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3泊4日・北信の山旅 その@
No.400 黒姫山2053m
令和2年(2020年)8月24日(月) 曇り時々晴れ マイカー利用

黒姫山の略図
第1日目
戦後、野尻湖で化石を発見!
野尻湖ナウマンゾウ博物館

妙高高原自然歩道の起点でもある
苗名滝(落差55m)
大反魂草:キク科の多年草・きれいだけれど・・・
オオハンゴンソウ
環境省指定特定外来生物

第2日目(黒姫山)
冬苺:バラ科キイチゴ属の常緑匍匐性の小低木
フユイチゴの赤い実

干ばつの時のための種池・・・?
種池に立ち寄る

湿原化している古池
古池から黒姫山を望む

アズマヒキガエル(ヤマヒキガエル)かも
赤いヒキガエルを発見!

御前橘:ミズキ科の多年草
ゴゼンタチバナ

黒姫山の山頂は近い!
気持ちのよい稜線歩き!

苔桃:ツツジ科スノキ属の常緑小低木
コケモモの実

山頂の石祠
黒姫山の山頂

雲が多くて・・・残念!
しらたま平(復路)


やっぱり登ってきてよかった!

第1日目(8/23)=東京-《関越道→上信越道》-信濃町IC…一茶記念館やナウマンゾウ博物館などを見学…野尻湖一周ドライブ…苗名滝見物…妙高杉野澤の旅館
第2日目(8/24)=杉野澤-《車35分》-大橋登山口〜種池〜古池〜新道分岐〜しらたま平〜黒姫山2053m〜新道分岐〜大橋林道〜大橋-《車40分》-新赤倉温泉 【歩行時間: 7時間20分】
第3日目(8/25)=新赤倉温泉…斑尾山登山…戸倉上山田温泉
第4日目(8/26)=戸倉上山田温泉…一路東京へ

 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ(黒姫山)へ


 前回の私達の山旅(大弛峠から金峰山)に引き続き、「コロナ禍や炎天禍で凹んでばかりはいられない」…と、何時ものメンバー(夫婦)で気合を入れて、前々から狙っていた長野県北部の山旅に出掛けました。新潟県との県境を行ったり来たり、つまり日本海にも近い、妙高戸隠連山国立公園の一角を巡る3泊4日の山旅です。

●第1日目(8/23): 野尻湖周辺を観光
 朝5時半に東京都大田区の自宅を出て、今回は珍しく…首都高へは入らずに…環八(環状八号線)を北上して練馬ICから関越自動車道へ進む。早朝で道が空いているので、このほうが(多分)早いと思う。何といっても、近年ますます高くなった首都高+東京外環の通行料金(この場合ETC利用で1,740円)を支払わないで済むのがなによりだ。
 藤岡JCTから上信越自動車道へ進み、信濃町ICを降りて約3分、野尻湖(芙蓉湖)の南西に位置する一茶記念館に着いたのは9時半頃だった。いきなりちょっとシブいけれど、妻の佐知子の意思を充分に尊重しての観光ルートだ。…この豪雪地帯の信濃町で生まれ、江戸をはじめ日本各地を巡り、50歳で故郷永住を決意して帰郷したという…俳人の小林一茶(1763〜1827)って、晩年は意外と不幸だったんだなぁ…などとしんみりもした。この一茶記念館の西の窓から見渡すと、飯縄山〜戸隠山〜黒姫山(明日に登る山だ!)〜妙高山がずらっと横一線に行儀良く並んでいる。あぁやっぱり北信だ、と感動する。
 (これ)がまあついの栖(すみか)か雪五尺 [一茶]

 「2館周遊きっぷ(@850円)」を購入した手前もあり、一茶記念館を出てから野尻湖西岸に位置するナウマンゾウ博物館も見学した。それから野尻湖をぐるっと一周、反時計回りにドライブしてみた。この野尻湖周遊道路(一周約15km)には開けた箇所は少ないけれど、所々の樹林の隙間などからチラッと湖面が見えている。野尻湖では、大正初期に軽井沢の喧噪を嫌った宣教師によって外国人別荘地が開発された、と聞く。特に南西岸の国際村エリア(神山国際村)では何人もの青い目をした外人さんたちに出会ったりして、エキゾチックな気分も味わった。
 そしてそれからカーナビに従って(北西へ向かって)約20分。高田平野から日本海へ注ぐ関川に沿って遡上すると苗名滝(なえなだき)の大駐車場に到着。観光客で賑わう「苗名滝苑」の流しそうめんを食べてから、ゆっくり歩いて片道約15分。日本の滝百選の一つでもある豪快な苗名滝を見物する。…滝見の吊橋の手前などに大型の黄色い花が群生して咲いていたけれど…、う〜ん、これはオオハンゴンソウで、つまり(北米原産の)特定外来種だ。花の盛りに見たこともあり、ゴージャスでとてもきれいだった。しかし…、でも…、う〜ん、う〜ん…。
 なにやかやで、苗名滝からほど近い今日の宿・妙高杉野澤の「旅館田端屋」に着いたのは16時頃。「3泊4日・北信の山旅」のリゾートな初日だった。

