佐知子の歌日記・第十六集
佐知子の歌日記・第二十一集
平成29年10月〜12月
プランターを逆さまにして土ほぐす 宿を追われたみみずが五匹
昼食は週に一度の「藪蕎麦」へ君と行く ほら鰯雲だよ
つるつるの門扉
(もんぴ)にバッタがしがみつき 一足一足登りゆきたり
海風とゆたかな光浴びている 照る葉の森の三浦富士山
「おぉ!」と言い 夫はカメラを取りに行く 十三夜の月に目は感嘆符
友からの喪中はがきの三通に母らの越えた九十歳
(きゅうじゅう)の坂
万歩計13000の一日
(ひとひ)なり「オレは15歩」と夫が笑う
灰色の介護施設のカレンダー 数字大きくメモ欄ひろし
インド人の彫り深き顔に見守られチキンカレーとナンを注文す
外食のつもりが昼はインスタントラーメンになる年の瀬である
子の話題 もうなくなりてそれぞれが病を語る忘年会に
プランターを逆さまにして土ほぐす 宿を追われたみみずが五匹 (10.2)

アフリカの国々を歩く夢をみた 第一候補はアルプスなのに (10.3)

昼食は週に一度の藪蕎麦へ君と行く ほら鰯雲だよ (10.5)

石柱に旧東海道と彫られたるミハラ通りはシャッター通り (10.5)

「困った」と言うも墨すり筆をとる米寿の叔母の確かな三水
(さんずい) (10.5)

英国籍カズオ・イシグロはノーベル賞「もののあはれ」を心中に書くという (10.6)

校庭に球音ひびく土曜日の老人会のグランドゴルフ (10.7)

つるつるの門扉
(もんぴ)にバッタがしがみつき 一足一足登りゆきたり (10.9)

 
三浦富士ハイキング (10.12)
海風とゆたかな光浴びている 照る葉の森の三浦富士山
照葉樹のあしもとノギク群れをなし小さき白はゆらゆらと咲く
京急の駅から二分の津久井川 浅瀬を歩く白鷺がいる
浜の風強き津久井を漕ぎいだす十一人のウインドサーファー

少しずつ視力が落ちてきたけれど今日の雨粒はっきり見える (10.13)

ドラえもん観ながらつつくおでん鍋 湯気にほかほか家族が集う (10.13)

腰痛に背をまるめ立つ台所みかねて夫が茶碗を洗う (10.18)

冷える昼ストーブを出す火をつける寒がりの夫作業すばやし (10.19)

強風と台風一過の青空にうつの半分飛んで行きたり (10.23)

無料にて眼鏡を洗う店先のキカイの名前何というの (10.28)
→ 店員に声をかけられドギマギす 超音波のメガネ洗浄機
(Tamu)

「おぉ!」と言い 夫はカメラを取りに行く 十三夜の月に目は感嘆符 (11.1)

頬つたう涙をふきつつ中七個の玉ねぎ刻む明日はカレーだ (11.2)

鰯雲ひろがる今朝の空たかくしみじみ秋と思いけるかな (11.3)

接骨院ばかりが増えるこの町に内科とマンション少なくくらす (11.10)

画面暗く視野の低下と気をもむがリモコン操作の誤りと知る (11.10)

カーディガンのそでぐちほつれるお年玉父からもらい買って二十年 (11.12)

母親は「お昼を買いに行こうネ」と幼子に言う 作らないんだね (11.15)

割引は5%なりシニアデー いそいそと行くドラッグストア (11.15)

友からの喪中はがきの三通に母らの越えた九十歳
(きゅうじゅう)の坂 (11.18)

年の瀬にもう10センチ背がほしいカーテンはずし窓ふきおれば (11.21)

 御前山(厄王山)から菊花山 (11.25)
青空とま白き富士を眺めつつおにぎりほおばる厄王山頂
本物を見たことはない菊花石 大月駅前山の名にあり
来年の山行予定の表にある 山々の嶺めいめいが描く

11月29日はなななんと「イイニクノヒ」で牛肉を買う (11.29)

万歩計13000の一日
(ひとひ)なり 「オレは15歩」と夫が笑う (12.1)

葉をおとし桜の枝は黒々と青空に映ゆここ蒲田でも (12.2)

灰色の介護施設のカレンダー 数字大きくメモ欄ひろし (12.2)

インド人の彫り深き顔に見守られチキンカレーとナンを注文す (12.12)

外食のつもりが昼はインスタントラーメンになる年の瀬である (12.14)

視野検査 良くはならぬと知りつつも期待をこめて見開く瞳孔 (12.15)

子の話題 もうなくなりてそれぞれが病を語る忘年会に (12.16)

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