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No.42日和田山から物見山
奥武蔵の入口を歩く

日和田山から物見山の略図
 INDEX
@奥武蔵自然歩道を歩く:H9年4月 高麗〜鎌北湖
Aヒガンバナ見物を兼ねて:H19年9月,他 高麗〜ユガテ〜東吾野
B武蔵横手駅へ下山:R6年9月 高麗〜武蔵横手
  コラム:ヒガンバナについての蘊蓄(うんちく)

 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ(日和田山)へ


日和田山から物見山-その@
 のどかな奥武蔵自然歩道を歩く

西武池袋線・高麗駅〜巾着田〜金刀比羅神社〜日和田山305m〜高指山330m〜駒高〜物見山375m〜北向地蔵〜鎌北湖〜毛呂駅…新木鉱泉(泊)… 【歩行時間: 4時間50分】

奥武蔵の入口です
物見山(左)と日和田山
高麗駅のホームから撮影

樹林に囲まれた小広い山頂
日和田山山頂

H19年9月撮影
北向地蔵(後日撮影)

鎌北湖畔でお弁当
鎌北湖畔にて
●平成9年(1997年)4月19日・薄晴れ: 昔、高麗(こうらい)からの帰化人が住んだという高麗(こま)の里。位置は、秩父山塊の東端(埼玉県日高市)、奥武蔵の入口、つまり関東平野の西の果て。一帯は高麗丘陵と呼ばれている。そこから私達は歩き始めた。
 高麗の里の、特異な地形の巾着田を観光 してから日和田山への登りに入る。少し登って、金刀比羅(ことひら)神社手前の岩場の辺りから振り返って眺めたその巾着田の景色が、何とも云えず美しくて印象的だった。左奥には関東平野が広がり、右手(南西の方向)には大岳山などの奥多摩の山々もよく見えている。
 日和田山から高指山(たかさしやま)、駒高(こまたか)、物見山、北向(きたむき)地蔵と、所々自動車道とクロスしながらの穏やかな尾根歩き。芽吹いたばかりの若葉の淡い緑が目にまぶしい。
 下山路の鎌北湖から毛呂駅までのアスファルト道歩き(約1時間30分)は、少々アルバイトだった。
 毛呂からはタクシーと西武線を乗り継いで秩父に出て、今日の宿「新木鉱泉」へ。明日は金昌寺から丸山へのハイキング予定だ。

 35〜6年前、私達が中学生の頃、遠足で来たはずの鎌北湖の思い出のかけらを捜してみたが、思い出さえ思い出せないほど…、時間が経過していた…。

* 奥武蔵自然歩道とは: 埼玉県の毛呂山町〜日高市〜飯能市を結ぶ全長約11キロメートルのハイキングコース。鎌北湖、北向地蔵、物見山、高指山、日和田山、巾着田、高麗峠、天覧山、などを通る。→ウィキペディアの該当項を参考にして記述
* 巾着田(きんちゃくだ) 蛇行する高麗川(荒川水系)に囲まれた、巾着のような形をした半円形の水田。現在では一部を残して休耕田となっており、コスモス畑や広場や駐車場などに利用されている。ヒガンバナ(曼珠沙華)の大群生地として近年つとに有名。
* 日和田山(ひわだやま)305m 山頂には四等三角点の標石と大きな石塔(宝篋印塔)などがある。西斜面に岩場(男岩・女岩)があり手近なロッククライミングのゲレンデとして知られている。山頂部の南側には金刀比羅(ことひら)神社がある。
* 高指山(たかさしやま)330m 山頂にはNTT無線中継所の電波塔があって立入禁止になっている。ガイドブックなどのルビには“たかざすやま”と書かれてあるが、日本山名事典(三省堂)では“たかさしやま”となっている。いったいどっちがホント?
 →この後(2021年10月)、高指山の山頂は解放されて、階段を上っていくと山頂標識のある(無線中継所の建物の隣りに位置する)広場へ出ることができるようになりました。[後日追記]
* 物見山375m 一等三角点の山だが檜林に囲まれて展望はそれほどでもない。南南東方面が僅かに開けていて、飯能市や入間市などの街並みが俯瞰できる。
 →物見山の一等三角点375.30m(点名:物見山)は、じつは山頂標識のある地点から北東方向へ100mほども進んだ、樹林に囲まれてひっそりとした処にあります。[後日追記]
* 北向地蔵の由来: 『天明6年(西暦1786年)、流行した悪疫を防ごうと野洲岩舟地蔵尊より分身として譲り受け、北の方、岩舟地蔵尊に向かい合わせ守護神にしたと伝えられる。丁度北を向いて立っているので北向地蔵の名で親しまれている。現在では男女の逢瀬をとりもつ縁起地蔵としても親しまれている。』 →現地の案内板を丸写し
* 鎌北湖: 詳細については下呂山町のホームページへ


