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No.305 二人だけの 城峯山1038m
平成25年(2013年)2月21日 晴れ・・・時々曇り

城峯山・略図
登山口まで正味1時間30分の歩程です
まず長い里道を…

これが“凄いもの”
岩上の木(フサザクラ?)

額束には「城峯神社」と書かれてあります
ブリキ?の大鳥居

所々凍結しています
残雪が…

この上に中宮もあります
城峯神社に参拝

今回のコースでは貴重な天然林です
山頂は近い!

山頂シンボルの電波塔です
城峯山の山頂へ到着!

この少し先でアイゼンを外しました
石間峠を通過

上にあるのが、いい感じの東屋です
西門平バス停に下山


…吐く息きこえ うれしはずかし

西武秩父駅-《西武バス46分》-万年橋〜男衾登山口〜キャンプ場〜城峯神社〜城峯山〜石間峠〜鍵掛城〜鉄塔下〜西門平-《町営バス11分》-秩父温泉前・満願の湯(入浴)-《タクシー12分》-秩父鉄道・皆野駅 【歩行時間: 4時間40分(一部雪道)】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ


 池袋駅7時30分発の特急レッドアロー号が終点の西武秩父駅に着くのは8時58分で、駅前から9時5分発の西武観光バス・秩父吉田線に乗るにはちょうどいい。予定通りにときが進み、万年橋バス停から歩き始めたのは10時少し前だった。今回は妻の佐知子と二人の、なんと、昨年5月の日留賀岳以来の夫婦登山だ。お天気はまずまずだが、2月の秩父は矢張り寒い。
 石間(いさま)川に沿って、車が殆ど走っていない車道をだらだらと登る。集落と集落とを結ぶ当地の生活道路だ。歩き出して間もなく、体が温まってきたころ、半根子(はんねっこ)の道沿いには冷たくて美味しい水場(鎌の木山水)があった。その先の沢口には猿田彦神社があったり、「加藤織平(*)の墓」や庚申塔があったり、立派な「石間沢口観光トイレ」もあったりする。そして、矢張り立派な神社のある漆木(諏訪神社)や中郷(八坂神社=十二天神社)には、それぞれに城峯山・南尾根コースの登山口が右手に分かれている。
 「立派な神社が多いね」
 「里を歩くと、日本人の信仰が篤いのにいつも感心させられるけど、ここは特に多いわね〜」
 「なんかほっとするねぇ〜」
 などと話しながら、私達はさらに直進して表参道コースを目指す。近くの民家の窓からおばさんが私達を見ている。
 この地は相当に観光ハイキングに力を入れているようで、案内板や説明板や道標が次から次へと現れる。中郷の沿道には「中山間農業の発展を目指して」というタイトルの当地の解説板もあって、(矢張り)この地も過疎化に悩んでいる旨が書かれてあった。…今年の春はゆっくりと来ているようで、お目当てのフクジュソウやセツブンソウは未だその花期には早かったらしい。“小さな春”を自己主張していたのは、咲き始めのホトケノザくらいなものだった。
 沢戸にも道から離れて神社があるが、そこから少し進んだ左手の対岸に一軒の民家(?)が建っていて、その横にある“凄いもの”を私達は見た。不安定な地形に強いフサザクラ、だろうか…ひこばえをたくさん出して大岩の上にしがみついているのだ。なんか、樹木の執念を垣間見たような気がして、胸を打たれた。花の季節には早すぎて、単調なアスファルトだけれど、移り変わる静かな里の風景に飽きることはない。
 沢戸の集会場やこれも立派な公衆トイレを過ぎると分岐があって、右側にはブリキ(?)でコーティングされた大きな鳥居が立っている。その手前の案内板の近くに私達はどっかと腰を落として、コンビニのおにぎりとメロンパンで早目の昼食だ。それからおもむろに、いよいよ城峯神社の表参道を進む。道標に従って民家の裏の畑を登っていくが、ここがいわゆる男衾(おぶすま)の登山口で、ここからが待望の“土の道”だ。少し登ると半納登山口からの道が左から合流する。
 登れど登れどスギの植林地帯だ。先端の葉が赤みを帯びて見えるが、それはあのおぞましい雄花に違いない。私の鼻のセンサーによると、花粉はまだ出始めで、幸いそれほど多くはないようだ。しかしそれでも鼻をかむ回数が増えてきて、くしゃみも何回か繰り返す。私に与えられた“春の試練”が今年も始まったのだ。スギ花粉に鈍感な佐知子がうらやましい。
 足元には「二十四丁目」とか「二十六丁目」とか彫られた丁目石が出てくる。そして、凍結した残雪も出てくる…。
 登山口から途中一回休憩して、突き当たったT字路が城峯山キャンプ場だった。今はだれもいない。左折して、キャンプ場に沿った立派な杉並木(参道)を進み、城峯神社に詣でる。城峯神社には大山祇命と日本武尊、それと平将門を討った藤原秀郷が祀られているそうだ。境内には「伝説悲劇の城峯物語」と題した当地の将門伝説に因む解説板があり、裏切った(?)愛妾・桔梗を将門が切り捨てたことが書かれてあった。当地に今も桔梗の花がないのはそのためだという。
 「将門隠れ岩」や「天狗岩」の案内板もあり、食指が動いたのだが、下山後のバスの時間が気になり始めていた私達はこれをカット。神社の裏手から、本コースで唯一の落葉広葉樹林帯…コナラやクリやリョウブなどの冬枯れの山稜…を登り切り、展望台を兼ねた大きな電波塔の建つ城峯山の山頂に出た。
 展望台からの360度の眺望は定評に違わず秀逸だった。秩父盆地を隔てた奥武蔵や奥秩父や奥多摩などの関東山地の山々は勿論のこと、上信越の山々もよく見えている。ただ日光方面のみが曇っていたのがちょっと残念。特に目立っていたのは両神山、榛名山、赤城山、そして白銀の浅間山を背景にした近くの御荷鉾山、などだった。丁寧な展望図が設置されているので分かりやすい。しかしちょっと寒い。
 一等三角点の標石の傍らで、おにぎりとメロンパンの残りを平らげて、サーモスの熱いコーヒーを飲んでから下山開始。凍結している急坂なので、流石にここで6本爪アイゼンを装着した。すると、サクサクとアイゼンがよく利いて、気分よく歩ける。気温はかなり下がっていたのかもしれない。
 石間(いさま)峠で林道を横切って、鍵掛城は巻き道を行き、単調なスギ林の尾根道をぐんぐん下る。城峯神社〜山頂周辺からこの下山路にかけては、「関東ふれあいの道・将門伝説を探るみち」の一部になっていることもあり、特に整備が行きとどいているようだ。鉄塔下を過ぎ、アスファルト(林道門平線)へ出て、矢張り立派な神社(大山大神社)を左側の階段上に拝み、西門平のバス停へ到着したのは16時10分だった。16時24分の町営バスになんとか間に合ってほっとした。
 山中ではとうとうだれにも出会わない…、私達だけの城峯山だった。

