和歌山・奈良・兵庫へ 5日間の山旅日記-その③ No.483 氷ノ山(ひょうのせん・1510m) 令和6年(2024年)9月20日(金) |
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兵庫県側からの 9月18日=烏帽子山登山…十津川温泉 9月19日=釈迦ヶ岳登山…やぶ温泉 9月20日=やぶ温泉-《車30分》-福定親水公園・登山口~布滝~地蔵堂~弘法ノ水~氷ノ山越~氷ノ山1510m~古千本杉・千本杉~神大ヒュッテ~一ノ谷~東尾根避難小屋~東尾根登山口~国際スキー場~福定親水公園-《車30分》-ハチ北温泉 【歩行時間: 6時間】 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ 9月21日=ハチ北温泉…東京 *** 前項「釈迦ヶ岳(奈良県)」からの続きです *** それにしても、この兵庫県の養父を「やぶ」と発音するなんて、私達は今回の山旅でも様々な(私達にとっての)新知識を身につけた。 * 氷ノ山1510m(別名:須賀ノ山)は、兵庫県養父市と鳥取県八頭郡若桜町の境に位置していて、日本二百名山、新日本百名山、ふるさと兵庫50山などに選定されています。中国地方では大山1729mに次ぐ高峰です。 やぶ温泉・但馬楽座: バジェットクラスのシティホテルとビジネスホテルの中間的なレベルの温泉ホテル、というと分かりにくいだろうか。カタカナを使わないで表現すると「割安で都市型の温泉宿」ということになる。養父市街の中心から南に外れて(氷ノ山の東側に)位置している。道の駅内にあり、日帰り温泉施設がその建物の1階にある。“最終チェックイン21時OK!”とのことで選んだホテルでもある。地下1000mから湧出するという温泉は弱アルカリ性の単純泉で、ラドンを含むらしい。殆ど無色透明無味無臭。半循環、加温。露天はない。比較的に新しい日帰り温泉施設の平均的なレベルだと思う。スタッフの感じはとてもいい。ただ一つだけ残念だったのは…ビールなどの酒類の自動販売機がない、ということだった。入浴後、ホテル内の販売所も営業時間を過ぎていたので、近くにコンビニなどはありますか、と浴場の受付の方に訊いたら、あるけれど歩いて15分の距離です、と云われて流石に(楽しみな浴後のビールを)断念した。知っていれば旅の途中で購入していたのだが…、返す返すも残念だった。宿泊料は朝食付き(夕食抜き)で一人7,150円(税込み)を支払った。 やぶ温泉「但馬楽座」のホームページ ●9月20日(晴):養父…氷ノ山登山…ハチ北温泉 「やぶ温泉・但馬楽座」の7時からの朝食を食べてからチェックアウトして、気合を入れてマイカーに乗る。カーナビに従って国道9号線→兵庫県道87号線と走り、約30分の運転で、福定親水公園登山口の立派な駐車場(標高約660m)に着く。「氷ノ山後山那岐山国定公園(ひょうのせんうしろやまなぎさんこくていこうえん)」と題した環境省と兵庫県の解説板をじっくりと読んで予習してから、登山届提出所やトイレのある木造平屋の建物の脇を通り、歩き始めたのは8時20分頃だった。今日もいい天気で、ワクワクする。 閑散としたキャンプ場(跡?)を通り過ぎて暫く進むと(布滝までの)沢沿いの道とスギ林の道の分岐があった。ガイドブックによるとどちらを歩いても歩行時間は変わらないとのことなので、私達は右手のスギ林の道(高巻き道)を選んで進んだ。金属階段で沢へ下って、名瀑として知られる布滝を見物しながら小橋を渡って、沢道と合流する。長い布が垂れ下がるように流れ落ちる布滝は、思ったよりも迫力があった。きっとこの滝はカメラ映りが悪いんだろう、と佐知子と話し合った。 少し登ると尾根に乗り、左右から瀬音が聞こえる。右下(北側)からは布滝の流れる沢の音、左下(南側)からは不動滝が流れ落ちる谷の瀬音だ。その不動滝については、木々が邪魔してよく見えない…。 急坂(28曲り)をジグザグと登る。とやがて平坦地になり、青いトタン壁の地蔵堂に着いた。登山家の加藤文太郎が(昭和の初期に)氷ノ山から扇ノ山方面へ県境の山々を縦走した時に利用した…加藤文太郎本人の著書「単独行」にも新田次郎の「孤高の人」にも出てくる…あの地蔵堂だ。文太郎はその縦走のときに、吹雪のために難儀してあやうく凍死しかかったんだ、と思い起こした。 アルミ階段を下りたり上ったりして小さな沢を跨ぐと、傾斜は再び増してくる。何時の間にかスギは少なくなってきて、辺りは自然林(雑木林)になっている。