「私達の山旅日記」ホームへ

No.196 棒ノ折山(棒ノ嶺)969m
平成18年(2006年)2月4日 快晴

棒ノ折山 略図
「さわらびの湯」へ下山

JR青梅線青梅駅-《バス35分》-上成木〜小沢峠〜長久保山689m〜黒山842m〜ゴンジリ峠〜棒ノ折山969m〜ゴンジリ峠〜岩茸石〜藤懸ノ滝〜白谷沢出合(登山口)〜さわらびの湯(入浴)-《バス45分》-西武池袋線飯能駅 【歩行時間: 5時間】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ


 棒ノ折山(ぼうのおれやま)は奥武蔵(埼玉県)と奥多摩(東京都)の境界にある山で、棒ノ嶺、棒ノ峰などとも呼ばれ、「棒」の代わりに「坊」の字を当てることもあるようです。山名の由来については、山頂部が広いカヤトの原であることから坊主の尾根と呼ばれ、それが坊ノ尾根となり棒ノ折となったという説もありますが、南面のゴンジリ沢(奥茶屋コース)の金精様を祀った石棒に起因するという説や、鎌倉時代の当地(武蔵)の武将・畠山重忠がこの山を越えたときに持っていた杖が折れてしまった、という故事に因む説などが有力なようです。 故・武田久吉博士(*)の山名考証によりますと、やはり「棒ノ折山」または「棒折山」が由緒正しい表記であるらしく、「多摩郡村誌」や「武蔵通志」にもそのように記されているそうです。
 しかし、地元の多くの方は棒ノ嶺(ぼうのみね)と呼んでいるようで…、この山の本当の呼び名についても謎が多そうです。まぁ、ひとつの山に複数の呼び名があること自体は、八方からの地域差ということもあり自然なことだとは思いますが…。ちなみに、私が持っている国土地理院の古い地形図(5万図)には「棒嶺」、最新の地形図では「棒ノ嶺(棒ノ折山)」と記載されています。
 面白そうな山だったので、立春のこの日、親友の2名を誘って出かけてみました。
 コース取りについては、比較的に静かだと思える上成木(かみなるき)からの都県界尾根コースを登路に使い、下山路についてはその麓に名栗温泉「さわらびの湯」が待っている白谷沢コースを選びました。日本列島を寒波が襲った寒い一日でしたが、期待に違わない、変化に富んだ素晴らしいトレイルでした。

* 武田久吉(1883〜1972): いにしえの植物学者(理学博士)。「尾瀬と鬼怒沼」や「明治の山旅」等の著者で、日本山岳会の大先達の一人。特に尾瀬の自然を愛し、自然保護の草分け的存在でもあります。



今回はアルバム風にしてみました
前方に見えているのが小沢トンネル  9:15 登山開始
 JR青梅駅前発(8:26)の都営バスに乗り約35分、終点の上成木で下車。車道(青梅名栗線)の小沢トンネル入口手前から指導標に従って5分ほども歩くと登山口です。
 タケ林やスギ林を登ると、ほどなく小沢峠へ出ます。
小沢峠で一息入れる  9:35 小沢峠通過
 尾根へ出ると、開けたカヤト越しに奥多摩の山々が見えてきます。高水三山の頭上には富士山が白い頭を出しています。
 小沢峠はかつての秩父道(鎌倉古道のひとつ・鎌倉街道山ノ道)の要所でもあったとのことです。 畠山重忠さんはここいら辺で杖を折ったのかなぁ…。
基準点の脇に粗末な山頂標識  10:50 長久保山通過
 長久保山のピークを通過。ここには青梅市の2級基準点が埋められています。国土地理院の地形図には山名は記載されておらず標高689mになっていますが、何故か木板の山頂標識には686mと書いてありました。
杉林を通過  11:00 スギの植林地帯
 この山域はコナラ、シデ類、モミジ類、モミ、アセビなどの天然林(つまり雑木林)も交じりますが、その殆どがスギ・ヒノキの人工林です。一箇所だけでしたけれど、林床にシダ類(オオバノイノモトソウやリョウメンシダなど)が美しい緑色で見事に群生していました。
この感じ、私は大好きです  11:50 明るい稜線
 やがて冬枯れの広葉樹林帯(自然林)を歩きます。明るくて静かな気持ちのよい稜線で、私好みです。右側が埼玉県飯能市、左側が東京都青梅市で、黒山から先の左側は東京都奥多摩市になります。
 春にはキブシのクリーム色の花穂やカタクリの群生を見ることができるそうで、そんな春やあんな秋もいいだろうな、と思える山稜です。
ひっそりとした黒山の山頂  12:00〜12:35 黒山で大休止
 三等三角点のある黒山842mの山頂に着きました。ここで岩茸石山(高水三山方面)からの縦走路と合流します。
 昼食の大休止は北西の風が強く、ガスコンロで味噌汁を作るのはあきらめました。ちょっと残念でした。
前方に棒ノ折山  12:40 前方に棒ノ折山
 いよいよ棒ノ折山をめざします。道はいったん下り、鞍部から登り返します。積雪は全く無く、凍結箇所も殆どありません。ミズナラやイヌブナなどの落葉がサクサクと足音を立てています。
 今回の山行に備えて8本爪のアイゼンを新調したT君は、なにか物足りなさそうでした。
ゴンジリ峠から名栗湖を俯瞰する 12:55 ゴンジリ峠通過
 ゴンジリ(権次入)峠で立ち止まって、下山路の分岐を確認しておきます。その下山予定方向(奥武蔵側)の眼下には名栗湖が見えています。
 棒ノ折山の山頂はもう目の前です。
山頂のあずま屋  13:10〜13:40 棒ノ折山の山頂
 長い丸太階段を登りつめると棒ノ折山969mの広い山頂です。昔は茅(カヤ)の原であったといいますが、現在はまるで公園か運動場のような広場で、一面の霜柱でした。一角にはヤシャブシやヤマハンノキやサクラの木などがポツンポツンと生えています。めちゃくちゃ寒かったです。
学生時代からの親友たちです  13:30 恒例の記念撮影(証拠写真)
 山頂は北面から東面にかけて大きく開けていて、奥武蔵の山々は勿論のこと、遠く上越や日光の山々、常陸の筑波山も見えていました。関東平野の彼方には東京のビル群なども望めます。しかし、ウゥ…、やっぱり寒い!
最初のロープ場です  14:40 白谷沢を下る
 ゴンジリ峠から岩茸石を経由して白谷沢(しらやさわ)を下ります。心配していた凍結はそれほどではなく、まずは一安心です。「白孔雀の滝」や「藤懸の滝」などを見物しながら、渡渉を繰り返します。なんか、奥秩父のような、いい感じの沢です。
美しい谷です  14:55 スリル満点
 ゴルジェ(両岸の岩壁が狭まった細い谷筋)を通過します。けっこう“らしい”ですが、見た目ほど怖くはありません。足場はしっかりしています。
 T君がんばれ!
名栗湖へ着いてホッと一安心  15:25 無事下山
 名栗湖畔(有間ダム)へ出て、ホッとしました。ここから車道を25分ほど歩き、「さわらびの湯」へ着いたのは午後3時50分。スリルもちょっとあって、楽しい下山路(白谷沢コース)でした。
 入浴後のビールが楽しみです。(*^^)v

