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鹿岳が見えてきた
稜線の雑木林を登る
一ノ岳の山頂にて
二ノ岳への登り
二ノ岳の山頂
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大展望の「ご褒美」が待っていた
《マイカー利用》 …立岩登山(前日)…塩ノ湯温泉(泊)-《車30分》-下高原・登山口(標高約450m)〜鞍部〜一ノ岳〜二ノ岳〜峠道〜上高原・登山口〜下高原・登山口-《車30分》-上信越自動車道・下仁田I.C… 【歩行時間: 4時間】
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群馬県甘楽郡上野村にある国民宿舎・塩ノ沢温泉「やまびこ荘」で朝を迎えた私達夫婦は、8時からの宿の朝食を摂ってから、いそいそとチェックアウトした。マイカーを走らせて南牧(なんもく)村へ入り、前方に鹿岳(かなたけ・かなだけ)の“コッペパンを立てたような”奇怪な岩峰が見え始めて間もなく、下高原にある鹿岳登山口に着いた。近くの道沿いに数台が停まれる駐車スペースがあったので、たまたま通りかかった地元のおじさんに聞いたら、ここに駐車して登りなさい、と云われたので、言葉に甘えてそうさせてもらった。一軒家の脇を進んで、歩き始めたのは9時を少し過ぎた頃だった。曇っているが空は高いし、出だし好調だ。
まずスギの植林地帯をひたすら登る。登山道沿いの低木ではコクサギのつやつやした葉が目立っている。正味1時間ほども登るとスギ林を抜けてコナラ、クリ、コブシ、ケヤキ、ホオノキ、イタヤカエデ、コハウチワカエデ、チドリノキ、ミズナラ、イヌシデなどの明るい自然林(雑木林)になる。時季が少し早かったのか紅葉はイマイチだ。足元ではマツカゼソウがやさしく風に揺れている。
一ノ岳と二ノ岳のコル(鞍部)に出てから右折して、急で細く岩の多い稜線上を約10分間登って、まず一ノ岳の山頂へ出た。リョウブやミズナラや五葉のツツジなどの木々が疎で背が低く、ほぼ360度の素晴らしい展望が開ける。秩父や西上州などの山々が曇り空の彼方に薄っすらと並んでいる。山頂部の東側は(特に)すっぱりと切れ落ちていて、岩上の端に「摩利支天」と彫られた石碑(石祠?)が立っている。勇気を出してその裏から腰を引きながら這いつくばって…、ぬぅ〜っと眺め下ろしてみたが、眼下にも足元の下にも空間以外の何にもない。それは相当にアブノーマルな状況だ。とても怖くて、どんな景色だったかよく覚えていないし写真も撮っていない…。佐知子はその岩の手前にでさえ来ようとはしなかった。まさしくスリルと展望の一ノ岳山頂だった。
踵を返して、眼前の二ノ岳の奇岩を眺めながらコルに戻って、今度はその二ノ岳の岩場を攀じ登る。要所には梯子や鎖があるのでプレッシャーはそれほどでもない。コルからは20分足らずで最高点の二ノ岳の山頂へ着いた。こちらの展望がまた素晴らしかった。北面には妙義山や榛名山などがくっきりと聳えていて、その右手眼下には下仁田の町並みも見えている。上越の山々や八ヶ岳などの遠望が雲の中だったのが、残念といえば残念だ。
この二ノ岳山頂の南側に道らしきものが続いているので進んでみると、行き止まりの岩上へ出て、山頂と同じような空間へ出る。こちらは東面から南面にかけての展望が抜群だ。となりの四ツ又山899mが近く、その右奥の尖がった山は懐かしの小沢岳で、さらにその奥には(矢張り懐かしの)赤久縄山から秩父へ続く山並がよく見えている。私はコンビニで買ってきたメロンパンを、佐知子はアンパンを齧りながら、山頂部のあっちへ行ったりこっちへ来たり…随分と長い時間…素晴らしい展望を二人占めにした。この大展望は、急登に汗を流した私達への鹿岳からのご褒美だ。山歩きをしていて本当に良かったと思う、至福の時間でもある。
二ノ岳からの下りはルートファインディングが難しい、と、どのガイドブックにも書いてある。だから慎重に下った。結果的には、私達は一度も道に迷わずに正しいルートを下山できた。
二ノ岳からは北へ向かって稜線を進むのだが、右側へ下る下山道をうっかりすると(多分)道迷いになると思う。私達は試しにその少し先まで真直ぐに進んでみたけれど、踏み跡があやふやで、道もはっきりしなくなってきて、その先が断崖じゃなかろうか、といったような心細い処へ出てしまう。この分岐には道標が必要、と思った。
踏み跡と赤テープなどの僅かな道しるべを頼りに、倒木の目立つ稜線を北西の方向になだらかにアップダウンする。3っつ目だったか4っつ目だったか、の小ピークに待望の道標があり、ここから左へ下る踏み跡が下山道だということがはっきりして、私達はホッとした。途端に辺りの紅葉などを眺める余裕ができて、振り返ったりしてよく見ると、この稜線はミズナラやイヌブナにハリギリも交じる、明るくて美しい天然林だった。
稜線を左へ外れてから暫らくはけっこうきつい下り坂で、岩場のロープ場もあったりで気は抜けなかった。でも必ず“終わり”はあるもので、やがて鬱蒼としたスギ林へ入り、どんどん下ってアスファルトの林道へ出る。そのアスファルトを左へなだらかに下って、鹿岳登山口前の駐車スペースに戻ったのは午後2時30分頃。1500ccのマイカーは、今朝と同じように1台でポツンとしていた。山中ではとうとう誰にも出会わない、今日は私達だけの鹿岳だった。
* 鹿岳(かなたけ)は一ノ岳(南峰・雄岳)と二ノ岳(北峰・雌岳)からなる変化に富んだ岩峰ですが、その山容については「ラクダのコブ2つ」とか「青空にコッペパンを立てたような…」とか「カシューナッツのような…」などと形容されています。何れも愛嬌のある言い方で、それがなんとなく可笑しいです。昔、岩峰の上から鹿を追い落として狩猟をしたので鹿ノ岳(かのたけ)と呼んだそうです。
「日本の山1000・山と渓谷社」と「日本山名事典・三省堂」及び数冊のガイドブックを参考にして記述しました。
鹿岳は秋!
足場はしっかりしています
一ノ岳の登り(バックは二ノ岳)
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↑「摩利支天」と彫られた石碑の向こうは…
↑岩場を下る
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立岩と鹿岳の写真集: 大きな写真でごらんください。
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