佐知子の歌日記・第十六集
佐知子の歌日記・第二十五集
平成30年10月〜12月
念願の栗駒山が車窓より見えたときから登山がはじまる
もしかして硫黄かと嗅ぐ山道は すなわち湯の道 須川温泉
頑丈だと夫に貰いしモンブラン わが筆圧は芯を二度折る
高麗山の展望台より見る海のずうっと遠くにアメリカはあり
保育士の「あっ柿!」の声に一斉に園児ら見上げる路地のおさんぽ
一日中富士を眺めて歩いてる そのしあわせをリュックに詰めて
渓谷の水の澄みたる多摩川を河口に住めるわれは羨む
台風の去りし朝方あたらしき風入れよと窓開け放つ (10.1)

 
栗駒山登山 (10.4)
念願の栗駒山が車窓より見えたときから登山がはじまる
陽を浴びて紅や黄の葉の色は濃く山肌かがやく栗駒山よ
足もつれ栗駒山の沢水に腰まで浸かる六十ウン歳
拾われてあと三キロを山女のやさしさに座る福島ナンバー
きのうとは別のコースで栗駒の頂に立つ痛む足にて
あらあらら日差しもどりて錦秋の須川渓谷撮る君いそがし
もしかして硫黄かと嗅ぐ山道は すなわち湯の道 須川温泉
たっぷりと栗駒山を登っても次の山へと夢はひろがる

 
赤城山登山 (10.6)
汗流したどりついての頂上は雲のひろがる赤城山なり

リビングに体重計を置いてみる 一キロ減に二ヶ月が過ぎ (10.11)

目が覚めたときが起きるとき土曜日の朝茶は旨しゆるり飲みほす (10.13)

日ごと点すこの目薬の一滴にささえられてるわが視界なり (10.15)

頑丈だと夫に貰いしモンブラン わが筆圧は芯を二度折る (10.18)

この十年パーマをかけない剛毛に前髪なぜかほどよく巻き毛 (10.19)

夕食のメニューに迷う駅ビルで夫の好物ピータンに出会う (10.22)

もうすぐとの思いが通じ友よりの渋ぬきの柿たらふく食べる (10.23)

 
高麗山ハイキング (10.26)
高麗山の展望台より見る海のずうっと遠くにアメリカはあり
黒に白みどりの石を拾う昼 大磯の浜を夫と歩めば
味噌汁と煮物で食する冬瓜がフレンチのジュレとなり現る

四時からは「歩行者天国」となる通り 買い物客見ぬ商店街よ (10.26)

眠気払い九十二歳の講話きく 斉藤茂吉の鰻と女 (11.3)

俳壇に衣被
(きぬかつぎ)あり 辞書ひけば なんだ千葉ではオッペシ芋だ (11.5)

 尾続山〜コヤシロ山〜要害山・ハイキング (11.8)
やわらかい土と落ち葉の尾続山 足から伝わるやすらぎの道

珈琲の香にめざめ朝を知る 伸ばす手足がほぐれてゆくよ (11.13)

保育士の「あっ柿」の声に一斉に園児ら見上げる路地のおさんぽ (11.13)

 三国山稜ハイキング (11.17)
富士山を巡る路線のバスなれば四ヶ国語のアナウンスである
青空に真白き富士の嶺みえて足取り軽い山歩会なり
富士山のくの字くの字の登山道 くっきりと見ゆ三国山稜
一日中富士を眺めて歩いてる そのしあわせをリュックに詰めて
すっぽりとすすきの帽子かぶりたる鉄砲木の頭が茶に染まる

 
鋸山ハイキング (11.24)
釣り船をあまたかきわけすいすいと東京湾のフェリーは進む
まっすぐに岩切られたり職人のわざと知恵あり鋸山に
両親に会えただろうか男の子 元気よすぎる一人歩きの

プレゼントの高級ワインを手にとるが飲まずにねむる風邪の夫なり (11.29)

プランターのほどよく赤いいちごもぎ風邪がなおらぬ夫に手渡す (12.2)

雨の午後テレビの映画をみていても画面をよぎる病む友の顔 (12.6)

女四人尽きぬ話の中心は友の病と親の介護と (12.7)

幼子をあやす子のいぬ甥夫婦 かがむ背中がさびしく見えて (12.16)

雨あがりそれとばかりに眼科へといそぐもすでに患者は五人 (12.17)

 
大多摩ウォーキングトレイル (12.20)
渓谷の水の澄みたる多摩川を河口に住めるわれは羨む
平日の日帰り温泉ひと気なく手足伸ばしてただただ浸る
白髪を三つ編みにして山おんな赤いザックをひょいと担げり

腹痛におそらくは四年に一度の「食欲なし」を味わってます (12.20)

十五夜の月をめでつつ深酒の夫とならびて歩く極月 (12.22)

拍子木を打つ先頭とあと五人 光るチョッキで町内夜警 (12.29)

弟と話しをするとうかびくる 子どもの頃の小さき木の家 (12.30)

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