No.329 倉見山1256m(道志山塊) 平成26年(2014年)12月17日 |
|||||
→ 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ 大月駅から富士急行線で9つ目の駅・東桂(ひがしかつら)駅から歩き始めたのは午前8時40分頃だった。天空はカラッと晴れ渡っているけれど、南西の方向(つまり富士山の方向)に雲が出てしまっているのがちょっと不満で残念だ。本日のターゲットは富士山展望が売りの山・道志山塊の倉見山(くらみやま・1256m)なのだ。天気予報によると北海道付近には急速に発達した低気圧(爆弾低気圧というそうだ)があり、等圧線が混んでいるので風が強くてとても寒い。当分は上着も手袋も脱げないと観念する。 国道139号線を左折して、桂川を渡って暫く進むと右手に長泉院の墓地があり、ここが倉見山の登山口になっている。墓地があるからボチボチと…今回はソロだからソロソロと…、などと相変わらずのダジャレを心で押し殺しながら、ウキウキと山道へ入る。少し登ると山ノ神の木祠脇を通過。落ち葉を踏みしめての、けっこうな急登だ。四等三角点844m(点名:宮下)の標石は知らずに通り過ぎる。 ヒノキやカラマツの植林地帯にコナラ、クリ、ホオ、アカシデ、ミズキ、イタヤカエデ、ツツジ類、アカマツなどの雑木林が交ざる、心休まる山林の風景を堪能しながらひたすら登る。送電鉄塔の下をくぐった辺りから傾斜が少し緩んで、明るい林相の気分の良い尾根歩きだ。昨日の(東京の)雨は、こちらでは雪になっていたはずで、バージンスノーを期待しての今回の山行でもあったのだが、なんと、積雪は殆ど無くて、持参したアイゼンはザックの重りになっただけだった。これはちょっと残念! 標高1000m前後からは森の主役がコナラからミズナラへと移り変わる。この…マニュアル通りの樹種の垂直分布にはいつも(山行の都度)感動させられる。自然って、とても律儀なのだと思う。樹林の隙間からは展望が開けていて、右手(北面)には富士急沿線の街並みとその上空に御坂山地や大菩薩連嶺の一角など、左手(南面)には道志の山並みなどが見え隠れしている。 三つ峠駅へ下る分岐(倉見分岐)を過ぎる辺りから再び急登となり、トラロープもでてくるが、足場はしっかりしている。これを登り切ると三等三角点(点名:松岩)の標石と富士八景(*)の解説板のある倉見山のこぢんまりとした山頂だった。かつてこの山麓の集落には養蚕の景気で多くの蔵(倉)が建てられたというが、それが山名の謂れだという。なるほど樹間からは里も見下ろせる…が…、う〜んしかし…、見えるはずの富士山は矢張り雲の中だ。 * 富士八景: 富士山北麓6市町村の住民投票で選出されたとのことで、4セクション32箇所があるそうだ。 山頂から南へ向かって少し下り、登り返した処が木製のテーブルやベンチのある「見晴台」で、ここで大休止にする。大きな富士山を眺めながらまったりと昼食を…といきたいところだが、富士山はなかなかその姿を現さない。今日の富士山はとてもつれない。なので、仕方がないのでメロンパンを齧りながら辺りをウロウロと歩き回り、御坂の三ツ峠山や道志の御正体山〜鹿留山〜杓子山などの山岳風景を心ゆくまで楽しんだ。周囲の樹種はミズナラ、アカマツ、リョウブ、ネジキ、ツツジ類などで、日本庭園のようなひっそりと落ち着く空間だ。…しかし、強い風に何回も帽子が吹き飛ばされそうになったり、寒さはハンパじゃない。今回は単独行だから、「寒い!」と云っても「寒いね」と答えてくれる人はいない。サーモスの熱いコーヒーが腹と心を少し温かくする。 見晴台からは相定ヶ峰のピークを経て、向原・杓子山方面への道を左に見送って、西の方向へなだらかに下る。この下山路も、カラマツ林と雑木林(立派なアカマツの目立つ天然林)のいい感じの山稜だ。途中の堂尾山公園は、公園とは名ばかりの単なる(西面の開けた)展望箇所で、朽ちかけた東屋と石塔(蚕の神様を祀ったものであるらしい)のある、これもひっそりとした空間だった。