日和田山から物見山-そのA
ヒガンバナ(曼珠沙華)の咲き乱れる山里

西武池袋線・高麗駅〜巾着田〜金刀比羅神社〜日和田山305m〜高指山330m〜物見山375m〜北向地蔵〜ユガテ〜東吾野駅 【歩行時間: 4時間40分】

大勢の観光客に交じって
巾着田のヒガンバナ

巾着田の風景
日和田山から巾着田を望む
●平成19年(2007年)9月26日・曇り いつものメンバーで(つまり夫婦で)、巾着田のヒガンバナを見物に、高麗川に沿って巾着型をぐるっと一回り、大勢の観光客に交じって歩いてみました。夏の晴天率が高かったせいでしょうか、今年は花の赤色が特に鮮やかだと、地元の人も云っていました。そのヒガンバナの大群落はニセアカシア、ケヤキ、エノキ、クヌギ、マユミ、ムクノキ、シラカシ、アラカシなどの高木が疎に生える林下に延々と続いています。一面が血の海のようなその様は、この世のものとは思えないほどの妖しい美しさでした。
 せっかく来たのですから、私達夫婦がそのまま(巾着田のヒガンバナ見物だけで)帰るはずはありません。十年前を思い出して、近くの日和田山から物見山へ続く山道へ足を踏み入れました。檜林がメインの山域ですから、フィトンチッドがいっぱいの、森林セラピーというか、森林浴にはもってこいのコースです。
 ちょっと気になったのが、日和田山への登路から振り返って見下ろした巾着田の景色です。10年前の山行メモ(上述)には 「何とも云えず美しくて印象的だった」 と書いてありますが、今回の印象から率直に云いますと、それほど“特異な美しさ”は感じられませんでした。当時の記憶がおぼろげで、その風景写真を撮っていなかったこともあり断定的な比較はできませんが、巾着田内のかなりの面積が駐車場や牧場(?)やコスモス畑になってしまったことが原因ではないか、と私達は推測しました。
 花は夏と秋の狭間でそれほど種類は咲いていませんでしたが、里の沢筋のヒガンバナの他にはミズヒキやツユクサやヤブミョウガなどがその花期を迎えていました。
 今回は北向地蔵から静かな山腹の小道を辿ってユガテへ下ったのですが、このユガテの集落が、見たことがあるような気がするけれどそれが何処だったのかは思い出せない…「山里の原風景」とでも形容したくなるほどの、心に沁みる美しさでした。そのユガテからアスファルトの車道をのどかに1時間ほどもさらに下ると、ここも矢張り閑静な東吾野駅へたどり着きます。
 安心感のある里山歩きのよさを充分に味わった一日でした。

呆れ返るほどの大群落です
巾着田のヒガンバナ
呆れ返るほどの大群生!
ここにもヒガンバナ
美しい山里の原風景(ユガテ)
ユガテを経由して東吾野駅へ下る

物見山の山頂にて
物見山の山頂にて
●平成20年(2008年)9月23日・晴れ: 山の仲間たち(山歩会)のみなさんをお誘いして同コースを歩いてきました。例年のことながら、ヒガンバナの巾着田は見物客で大賑わいでした。
 日和田山〜物見山〜ユガテのハイキングコースでは、檜林のフィトンチッドをたっぷりと吸って心身ともにリフレッシュ。物見山の細長い山頂に、ひとかたまりになって咲いていたヤブランの淡紫色の花も印象的でした。
 物見山375mの一等三角点の位置は、じつは、山頂標識のある地点(右の集合写真)から更に100mほど北東へ進んだ処に位置しているのですが、今回もそれを確認するのを忘れました。いつかきっと、物見山の一等三角点を確認したいと思います。


