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No.240 加入道山から大室山(大群山)
平成20年(2008年)6月24日 梅雨の晴れ間 マイカー利用


大室山の略図ブナの原生林にバイケイソウの大群落

《マイカー利用》 東名高速大井松田I.C-《車約45分》-西丹沢自然教室・駐車場〜用木沢出合〜白石峠〜加入道山1418m〜大室山1588m〜犬越路〜用木沢出合〜西丹沢自然教室・駐車場-《車10分》-中川温泉(泊)…畦ヶ丸登山… 【歩行時間: 6時間40分】
 → 国土地理院・地図閲覧サービスの該当ページへ


  西丹沢の檜洞丸登山をしたのは7年前の秋だったが、それからずっと(密かに)狙っていた“小さな山旅”がある。 それは中川温泉に一泊しての大室山登山と畦ヶ丸登山だった。
  結論を先に云ってしまうと、この山域は極上の自然と触れ合うことのできる、期待に違わぬ素晴らしい処だった。 山腹から稜線部にかけてのブナなどの自然林も素晴らしいが、なんといっても清流の沢が素晴らしい。 やはり山歩きのよさは沢コースにある、と思ったほどだ。

  購入したばかりの1500ccの新車は快調に走る。 カーナビ付きなので、その通りに運転していたら何時の間にか西丹沢自然教室前の駐車場に着いていた。 自宅から約2時間の早朝ドライブだった。 科学の進歩は凄いものだと感心したが、助手席の妻の佐知子はナビゲーターの“仕事”がなくなったので終始手持ち無沙汰のようだった。
  閑散とした駐車場から歩き始めたのは午前7時20分頃だったが、このとき、いつものデジカメを家に置き忘れてきたことに気がついた。
 「これからは、出かけるときのチェック表を作るべきね」 と佐知子は手きびしい。 カメラの責任者は私なのだ。
 「今回はカメラなしだ! たまにはそのほうが目でよく自然観察をするのでいいかもしれない」 と私も負けていない。
  中川川の源流に沿って林道を進み、用木沢出合で下山路に予定している犬越路への沢道を右に分ける。 ここには3〜4台分の駐車スペースがあったが、ここまで車を乗り入れたなら往復約1時間を短縮できたかもしれない。 しかし、今回は2週間後に予定している利尻山登山の体力増強のために敢えてロングコースを選んだこともあり 「まぁいいか」 の心境だ。
  2箇所に離れて設置されている車止めのゲートをすり抜けて、白石沢の登山道へ入る。 フサザクラの目立つ渓畔林の山側には、ウツギが今を盛りに鈴なりに咲いている。 その白い花にそっと顔を近づけてみたが、やっぱりまったく匂わない。 ♪卯の花(ウツギの花)の匂う垣根に…、の「匂う」は「花の色が美しく照り映える…」といったような意味であるらしい。 いくつかの堰堤を越えたり徒渉を繰り返したりしながら 「卯の花の匂う“谷間”に…夏は来ぬ〜♪」 と私は上機嫌だ。 ウツギよりは一回り背の高いオオバアサガラも、小さな白い花を房状に垂れ下げて満開に咲いている。 春には黄色い花が目立つが、今頃(梅雨時)は白い花が多いように感じる。
  白いゴロ石の白石沢を遡行してさらに高度を上げると、左手に「白石の滝」が見えてきた。 落差40〜50メートルはあるだろうか、2筋に分かれたけっこう立派な滝だ。 案内板には括弧書きで「大理石の滝」と書いてある。 この辺りは大理石が採れる処であるらしい。 あらためて足元のゴロ石をよく見てみると、なにかそれらしい岩石が交じっている。 「大理石を踏みながら歩くなんてゴージャスね」 と、佐知子も上機嫌だ。 このすぐ後、2匹のシカとも遭遇した。
  急坂を登りきって白石峠へ着いたのは10時20分頃だった。 この向こう側は山梨県で、ここから加入道山を経由して大室山までは神奈川県との国境尾根を進むことになる。 モミジ類やツツジ類をはじめブナ、リョウブ、ナナカマド、モミ、アセビなどが明るく茂る気分のいい稜線だ。 小鳥たちの声に交じってエゾハルゼミも鳴いている。 植生保護のため、尾根の右側(神奈川県側)には防護柵がしてあり、こちら側のササ(多分スズタケだと思う)の葉はシカなどの食害にはあっていないようで生き生きと茂っていた。
  日が差して辺りが明るくなったとき、左手後方(南西方向)の樹林の隙間から、大きくて真っ白な富士山の山頂部が見えた。 しかしそれはほんの一瞬のことで、それからは霧が出てきて、幻想的な深森の景色に終始した。 どうせ展望の期待できないコースだから、かえってガスったほうが趣があって面白いと思った。 ブナの大木が目立ちはじめ、いよいよ“らしく”なってきたころ、三等三角点の標石と木製のテーブルがある加入道山の小ぢんまりとした山頂へ着いた。
  加入道山(かにゅうどうやま)とは面白い山名だが、日本山名事典(三省堂)によると大入道伝説によるものか、あるいはシカが多いところからの“鹿入道”がその名の由来であるらしい。 山頂から20〜30m先の神奈川県側に避難小屋があり、その屋根が近くによく見えている。 樹林(ブナの原生林だ!)に囲まれて展望は無いが、落ち着いていて好感のもてる山頂だったので、ここで早めの昼食にして菓子パンを齧った。
  加入道山からは東へ方向を転換して、さらに尾根歩きが続く。 下りきった地点が破風口と呼ばれる両側が切れ込んだ鞍部で、その名のとおり風の通り道のようで、さわやかな風が吹き抜けている。 この破風口から大室山へ登り返すころから、花芽をたくさんつけたバイケイソウが目立ち始めた。 それらを保護するための木道も出てきて、一帯は次第にその大群落になってくる。 これは実際凄い眺めだった。 葉っぱなどが茶色に色付いていて元気のない個体が多かったのが少し気掛りだったが、檜洞丸の山頂部のバイケイソウの群落よりももしかしたら規模は大きいかもしれない。 多分、もう少しで咲き始めると思われた。 2週間…、否10日間、私達はここを訪れるのが早すぎたのだ。 シロヤシオの花期には全然遅すぎて、バイケイソウの花期には早すぎた…。 それが返す返すも残念だ。
  2等三角点のある大室山の小広い山頂に着いたのは12時45分だった。 ここもブナやアセビなどの木々に囲まれて展望は無かったが、静かで落ち着ける処だった。 ビニールシートを敷いてそこに腰掛けて、サーモスのまだ熱いコーヒーを時間をかけてゆっくりと飲んだ。 山頂、及び山頂近くの稜線にはバイカウツギだろうかウメウツギだろうか、梅に似た、しかし梅よりも少し小さめの、白く可憐な花をつけた落葉低木があった。 その正確な種名については、写真を撮っていないので、今も分からない。 佐知子には云わないが、私は帰宅してからカメラを忘れたことを後悔した。 クッソ〜、カメラは必携品だな、やっぱし…。
  大室山の山頂から往路を少し戻り、T字路を左折して、晴れていれば展望が望めるという急坂を、ニシキウツギの花などを観賞しながらひたすら下る。 ドスンと下り着いたのが避難小屋のある犬越路で、前方には懐かしの檜洞丸の山頂部が見えている。 ここからは一度歩いたことのある道の筈だが、それはもう7年も前のことで、佐知子も私もまったく記憶に無い。 私達夫婦の記憶力の乏しさを弁解する気はないが、山道は何時でも何処でも新鮮なのだ…。
  用木沢を下っているとき、今の季節のこととて水量が多く、どうしても靴を脱いで裸足になって渡らなくてはならない徒渉があったが、そのときは昨年の北海道の幌尻岳登山のときのことなどを思い出したりして、とても楽しかった。 このコースは、所々道が崩れている箇所があったりして気が抜けないが、それがかえって道に変化をつけていて面白い。
  立派な鉄の橋を渡ってからアスファルトの林道へ出て、用木沢出合で往路と合流し、私達の新車が待つ西丹沢自然教室前の大きな駐車場へ戻り着いたのは午後4時15分頃だった。 下山時に何回かパラパラと小雨が降ったりもしたが、晴れ間が出たりガスったりの、山道も変化があったがお天気にも変化のあった、梅雨の晴れ間の静かな一日だった。

