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No.405 剣の峰鼻曲山
令和2年(2020年)10月27日〜28日 曇り時々晴れ マイカー利用

鼻曲山の略図
第1日目
直進が鼻曲山・右折が剣の峰へ
十六曲峠の分岐

急斜面をトラバース
「犬泣かせ」の岩場

食後のコーヒータイム
剣の峰の山頂にて

翌日撮影
霧積温泉「金湯館」

第2日目
右はミズナラの老木
鼻曲峠を通過

ミヤコザサの原を進む
鼻曲山は近い!

山頂標識がある
鼻曲山の山頂(大天狗)

標石のある小天狗のピーク
小天狗にて


霧積温泉「金湯館」に2連泊

こんな幸運もたまにはあるさ

第1日目(10/27)=上信越自動車道・松井田妙義IC-《車35分》-県道終点・駐車場-《宿の送迎車10分》-霧積温泉・金湯館〜十六曲峠〜犬泣かせ〜剣の峰1430m[往復] 【歩行時間: 3時間10分】
第2日目(10/28)=金湯館〜十六曲峠〜鼻曲峠〜鼻曲山(大天狗1654m・小天狗1655m)[往復] 【歩行時間: 5時間10分】
第3日目(10/29)=金湯館-《ドライブ観光》-峰の茶屋〜小浅間山登山…
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ(鼻曲山)へ


 GoToトラベルキャンペーンを利用して何処の山に登ろうか、と随分と考えた。悩んだ末に絞り出した案が、上信国境(群馬県高崎市と長野県軽井沢町の境・角落山塊)に位置する鼻曲山(はなまがりやま・1655m)に、名湯・霧積温泉に2連泊してじっくりと登ってみよう、ということだった。今から26年前に、私達夫婦が山歩きを再開するきっかけとなった…私達にとっては記念すべき…とても懐かしい山が鼻曲山だ。→No.1「鼻曲山」
 事前に夫婦会議を重ねた。その結果、まず初日は足慣らしを兼ねて、十六曲峠を挟んで鼻曲山の東に位置する(角落山の手前に聳える)剣の峰1430mを往復して、第2日目に本命の鼻曲山登山をしましょう、ということになった。ときあたかも紅葉絶好調の10月下旬。素晴らしい私達の山旅になりそうだ。

●第1日目(10/27・曇・晴)剣の峰登山
 上信越自動車道の松井田妙義ICを降りてから、国道18号線→群馬県道56号線(北軽井沢松井田線)と標高を上げながら進み、県道終点の駐車場にマイカーを停める。ここにあった「きりづみ館」は平成24年4月に閉館したとのことで、その跡地は空き地(駐車場?)になっているようだ。宿の送迎車に乗って約10分、今や霧積温泉の一軒宿となった金湯館(きんとうかん)に着いたのは11時少し前だった。玄関前の古い水車が、26年前と同じように、この宿の個性というか志向というか、を主張している。
 宿に余分な荷物を預かってもらって、さっそく準備して歩き始める。ここは標高既に約1040m。辺りの紅葉はその見頃に入っていて、標高が上がるに従って色彩が濃くなってくる。ミズナラ、ミズキ、ハルニレ、ハリギリ、イヌブナ、ブナ、シナノキ、トウゴクミツバツツジなどのツツジ類、そしてハウチワカエデなどのカエデ類…、などの黄葉や紅葉が薄日を受けて光り輝く。林床のスズタケも緑に輝いて、まるで大きな万華鏡を覗いているようだ。いい季節のいい山域を今、私達は歩いている。
 十六曲峠手前の分岐を右折して、ちょっと荒れてはいるけれど比較的なだらかな尾根筋を、落ち葉を踏み分け東進する。途中、「犬泣かせ」と呼ばれる岩っぽい急斜面のトラバースがあるが、スタンスはしっかりしているしクサリも張ってあるのでそれほどの恐怖は感じない。
 急坂を登りきると、そこが立教大学の遭難碑と三等三角点の標石のある、ひっそりとした剣の峰の山頂1430mだった。木々に囲まれてはいるけれど、その隙間からは近くの山々が見えている。西の方向には鼻曲山の右奥に浅間山が、背後霊のように薄っすらとその山影を映している。北面には浅間隠山(あさまかくしやま・1757m)が矢筈頭の金字塔で分かりやすく、その右手前の尖がった角落山(つのおちやま・1393m・角落山塊の盟主)も低い位置に見えている。この先を下って登り返すとその角落山なのだが、少し迷って、やっぱり私達はここから先へは進まないことにした。時間的な問題もあるし、こちら側からだと超急勾配の(下りの)クサリ場が連続するそうだし…。臆病な佐知子と関節痛に悩む今の私にはとても無理なのである。(^^;)
 ということで、剣の峰のこじんまりとした山頂に腰を据えてなんと約1時間、コンロに火を点けておにぎりツナチャーハンを炒めて食べたり、珈琲を濾して飲んだり、山頂部の樹木を観察したり…、まったりと流れる時間と空間を楽しんだ。
* 剣の峰の山頂部で観察のできた樹木: ミズナラ、リョウブ、ナナカマド、ハウチワカエデ、(トウゴク?)ミツバツツジ、ヤマツツジ、コアジサイ、など。
 紅葉を愛でつつ来た道を辿り、金湯館に戻ったのは15時35分頃だった。