日和田山から物見山-そのB
武蔵横手駅へ下山

西武池袋線・高麗駅〜巾着田〜金刀比羅神社〜日和田山305m〜高指山330m〜物見山375m〜五常の滝〜武蔵横手駅 【歩行時間: 4時間30分】
物見山から五常の滝への山稜にて
山稜のヒノキ林

●令和6年(2024年)9月6日・晴れ: 下見を兼ねて、夫婦で久しぶりに、奥武蔵の玄関口を歩いてきました。9月とはいえ、まだまだ今夏の猛暑は治まらず、耐暑訓練のような一日だったかもしれません。…とはいえ、森の中を風が通る処などは割と涼しかったですが…。

 まず、気の早いヒガンバナが少し咲き始めている巾着田の遊歩道をぐるっと歩き、それから日和田山〜高指山〜物見山とアップダウンして進みます。
 今回の特筆は、新たに設置された高指山の山頂標識と物見山の一等三角点を確認することができた、ということです。
 高指山(たかさしやま・330m)の山頂部については…令和3年(2021年)10月から…無線中継所跡地が広場として解放されています。階段を上った山頂広場からは大岳山などの奥多摩方面が見えていました。もっとすっきりとした陽気ならば富士山も見ることができるそうです。
 物見山(ものみやま・375m)の一等三角点については、地形図とコンパスを駆使して、あっちの道筋の方向に間違いない!と確信しての“発見”でしたから、それ相応に…少し嬉しかったです。それ(物見山の三角点標石)は山頂標識のある小広場から更に100mほど北東へ進んだ地点に、樹林に囲まれてひっそりとありました。
 この日は五常の滝を経由して武蔵横手駅へ下りました。ユガテを経由して東吾野駅へ下山するよりは一駅分の距離が短い計算になります。もうトシですから、そう、あまり無理はしません。で、今の私達にはちようど適量の日帰りハイキングになりました。
 なお、この日の五常の滝は受付が閉まっていました。個人所有の滝、なんですね、五常の滝は…。
 この山域の下山地付近に日帰り温泉入浴のできる施設がないのが、返す返すも、ちょっと残念です。

  日和田山から物見山の写真集 大きな写真でご覧ください。

四等三角点と大きな石塔(宝篋印塔)がある
日和田山の山頂
四等三角点と宝篋印塔がある↑
右手がNTT無線中継所
高指山の山頂
右手がNTT無線中継所↑
飯能市や入間市などの街並みが俯瞰できる
物見山の山頂
樹林に囲まれている
物見山の一等三角点

未だまばらなヒガンバナの開花
巾着田にて

総勢11名+2名
日和田山の山頂にて
●令和6年(2024年)9月24日(火)・高曇り: 山の仲間たち(山歩会)と同コースを歩いてきました。ヒガンバナの満開を予想しての、この日のハイキングだったのですが、今夏の猛暑が長引いている関係で、その開花状況が大幅にずれ込んでいました。地元の方のお話では1〜2週間後が見ごろになるだろう、とのことでした。
 それでも多少は咲いていましたので、それなりに楽しむことはできました。幸か不幸か(未だ見頃ではないので)巾着田曼珠沙華公園の入場料(@500円)は支払わないで済んだのが、多少の喜びでした。
 森林浴も満喫して、武蔵横手駅に下山後は、“反省会”だけは参加というメンバーも加わりまして、宮沢湖温泉「喜楽里別邸」で賑やかに打ち上げました。総勢13名が集った、とても楽しい一日でした。

