スイス・アルプス周遊ハイキング そのB No.459-3 グリンデルワルト編 令和5年(2023年)7月18〜21日 |
|||
7月11日〜12日: 東京(成田)〜ドバイ〜チューリッヒ〜サンモリッツ 7月13日: サンモリッツ〜コルバッチ展望台・ベルニナ山群ハイキング〜サンモリッツ 7月14日: サンモリッツ〜オスピッツォ〜アルプグリュム〜ディアヴォレッツァ 7月15日: ディアヴォレッツァ…ムント・ペルス登山〜サンモリッツ〜ツェルマット 7月16日: ツェルマット〜マッターホルン北壁展望ハイキング…ツェルマット 7月17日: ツェルマット〜 ゴルナーグラート・リッフェル湖ハイク〜メンリッヘン 7月18日: メンリッヘン〜クライネシャイデック〜ユングフラウヨッホ〜グリンデルワルト 7月19日: グリンデルワルト〜フィルスト展望台・バッハアルプゼーハイキング 7月20日〜21日: グリンデルワルト〜チューリッヒ〜ドバイ〜東京(成田)
7月18日: メンリッヘン〜クライネ・シャイデック…ユングフラウヨッホ…グリンデルワルト メンリッヘンはグリンデルワルトの西側、直線距離にして6〜7キロの位置にある標高2343mの山、というよりは“小高い丘”といった感じだ。その広い展望台の中央に位置するメンリッヘン山岳ホテルの部屋の窓からも、南面にベルナーオーバーラント三山(アイガー3970m、メンヒ4107m、ユングフラウ4158m)を始めとするアルプスの名峰たちを望むことができる。昨日の夕刻には既にその景色を予習していた筈なのに、今朝のこの、モルゲンロートに染まるそれらの山岳風景には矢張りびっくりして感動する。…きょうもゴージャスな一日が始まる。(→冒頭の写真) 7時からのホテルの朝食後、このユングフラウ地方を代表するビューポイントでもあるクライネ・シャイデック2061mまで、オーバーラント三山を正面に眺めながら、概ね平坦なコースを正味約2時間のハイキング。展望は勿論素晴らしいが、アルプ(高原の牧草地)に咲いている花も多種で美しい。マーモットの穴(棲み処)があちこちに点在しているのが愛嬌だ。 そのアルプに目立って咲いていた花のひとつにクローバーの一種・アカツメクサ(=ムラサキツメクサ=アルパインクローバー)があり、それが群生して咲いている様を見て、ちょっと感動した。明治時代の日本では牧草用に移入したというけれど、もしかしてスイスアルプスのこれが原種かしら、と訝った。今の日本では北海道を始めほぼ全国的に帰化していて、もはや雑草化しているアカツメクサだけれど…。異国で祖国を思い起こす、そんな花に、知らずになっていたのがこのアカツメクサなんだ、と悟った。 鉄道の発着駅として観光客で賑わっているクライネ・シャイデック駅の、その裏手の丘には新田次郎さんの記念碑があることを、ツァーリーダーのHさんから教えていただいた。暫しその記念碑に手を合わせて、アイガーをこよなく愛した彼を偲んだ。 クライネ・シャイデックからは登山電車に乗って、アイガーとメンヒの内部を貫通するトンネルに入り、ヨーロッパで一番標高が高い鉄道駅という、標高3454mのユングフラウヨッホ駅で降りる。そして歩き出すと、冷たい風が流れてはくるけれど、辺りは急に人ゴミになり、まるでテーマパークへ来たような賑わいに驚いた。* 52年前にこの地を訪れたときは、悪天候だったこともあるけれど、ひっそりとして観光客は少なくて、規模も設備もずぅ〜っと小さかったように覚えている…。 ユングフラウヨッホ駅の構内につくられた複合施設「トップ・オブ・ヨーロッパ」やアイスパレス(アレッチ氷河の下に造られた氷の宮殿)などの観光施設を見物しながら、スフィンクス展望台や雪原のプラトー展望台へ出て、これも夢にまで見た(夢のような)景色を目の当たりにすることができた。