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No.339 榛名山(天目山〜相馬山)
平成27年(2015年)10月13日 晴れ マイカー利用

略図
ちょっと不気味かも・・・
マムシグサの果実

バックは榛名湖と烏帽子ヶ岳1363m
まず氷室山に登る

天目山の山頂標識
道標の上に山頂標識…

前方に相馬山の鋭鋒
相馬山へ向かう

スルス岩が間近に見える磨墨峠
スルス岩と東屋

約20mの鉄ハシゴ
鉄梯子を登る

ミズナラのどんぐりがたくさん落ちていた
山道でどんぐりを拾う

祠や石碑や石像が(所狭しと)建ち並ぶ・・・
相馬山の山頂

ゆうすげの道から榛名富士を望む
ススキ越しの榛名富士


「山の木と気」を楽しむ

《マイカー利用》 関越自動車道・前橋I.C-《車70分》-榛名湖南駐車場〜氷室山1240m〜天目山1303m〜七曲峠〜松之沢峠〜磨墨(スルス)峠〜相馬山1411m〜磨墨峠〜ゆうすげの道〜沼ノ原・榛名湖南駐車場…(ロープウェイで榛名富士1391mを往復)-《車20分》-伊香保温泉露天風呂(入浴)-《車20分》-渋川伊香保I.C 【歩行時間: 約5時間】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ(相馬山)へ


 カーナビの案内に従って関越自動車道の前橋インターから1時間強、徐々に高度を上げて榛名湖の南側に位置する(無料)駐車場に着いたのは午前8時頃だった。私達夫婦については、この榛名湖畔辺りは何回も来たことがあり…夏の草原(ゆうすげの道)などを散歩したり、冬のわかさぎ釣りとか…歩き回ったこともあるのだけれど、山々のピークを目指すのは今回が初めてだ。秋晴れのひんやりとした朝で、大気が爽やかだ。

 榛名湖の水面標高は既に1084mで、目指す榛名山・相馬山の標高が1411mだから、つまりその標高差はたったの327mだ。しかも歩くのは「関東ふれあいの道」で、“榛名山=観光地”という(私達の)認識もあったり…なので、今回の山行は楽ちんの軽ハイキングだと思っていた。しかし、南〜東側の外輪山を縦走する今回のコースは思った以上にアップダウンが厳くて、当初の予想が楽観的に過ぎたことを、後になってから悟ることになる。
 右手に榛名湖を眺めながら、竹久夢二の歌碑「さだめなく 鳥やゆくらむ 青山の 青のさびしさ かぎりなければ」などもじっくりと観光してから、三差路を左へ(榛名神社方面へ)なだらかに4〜5分ほども上ると、「関東ふれあいの道・遊歩道」と書かれた(地味な)道標を左手に“発見”した。草がかぶっているので危うく見過ごしてしまいそうな登山口だが、ここが旧道の入口であるらしい。細くて籔っぽいその道を少し進むと案内板などのある開けた処(旧天神峠)へ出て、天神峠バス停からの広い遊歩道が右から合流する。空き地の片隅ではマムシグサがトウモロコシ状の赤い実を付けていたが、これは綺麗というよりは不気味といった感じだ。ここから先には立派な道標が要所にあって、道もよく整備されているようなのでひとまず安心だ。
 ミズナラのどんぐりを拾いながら丸太階段を登り切ると氷室山の(多分)ピークで、ここにも道標や「榛名山と湖」と題した環境庁と群馬県の解説板があるのだが、何故か山頂標識は立っていない。展望は殆ど無くて、木々の隙間からは榛名湖や榛名富士などの近隣の景色がチラチラと見えている。
 木段を下って上り返すと基準点とベンチのある天目山の山頂で、ここには(立派な)道標の上に、どなたが作ったものか、擦れた字の、今にも朽ち果てそうなちっぽけな木製の山頂標識が括りつけてあった。その(道標の)隣りには「榛名山の鳥類」と題した立派な解説板がで〜んと、やはり立っている。どうやらこの山域は山頂標識にはとんと興味がないみたいで、解説板に相当な力を入れているようだ。まぁ、それはそれで悪いことではないと思う、もちろん。ただ、道標は立派なのにここが何処なのかが分からない、というのは如何なものか。いっそのこと道標や解説板なども(全部)取り払ってしまったら…、野趣たっぷりな面白い山道になると思うが…。