* 白谷沢コースについて補足: 環境省と埼玉県の案内板には、「冬季の結氷時や大雨のあとは、白谷沢への立ち入りは避けて下さい」 と書かれてありました。私個人の感想としては、責任はもてませんが、慎重に歩けば問題ないと思います。念のためアイゼンやロープは持参しましたが、今回に関しては全く必要ありませんでした。

* もうひとつの温泉コース: 奥茶屋コース(ゴンジリ沢コース)などの奥多摩側へ下るコースを選びますと、川井駅から歩いて約10分の距離に「松乃温泉」があります。予約又は確認が必要ですが風呂好きの方には魅力的な温泉だと思います。
松乃温泉については No.121本仁田山 の項を参照してください。

棒ノ折山・略図2

棒ノ折山の山頂にて

棒ノ折山登山 お薦めの周遊コース

西武池袋線飯能駅-《バス45分》-名栗湖棒ノ嶺登山口〜(白谷沢)〜岩茸石〜ゴンジリ峠〜棒ノ折山〜ゴンジリ峠〜岩茸石〜(尾根コース)〜さわらびの湯(入浴)-《バス45分》-西武池袋線飯能駅 【歩行時間: 約4時間】

 平成22年11月27日(曇)、山の仲間たち山歩会と棒ノ折山に登る機会を得ました。このときは「さわらびの湯」をベースに、白谷沢(しらやさわ)を上り尾根コースを下るというセミ周回コースを歩きました。天気予報に反してモヤってしまい、素晴らしいはずの展望はイマイチでしたが、変化のあるコースは非常に楽しかったです。白谷沢のスリルあるゴルジェでは“沢登りのまねごと”を味わえました。ヒノキ林の登山道沿いにはコアジサイが鮮やかに黄葉していましたし、「さわらびの湯」の近くでは10月桜(冬桜)が見ごろを迎えていました。
 本コースは正味4時間ほどの歩行時間で、私たちのような“のほほんハイカー”にはちょうどいいボリュームでした。首都圏からの(中高年向きの)日帰り温泉ハイキングとしてお薦めのできる、素晴らしいコースです。
 今回も感じたのは、最近、若いハイカーが増えた、ということです。昭和30年代〜40年代を彷彿とさせるまでには至っていませんが…、特に「山ガール・登山女子」が目立っていることについては、オジサンとしてはとてもウレシイです。(*^^)v

* 飯能駅前から名栗湖方面の乗合バス(国際興業バス)について、棒ノ嶺登山口まで行く便は午前中は1本だけ(8:29発)で、しかも土休日の季節運行ですのでご注意ください。仮にその便に乗れなくても「さわらびの湯」までは多くの便があり、歩行時間については10分程度の差しかありません。

  名栗温泉「さわらびの湯」についてはNo.77-2伊豆ヶ岳(2)を参照してください。

このページのトップへ↑
No.195「秩父御岳山」へNo.197-1「三ツドッケから蕎麦粒山と川苔山(冬期)」へ



ホームへ
ホームへ
ゆっくりと歩きましょう!