佐知子の歌日記・第十六集
佐知子の歌日記・第二十四集
平成30年7月〜9月
褐色のつるりとすべる肌をもつヒメシャラの幹 妖しく凉し
三度目の盆のしつらい手間どりて去年
(こぞ)の写真を見ながら飾る
「ドラえもん」見なくなったねと夫が言う十二と十五の孫が帰りて
うなぎ屋が「仕度中です」に隣り合うモスバーガーへと宗旨がえする
乗っていた車を忘れ帰宅した息子よ親より先にボケるな
黄の小花つけて蔓伸びいつ生るや小玉すいかの二つ三つなど
コンクールに8小節のソロなれど孫のフルート澄みわたりゆく
猛暑日を汗にまみれて帰り着けば 扇風機のみの夫が生きてた
選ぶとき思わず笑顔 コンビニのアイスなどでも気分は晴れる
ベランダに命終りし蝉二匹 朝日を受けて並んでいたり
内緒よっ(真顔よりやっぱ笑顔のトム・クルーズが好きなのアタシ・・・)
この夏にわたしは何をしただろう二匹の黄揚羽あおぞらへとぶ
「こんにちは」に「ニーハオ」と返す人もいて高尾山頂にぎわいにけり
この夏の猛暑のしるしのTシャツの背中は広くぼかし染めなり
レジ係りに「ツルハのですよ」と云われたり あわてて捜すライフのカード
親類が集まり来る秋彼岸 話題は生きる者らの病
(やまい)
勘違い聞き違いなど多くあり わがアクセサリーとするしかなくて・・・
町会の班長なれば軒めぐり「赤い羽根募金を」と言うんです
 天城山登山 (7.11)
蒸し暑い天城山には虫多く顔や耳にも飛び込んでくる
ヒメシャラの白く小さな花びらが山道おおう万二郎岳
褐色のつるりとすべる肌をもつヒメシャラの幹 妖しく凉し
ドンドンと雷ひびく天城山おそれ見上げる文月の天
初島をのぞめる広い男湯と狭い女湯 料金は同じ
年毎に歩みおそいが怪我のない下山のビールはほんとに旨い

三度目の盆のしつらい手間どりて去年
(こぞ)の写真を見ながら飾る (7.13)

冷房を強に合わせてテレビみる猛暑日続く午後は動かぬ (7.19)

「ドラえもん」見なくなったねと夫が言う十二と十五の孫が帰りて (7.20)

明日干す梅を瓶から笊におく 一粒ひとつぶ顔が違うよ (7.20)

うなぎ屋が「仕度中です」に隣り合うモスバーガーへと宗旨がえする (7.21)

アスファルトのすきまより生うしその葉はみどり豊に背は30センチ (7.25)

台風に百日紅の花こぼれたりピンクが蓋う灰色の道 (7.25)

乗っていた車を忘れ帰宅した息子よ親より先にボケるな (7.31)

黄の小花つけて蔓伸びいつ生るや小玉すいかの二つ三つなど (7.31)

コンクールに8小節のソロなれど孫のフルート澄みわたりゆく (8.2)

猛暑日を汗にまみれて帰り着けば 扇風機のみの夫が生きてた (8.2)

選ぶとき思わず笑顔 コンビニのアイスなどでも気分は晴れる (8.3)

わが歌の三日がかりの推敲に納得いかぬ曇り空なり (8.6)

ベランダに命終りし蝉二匹 朝日を受けて並んでいたり (8.10)

 グラウンドゴルフ
スコアーはむなしく増すが空見れば青々としてすじ雲ひとつ (8.18)

内緒よっ(真顔よりやっぱ笑顔のトム・クルーズが好きなのアタシ・・・) (8.18)

めっきりと蝉のなき声小さくなり緑道の夏暮れてゆくなり (8.22)

減量に励む十日目にステーキを食ってしまえり二百グラムも (8.22)

この夏にわたしは何をしただろう 二匹の黄揚羽あおぞらへとぶ (8.22)

「こんにちは」に「ニーハオ」と返す人もいて高尾山頂にぎわいにけり (8.25)

田舎より新米届く八月尽あせをかきつつ旨味かみしむ (8.29)

何色と言うのだろうか凛々しさとやさしさ混じるつゆ草のあお (8.30)

この夏の猛暑のしるしのTシャツの背中は広くぼかし染めなり (8.30)

五時前に目が覚めひとり茶をすする老人である証のかけら(8.31)

長靴がないどうしよう台風が迫る明日は歌会なのに (9.3)

木の枠の玻璃戸より入る隙間風 強弱つけて太鼓のごとし (9.4)

 
荒山高原(赤城山) (9.8)
雷の予報あったと大雨に下山をすれば晴れてくる空

レジ係りに「ツルハのですよ」と云われたり あわてて捜すライフのカード (9.14)

集まった担ぎ手わずか八人に大人も入る子供神輿よ (9.16)

ねんごろに墓石洗う夫の手は母の背ながすごとくうるわし (9.20)

右足がつってブレーキ踏めないと長い七分夫との首都高 (9.20)

 月の道・薪能(熱海にて)
さざ波の寄せる岸辺の能舞台するりすり足篝火に映ゆ (9.22)

親類が集まり来たる秋彼岸 話題は生きる者らの病
(やまい) (9.23)

ニュースにて中秋の名月を知り すぐ路地に出て空に確かむ (9.24)

十二歳の孫とその母笑いあい 赤い毛糸のあやとり続く (9.28)

勘違い聞き違いなど多くあり わがアクセサリーとするしかなくて・・・ (9.29)

町会の班長なれば軒めぐり「赤い羽根募金を」と言うんです (9.29)

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