* 妙高杉野澤「旅館田端屋」: 創業110年の“味と真心いっぱいの”民宿的な宿。料理の質も量も上質で、登山客にも心を配ってくれるのが嬉しい。ご飯が超美味しくて、流石に新潟県だと思った。男女別石タイル張りの風呂は必要かつ十分な広さ。浴室の壁に「姫川薬石風呂」の表示があったので、若女将に尋ねたら、「はい、ここは温泉ではありません」とはっきりと答えてくれた。温泉ではなくともいい風呂は各地にたくさんある。ここもとてもいい風呂だった。美人女将の気配りとやさしさに感謝感激。1泊2食付き@7,700円(平日・税別)はかなりの割安感。
 なお、近くには杉野沢温泉の日帰り入浴施設「苗名の湯」がある。どうしても温泉、という人のための選択肢かも。
 外部サイトへリンク 「旅館田端屋」のホームページへ

●第2日目(8/24): 黒姫山登山
 朝もやの5時頃、杉野澤の宿から南へ向かってマイカーを走らせる。カーナビに従って国道18号線から県道36号線(信濃信州新線)へ進み、黒姫山の南麓を西へ上る。昨日に下見をしておいたので、迷うことなく大橋登山口(古池登山口)の小さな…3台で満車になりそうな…駐車場に車を停める。小鳥たちのさえずりが耳に心地よい。ここは標高約1140m。暑くもなく寒くもない…下界の喧騒と炎天禍がウソのような…爽やな風が流れている。準備して、北へ向かって歩き始めたのは5時40分頃だった。
 まずミズナラ交じりのカラマツ林をなだらかに進む。林床の大きな葉のササは…葉裏が毛深いからクマイザサ(シナノザサ)かもしれない。驚いたのはフユイチゴで、冬に熟すはずの赤い実が、なんと、あちこちに生っている。なので、二つ三つ失敬して口の中に放り込む。甘酸っぱくていい味だ。
 間もなく「種池→」の分岐標識が出てきたので、ちょっと寄り道して覗いてみる。それほど大きくない池だけれど、朝もやに煙って幻想的だ。干ばつのときのための「種池」…かな。足元ではキツリフネの咲き残りやヒメキンミズヒキが黄色のアクセントをつけている。
 少し進むと今度は古池の西岸を通過する。種池よりも一回りは大きいけれど、このときの古池は殆ど“水”が見えなくて、ヨシ等が繁茂する高層湿原、といった感じだ。そんなに急速に乾燥化が進む筈はないから、周遊歩道などの工事の関係で水を抜いていたのかもしれない。昭和初期に造られた人造池とのことではあるけれど、ちょっと気になる。とはいえ、草紅葉の始まっているその景観は…それはそれでけっこうな眺めだ。辺りにはタテヤマウツボグサと思しき花やコバギボウシが未だきれいな紫色に咲いている。野菊の類(カントウヨメナなど)もあちこちで元気だ。朝もやが晴れてきて、池面(実際は湿原)の奥には黒姫山のおっとりとした山容が神々しく聳えている。
 小沢を丸木橋で渡る。沢筋の常連・トチノキが特に目立っている。その他の木本はミズナラ、サワグルミ、ウダイカンバ(マカンバ)、ダケカンバ、ヤマモミジ、オオカメノキ(赤い実)、そしてブナなど。林床はいつの間にかクマイザサから葉裏に毛のないネマガリダケ(チシマザサ)に移り変わっている。やがていよいよ、標高1300m辺りからは、東北ではおなじみのブナ・ネマガリダケ群落だ。
 ブナ林は明るくおっとりしていて、とても自然で、いつ歩いても心が和む。そんなロケーションの…大橋林道経由との合流地点(新道分岐)の小岩に腰を下ろして、杉野澤の宿(田端屋)で作ってもらった朝食弁当を食べる。これがまたおかず盛り沢山で、とても美味しかった。
 分岐からは西登山道新道を進む。大きなシナノキの右脇を通り過ぎるころから益々傾斜がきつくなってきて、私達の会話も途切れがちになる。お互いの吐く息がゼイゼイと大きく聞こえる。登山のこんなつらいときにはいつも思うのだ…何故来てしまったのか、来なければよかった…と。しかしこれもいつもの通り、ようやく主稜線へ出て傾斜が幾分和らいでくると…あぁやっぱり登ってきてよかった、と思うのだ。
 後方(西面)には戸隠連山と思しき山並みの一部が雲間から見え隠れしている。足元の其処彼処にはゴゼンタチバナが赤い実をつけて可憐に私達の目を誘う。左(北)側の樹林の隙間からは中央火口丘の御巣鷹山(小黒姫山)2046mのピラミッド状の緑の山体が近くに見えている。
 岩ゴロの開けた箇所「しらたま平」の辺りでは文字通りシラタマノキが白玉の実をつけている。明るくて気持ちのよい外輪山の稜線歩きだ。矮小化したオオシラビソやトウヒやダケカンバが目立つ。雲と霧が多くて展望はイマイチだが、アキノキリンソウ、オヤマリンドウ、エゾリンドウ、ハハコグサなどの花たちが私達をやさしく楽しませる。コケモモも赤い実をつけ、中空ではアキアカネが気持ちよさそうに飛んでいる。
 鞍部の峰ノ大池分岐から15分ほど(標高差で80m弱)を登り返すと、ゴロ岩のこじんまりとした黒姫山の山頂2053mだった。小さな石祠を覗いてみると「七ッ池竜王・大毘沙門天王・黒姫弁財天」の文字が見える。晴れ渡っていれば北信の山々の大展望を楽しめたはずだけれど、それがちょと残念。中食のアンパンを齧りながら、辺り一帯を(例によって)ぶらぶらと散歩してみる。