間近で見るユングフラウ(アルプスの乙女だ!)やメンヒやアレッチ氷河などの神憑かった壮大さには、ただ唖然として呆然とする。そしてこんなに標高の高い処にも、アルペンドール(キバシガラス)がたくさん飛び回っているのにも驚いた。 とにかく、お天気に恵まれて本当によかった、とこのとき神様に感謝した。その神様がスイスの神様だったのか日本の神様だったのかは判然としないけれど…。 ユングフラウヨッホをたっぷりと満喫して、それから登山電車で標高約1030mに位置するグリンデルワルトへ下る。今日から2連泊する予定の「ダービースイスクオリティホテル」は、なんと、そのグリンデルワルトの駅前というか駅ナカというかホーム上というか、に建っている。そう、スイスの駅はどこでも、改札口がない。どこからどこまでが駅の構内か外なのか、よく分からないのだ。 この日の夕食はその駅前ホテルのレストランで済ませて、それからは部屋の南側の窓から間近に見えるアイガー北壁を、ずぅ〜っと眺めていた。暗くなると、その稜線には明かりが…山小屋の灯りだろうか…が一番星のようにきらめいて見えていた。 今回のこのアルパインツアーのコピー(売り)のひとつが「マウンテンビューのお部屋に宿泊」となっているけれど、正しくそれはそうだった。 * この日の歩数計=14977歩 グリンデルワルトの駅前ホテルからアイガーを望む(YouTube) 佐知子の歌日記より 人混みのユングフラウヨッホ展望台 氷河を見てたら今し雪降る 7月19日: グリンデルワルト=フィルスト展望台=山上湖バッハアルプゼー 7時からのホテルの朝食後、8時30分にツアーのメンバーがロビーに集合。それから近くのコープで弁当用のパンや水分などを購入する。慣れない異国での買い物も、みんなで買えば怖くない。 このグリンデルワルトも四方にロープウェイや登山電車が走っていて、流石に希代の山岳観光地だと思わせる。そのゴンドラのひとつに乗って、市街の北に位置するフィルスト展望台2167mへ上り、山上湖・バッハアルプゼー2265mを往復(歩行時間:正味2時間)する。ミラーレイク(鏡の湖)のバッハアルプゼーは、その美しさから“アルプスの宝石”といわれているそうだ。アイガーをはじめシュレックホルンやヴェッターホルンなどのベルナーアルプスの大展望が(きょうも)素晴らしい。 よく整備されたフラットで安心な遊歩道の往復ハイキングということもあり、特に復路は殆ど自由行動(マイペース)で、それはそれでとても楽しかった。ここでも高山植物がたくさん咲いていて、眺望も足元も目のやり場に困らない。インスタ映えのするというフィルスト山2184mの、切り立った断崖絶壁に設置された金属製(金網)の展望回廊(フィルスト・クリフウォーク)も一応歩いてみたりして、スリリングな天空のプロムナードもまったりと楽しんだ。何気にパラグライダーが、青空に吸い込まれそうにして空中に浮かんでいる。 スピードのあるゴンドラで…約25分の下りで…展望を楽しんだり、山の斜面で草を食んでいるヤギやウシを眺めたりしながら、グリンデルワルトの街に戻ったのは13時30分頃だった。それからはコープで土産物(チョコレートとチーズ)を買ったり、街のあちこちをもう一度観光したり、などして過ごした。とにかくグリンデルワルトは意外と小さな谷で、バカでかいアイガーやヴェッターホルンに押しつぶされそうな(それほど近い)ロケーションなのだ。なので、どこをどう歩いても目は飽きない。 ちょうどこの日は水曜日で、グリンデルワルトはサマーフェスティバルの夕べだった。所謂縁日のようなもので、街中には各種の出店や屋台が出て、生バンドや伝統衣装で唄うヨーデルグループなどの催し物もあり、人出も多い。私達は夕食を兼ねて街をぶらつき、出店でビールやワインを飲んだりグリル肉とかポテトなどを食したりして、もうそれだけでおなかいっぱいだった。 