* 大室山1588mの薀蓄について: 大群山(おおむれやま)というのが由緒正しい呼び名らしいが、国土地理院の地形図には大室山(おおむろやま)と記されている。 東京の八王子方面などからはこの大室山が富士山を隠してしまうので「富士隠し」とも呼ばれるらしい。
  高尾山などの中央沿線の山々などからは大きくて立派な金字塔に見えるのがこの大室山だ。 どこからでも目立ってよく見える山なので、もしもこの山頂が樹林に囲まれていなかったら、360度の素晴らしい展望を得ることができるのではないかと思う。 しかし、山頂部の貴重な自然(ブナの原生林など)がこの山の真骨頂なのだから、これも「山歩きのジレンマ」の一種かな…。

 以上は「日本の山1000(山と渓谷社)」と「日本山名事典(三省堂)」の該当項、及び日本地理院の地形図を参照して記述しました。


中川温泉「河鹿荘」: この日は7年前の檜洞丸登山の際にも利用した「河鹿荘」に宿泊しました。 宿泊料が7年前と同じというのも嬉しかったですが、相変わらず登山客にも配慮している経営姿勢に感動して感謝しました。 同温泉の詳細については檜洞丸のページを参照してみてください。

翌日は 畦ヶ丸登山



カメラを忘れてスミマセン <m(__)m>
7年前の秋に檜洞丸登山で撮った写真です
檜洞丸から犬越路への下山道より
檜洞丸方面から大室山を望む

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