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ミズナラ林とヒノキ林
浅間峠の東屋(休憩舎)
ササが目立ってきた
三頭山が大きい
西原峠
フクジュソウ
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雑木林の明るい山稜をアップダウン
JR五日市線武蔵五日市駅-《西東京バス34分》-上川乗〜浅間峠〜日原峠900m〜土俵山1005m〜小棡峠〜丸山1098m〜笛吹峠〜笹ヶ峠〜数馬峠〜田和峠〜西原峠(槇寄山1188m)〜仲の平〜温泉センター・数馬の湯(入浴)-《バス52分》-武蔵五日市駅 【歩行時間:
6時間】
→ 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ(浅間峠)へ
新宿駅7時44分発の、おなじみの「ホリデー快速あきがわ1号」が終点の武蔵五日市駅に着いたのは8時48分だった。土曜日なので駅前には登山姿の人影が多く、数馬行きのバスは増車されて、定時の9時丁度に出発した。もゎ〜っとした暖かい日で、しかも風が強いので、私の鼻のセンサーは今朝からずっと“臨界点”付近をさまよっている。きょうは花粉症の薬を飲んでいるから大丈夫! と自身に言い聞かせる。バスは南秋川(多摩川の支流)に沿った檜原街道を西進する。
標高約400mに位置する上川乗(かみかわのり)のバス停から歩き始めたのは9時40分頃だった。車道の分岐を左(甲武林道)へ進み、南秋川橋を渡って間もなく、小広い駐車場があり、その左手が笹尾根登山口だった。道標がしっかりしているのでまずは安心だ。
上川乗から笹尾根の浅間(せんげん)峠までは「関東ふれあいの道・富士見のみち」の一部になっているようだ。よく整備された山道で、快適に高度を上げる。しかし、バスをいっしょに降りた中年カップルにあっさりと追い抜かされて、二度とそのカップルとお会いすることはなかった。
スギ・ヒノキの植林地帯から、稜線近くになるとミズナラ、シデ類、ホオノキなどのいい感じの雑木林が交じりだす。私としては珍しく休まず70分程度を登り続けて、東屋のある浅間峠で一休み。もう既にセーターは脱いで、長袖シャツになっている。こめかみを流れる汗が風に当たって気持ちよい。
地形図で読むと、ここ(浅間峠)から目標の西原(さいばら)峠・槇寄(まきよせ)山までの稜線は、直線距離でも8kmはありそうだ。アップダウンのある山道だから、きっとその何倍にも長い距離に感じるはずだ。いつものようにのんびりと休憩はとっていられない。まず水筒の水でのどを潤して、おやつ用のポッキーの小袋を全部食べ、サーモスの熱いコーヒーを飲んだら早々に立ち上がって歩き出す。いつもならこれからの植物観察が長いのだ。きょうは歩きに気合が入っている。生籐山へ続く「関東ふれあいの道」を左(東)に見送って、いよいよ西へ向かって笹尾根縦走の始まりだ。
標高900mと書かれた標識と可愛らしいお地蔵様のレリーフがある日原(にっぱら)峠で2回目の休憩。今度は早目の昼食で、自作の巨大おにぎりをほおばって、それからペットボトルのお茶を飲んで、デザートのバナナを1本齧る。う〜ん、やばい! いつものまったりペースになってきたぞ。と心は急くけれど身体が反応しない。ここ1週間はインフルエンザA型の病み上がりということや花粉症ということもあって、日ごろの鍛錬を怠っているのだ。(日ごろの鍛錬は、じつは、前々からやっていないけれど…)
重い腰を上げて、とにかく先を急ぐ。ヒノキやカラマツの人工林と天然林が錯綜する尾根道だ。天然林の高木はミズナラがその大半だが、ヤマザクラ、リョウブ、アブラチャン、カエデ類、シデ類…、それにアカマツやモミの稚樹なども少し交じる。右手の樹林の隙間からは、浅間尾根の奥に大岳山1266mの特徴のある山容が見え隠れしている。左手(山梨県側)の鶴川が流れる谷を挟んだ対岸にも際立った山影があるけれど、あれは権現山1312mに違いない。もゎ〜っとした陽気なので、富士山などの遠景は靄の中だ。
三等三角点のある土俵山1005mを通り越し、鞍部から登り返して小棡峠から丸山1098mの北側につけられた巻き道を進み、大日様の石碑がある笛吹峠も通り過ぎる。この笹尾根はかつての武蔵国(東京)と甲斐国(山梨)の国境で、この尾根を越える峠道(逃げ道)が随所にある。もう下ってしまおうか、と心の悪魔が私にささやきかける…。でも、まだ若い(と思っている)私はがんばる!