クリの毬(いが)がたくさん落ちている。ヤマハンノキ、マンサク、タムシバ、エゴノキ…、そして標高が上がってくるとミズナラやブナ、林床はチシマザサ…で、植生は豊かだ。 二つの水場(弘法ノ水と一口水)を過ぎて間もなく、お地蔵様や避難小屋や木のベンチもある氷ノ山越(ひょうのやまごえ・ひょうのせんごえ)に着いた。ここ(標高約1250m)からは左折して兵庫と鳥取の県境尾根を南進することになる。行く手には氷ノ山のおっとりした山頂部が見え隠れする。その山頂部の頂点には三角屋根の避難小屋が小さく見えている。 県境の主尾根をなだらかにアップダウンしながら休み休み進み、その三角屋根の避難小屋のある氷ノ山の山頂に着いたのは12時20分頃だった。広くて丸い山頂広場には一等三角点の標石と古い展望盤が設置されていて、避難小屋の裏手には立派な(割と新しい)石祠も置いてある。日本山名事典(三省堂)の該当項には「氷ノ山の山頂付近に須賀ノ宮があったと伝えられ…」と書いてあるが、その名残がこの石祠かしら、と推察した。 因但の山々の…360度の展望を楽しみながら、山頂標識前のベンチに腰掛けて、メロンパンとアンパンの(私達の定番メニューの)昼食を摂る。このときの飲み物はティーバッグにサーモスの熱い湯を入れ、いつもは使わない砂糖たっぷりの紅茶だ。もう、仕合せいっぱいの氷ノ山山頂。アキアカネも数匹、飛んでいる。 神大ヒュッテを目指して東へ下ると間もなく「西日本唯一の高地性湿原です。中に踏み込まないようにしましょう。(南但馬の自然を守る会)」と書いてある標板が目についた。ところが、辺りを見回してみても湿原らしさは感じられない。チシマザサがはびこり、背の低いナナカマド、オオイタヤメイゲツ、マルバマンサク、イヌツゲ、そして少し遠くにスギなど、もはや森になっている。もしかして乾燥化がかなり進んでしまっているのかもしれない。この山域もシカの食害に悩んでいると聞いたことがあるけれど、それも関係があるのかも。…それはそれで、自然の成り行きかもしれないが…。 古千本杉、千本杉、ブナの森…など、私にとっては興味津々の森を通過して、そして閉鎖されている神大ヒュッテで大段ヶ平登山口方面の道を右に分け、尚も東進する。自生するスギの林やブナの(小さな)原生林や、一ノ谷休憩所から少し進んだ処には「ドウダンツツジの群生地」や「連理の木(樹木同士が合着したもの)」が出てきたりして、とにかくこの東尾根は飽きない。 東尾根避難小屋を左に折れて急坂を下ると氷ノ山国際スキー場への林道に着地する。その登山口にはオタカラコウが黄色の頭花をきれいに咲かせている。セントラルロッジ「速水」前の自販機で500ccのペットボトル(ジュース)を購入して、佐知子も私もそれを一気飲み。そんなこんなで舗装道をまったりと下って、福定親水公園の駐車場に戻ったのは15時50分頃だった。私達にしてみれば上出来な一日で、前日の釈迦ヶ岳(奈良県)と前々日の烏帽子山(和歌山県)の登頂失敗(途中で撤退)の雪辱を果たすことができて、ここでも私達はルンルンだった。 ハチ北温泉「SASAYA」: 福定親水公園からは車で30分足らずの距離。山に囲まれた閑静な温泉街に位置し、部屋の窓の真下には大谷川が流れている。冬はスキー客で賑わうそうだ。この日は大女将は不在だったけれど、感じの良い若女将と若旦那が優しく接待してくれた。どちらかというとアットホーム的な雰囲気で、安心して過ごすことができた。内湯のみだが、とても小ぎれいな浴室で十分な広さ。泉質は単純弱放射能泉(ラドン温泉)とのことで、ちょっと珍しいかもしれない。殆ど無色透明無味無臭、加温、循環。朝食時間はご希望に沿いますよ、と言ってくれたのがとても嬉しい。地産の野菜や鶏を使った鍋料理は量も味も最高!提供してくれた地酒(香住鶴)もとても美味しい。これで1泊2食付き一人10,150円(税込)は安いと感じた。 ハチ北温泉「SASAYA」のホームページ 佐知子の歌日記より 断念の二座の分もと意気込みて氷ノ山では頂きに立つ 本当に四方八方山である うす青くひく裾野つらなり ●9月21日(曇):ハチ北温泉…東京 宿の朝食後、一路東京へ。 今回の5日間の山旅でマイカーが走った総距離は1620km。総ETC料金は29,210円だった。…登山と運転の疲れと、その楽しい思い出で、私は当分の間は死んでいるだろう。 佐知子の歌日記より 千六百キロ運転の夫に「お疲れ」の言葉も忘れ玄関に入る 氷ノ山の山頂からの360度の展望をXに投稿してみました。 |