。
梁川駅で上りの電車が出てしまったばかりだったので、待ち時間を利用して、駅下の国道20号線沿いの酒屋さん(柁原商店)を覗いてみた。以前にも飲んで(安くて)美味しかった一升瓶の甲州ワインを買ったのだが、このとき棚に並んでいた「倉岳山」という銘柄の清酒が気になった。手荷物が増えてしまうからと思い買わなかったけれど、どんな味だったのか、と、帰宅してからもずっと、いまだに後ろ髪を引かれている。
* コースについて(補足): このハイキングコースは、小さいながら分かりやすい道標が要所に立てられていて、めったに道に迷うことはない。しかしながら、標高差700m以上はあり、アップダウンありで、案外タフなコースだ。登りも下りも主稜線の北側を歩くので、この季節、所々の残雪やアイスバーンでかなり歩きづらい。特に下りは苦戦した。軽アイゼンは持参したが、なんとか使わないで済ませた。「里山歩き」と云うには足の弱い私達にとっては少しキツいコース。たるんでしまった足腰を鍛えるには格好のコースかもしれない。近くに温泉がないのがちょっと残念だ。
尚、夏になると多分、落葉広葉樹の葉が茂って、山頂部などからの展望はかなりスポイルされてしまうと思う。尤も、南西面のヒノキの幼木(植林)がもっと育ったら、富士山や丹沢山塊などの山岳展望も危うくなりそうだ。このコースで展望を楽しみたいのだったら冬がいい。しかもここ数年間がその旬、だと思う。しかし何と云ってもこの山域の本当の旬は、一面が淡い緑で覆われる新緑の頃だ。
高畑山を下る
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明るい山稜にて
高畑山山頂から富士山
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倉岳山から立野峠へ
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