●第2日目(10/28・曇)鼻曲山登山
 霧積温泉「金湯館」の朝湯にゆっくりと浸かり、7時半からの盛りだくさんな朝食(今どき珍しい部屋食だ!)を完食してから、宿を出たのは8時15分頃だった。昨日よりも少し…気のせいかもしれないけれど…紅葉が一段と進んで色濃くなったように感じる。朝の冷気は爽やかで、肺も肌も気持ちいい。
 十六曲峠の分岐までは昨日と同じで、ここで剣の峰への道を右に分け、主尾根を西へ進む。ミズナラやツツジ類やカエデ類(ハウチワカエデ、イタヤカエデ、ホソエカエデなど)が目立つ自然林で、脇役のアカシデ、ナツツバキ、シナノキ、ホオノキ、昔植林したと思われるカラマツの生き残り…、などが彩を添える。霧積ノゾキと呼ばれる細い尾根上の、ミネカエデのグラデーションなどは特に美しく、今日のこの山稜の紅葉も見事だ。
 高度が上がってくるとダケカンバが目立ち始める。標高約1400mの辺りからは、今までのスズタケ(ネザサ?)と入れ替わって幾分背の低いミヤコザサが林床を支配する。そのミヤコザサなどをホールドにして急坂(天狗坂)を登り切ると鼻曲峠へ出る。ここは標高約1550m。留夫山(とめぶやま・1591m)を経て旧碓氷峠へ下る尾根道との分岐点だ。常日頃の鍛錬不足の私達はもう既にバテバテ状態だ。ふと辺りの樹々を見回すと、いつの間にか冬枯れ状態になっている。
 最後の急坂をゼーゼー云いながら登って、数名のハイカーが静かに憩う鼻曲山の東峰(大天狗1654m)に着いたのは12時少し前だった。生憎の曇り空で、展望はほとんど心眼または心願の世界だったけれど、26年前の夏に来た懐かしい筈の山頂なので、私の胸は躍っていた…、と思う。
 「覚えてる…?」 と(一応)聞いてみたけれど、佐知子の反応は予想した通り 「・・・・」 だった。じつは私も殆ど、というか全然、鼻曲山の山頂のことは覚えていない。もしかしてタウンシューズで登ったような記憶はあるけれど…。嗚呼、忘却とは忘れ去ることなり…すぐ忘れるのに記憶を誓う心の悲しさよ…。(^^;)
 菓子パンを食べてサーモスの熱いコーヒーを啜っていたら、14〜5名の(多分ツアーの)団体が登ってきて、山頂は俄かに賑やかになった。慌てて大天狗を辞し、すぐ近くの鼻曲山のもう一つのピーク(小天狗1655m)へ移動する。こちらからは西に薄ぼんやりと、浅間山の大きな山容が白いモヤの中に浮かび上がって見えている。こじんまりとしたピークだけれど、ここには三角点と思しき標石(*)がある。標高も(東側の大天狗よりは)1m高いので、こちら(小天狗)がメジャーだと思えるのだけれど、山頂標識は大天狗にある、というのが少し面白い。

* 鼻曲山(小天狗)のピークにある標石について、「四等三角点」と記しているサイトが多くありますが、国土地理院の基準点成果等閲覧で調べてみると、鼻曲山の山頂付近には三角点は無いことになっています。小天狗の山頂にあった(判読不明の)標石は基準点の一つだったのか、それとも(上信の)境界標だったのか…? ちょっとミステリーです…。

 踵を返して、今日も紅葉を愛でながら、来た道を下山する。昨日よりも今朝、今朝よりも今日の午後、と紅葉が時間刻みで色濃く鮮やかになっているように感ずる。紅葉の見ごろは案外と短いものだ。今回の上信国境の私達の山旅では…特に標高1000mから1500mくらいの区間が…その絶好機だったようだ。今夏は上陸した台風がなかったことも(葉をあまり落としていないので)美しい紅葉に拍車がかかったのかもしれない。人生長くやっていれば、こんな幸運もたまにはあるさ。
 満ち足りた気分で、金湯館に戻ったのは15時20分頃だった。

 霧積の山残りなく色づきて賢愚の別なき紅葉かな(与謝野晶子)

  佐知子の歌日記より (晶子さんの歌と並べるのは大変恐縮ですが…)
 鈴ならし落ち葉踏み分け山道へ「クマさんどうぞどうかお先へ」
 湯舟からどっとどっととあふれ出る 晶子も浸かりし霧積温泉

霧積温泉「金湯館」についてはNo.1「鼻曲山・私達の山旅の始まり」を参照してみてください。

次項「小浅間山」へ続く



剣の峰と鼻曲山の山稜は秋たけなわ!
この少し先が「犬泣かせ」
剣の峰〜十六曲峠

紅葉絶好調!
鼻曲峠〜十六曲峠
左端のピークは駒髪山
剣の峰から浅間隠山1757mを望む

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