「私達の山旅日記」ホームへ

No.361 城山から幕山 (湯河原)
平成29年(2017年)12月30日 快晴

略図
樹齢約800年・国の天然記念物
成願寺のビャクシン

目が合った!
サルだ!

城山の東稜にて
サザンカ(品種)

蔓梅擬:ニシキギ科の落葉つる性木本
城山山頂のツルウメモドキ

頼朝が身を隠した岩屋
しとどの窟

開けたいい感じの処です
大石ヶ平

カヤト越しの360度の展望!
幕山の広い山頂
日帰り入浴もOK!
ホテル城山・ラドンセンター


ちょうど適量な日帰りコース!
年末の日だまりハイキングを満喫

JR東海道線・湯河原駅〜城願寺〜城山(土肥城跡)563m〜椿台〜しとどの窟〜大石ヶ平〜幕山626m〜幕山公園〜五郎神社(鍛冶屋バス停)-《バス10分》-湯河原駅前(入浴) 【歩行時間: 約6時間】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ(城山)へ


 源頼朝ゆかりの地・神奈川県足柄下郡湯河原町の城山幕山についてはそれぞれ登ったことがある。そのときの感想として、近くてハイキングにはいい山だとは思ったけれど、若干ボリューム不足の感があった。で、今回はその2座を繋げて歩いてみることにした。…結果を先に云ってしまうと…今の私にとってはちょうど適量な日帰りコースになった。

 東海道本線の湯河原駅前から左へ向かって歩き始めたのは午前8時20分頃だった。JRガード下をくぐって5〜6分ほど進み、まずはしーんと静まりかえった城願寺(*)に参拝する。境内にあるビャクシンの巨木をじっくりと観察していると、大きなオスザルが近づいてきて私を見上げている。一瞬ドキッとしたけれど、サルの表情は穏やかだ。やがてそのオスザルはゆっくりと裏門へ向かって歩いていったので…それは私の進むべき方向なので…後をつけて行った。するとなんと、もう一匹の(今度はメスの)サルが私をゆっくりと追い越していく。あぁご夫婦なのかな、と思って二匹(もしかして“二頭”が正しい?)の後ろ姿を見送った。サルをこんなに間近で見ることができたなんて、しかも目と目が合って心が通じ合ったように感じたなんて…、今日の出だしは絶好調だ。…それにしても、随分と(人間に)馴れたサルだったなぁ〜。
 閑静な人家もその密度が益々薄まって、ミカン畑が印象的な小道をなだらかに上る。右の斜面を登ると「かぶと石」、少し進んで谷側へ下ると「立石」、などの頼朝伝説に因む箇所の近くを通過して(つまり今回はカットして)、更に進むと明るい(尾根状の)山道へ入る。振り返ると湯河原の街並みや相模湾に突き出ている真鶴半島が案外の近さで見えている。
 背の低い疎林が多いこともあって、この山域の登山道は概ね明るくて展望が良いようだ。その植生については、コナラ・ヤマザクラ・ヒサカキ・イヌツゲ・シロダモ・アオキ…などの自然的なもの(自生していると思われる木本)も交じるけど、その殆どは植栽されたもの(園芸種のツバキ類、同サザンカ類、同ツツジ類、同アジサイ類、そしてヒノキ…など)のようだ。植えられた樹種については違和感のあるものもあるけれど…、最近の私は心が広い。それはそれで全然かまわない。…この日は(植栽されている)サザンカが、未だきれいに咲いていた。
 誰もいない城山の小広い山頂部(=土肥城跡)で、相模湾の奥に(つまり太平洋に)薄っすらと影を浮かべる伊豆大島や初島などの景色を楽しんだり、芝生の上に胡坐をかいてメロンパンを齧ったりサーモスの熱いコーヒを飲んだり…、まったりと時を過ごす。側らではツルウメモドキの橙赤色の果実がたわわで、とてもきれいに目立っている。この蔓性の落葉樹は何時もは地味だけれど、この実りの時季にだけは着飾って自己主張するのだ。
 城山山頂の北西側から少し下り、石畳の遊歩道を進む。すると30分ほどで舗装道が合わさって、しとどの窟バス停やトイレや小展望台などのある小広い平地(椿台)に着く。ここは椿ライン(県道75号湯河原箱根仙石原線)と白銀林道との接点で、大勢のオートバイ族(昔はカミナリ族って云っていたよな、確か)がたむろしている。超オジサンの私はなるべく彼らと目を合わせないようにして、左へVターンして白銀林道を進み、城山隧道をくぐる。
 城山隧道を抜けるとすぐ車止めのある小広場へ出て、道標に従って右の小道へ入る。いくつもの石仏(90体の弘法大師像)や石灯籠が立ち並ぶ急坂だ。暫く下って分岐を左へ少し進むと、そこが(これも懐かしの)しとどの窟(*)だった。記憶にあるよりも(というか、ほとんど記憶がなかったけれど…)、今回は荘厳な印象を受けた。
 幾つかの小沢を横切ったりして高度を下げると、菜畑林道に合流する。そして更に下ると大きな分岐に出て、ここで小考する。このまま右折して幕山公園から帰路についてしまおうか、とも迷ったけれど、まだお昼だ。思い直して当初の計画通り左折して、大石ヶ平から幕山を目指すことにする。とんとん拍子に足が運んだので、思ったよりも私は疲れていない。
 新崎川の上流部に位置する開けた処(大石ヶ平の幕山登山口)で大休止。コンビニおにぎりとグリコポッキーと蜜柑を一個食べて、それからシノダケ(ハコネダケ)の生い茂る個性のある登山道を登る。そして自鑑水分岐を右折して、よく整備された道をなだらかに15分ほども登ると幕山の広々とした山頂へ出る。芝生の上でぽつんと、若いお父さんと5〜6歳の男の子が日向ぼっこをしている。
 相模湾や箱根外輪山へ続く山並など、カヤト越しの360度の展望を充分に楽しんでから幕山山頂を辞し、湯河原梅林(幕山公園)へ向かって下山開始する。この調子なら、15時頃には五郎神社(鍛冶屋バス停)に着けそうだ。
 新年の準備などで忙しい妻は留守番の、私一人での静かな日だまりハイキングだった。