それにしてもこの地は、小棡(こゆずり)とか笛吹(うずしき)とか、麓の集落名の人里(へんぼり)とか扁杯(へはい)とか六藤(むそうじ)など、ルビが無くてはとうてい読めそうもない地名が多いなぁ、と独り言。
小棡峠辺りからの林床には背の低いミヤコザサが目立つようになってきている。この感じが“笹尾根”なのかなぁ、と再び独り言。独り言が多くなってきたのは身体と頭がオーバーヒートしてきた証拠だ。ぶつぶつ言いながら俯いて歩いていた私は、はた目からは、相当に怪しいオジサンだったに違いない。ぶつぶつ…がんばるぞぉ〜予定通りがんばるぞぉ〜笹ヶ峠も田和峠もおっとりしてのびやかだなぁ〜ところで、春霞の犯人は杉や檜の花粉じゃないのかなぁ〜ぶつぶつ…。
前へ向かって歩いていれば、いつか必ず目的地に到達するもので、明るい雑木林の山稜をひたすらアップダウンしていたら右前方に三頭山が大きく見えてきて、尾根歩きの終点目標(西原峠)へ辿り着いた。このまま少し登ると槇寄山1188mの山頂だが、4年前の三頭山登山の際に立ち寄っているし、とにかく疲れたし、ここは迷わずカット。右へ折れて秋川側(数馬の里)へ下る。下りの筋肉はまだ充分に残っているので、もう安心だ。
ずんずん下って、フクジュソウの咲く民家の脇を通ってアスファルトへ出て、「檜原温泉・数馬の湯」の源泉地を道沿いに確認する。それから、南秋川に架かる「みなみはし」を渡り檜原街道へ出る。「蛇の湯」が左に近いが、今回は右へ下って仲ノ平バス停を通り過ぎ、17時頃、予定を少し遅れて「数馬の湯」へ辿り着く。17時32分の武蔵五日市駅行きバスはちょっときついが、次の19時17分の最終バスにはゆっくりと間に合う。風呂上がりの舞茸の天ぷら蕎麦と生ビールが楽しみだが…、時間があり過ぎるのもチョイ心配だ。一人だし、飲み過ぎないように注意しなければならないから…。
* 笹尾根について、諸説あるようだ。超広義では、三頭山から南東に伸びる山稜(都県境尾根)の総てを指すらしい。つまり、三頭山〜生藤山〜陣馬山〜高尾山の長大な主稜のことだ。普通の広義では(つまり一般的には)、三頭山〜槇寄山〜三国山(生藤山)あたりまでを指すらしい。そして狭義には、槇寄山〜丸山、あるいは槇寄山〜丸山〜浅間峠あたりであるらしい。つまり、今回私が歩いたのは“正調・笹尾根”であったようだ。嬉しいような、どうでもいいことのような…。「山名・用語事典(山と渓谷社)」などを参考にして記述しました。
* コース取りについて、登山口(上川乗)の標高が約400mで、下山口(仲ノ平)の標高が約660mということを鑑みると、本項の反対コースのほうが楽だと思われます。私は下山地に「数馬の湯」を配したくて今回のコース取りを選んだのですが、上川乗のバス停に下山して、帰路の「瀬音の湯」で途中下車、という手もあったかもしれません。標高差の約260mというのは、今の私にはやっぱりそれなりの差だと、口惜しいかな、思います。
なお、笹尾根は日本山岳耐久レースのコースの一部にもなっているようです。私がゼイゼイしながら歩いた山道を走っちゃうのですから、スゴい人たちがいるものです。
「数馬の湯」については「三頭山から数馬の湯」の項を参照してみてください。
「瀬音の湯」については「御岳山から日の出山」の項を参照してみてください。
のびやかで明るい笹尾根を、ひたすら歩く
浅間峠から土俵山を目指す
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田和峠から西原峠へ向かう
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