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北アルプス横断(前編)
No.420-1 折立から雲ノ平・高天原
令和3年(2021年)7月26日〜27日 曇りがちだったが・・・晴れ間も出て・・・雨も降った

雲ノ平の略図
第1日目
バック(右)は太郎山2373m
ウラジロタデ(太郎平小屋裏)

小梅尅吹Fユリ科シュロソウ属の多年草
コバイケイソウ

前方に水晶岳などが・・・
薬師沢へ下る

こんな木橋を3つ渡る
第三徒渉点(左俣出合)

小屋前のテラスにて
薬師沢小屋

第2日目
この吊橋・・・けっこう怖い
まず薬師沢を渡る

ギリシャ庭園付近
雲ノ平

水の豊富な「ランプの宿」
高天原山荘に到着!

御前橘:ミズキ科の多年草
ゴゼンタチバナ

コロナ下に山小屋を利用して…

登山前日(7/25)=東京-《北陸新幹線》-富山駅-《富山地方鉄道》-立山駅-《宿の送迎車》-立山山麓温泉 第1日目(7/26)=立山山麓温泉-《タクシー40分》-折立〜太郎兵衛平(太郎平小屋)〜薬師沢小屋 第2日目(7/27)=薬師沢小屋〜雲ノ平〜高天原峠〜高天原山荘 第3日目(7/28)=高天原山荘〜水晶小屋 第4日目(7/29)=水晶小屋〜〜野口五郎岳2925m〜烏帽子小屋 第5日目(7/30)=烏帽子小屋⇔烏帽子岳2628m〜(ブナ立尾根)〜高瀬ダム〜七倉山荘(泊)…信濃大町…
 【歩行時間: 第1日=6時間30分 第2日=7時間 第3日=5時間 第4日=8時間 第5日=6時間
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ(雲ノ平)へ


 7月23日から始まった東京オリンピックのテレビ観戦に後ろ髪を引かれながら、1週間を費やして、夫婦で北アルプスの中央部を西から東へ横断してきた。富山県側の折立(薬師岳登山口)から入山して、憧れの雲ノ平・高天原を巡り、裏銀座の北側(水晶〜野口五郎〜烏帽子)を辿って長野県側の高瀬ダム・七倉に下山、というルート概要だ。常日頃の鍛錬不足と寄る年波でかなり苦戦したけれど、何とか(ほぼ)予定通りに怪我もなく歩き通すことができた。無理をしない計画が功を奏した、と自画自賛。

●登山前日(7月25日・曇) 東京〜富山〜立山
 東京駅9時23分発の北陸新幹線「はくたか557号・金沢行き」は12時5分に富山駅に到着する。コロナの影響か、乗車率は30%くらいだっただろうか。
 富山駅前のショッピングセンター(マリエとやま)の6階で昼食を摂ってから、1階の食品売り場でパンや菓子類の予備食を購入。これで明日からの山行準備は万全だ。
 13時50分発の富山地方鉄道本線・立山行きに乗換えて、その終点に着いたのは14時54分。予約の宿(山の宿・やまびこ)に電話を入れると、5分足らずでワゴン車が迎えに来てくれる。運転しているのは穏やかで親切な宿のご主人だ。
 こうして、私達の北アルプス横断の山旅は始まった。何気に、数日後に上陸しそうな大型の台風8号の動きが気になっている。

温泉マーク 立山山麓温泉「山の宿・やまびこ」: 立山黒部アルペンルートの玄関口でもある立山駅から車で5分の位置にある温泉旅館。非常に親切な中年ご夫婦が切り盛りをされている。部屋の窓からは緑(近くの山腹)が目に優しくて、まったりとくつろげる。外湯はないけれどタイル張りの内湯だけで十分満足。泉質はナトリウム炭酸水素塩泉、アルカリ性、高温泉(43.4℃)、無色透明無味無臭、加温、循環、少しヌルヌル感。地元の食材を使った心のこもった料理は美味しかった。
 翌朝の折立(登山口)までのタクシーの手配など、親身になって面倒を見ていただいた。ご主人と女将さんに感謝感激。1泊夕食付き一人8,450円(税込み)は割安だ。
 外部サイトへリンク 「山の宿・やまびこ」のホームページ