* 城山と幕山については当サイトの山行記録(ちょっと古いですが…)も参照してみてください。
  N0.116.城山: H13年1月、他
  N0.149.幕山から南郷山: H15年1月、他



* 万年山城願寺: 湯河原駅の北約300mに位置する曹洞宗の寺。鎌倉時代の初期、この地の豪族であった土肥実平が創建したそうです。境内には五輪塔など約40基と、樹齢800年というビャクシン(国の天然記念物)があります。 ビャクシン: ヒノキ科の常緑針葉高木。別名イブキ。

* しとどの窟(いわや) 沢山の石仏などが安置されており、地蔵信仰の霊域になっているようです。現地の解説板などによると、源頼朝が平家の軍勢に破れたことがあり(1180年の石橋・掘口の合戦)、そのとき土肥実平の助けにより頼朝が一時(5日間)身を隠した岩屋、とのことで、源平盛衰記に出ているそうです。源平盛衰記には「しとどの窟」、吾妻鏡には「山中の岩屋」と記されている、とのことです。
 古語辞典によると「しとど」というのは形容動詞で、ぐっしょりとぬれるさま、とあります。なるほど、岩上から水がぽたぽたと落ちていました。
 → 現地の解説板には「“しとどの窟”の由来は、追手が“シトト”と言われる鳥が急に飛び出してきたので、人影がないものとして立ち去ったためだと言われている」と書かれてありました。広辞苑などでちょっと調べてみましたが、シトド(またはシトト)とはホオジロやアオジなどの小鳥の(記紀の頃からの)古名であるらしいです。

温泉マーク ホテル城山・ラドンセンター: 今回山行の帰路に立ち寄った入浴施設が湯河原駅にほど近いこのホテル。ホテルだけあってゴージャスな感じで、浴衣やバスタオルも付いたりするが、入浴料の1,630円はやっぱり高いと思った。…でもまぁそれは、何といっても「ホテル」なのだから、仕方のないことだとは思うけど…。
 泉質はナトリウム塩化物硫酸塩泉。無色透明無味無臭。外湯も内湯もいい感じのタイル張り。ラドン…というのが売りのようだが、それについてはなんかよく分からない。とにかく、入浴後の缶ビールは美味かった。駅から近い、というのがなによりだと思う。
 外部サイトへリンク 「ホテル城山・ラドンセンター」のホームページ

仕切り線

ツツジやアジサイの季節は(もっと)良いかも
城山の山頂(土肥城跡)
相模湾に浮かんでいるように見える真鶴半島
幕山の下山路(南腹)から真鶴半島を望む

このページのトップへ↑
No.360「烏尾尾根から烏尾山」へNo.362「南伊豆歩道」へ

仕切り線

ホームへ
ホームへ
ゆっくりと歩きましょう!