旅の終わりが近づいている…。 * この日の歩数計=16403歩 佐知子の歌日記より ゴンドラの車内アナウンス日本語は無くて韓国・中国語あり 登山道の花の色濃し存在を主張するごとすっと立ちおり 岩岩の筋が朝日に輝いてアイガー北壁玉座の構え 7月20日〜21日: グリンデルワルト…チューリッヒ…ドバイ…東京(成田) グリンデルワルトの駅前ホテルで朝食の後、帰路につく。インターラーケンを経由してチューリッヒ空港へ行き、15時25分発のエミレーツ航空に搭乗する。そして灼熱のドバイで乗り継いで猛暑の東京(成田空港)まで、時差を差っ引いた正味の所要時間は約19時間。行きよりも2〜3時間も早めなのは、偏西風の影響だという。 * 総括: メンバーにもお天気にも恵まれて、お陰様で楽しくて思い出に残る(夢のような)11日間だった。ツアーリーダーのHさんはもとより、メンバーのみなさんにも感謝の気持ちでいっぱいだ。 スイスアルプス山麓の本当のシーズンは冬で、スキー客で超賑わうという。そんな真っ白なアルプスも見てみたいけれど、これから先、そんな気力と体力が私達に残っているか…。余命と相談しながら、余生を過ごすとしよう。 今回のスイスで特に感じたことに物価高と円安の影響があるけれど、もう一つ、日本の地位の低下を感じたことがある。…それは、電車での車内アナウンスなど、ドイツ語、フランス語、イタリア語、英語…の後に続くのは中国語と韓国語で、日本語はカットされていた、ということだ。…現実はけっこう厳しい。 世界中の人々から愛され続けているスイスアルプスは、登山電車やロープウェイなどが縦横に整備されている、観光の質も量もとてつもなく大きな、世界自然遺産だらけのレジャーランドだった。ひと昔前には限られた登山家にしか見ることのできなかった山岳絶景が、誰でも(お金をかけさえすれば)見放題だ。…今も、サステナブル(持続可能)な進化をしているスイス観光業には畏敬の念さえ覚えているのが本音だ。 とはいえ、食性と植生については一言云いたい。 料理については(食べなれているから?)日本の方が美味だと感じた。帰国直後に(いつもの食堂で)食べたとんかつ定食が(安くて)美味かったのなんのって…。 スイスアルプスの(森林限界までの)植生については、日本と比べるとその多様性において貧弱に感じた。スイスアルプスには、白神や屋久島や日本アルプスや雲取山などにあるような極相の森(つまり原生林)がない。亜高山帯の高木はヨーロッパカラマツが殆どで、それにヨーロッパトウヒとスイスマツ(五葉の松)が少し加わるくらいだ。しかもそれらの森林は(面積も質量も)とても少なくて、殆どが牧草地(アルプ)に置き換わっている。潅木についてはツツジ科のアルペンローゼくらいしか観察できなかった。日本のダケカンバ、ミネザクラ、ミヤマハンノキ、ウラジロナナカマド…、などが妙に懐かしく感じたのもそこに起因するかもしれない。それは…、牧畜が生業のスイスにおいて(昔から肉食のヨーロッパだから)、永年に亘って人間が自然に介入してきた(よく云えば自然と人間が共存してきた)、その帰結だと推察する。 確かに、本場アルプスの壮大で荘厳な岩峰群の景観は素晴らしいものだけれど、究極の自然林(極相林)を擁する日本の山々はもっとすごいのではないか、と思ってしまう。…異国にいて自国の良さを知る。今から思うと私達のスイスへの山旅は、そんなことだったのかもしれない。 スイスの山旅:行程の略図 アイスメーア駅の展望台からフィッシャー氷河とシュレック・ホルン4078mを望む アイスメーア駅はユングフラウヨッホ駅のひとつ手前の駅です
INDEX @サンモリッツ編 Aツェルマット編 Bグリンデルワルト編(本項) スイス・アルプスで見かけた花・写真集 このページのトップへ↑ ホームへ |