No.343 御前山(厄王山)から菊花山 半日登山の名コース! |
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→ 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ[御前山] JR中央本線・大月駅の北側に目立って聳える岩峰は岩殿山(いわどのさん・634m)で、これはとても有名な山だけれど、南側に聳える御前山(厄王山)730mと菊花山(きっかさん・644m)はかなりマイナーな存在だ。国土地理院の地形図では両山とも山名注記のない山で、三省堂の「日本山名事典」にも記載がない。特に菊花山は大月駅(南口)の正面に尖がって大きく見える山なので、全国的には全くの無名であることが不思議でならない。…地元ではもちろん超有名なのだろうと思うけど…。 その由緒ある山名の菊花山の、地元での呼び名(別称)が面白い。北側(大月)の人からは日が当らないので貧乏山とかバカ山と呼ばれ、南西側(沢井)の人からは徳山とか林宝山とも呼ばれているそうだ…。 平成28年1月9日(快晴): 時間をお金で買って、つまり「スーパーあずさ1号」を利用して、大月駅のホームに降り立ったのは午前7時55分。駅前の正面(南の方向)には菊花山の三角垂が立ちはだかっている。 「う〜ん、近いなぁ」 と私がつぶやく。後ろを振り返って駅舎越しの岩殿山を見ている佐知子は 「カッコいいね」 と返事する。早くも私達夫婦の脈絡のない会話が始まっている。 駅前通りから左折して国道20号線を東へ進み、まずは御前山を目指す。三嶋神社を過ぎ、大月バイパスとの合流点(駒橋の交差点)を渡ると「厄王山道」と刻まれた古い石碑のある分岐へ出て、道標に従って林道へ入る。振り返ると岩殿山がやっぱりカッコいい。間もなく沢を小橋で渡って、額束に「厄王山」と書かれた四合目の赤鳥居をくぐる。ここが御前山の登山口で、山頂直下の厄王(やくおう)権現を十合目とした合目表示の石標が、今いる自分の位置を知らせてくれる。 “九十九(つづら)折り”の急坂を登る。周囲はスギ林(上部は例によってヒノキ林)やコナラ、シデ類、クリ、ホオノキ、ハリギリ、イタヤカエデ、アカマツなどの天然林(雑木林)だ。林床の主はアズマネザサで、山稜付近の明るい場所ではスズタケも茂っている。足元ではコウヤボウキの冠毛がドライフラワー状態になって風に揺れている。平凡で心休まる植生だ。 八合目の赤鳥居をくぐって暫く進むと、大きな礫岩…多分凝灰岩の一種だと思う…に寄り添うように建つコンクリート造りの社・厄王権現に辿り着く。右手を振り向くと滝子山や雁ヶ腹摺山などの南大菩薩方面の展望が開ける。その滝子山の右手前の可愛らしい小山が菊花山だ。 厄王権現から岩っぽくなってきた登山道をひと登り、歩程にして約15分が御前山の小さな山頂だった。南側が切れ落ちていて、富士山や道志の山々などがよく見える。山座同定型の(冬型の)素晴らしい山岳展望で、私達は大満足だ。 * 御前山の山頂からの展望: …北東から時計回りに…あれが百蔵山と扇山で…そして桂川の流れる谷を挟んで倉岳山や高畑山などの前道志の山々…近くの三角形が九鬼山で…杓子山の右奥には富士山が相変わらずスゴい…そのさらに右手が三ツ峠や滝子山…などがくっきりと見えている。 御前山からはいったん分岐に戻って、明るくて気持ちの良い稜線を、前方に富士山をチラチラと眺めながら進む。間もなく馬立山から九鬼山へ続く尾根道を左に分けて、菊花山方面へ北西に下る。2つのコブを越えて、四等三角点(点名:林宝山)のある菊花山の山頂に着いたのは11時を少し過ぎた頃で、昼飯前だった。こちらは南大菩薩などの北面の展望が素晴らしい。 中国の故事「菊水」に因んで山名の由来になったという菊花山。その長寿の水は菊花石を洗いながら流れるという。山頂付近にはゴロ岩(凝灰岩の一種)が目立っていて、これがもしかして菊花石? と思ってよく見てみたけれど、菊の模様は見えなかった。そうだよなぁ、町に近い低山なんだから、そんな(高価な)モノがそう簡単に見つかる筈がないよねぇ…、と言ってみたけれど、佐知子は360度の展望に嬉々としていて、下山後の(大月駅前の)濱野屋の「ほうとう御膳」に気が向いているらしかった。で、ここでも(私達夫婦は)脈絡のないチグハグな会話を続けるのだった。 菊花山からの下りは(トラロープやクサリもある)急坂だけれど、ゆっくりと慎重に下れば問題はない。なんといっても距離が短いので、あれもこれもアッという間なのだ。無辺寺への道を左に分け、金毘羅宮の鳥居や墓地脇を通過して、国道20号線のバイパス道へドスンと降りる。道標に従ってアスファルトを歩き、大月駅前の「濱野屋」へ着いたのは12時を少し過ぎたころで、ここで生ビールとほうとうを(迷わず)注文する。この選択に関しては、私達はよく意見が合った。 * 御前山と菊花山を結ぶトレイルについて、じつは、ボリューム的に貧弱な感じがしていたので、ずっと腰が引けていました。しかし今回、思い切って行ってみてよかったと思いました。距離は短いけれど変化のあるコースで、展望もすこぶる良く、半日登山の名コースだと悟ったのです。歩き足りない方は九鬼山などと併せて歩くといいかもしれません。 * 御前山の標高などについて: 御前山の山頂に設置されている山梨県大月市の標識には720mと書かれてありましたが、国土地理院・地形図(1/25000図)の等高線を読むと730m以上〜740mより低い、となっています。なので、本項では国土地理院を尊重して730mと標記しました。ご承知おきください。 なお、御前山の山頂直下に厄王権現があることから地元では厄王山と呼ばれているようです。また、山頂部の岩っぽい様子から御前岩と呼ばれることもあるそうです。 今回の帰路には、JR中央本線・藤野駅で途中下車して、無料送迎バス(約15分)を利用して「東尾垂(ひがしおたる)の湯」で山の汗を流しました。「東尾垂の湯」については「藤野丘陵・金剛山から高倉山」の項を参照してみてください。 → この後、「東尾垂の湯」は閉館したようです。いい立ち寄り湯だと思ったのですが、とても残念です。[後日追記] 佐知子の歌日記より うすあおく野辺に寄りそうホトケノザ うっすら霜のかんむりかぶる くっきりとジグザグ道の刻まれる秀峰富士を夫と眺める 山々に囲まれ走る中央道 エンジン音のこだまが飛び交う 御前山も菊花山も、その山頂部は岩っぽかった! 御前山の山頂から富士山を望む
平成29年11月25日(快晴): 山の仲間たち(山歩会)と、紅葉のピークを迎えている同コースを歩いてきました。シーズンの週末の割には静かな山行で、やっぱりここは“穴場”です。距離は短いけれど変化があって、ちょっとスリルもあって、展望も良いし、おまけに公共交通の便も良いし…、なかなか面白いトレイルだと今回も思いました。半日登山としては超お薦めです。 ホームへ |