この先の富士見台もすてきな展望箇所で、富士吉田市街越しに毛無山(天守山地)や鬼ヶ岳などの御坂の山々がよく見えている。それはそれでそれなりに感動なのだが、右奥の南アルプスや左側の(肝心の)富士山には相変わらず雲がじゃまして…う〜ん、やはり見えそうで見えない。それでも意地になって心眼で睨み続けていると、なんとなくそれらの形が見えてくるから、それも不思議といえば不思議なことだ。富士山や日本アルプスは、やっぱり神々の住む神秘の山なんだと思う。 役ノ行者の石碑を過ぎ、ずんずん下って、赤く塗られた鉄階段を降りると里のアスファルトだ。シチズン電子などの工場が建つ閑静な車道を北へ向かって進む。右手を振り返ると、二つの小さなピークをもつ倉見山が私をやさしく見下ろしている。 無人の寿駅に着いたのは午後2時頃だった。ホームのベンチに腰掛けて、ザックから携帯を取り出すと、妻の佐知子からメールが入っていた。 ・・・山の名を告げずに君は一人行く 西空はるか富士は望めず・・・ う〜ん、そういえば、「富士山を見に行ってくる」 と云っただけで、どの山に登るとは伝えていなかったなぁ…。安全・安心登山の見地からも、それは非常にマズイことだった。と、ひたすら反省の私です。
再び 倉見山 葭之池温泉へ下山 山の仲間たち(山歩会)をお誘いして再び道志山塊の倉見山1256mへ登ってきました。駅から駅の・富士山展望の山ですが、近くに三ツ峠山とか杓子山などの超富士山展望の山があるせいか、何故かマイナーな山で、今回も(晴天の週末の割には)静かでした。…それが狙いだったのですが…。 先週(11月24日)、関東の広い範囲で雪が降りました(11月の積雪は東京都心では観測史上初とのこと)が、その積雪の名残が心配で“アイゼン必携”としたのですが、雪はもう(とっくに)溶けていて、全く必要がありませんでした。今回山行のために軽アイゼンを購入されたメンバーも何人かいて、見晴台で大休止したときなど、アイゼン談議に花が咲きました。 登山後に立ち寄ったのは古くからの日帰り温泉施設・葭之池(よしのいけ)温泉です。寿駅から帰路につくのと比べると里歩きが10分程度プラスされますが、下山後の入浴を楽しみにしている私たちには恰好の下山地でした。 葭之池温泉(通称・葭池温泉): 山梨県富士吉田市にある日帰りの入浴施設。昔ながらの木造の建物で、玄関には「翠松閣葭之池鑛泉」と書かれた古い看板。受付のオバァサンが笑顔で迎えてくれます。創業は安政3年(1856年) ということですから、かなりの歴史をもっているようで、戦前までは旅館もやっていたそうです。梁が露出している浴室は石タイル貼りで、脱衣所との境がなく、開放的な造りにノスタルジアを感じます。“葭池温泉湧水を釜土で沸かした…”とのことですが、泉質については不明で、多分「鉱泉」の類いだと思います。浴槽は黒御影石造りで、今どき小さめだけれど、けっこう水深があります。石鹸はあるけれどシャンプーは置いてない。これも時代をワープしたような懐かしさです。とにかく何もかにもが私好みのシブさなのです。湯上がりに広い(和室の)休憩室で、サービスのカブの甘酢漬けをつまみに飲むビールは、やっぱりもう最高! 富士急行線の無人駅・葭池温泉前駅までは歩いて3〜4分程度ですが、その道筋のロケーションが秀逸でした。畑越しの民家の上の、夕焼け空を背景にした白くて大きな富士山が、駅に向かってまったりと歩いている私たちを、ず〜っと優しく見下ろしていたのです。 葭之池温泉のHP: なんか…やっぱり…ノスタルジアを感じさせるHPです。 (^^ゞ * 富士吉田市は「吉田うどん」で有名です。 この葭之池温泉でもそのうどんを食べることができますが、今回は帰路の大月駅近くの食堂で打ち上げる予定でしたので、吉田うどんについてはまたの機会、ということになりました。 佐知子の歌日記より 落ち葉踏むカサッカサッのリズムよく仲間と登る倉見山なり 迫りくる大きな大きな富士の山 半身すべて白く輝く 雪はなく使わなかったアイゼンの品評会となる倉見山 笑顔なき若い女の運びくる冷めたうどんの駅前食堂 |