佐知子の歌日記・第十六集
佐知子の歌日記・第二十二集
平成30年1月〜3月
青白き小望月にみちびかれ肩ならべ行く氏神様へ
二つ三つ花芽ふくらむサクラソウ 春よ春よと正月二日
一玉が五百円ものレタスなり カイワレダイコン好きになりそう
どのようにもぐり込んで来たものか わがスリッパに乳液のふた
修復を終えたる日光陽明門 金色まとう王者の構え
遠慮せずことわりもなく染めてゆく働き者のわたしの白髪
西風と波音まざるうなり声 ひと影のない冬 伊豆の浜
焼き魚煮付けに刺身みなうまい なんてったって伊豆の民宿
冬五輪 羽生結弦の金色のうれし涙が銀盤に落つ
道産娘の「そだねー」「そだねー」にさそわれてカーリング初の銅メダル来る
丸型の風呂屋にありし籐のかご 谷中ぎんざの雑貨屋にあり
白梅とめじろを写す夫を見て五人が寄り来る湯島天神
小花咲く黄色い布地のペンケース 歩くはずなく捜す十日目
大津波の映像声なく孫と見て黙祷をする二時四十六分
枯れ草をはやく除ければよかったね ギボウシの新芽赤くうなずく
満開の陽光桜は病む人を励ますごとし医大通りに
弁当に青いシートに花弁降る ピンクいちめんどよめく人ら
青白い小望月にみちびかれ氏神様へ肩ならべ行く (1.1)

寝坊して国道まで行く時間なしテレビで応援箱根駅伝 (1.2)

黒塗りの重箱に入れる八つ頭 ぶこつな姿なれども旨し (1.2)

二つ三つ花芽ふくらむサクラソウ 春よ春よと正月二日 (1.2)

いつも行く公園ひとの気配なくわが庭のごとめぐる正月 (1.3)

寒くって涙・鼻水出ると言う年長者らのホールインワン (1.6)

一玉が五百円ものレタスなりカイワレダイコン好きになりそう (1.11)

 
湯河原の城山ハイキング (1.13)
一つ鍋つつきあいつつ仲間との新年ことほぐ城山山頂

足早に方向音痴の夫が行く間違えずに行く横浜「ライオン」 (1.13)

午前九時 一分おきに飛行機は東の雲のなかへと消える (1.16)
 羽田空港の見える海岸にて

冬の雨あがりて歩く公園の湿り気を深く胸におさめる (1.18)

もやしそばの野菜の量が少ないと夫がのたもう去年にくらべ (1.18)

どのようにもぐり込んで来たものか わがスリッパに乳液のふた (1.18)

 日光から飯坂温泉へ知人たちとツアー旅行へ (1.24)
修復を終えたる日光陽明門 金色まとう王者の構え
ひらひらと降りしきる雪ながめれば長湯になりぬ飯坂温泉

遠慮せずことわりもなく染めてゆく働き者のわたしの白髪 (1.28)

 南伊豆歩道を歩く (1.30〜2.1)
まっ青な海をときおり眺めつつ200メートルの山を四つ越えたり
西風と波音まざるうなり声ひと影のない冬 伊豆の浜
累積は1000メートルになるだろう小さき山でも四座登れば
焼き魚煮付けに刺身みなうまい なんてったって伊豆の民宿
われは膝 夫はふしぶし痛くなり仲良くロボット歩行となりぬ

年男二回目の孫に頼まずに わがそっとまく節分の豆 (2.3)

二枚ならなんなく終わるワイシャツのアイロンがけの三枚はおっくう (2.7)

夜の九時ミルクティーいれる夫がおり短歌のノートひらく我がおり (2.7)

この紅茶 あっえりちゃん家
(ち)の味がする はじめて飲んだソーサー付きカップの (2.7)

九度九分のインフルエンザの熱の夫 頬骨目立ち色白となる (2.10)

恋人を待つかのごとく路地に出るゴミ当番に待つ収集車 (2.13)

孫からの二日遅れのバレンタインチョコパイを食む夫は笑顔に (2.16)

 冬季・平昌オリンピック
冬五輪羽生結弦の金色のうれし涙が銀盤に落つ (2.17)
支えたる人への感謝を忘れないピョンチャン五輪のメダリストらは (2.21)
オランダに体格劣る日本女子足並みそろいパシュートは金 (2.21)
道産娘の「そだねー」「そだねー」にさそわれてカーリング初の銅メダル来る (2.24)

 「谷根千(谷中・根津・千駄木)」から神保町を散歩 (3.1)
丸型の風呂屋にありし籐のかご谷中ぎんざの雑貨屋にあり
見いつけたオオイヌノフグリ・ホトケノザ 池のほとりを君と歩けば
白梅とめじろを写す夫を見て五人が寄り来る湯島天神
捜すのは本屋ではなくビアホール 神保町の「ランチョン」見っけ

キムチ鍋食べ終え口はひりひりと辛味が残る二時間たてど (3.3)

小花咲く黄色い布地のペンケース 歩くはずなく捜す十日目 (3.8)

大津波の映像声なく孫と見て黙祷をする二時四十六分 (3.11)

噛みごたえ十分にある鹿肉をカレーにいれて食べてみました (3.14)

「助けて」と父母の墓前につぶやけばわが肩少し軽くなりたり (3.14)

枯れ草をはやく除ければよかったね ギボウシの新芽赤くうなずく (3.15)

 
沼津アルプスハイキング (3.17)
菫・木瓜登山道にあらわれて春を知らせる沼津アルプス
17年つづく登山の仲間との無事に下山のビールはうまし

それぞれのかたちを持ちて雲はゆく関東平野をふぅわりふわり (3.23)

満開の陽光桜は病む人を励ますごとし医大通りに (3.24)

春の昼 髪を短くしてみても乙女のようにはいかぬ足どり (3.29)

ああ何も詠めないでいる夕暮れにテレビを見つつデコポン食べる (3.30)

 
老人会の花見 (3.31)
弁当に青いシートに花弁降る ピンクいちめんどよめく人ら
青シート一面にふる花びらにどよめく老い人二十八人

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