佐知子の歌日記・第十六集
佐知子の歌日記・第二十六集
平成31年1月〜3月
イライラとジリジリ混ざり指止まる 我を操るスマホなるもの
母編みて二十年経るセーターのほつれをかがり今日もぬくまる
三代のよき人の顔うかびくる 向かいの家をクレーンが潰し
ひとまわり土俵を大きくしたならば大技小技珍技うまるる
引退の横綱稀勢の里は未だ三十二歳の ああ「年寄り」に
人ごみを撮ってどうする外国人 渋谷スクランブル交差点
百円の値下げに胸張り灯油屋はゆっくりポリタン置いてゆくなり
十年の介護終えたる一月の未明を照らす白い満月
ラケットを振るたび心臓高く鳴る やったねなおみ全豪制す
命日の墓参りもせずぬくぬくと母をなくして二年がすぎる
ここ三年まかずにおりし節分の豆の味を十代の孫は言う
一日に一首をめざしノート開け鉛筆握るまでは毎日
貼り付けのスマホ操作に手間取りてボケの始まりと夫に言われる
ひと足も外へと行かずストーブの正面陣取りサスペンス観る
呑川
(のみがわ)に親子の鴨が泳いでる浄水器などつけてやりたし
若木にはふっくらと咲く梅の花ひとつひとつに生気あふれて
まぶたはれむくみて赤いわが顔をいつもと同じと夫は言うなり
音もなく雨ふる昼に新品の黄楊
(つげ)の櫛もて白髪を梳く
合格にケーキや苺を揃えおり笑顔の孫まつ弥生の夕べ
おだやかに暮らせる今日の青空に話しかけたい歌おくりたい
たくさんのカメラや人に囲まれて東京の桜咲き始めたり
名を呼ばれ声変わりたる十二歳まっすぐに言う卒業のことば
けがの足ひきずり走る第一区 襷が重い箱根駅伝 (1.2)
 大東大の選手にいきなりのアクシデントが…

 丹沢山〜蛭ヶ岳〜檜洞丸 (1.3〜4)
二時間の林道歩きに足痛く蛭ガ岳へはどうにか登る
小屋泊まりのほとんどは若者で静かに話し静かに食べる
横浜や相模湾に沿う街の夜景まぶしく小屋より望む
あかねさす日の出おろがむ夫とわれ 零下六度の正月四日
富士山や南アルプスの峰峰を蛭ガ岳より間近に見たり
足がつり芍薬甘草湯を飲む 薬の世話になる歳なのだ
幾たびも上着を着たり脱いだりと体温調節しながら登る
ブナの木をぬうように敷く木道に二十年前をやっと思い出す
乗るバスの発車時刻を気にしつつ下山の足は素早くはねる
「ぶなの湯」へ行けど休みにそれならと「弘法の湯」へ寄れどここも×
(バツ)
温泉をあきらめビールをたんと飲み ローストビーフもたんまり食べる

歯ごたえは牛肉似だが鹿肉は今度もカレーにするしかなくて (1.6)

イライラとジリジリ混ざり指止まる 我を操るスマホなるもの (1.10)

母編みて二十年経るセーターのほつれをかがり今日もぬくまる (1.11)

三代のよき人の顔うかびくる 向かいの家をクレーンが潰し (1.14)

ひとまわり土俵を大きくしたならば大技小技珍技あるべし (1.15)

引退の横綱稀勢の里は未だ三十二歳の ああ「年寄り」に (1.16)

ぜんそくの息子に贈る清浄機 よどむ空気をかき消してくれ (1.17)

人ごみを撮ってどうする外国人 渋谷スクランブル交差点 (1.19)

百円の値下げに胸張り灯油屋はゆっくりポリタン置いてゆくなり (1.20)

十年の介護終えたる一月の未明を照らす白い満月 (1.22)

ラケットを振るたび心臓高く鳴る やったねなおみ全豪制す (1.26)

優勝をいったい誰が想ったろう 三十四歳関脇玉鷲 (1.27)

命日の墓参りもせずぬくぬくと母をなくして二年がすぎる (1.29)

ここ三年まかずにおりし節分の豆の味を十代の孫は言う (2.3)

一日に一首をめざしノート開け鉛筆握るまでは毎日 (2.5)

貼り付けのスマホ操作に手間取りてボケの始まりと夫に言われる (2.9)

白雪がふわりふわりと松にふるブーツに傘さし五分眺める (2.9)

ひと足も外へと行かずストーブの正面陣取りサスペンス観る (2.11)

わが歌集編まんと夫はきらめきて文学青年へと帰る眼 (2.16)

呑川
(のみがわ)に親子の鴨が泳いでる浄水器などつけてやりたし (2.21)

若木にはふっくらと咲く梅の花ひとつひとつに生気あふれて (2.21)

ケースから手作りの笛取り出して寿司屋の店主吹いてくれたり (2.23)

まぶたはれむくみて赤いわが顔をいつもと同じと夫は言うなり (2.27)

音もなく雨ふる昼に新品の黄楊
(つげ)の櫛もて白髪を梳く (2.28)

合格にケーキや苺を揃えおり笑顔の孫まつ弥生の夕べ (3.1)

駅ビルのパン食べ放題のレストラン昼前なれど満席となる (3.7)

おだやかに暮らせる今日の青空に話しかけたい歌おくりたい (3.12)

 八重山ハイキングコース (3.14)
三十分ぬる湯につかり耐えられず飛び込むあつ湯は三十九度よ
 秋山温泉にて

人並みと云うのだろうか今年から花粉症デビューのわが赤ら顔 (3.16)

たくさんのカメラや人に囲まれて東京の桜咲き始めたり (3.21)

校庭の桜二輪をめでながら夫と行く孫の卒業式 (3.22)

名を呼ばれ声変わりたる十二歳まっすぐに言う卒業のことば (3.22)

線香と花供えられ将門の塚はにぎわうビルの谷間に (3.26)

畳替え箪笥のあとは青々と十年前の若さを保つ (3.28)

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