* 榛名山で山頂標識がなかったことについての補足説明: 例えば…、途中の峠などに設置してある立派な案内板や道標には「氷室山」と表示されているのに、その氷室山の山頂(と思われるピーク)には山頂標識がない、ということが問題だと思ったのです。特にガスったりして付近の地形が分かりずらいときなど、今回のようにアップダウンの多いコースでは、今自分がいるピークの位置に自信が持てなくなる可能性があります。自信がなくなるととんでもない勘違いをして闇雲に歩いてしまったり…、ほんとうの道迷いになってしまうかもしれません。こんなことならいっそのこと(最初から)道標も案内板も無いほうが…装備や準備や覚悟が違ってきますので…案外とリスクは少ないと思います。

 目指す相馬山のあの独特な尖がり姿が樹林越しに見えている。ここからまた(標高差で)180m以上をアップダウンしながら下って、そして300m近くを登り返すのだ。運動不足で鍛錬不足の私達は既に息が切れ始めている。ふぅ〜。
 私はふと立ち止まってはよくメモをとる。特に疲れてくるとその頻度が高くなる。メモの大半は観察のできた樹種名なのだが…、最近では、そんなとき佐知子はあんまりイライラしなくなって(というか、もうあきらめているのか)…後ろでじっとしている。

* 私のメモから: 氷室山〜天目山〜スルス峠で観察のできた樹種 → ミズナラ、アカシデ、クマシデ、クリ、リョウブ、ナツツバキ、ミズキ、ヤマボウシ(実・甘くて美味)、ヤマハンノキ、ヤシャブシ、ホオノキ、ミズメ、カシワ(ナラガシワ?)、オオカメノキ、サワフタギ(瑠璃色の果実・別名ルリミノウシゴロシ)、カエデ類(コハウチワカエデ、イタヤカエデ、オオモミジ、ウリハダカエデ、メグスリノキなど)、ツツジ類(ヤマツツジ、レンゲツツジ、ミツバツツジ、ネジキなど)。スギ・ヒノキ林も交じる。林床の主は葉縁が白くなりだしたミヤコザサ。コアジサイの葉も黄色く色付き始めている。足元にはツルリンドウ、ノギクの類(シロヨメナ、リュウノウギクなど)、アザミの類、トリカブトの類、などがほんの少し咲いている。紅葉は見ごろに入っている。カエデ類が多いので、これからの本番はもっとすごいと思う。
 道端の解説板によると、相馬山の南面を中心とした42ヘクタールの区域は群馬県の自然環境保全地域に指定されているそうだ。