 西門平バス停の東屋でバスを待つ間、珍しく登山中に何やら物思いにふけっていた佐知子に、「いい句でもできたの?」 と聞いてみた。すると 「歌よ!」 といって、彼女のメモを見せてくれた。それには6〜7首の短歌が殴り書きされてあった。
 つい最近から、彼女は俳句や短歌にこりだして、ちびちびと書いているようだ。基本を勉強したわけでもなく、何々会に属しているわけでもなく、ごく個人的な趣味だと思うが、結構まじめにやっているようだ。本山行で創った歌の中から、私も少し気に入ったものを3首。

 庭先で夫の髪刈る老女おり 城峯の里風やわらかく
 十月(とつき)ぶり二人で歩く山道は 吐く息きこえうれしはずかし
 ドラえもん風のブランコ出しとくれ あの山この峰便りをのせて

 * この後、「佐知子の歌日記(短歌集)」のページをアップしました。(後日追記)

* 今回のコース取りについて、私達は帰路に「秩父温泉・満願の湯」に立ち寄りたくて西門平バス停へ下りましたが、万年橋バス停からの長いだらだら上りの車道を思い出すと、これを下りに使った反対コースが正解かもしれません。万年橋の標高が230mくらいで西門平のそれが凡そ510mですから、反対コースのほうが楽なことは間違いありません。
 それにしても、城峯山山頂直下の石間峠辺りまでは車でアプローチできる、というのはやっぱり興醒めです。


* 加藤織平(かとうおりへい・1849-1885): 秩父事件では困民党副総裁として活動。捕えられて処刑される。

秩父温泉「満願の湯」 秩父温泉「満願の湯」: 西門平から町営バスで11分、皆野駅までは同18分の距離、日野沢川(荒川の支流)沿いに建つ日帰り温泉施設。皆野町の「水と緑のふれあい館」が隣接する。車で5分の距離に秩父札所34番・水潜寺(結願寺)がある。源泉は地下数百メートルから湧出する泉温18度の単純硫黄冷鉱泉とのこと。ほぼ無色透明で、Ph9.5のアルカリ性由来のツルツル感がある。加熱、循環。露天風呂からは眼下に渓流を望める。施設は規模が大きく、休憩所は食堂やカラオケ宴会場も兼ねているようで、はっきり云って私達の趣味じゃないが、ゆったり感がすべてを柔らかく包み込んで、居心地は案外良い。破風山(皆野アルプス)ハイクの打ち上げにもいいかもしれない。
  「満願の湯」のHP

 まったりと湯に浸かっていたので17時10分の最終バスをやり過ごしてしまい、タクシーを呼んで皆野駅まで行ってもらった。運の悪いことに熊谷方面行きの電車が出てしまったばかりで、この際覚悟を決めて駅前のトンカツ屋「わかば」に入った。これが結果オーライで、美味いのなんのって…。30分後の電車も、今度はわざとやり過ごして1時間後に予定変更した。おかげでビールもたらふく飲むことができた。



城峯山・山頂展望台からの展望(北西面)
右に雨降山・遠くに鼻曲山や浅間隠山、榛名山も見えていますが・・・
中央やや右・東西の御荷鉾山の奥にチラッと白い浅間山…見えるかなぁ〜

スギだ! 杉だ! Cryptomeria japonicaだ! 城峯山はスギだらけだ!
シンメトリーの美しさです
杉並木の参道
城峯山の山腹は殆ど人工林でした
下山路にて

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