No.371 大多摩ウォーキングトレイル 平成30年(2018年)12月20日(木) |
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→ 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ(古里駅)へ 2010年7月に山と渓谷社から出版された光野桃(みつの・もも)さんの「森へ行く日」を近所の図書館から借りて読んでみた。何時もはこの手の本は読み始めてすぐに本を閉じるのだが、冒頭の“初めてトレッキングシューズを履いたのは五十を過ぎてからである…”というフレーズにおゃっと思った。そして読み進んでいるうちに、“目標もゴールもない、もっとゆったりとした時間の中で過ごしたい” と(それまで忙しかった光野さんが)はたと気がつき…森へ出掛けるようになった、というのがこの本のモチーフというかバックボーンではないかと気がついた。…それはまさしく、私が山歩きを再開した動機に似ている感じがして、僭越ながら、とても親近感を覚えた。(→No.1「鼻曲山〜私達の山旅の始まり〜」) その光野桃さんの著書「森へ行く日」ではいくつかのトレッキングコースが紹介されているが、その中の「大多摩ウォーキングトレイル」の項に特に気を惹かれた。鉄道の駅から駅(JR青梅線・古里駅〜奥多摩駅・8Km強)というのがいいし、歩いたあとには温泉(もえぎの湯)が待っているというのもとてもいい。 なぜ奥多摩ではなくて大多摩なのかは判然としないし釈然としないけれど、とにかく早速、妻の佐知子を誘って出掛けてみることにした。 それにしても「大多摩ウォーキングトレイル」って長いなぁ。「大多摩遊歩道」くらいで十分だと思うけど…。 JR青梅線の無人駅のひとつ・古里(こり)の駅前から西へ向かって歩き始めたのは午前9時半頃だった。師走だけれど山里の小さな街は閑静で、周囲の森の“気”が清々しい風となって身体を通り抜ける。未だ手袋は脱ぎたくないけれど寒くはない、といった程度の、森の散歩にはまずまずのコンデションだ。まずは多摩川を寸庭橋で渡ってその右岸へ出て、そして支流の寸庭川や越沢川に架かる小橋も渡って、指導標に従って、今回のトレイルで唯一の登山道(松ノ木尾根)へ入る。右下には多摩川の清流が見えている。足元にはフユイチゴが赤くて美味しい実をたくさんつけている。 スギ林の中を標高差にして100mほども登ると北面の開けた東屋(展望台)があって、ここで小休止。鳩ノ巣の街並みの左奥の本仁田山が近いのでとても立派に見えている。その右奥の小さな双耳峰に見えているのは川苔山(川乗山)の辺りだろうか。久しぶりに眺めたそれらの懐かしい山容に、目も心も思わずほほ笑んだ。…しかし、山道はここまでだった…。 里道へ出て、越沢バットレスから御岳山へ進む道を左に分け、鳩ノ巣駅方面へ進む。雲仙橋を渡って多摩川の左岸に出て、今は休業中と思われる旅館や喫茶店「ぽっぽ」などの脇を通って…はっきり云って「ふぅ〜ん」といった程度の…水神様や双竜の滝を見物する。それから鳩の巣小橋で再び右岸へ渡り、川岸に沿った岩っぽい鳩の巣渓谷を遡上する。この鳩の巣渓谷は、距離は短いけれど、なかなか見事なロケーションだった。 東屋で一休みしてから少し進むと、本コースの見どころの一つ・白丸ダムだった。平成13年に完成したという新型の魚道を見物したくて、堰堤の天端を渡って対岸(左岸)の魚道管理棟まで行ってみたけれど、今月(12月)から来年の4月5日までは閉館ということで見物することはできず、ちょっと残念。ダムの上から下流の左岸を眺めるとジグザグの魚道らしき人工物が見えるので、まぁあんなものか、と想像して満足する。(*) カヌーが浮かぶエメラルドグリーンの白丸調整池を右手に見下ろしながら白丸湖畔遊歩道を進み、和風のしゃれた建物の「森の中のお肉レストラン・アースガーデン」で大休止して、美味しいワインや黒豚料理に舌鼓を打つ(12:10〜13:25)。それからほろ酔い加減で数馬峡遊歩道を歩き、海沢(うなざわ)大橋を渡って国道411号線(青梅街道)を少し進み、13時55分、もえぎの湯に“着地”する。オフシーズンの平日ということもあり、数回利用している立ち寄り湯だが、混んでいなくてのんびりとできたのは初めてだった。甘露甘露〜である。この「もえぎの湯」からは10分も歩けば奥多摩駅だ。 今回の多摩川上流に沿った軽ハイキングコース(大多摩ウォーキングトレイル)は案外と変化があって面白かった。特に、いくつかの橋の上から眺めた多摩川の渓谷美が印象に残った。私的には、コース上に自然林が無くて殆どが人工林(スギ林)、というのが若干の不満だったが、まぁ、風邪の治りかけの私やギックリ腰の佐知子にとってはちょうど良い“ステキな散歩道”だったかもしれない。 それほど疲れないというのがこのトレイルの長所であり、もしかして短所であるのかも…。 大多摩ウォーキングトレイルの詳細なコース図(PDF): 奥多摩観光協会の提供によるもので、分かりやすくてとても参考になります。 奥多摩温泉「もえぎの湯」: 御前山の項を参照してください。 佐知子の歌日記より 渓谷の澄む水がゆく多摩川を河口に住めるわれは羨む 平日の日帰り温泉ひと気なく手足伸ばしてただただ浸る 白髪を三つ編みにして山おんな赤いザックをひょいと担げり
再び 大多摩ウォーキングトレイル 鳩ノ巣渓谷の遊歩道は、今年の2月に起きた土砂崩落のために一部通行止めとなっている。なので、国道(青梅街道)へ出て白丸ダムまで迂回したけれど、それがちょっとアルバイトだった。 * 鳩ノ巣渓谷の通行止めは来年(2023年)1月末までの予定、とのことです。 季節がらか、この日は多摩川の水量が多くて、迫力の渓谷美を堪能することができた。コースの近くに咲いていたイワタバコが特に印象的だったが、その詳細な場所はヒ・ミ・ツ…。 「森の中のお肉レストラン・アースガーデン」は相変わらずの人気で、平日にもかかわらず、テーブルに着くまでは1時間近く待たされた。予約ができない、というのが良きにつけ悪きにつけ、この店の特徴というか特質というか、ポリシーというかビジョンというか、それとも戦術というか商策というか…、だと思った。 この日の「もえぎの湯」は混んではおらず、甘露甘露の大団円。
再々 大多摩ウォーキングトレイル お昼は鳩の巣渓谷の川岸で、弁当を食べたり熱いココアを飲んだり和気藹々と過ごし、秋色に染まった風景も楽しみました。 多摩川の流れは相変わらず美しく、この日は特に…日差しの関係か…白丸ダム上流の(白丸調整池の)エメラルドグリーンの水面に映える紅葉が、特に印象的でした。 「もえぎの湯」での湯上りの、味噌田楽をつまみに飲んだビールが旨かったことは、云うまでもありません。新型コロナの第8波が始まっているらしいことなど、どこ吹く風の、楽しい時間があっという間に流れていきます…。
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