 七曲峠で車道を横切って、ツツジ類の目立つ山道を上って下って、松之沢峠でも車道を横切る。見晴しのいい処では小休止したりして、ゆっくりと進む。前方の相馬山が益々大きくなってくる。
 登ろうと思えば(梯子などが架かっているので割と簡単に)数分で登れるらしいが、そのスルス岩の脇を(見て見ぬふりをして)通過する。「怖くてすんなりと通過するからスルス岩、かなぁ…」 などと冗談を言いながら進み、スルス峠の少し先にある休憩舎(東屋)でお弁当にした。ここは明るく開けた小広い空間で、振り返ると20m〜30mほどの高さだろうか、直方体のスルス岩がよく見えている。近くに(ここにも)解説板があり、磨墨(スルス)峠の謂れなどが書いてある。なんでも、スルスとは籾や粉を挽く臼のことで、その形の岩(スルス岩)が近くにあることからスルス峠と名付けられたそうだ。“磨墨”は当て字であるらしい。するりと通り過ぎたからスルス…ではないのだ、やっぱり。
 朽ちかけた鳥居をくぐってから石段を登り、ヤセオネ峠への分岐を右折して赤い鳥居をくぐると岩っぽくなってくる。クサリを使わなくても登れるクサリ場を通過してから、20mほどの鉄梯子や鉄階段を登ったりして“らしさ”も少し味わう。そして再び鳥居をくぐって、急勾配の(簡単な)クサリ場などを登る。高度が上がってきたからか、樹々がいい塩梅に色付いている。そして4つ目の鳥居をくぐると間もなく、黒髪山神社の御籠堂が建つ、案外と狭い相馬山の山頂に着いた。南面が開けていて高崎や前橋の街並みが航空写真のように俯瞰できる。その右手には西上州や奥秩父の山々も薄ぼんやりと見えている。そして富士山も、殆ど心眼だが、辛うじて見えている。残念なことに、北〜西面の赤城山や谷川連峰や浅間山などは、雲と樹林がじゃまをしてよく見えない。山頂部に祠や石碑や石像が(所狭しと)建ち並ぶこの相馬山は、現在も山岳信仰が生きている山なのだった。
 来た道をスルス峠まで戻り、右折してなだらかに少し下ると“ゆうすげの道”へ出る。6年前の夏にユウスゲやマツムシソウの咲き乱れる草原を二人で歩いた思い出を思い出しながら、ここは静かに歩いた。今はもう秋…、なので目立って咲いている花は少なくて、ススキの草原にはマツムシソウやリンドウやヤマラッキョウの咲き残りが僅かに観察できる程度だった。(→No.263「白砂山」のコラム欄へ)

 榛名湖南駐車場に戻り着いたのは午後2時半頃で、まだ時間はたっぷりとあったので、近くのロープウェイを利用して榛名富士にも登ってみた。木花開耶姫命が祀られているという富士山神社や一等三角点のある山頂部は、ここも北側が樹林で思ったほどの山岳展望を得ることができなかったが、南面が大きく開けていて、関東平野方面がよく見えている。そして左(東)側の至近距離には先ほど登った相馬山が形よく聳えていて…、その右裾には例のスルス岩がぴょこんと尖がって、小さく自己主張していた。

* 榛名山について(補足): 二重式成層火山の榛名山は、妙義山、赤城山とともに上毛三山の一座として知られており、古来から山岳信仰を受けてきた山だという。カルデラ湖の榛名湖や中央火口丘の榛名富士1391mを取り囲むように多くの外輪山や寄生火山が聳えているが、その総称が榛名山で、榛名山という名の山(ピーク)はない。最高峰は榛名湖の西に聳える掃部ヶ岳(かもんがたけ・1449m)で、2番目が東に位置する相馬山1411mである。
 私的には、榛名山と赤城山と箱根山は、その規模や状況(火山であるということやカルデラ湖の周辺は観光地であるということ)、そして山名がその峰々の(山域の)総称であること、などにおいて、とてもよく似ていると思っている。


伊香保温泉・露天風呂 伊香保温泉露天風呂: 由緒ある伊香保温泉の源泉地に近い…つまり奥まった処にある…源泉掛け流しの野趣あふれる公営(渋川市)の共同浴場。入口が分かりずらく、地元の方に教わってようやく辿り着いたが、苦労してきた甲斐があった、と思った。熱めと温めの2つの露天風呂だけの、洗い場が無くて石鹸やシャンプーも無い、簡素な(風呂屋の原点のような)造りだが、風呂そのものは素晴らしい。泉質は黄金の湯といわれるカルシウム・ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物泉で、茶褐色に濁っている。口に含むと金気臭(鉄の匂い)で、いかにも本物だ。昔は混浴だったらしいが、今は男女別だ。入浴料は450円。榛名登山の汗を流すにはお薦めの風呂です。


  佐知子の歌日記より
 榛名湖を囲む峰々粧いて 静かにそっと姿を映す



榛名富士の山頂から南面(今回歩いた峰々)を望む
榛名富士の山頂から相馬山を望む 榛名富士の山頂から天目山を望む
相馬山  ←→  天目山

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