No.351 大洞山〜三国山〜鉄砲木ノ頭 (三国山稜) 平成28年(2016年)12月23日 |
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でっかい富士山を見放題! → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ(三国山) いろいろとあった今年の私の山旅…その総括というか歩き納めというか…にはやっぱり富士山の見える山が相応しいと思った。歩いたことのないコースで、日帰りで割と簡単そうで、しかも富士山展望のネット裏となると、けっこう選択肢は狭い。常日頃の鍛錬不足の私が迷った挙句に選んだのは、富士山の東・山中湖の南側・つまり丹沢山地の最西端・神奈川、静岡、山梨の県境に位置するなだらかな低山群(三国山稜)だった。 未明まで降っていた雨が上がって、空模様は絶好調だ。御殿場の駅前から8時10分発の山中湖行きの(ガラガラの)バスに気分よく乗る。座席に座って、さて朝食のコンビニおにぎりを食べようかなぁ、と思って愕然とした。なんと、この路線バス内では食事は厳禁、と車内の貼紙に書いてある。う〜ん…、困った…、う〜ん…と唸っていたら、そのうち篭坂峠バス停に着いた。 その富士急バスを憎々しげに見送って、道路の反対側からVターンして、大洞山方面へ歩き出したのは8時50分頃。道標に従って、山中湖村公園墓地を抜けてエグレた登山道へ入る。土壌は黒っぽくて、これは火山性(玄武岩質?)のザレが風化したもののようだ。周囲はミズナラ、カラマツ、モミ、シデ、ホオ、モミジ類(オオモミジ、オオイタヤメイゲツ、ハウチワカエデ、カジカエデなど)、ミズキ、マユミ、ヤマボウシ、ハリギリ、サンショウバラ(少し)、クリ、ブナ、ツガ、そしてアカマツ…などの明るい天然林(雑木林)で、それらの冬枯れの木々の隙間から白銀の富士山が見えている。…で、ようやくここに腰をおろして、コンビニおにぎりの(かなり遅めの)朝食を摂る。 登山口から40〜50分ほども登るとアザミ平で、ここから大洞山(三等三角点名:角取山)〜三国山と東へ進む尾根道は山梨県と静岡県の県境だ。なだらかな地形がその生育に適しているのだろうか、ブナが俄然目立ってくる。疎林の低木層にはアブラチャンやナツグミが葉を落としており、ノイバラには辛うじて赤い実が残っている。ナツツバキとリョウブはその斑紋状にはげ落ちた樹肌の感じが似ているけれど、明らかに違う樹形(リョウブは株立ち状)を見比べるのも面白い。…案外な“自然”に嬉しくなった私の歩きは快調だ。だいいち、急勾配が少ないのでそれほど疲れない。 大洞山1383mから少し下って少し登り返すと楢木山1353mだが、(多分)この山の山頂標識が無かったこともあり、知らずに通り過ぎる。ヅナ峠からの道をゆるやかに登りつめると、神奈川県の西端でもある三国山1328mのまったりとした山頂に到着する。ここもブナやミズナラなどの樹林に囲まれていて展望は殆ど無いけれど、これから進む方向(北側)には鉄砲木ノ頭の奥に御正体山の貫禄ある金字塔が見えている。昼食のメロンパンを齧り、サーモスの熱いコーヒーを啜る。 三国山からは山梨県と神奈川県の県境を進む。スズタケの生い茂る坂を下って車道の通じる三国峠(ここが本当の神奈川県の最西端)へ出て、そこからカヤトの原を登り返す。と、急に空が抜けて明るくなった。そして左後ろを振り返って大感動! 今まではチラホラとしか見えていなかった富士山がススキ越しにどど〜んと見えてきたのだ。しかも、山頂部にかかっていた雲が徐々に消え始めている。 三等三角点と山中諏訪神社奥宮の立派な石祠がある鉄砲木ノ頭(明神山)1291mの開けた山頂からは、山中湖越しのでっかい富士山が見放題。その右裾の奥に連なる南アルプスは雲の中だったけれど、御坂や道志の山々はくっきりとよく見えている。この山は一面のススキなので、特に展望が優れているようだ。春先には野焼き(火入れ)をしているらしい。…今年の歩き納めはこの大展望で充分だ、と満足した。 満足して、そのカヤトの原をふらふらっと富士山方向へ(富士山を正面に仰ぎながらパノラマ台方面へ)ずんずん下って、中腹まで来て 「しまった!」 と思った。じつは、予定では更に三国山稜の縦走を続ける(切通峠方面へ進む)ことになっていたのだ。もちろん踵を返して鉄砲木ノ頭へ登り返す気力はない。思わず美人(富士山のこと)に吸い寄せられた結果となってしまったが、たっぷりと富士山を眺めることができたので、まぁいいか。 観光客で賑わうパノラマ台の駐車場を通過して、ショートカットの(ここもエグれた)山道を下り、国道413号線を右折して平野へ向かう。歩きながら今日のトレイルのことなどを考えた。…特に大洞山から三国山へ至る山稜のブナ・ミズナラ林など、案外と植生の豊かな今回の三国山稜…すっきりとした展望の今ごろ(冬季)もいいけれど、フジアザミやマツムシソウの咲く初秋もよさそうだなぁ…。 平野バス停でも少考した。今はまだ13時40分。近くにある「石割の湯」でひと風呂浴びても、ここから出ている15時25分発の(新宿バスタ行きの)高速バスにはゆっくりと間に合いそうだ。富士急の予約センターに電話を入れてみると、幸い高速バスの予約がとれたので、あとは例によってまったりと…。 平野温泉「石割の湯」: No.237「石割山」の項を参照してください。 再び 三国山稜(大洞山〜三国山〜鉄砲木ノ頭)へ
このコース前半の、いわゆる三国山稜(篭坂峠〜大洞山〜三国山)はミズナラ・ブナなどの美しい自然林です。そして後半(鉄砲木ノ頭の前後)はカヤト(ススキ)の原で、山中湖越しの富士山や南アルプスや近くの御坂山塊などの展望が特に優れています。その変化のある素晴らしいトレイルにみなさん大満足のご様子でした。2年前に単独で歩いたとき(↑本項)もそう感じましたが、思いのほか人影が少なくて、ここは案外な穴場です。ただし、この日は(山稜の南麓に位置する)富士スピードウェイでレースがあったらしく、そのエンジン音が少し気になりました。 今回は山中でまったりとしすぎてしまって(時間が無くなってしまって)下山後の「石割の湯」をカットせざるを得なかったのが少し残念でしたが、情緒のあるJR御殿場線や路線バスや高速バスなどの公共交通をフルに利用した、思い出に残るステキなミニ縦走でした。 佐知子の歌日記より 富士山を巡る路線のバスなれば四ヶ国語のアナウンスである 富士山のくの字くの字の登山道 くっきりと見ゆ三国山稜 一日中富士を眺めて歩いてる そのしあわせをリュックに詰めて すっぽりとすすきの帽子かぶりたる鉄砲木の頭が茶に染まる |