温泉マーク 宮沢湖温泉「喜楽里別邸」: 飯能駅北口から路線バスで約15分の距離。ムーミンでお馴染みのテーマパーク「メッツァ」に隣接する…リラクゼーション施設など、ちょっと高級感のある…何でもありの(スーパー銭湯的な)日帰り温泉施設。アルカリ性単純温泉で広い内湯も展望露天風呂もそれなりによかった。無色透明無味無臭、加水、加温、半循環。
 受付の女性の高慢な対応に最初は気分を害したけれど、入浴後の“反省会”に利用した食堂のスタッフなどはとても親切だった。
 地方のあちこちにオープンしている日帰り温泉施設としては平均レベルで、奥武蔵のアウトドアを楽しんだ後の入浴施設として、今後も利用価値は充分にあると思う。入館料(平日・タオルなし)は@930円、とちょっと高いと感じたけれど、今どきはこんなもんかも…。
 外部サイトへリンク 宮沢湖温泉「喜楽里別邸」のホームページ

 佐知子の歌日記より
 ちらほらと巾着田に咲く彼岸花 見物人もまばらなりけり
 「日和田山からエベレストへ」と碑に刻まれた田部井淳子の偉業を思う




*** コラム ***
ヒガンバナについての薀蓄(うんちく)

ヒガンバナ ヒガンバナ(彼岸花、学名Lycoris radiata)はヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草で、別名については曼珠沙華(まんじゅしゃげ)を始め各地にかなりたくさんあるようです。いろいろな謂われや面白い特徴があり、この花の話題には事欠きません。各種の図鑑類やネット情報などを参考にしてまとめてみました。

● 有史以前と云われていますが、中国大陸から伝わった1株の球根から日本各地に株分けの形で広まったようです。日本に存在するのは全て遺伝的に同一の雌株であり、三倍体だから種子で増えることができません。

● 花の後にロゼット状に線形の葉を出しますが、開花期には葉がなく葉があるときは花がないことから「葉見ず花見ず
(はみずはなみず)」の別称もあり、韓国ではヒガンバナのことを「相思華」とも云うそうです。

● 別名(地方名)が一番多い植物がヒガンバナとも云われています。一説によると1000以上の呼び方があるそうです。曼殊沙華、極楽花、天蓋花、灯篭花、狐のかんざし、などといったきれいな呼び方もあるようですが…、不吉であると忌み嫌われることもあり、地方によっては死人花、墓場花、盆花、地獄花、幽霊花、仏花、葬式花、厄病花、剃刀花
(かみそりばな)、狐花、蛇花、捨子花、鬼首花、歯っかけばばあ…などと呼ばれているようです。有毒植物なので毒花、舌曲、気触れ花、手腐れ…等々。家に持って帰ると火事になる花(火事花)とも云われ、もうボロクソです。なお、「曼珠沙華」は赤を表す梵語(サンスクリット語)によるとのことです。

● 秋の彼岸ごろに咲くからヒガンバナ、というのは納得できる名の由来だと思いますが、有毒なためこれを食べた後は“彼岸=死”、という説もあるらしいです。それにしても、日本各地のヒガンバナが等しくお彼岸の頃に咲く、というのが不思議といえば不思議です。すべてがクローンである(個体差がない)ということと関係しているのかもしれません。

● 墓地や田畑の畦に植えられることが多いですが、これは野犬、イノシシ、ネズミ、モグラ、虫などがヒガンバナの毒を嫌って近付かないように、掘り荒されるのを防ぐためでもあったとされています。

● 誤食した場合は、ひどい場合には死に至るほどの毒性(アルカロイド)があるらしいですが、長時間(何回も)水に晒せば食用になるとのことです。澱粉質に富んでいることからかつては救荒食とされたときもあったと聞いています。鱗茎からは石蒜
(せきさん・ヒガンバナの漢名と同じ)という生薬が作られ、利尿や去痰作用があるといいます。そんなことからヒガンバナ=悲願の花、という解釈もあるそうです。…とはいえ、素人が食用や薬用に利用するのは大変危険であるらしく、まぁ、真似はしないほうが無難だと思います。
 かつて能登では毒抜きした球根の澱粉から作った餅(ヘソビ餅)を食べたそうです。
 岩手県では江戸時代の天明の飢饉で村民の7割が餓死したといいますが、彼岸花を入手できた村が餓死を免れたそうです。一説に、彼岸花さえ口にできず餓死した人を悼んで墓に植えた、という言い伝えもあるそうです。

● 花言葉は「悲しい思い出」「情熱」「再会」・・・など、けっこう“まとも”です。

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