 佐知子の歌日記より
寝台車なき現在は新幹線にてすうっと富山へ着いた

●第1日目(7月26日・曇) 折立〜太郎兵衛平〜薬師沢小屋
 約束通り早朝の5時45分、宿(立山山麓温泉)の玄関前にタクシーが迎えに来てくれた。なるべく早く歩き始めたかったのだけれど、登山口の折立(おりたて)へ至る有料道路(富山県有峰林道)の入口が開くのは午前6時から、とのことで、これでも最速なのだ。有峰湖を眺めながらの快適なドライブだったが、タクシー代14,200円+有料道路代1,900円=16,100円は、懐がチト痛かった。1時間以上は遅くなるけれど、有峰口からのバス利用(6:39発・@2,450円・予約制)という手もあったのだが、そう…、常日頃の鍛錬不足と寄る年波の私達夫婦にとっては、お金で時間と体力を買う必殺技を駆使するしかないのだ。…と、なにやかやで、標高約1350mに位置する折立から歩き始めたのは6時40分頃だった。
 この折立からの登山道は19年前(2002年8月)にも歩いたことのある懐かしい道だ。→No.143「薬師岳から黒部五郎岳」 そのときの思い出話をしながら、標高差約1000mをひたすら登る。ブナ、ツガ、クロベ(ネズコ)、コメツガ、(オオ)シラビソ、ダケカンバ、アカミノイヌツゲ、ハイマツ…と高度が上がるごとに植生の変わる垂直分布を横目で観察したりもしたが、案外早く(午前11時10分)、太郎平小屋の建つ太郎兵衛平に辿り着いた。コースタイムの5時間よりも(休憩時間を含めても)30分ほど早く歩いたことになるのだが、もしかしてこの(昭文社の登山地図)のコースタイムは、少し甘いんじゃないかと思う。というのは、例によって私達は(10組くらいのパーティーに)追い越されっぱなしで、誰も追い越してはいない。…このコースタイムに対する慢心が、じつは、翌日以降の私達を苦しめることになる…。
 太郎平小屋の太郎ラーメン(並・1,200円)を食べて少し元気を取り戻し、黒部五郎岳へ続く主稜を右に分けて、標高差約400mの急勾配を薬師沢へ下る。トウヒだろうか、所々に長細い(円柱形の)球果がたくさん落ちている。3回ほど木橋で徒渉して、カッパが棲むというカベッケヶ原を過ぎると、二つの沢が合流する地点(薬師沢出合)に瀟洒な薬師沢小屋が建っていた。時計を見ると14時40分。私達にとっては上出来の登山初日だ。…残念なことに、今日一日は殆どガスっていたけれど…。

* この日、観察のできた花: ママコナ、ゴゼンタチバナ、ハナニガナ、ニッコウキスゲ、キンコウカ、エゾシオガマ、モミジカラマツ、コイワカガミ、チングルマ、シナノキンバイ、ミヤマキンバイ、ミヤマキンポウゲ、イワイチョウ、コバイケイソウ(今年は当たり年かも)、ヨツバシオガマ、ウラジロタデ、シラネニンジン、ウサギギク、クルマユリ、ソバナ、ツマトリソウ、キヌガサソウ、など。

 佐知子の歌日記より
折立(おりたて)より息もたえだえ登り着く太郎平で食う太郎ラーメン
澄む流れ二つが出合う薬師沢 登山者のほか釣人もおり
山小屋の夕食なのに昆布じめのブリがあったよ さすが富山だ

第2日目(7月27日・曇雨) 薬師沢小屋〜雲ノ平〜高天原山荘
 薬師沢小屋での5時からの朝食後、5時35分に歩き始める。まず小屋前から吊橋(けっこう怖い)を渡り、ハシゴを降りて、沢沿いに進む大東(だいとう)新道を左に分け、雲ノ平への急坂を登る。寝ぼけてなんかいられない。
 標高差で400mほども登ると、そこからは木道で、雲ノ平へ向かって標高差約200mの高原をなだらかに登る。この区間(薬師沢小屋→雲ノ平・標高差約600m)のコースタイム3時間20分のところを、私達夫婦は(数回の休憩を含めて)4時間50分を要した。コースタイムの1.5倍程度、というのが私達の通常の歩き方だから、これはこれで問題はないのだけれど、昨日よりは矢張り大分疲れている。…ちょっと不安な予感が脳裏をよぎる…。
 とはいえ、憧れの雲ノ平だ。アラスカ庭園やギリシャ庭園などの、日本最後の秘境と呼ばれる庭園歩きなど、とてもシックな感じでよかった。幸いにも(ここまでは)高曇りだったので、周囲の(水晶岳や黒部五郎岳や薬師岳などの)名だたる峰々の展望もあり、草原にはたくさんの高山植物が咲き乱れている。雲ノ平山荘下の分岐付近にどっかと腰を据えて大休止。天空の庭園・雲ノ平をたっぷりと満喫する。…このころからガスが出始める。
 雲ノ平の分岐を北へ進み、奥スイス庭園や小さなコブ(二つの小ピーク・関西電力の無線塔あり)を越える。霧が晴れたときの眺望が素晴らしい。そしてそれから、高天原峠へ向かって高度を下げる…、その下りに苦戦した。要所には梯子やロープもあるのだが、ゴロ岩に辟易したのだ。若いころはこのようなゴロやガレの道は得意で、リズムよくポンポンと下ることができたのだが、今はもうそれは見果てぬ夢だ。特に大きな段差が辛くて、超ゆっくりと、よっこらしょとしか進めない。…おまけに雨も降ってきた。私は腰が痛いし痔も痛い。妻の佐知子は膝が痛い…。
 高天原峠で左からの大東新道を併せ、森や草原の道をトラバースして尚も下り、高天原山荘に着いたのは(なんと)15時20分頃だった。雲ノ平→高天原山荘のコースタイム2時間30分を、私達夫婦は4時間40分をかけて歩いたことになる。特にサボってもいないし、植物観察に専念していたわけでもない。とても真剣に、一生懸命に歩いたのだけれど…。
 この山旅の目的のひとつでもあった高天原温泉入浴は…そんなわけで…疲れと気力の関係でボツになった。標高約2130mに位置する高天原山荘から更に北へ80mほど下っての(コースタイムで往復50分かけての)入浴は、温泉好きの私達にとっても、このときは過酷すぎた…。残念だけれど。
 前日の薬師沢小屋もこのランプの宿・高天原山荘も天然水が豊富で、それを遠慮なくじゃんじゃん使えるのが嬉しい。山では冷たくて美味しい水が何よりの贅沢だ。