* 黒姫山の頂稜で観察のできた樹木など: オオシラビソ、トウヒ、ネズコ(クロベ)、潅木状のダケカンバ、ミネザクラ、ナナカマド、ミネカエデ、オガラバナ、ウスノキ、ツツジ類(ムラサキヤシオ?)など。足元の主はチシマザサ(ネマガリダケ)。

 下山開始は11時40分頃。来た道を新道分岐まで戻り、今度は右折して(西側の)大橋林道コースを辿る。林道コースといっても登山道入り口までは殆ど山道で、まだまだ気は抜けない。広くてよく整備されただらだら坂で、一昔前の私達だったら(グレートトラバースの田中陽希さんのように)ステップを踏みながら小走りに駆け下りるのだけれど…腰は痛いし膝も痛いし…とにかく身体中の関節と筋肉がガクガクしていてそれどころではない。ナメクジが這うように、一歩ずつ、安全に慎重に下る。もともとこの登山道は安全な道だけれど…。
 やっぱり、ここのところずっと“引きこもり老人”していたのが原因かなぁ…などと(佐知子に聞こえないように)ぶつぶつと独り言を云いながら、ヘロヘロ状態で(車止めのバーを跨いで)大橋林道登山口に着いたのは14時40分頃だった。こちらの駐車場は大橋登山口のよりも大分広くて10台以上は駐車できそうだが、今日のこのときは1台も止まっていないでし〜んとしている。ここから私達の車が停まっている大橋登山口までは県道36号線を北東へ5分ほど歩けばよい。…だが、しかし、とにかく疲れた。とはいえ、充実感のある楽しい黒姫山登山だった。それもこれも間違いない。
 今日の宿は新赤倉温泉に予約をとってある。

*** この翌日は斑尾山登山***


* 北信五岳とは、妙高山2454m、黒姫山2053m、戸隠山1904m、飯縄山1917mと、これらの東に位置する斑尾山1382mを総称した呼び名です。戸隠連峰は隆起してできた山で、その他の4座は火山とのことです。

* 黒姫伝説は、この長野県北信地方に伝わる民話で、黒姫山の山名由来にもなったものだそうです。その内容(ストーリー)には若干の異同があるようですが…、興味のある方はネット検索などで調べてみるとよいでしょう。比較的に単純明快な物語のようです。

  佐知子の歌日記より
 朝五時の環八通りは空いていてベンツが目立つ田園調布
 信州へ行くのだからと蕎麦をやめ きつねうどんにしたのだけれど
 「雪とけて村いっぱいの子どもかな」一茶もうれしい雪国の春
 野尻湖畔ドライブすればヨット漕ぐ外人多く商店わずか
 爆音かと響く苗名の滝水はドンドンドンと流れてゆけり
 雲多く麓より見る黒姫は山の半分隠しておりぬ
 ようやっとしらたま平にたどり着き紫淡いりんどうを見る
 われは膝夫は全身疲れはて油の切れたブリキロボット
 赤倉の温泉宿の湯につかり足を揉むなり明日のために

温泉マーク 新赤倉温泉については次項(斑尾山)を参照してください。

* ありがとう C.W.ニコルさん: 自然や森を守ることの大切さを訴え続けた…「黒姫の赤鬼」ことC.W.ニコルさん(79歳)が今年の4月3日にご逝去されました。謹んで哀悼の意を表します。



深くて明るい森でした
黒姫山中腹のブナ林
黒姫山の山頂にて
オヤマリンドウと石祠(山頂にて)

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