* この日、観察のできた花: ミヤマダイモンジソウ、ゴゼンタチバナ、モミジカラマツ、カニコウモリ、ユキザサ、ウラジロナナカマド、オオヒョウタンボク、ミツバオウレン、コバイケイソウ、イワイチョウ、チングルマ、コイワカガミ、ヨツバシオガマ、アオノツガザクラ、ハクサンイチゲ、ミヤマキンバイ、キヌガサソウ、ワタスゲ(綿毛)、など。

 佐知子の歌日記より
雲が切れ黒部五郎や薬師岳が見えてきたよと夫が喜ぶ
あこがれの雲の平への道険し お花畑に苦しさも飛ぶ


*** コラム ***
コロナ下の登山について

 コロナ禍の今ですが、山にはその感染源のヒトが少なくて、しかも風通し(換気)がよくて、(ウイルスの天敵の)紫外線が燦々と降り注いでいます。つまり新型コロナウイルスにとっては棲みにくい(不活化する)環境が「アウトドア=山=自然」だと思います。そんな安全で安心な処へ(今だからこそ)行かない手はない、と思うのであります。できることならワクチン接種を済ませて、そして交通手段には細心の注意を払って、せいぜい家族単位で(少人数のパーティーでの)静かな登山、という添え書きはつきますが…。
 蛇足乍ら、フィトンチッドなどの森の気はNK(ナチュラルキラー)細胞を活性化させて、がん細胞やウイルス感染細胞などからの防御力(人間が本来もっている免疫力)を強化するといいます。そんな意味からも森林浴=山歩き(登山・ハイキング)は有効かもしれません。
 太陽がいっぱいで、新鮮で清々しいそよ風の吹く野や山へ、勇気を出して、みなさんも出掛けてみませんか。

* 山小屋の現状: R3年7月〜8月に私達が利用した北アルプスの山小屋(薬師沢小屋、高天原山荘、水晶小屋、烏帽子小屋、白馬山荘、白馬大池山荘、蓮華温泉ロッジ)について、コロナ対策はある程度徹底されていたように思います。各小屋は完全予約制で、登山客数を絞っている関係もあり、かなりのスペースを確保できました。分かりやすく言うとガラーンとした感じで、透明なビニールなどの仕切りもあったりして、三密は防がれていると感じました。…私達は1ヶ月半も前から予約活動して、なんとか予約が取れた状態でした。
 インナーシーツ(私達はシュラフカバーを代用)、簡易枕カバー(タオルなど)、個人用の消毒用アルコール、などの持参とマスク着用が義務付けられていますが、現地では特に強制的な対応は無く、登山客同士が意識して感染防止に努めていました。
 しかしながら、夕食時など、まるでお通夜のようでした。「どちらから?」「明日はどちらへ?」…などの登山者同士の会話は、それはそれで山歩きの楽しみの一つでもあるのですが…。まぁ、会話が苦手な人や嫌いな人にとっては、かえって良いのかもしれません。
 (本欄はR3年9月5日に加筆しました。)

* ご意見ご感想は当サイトのBBS(掲示板)をご利用ください。


次項「高天原から烏帽子岳」へ続く



右上は薬師沢小屋
第2日目は薬師沢からスタート
アラスカ庭園付近
雲ノ平(前方に水晶岳)

北アルプス・高山植物の写真集です。
参照してみてください。
白馬岳  霞沢岳  針ノ木岳と蓮華岳

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