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No.373 丹沢山〜蛭ヶ岳〜檜洞丸
平成31年(2019年)1月3日〜4日 2日間とも快晴
丹沢主稜の略図

檜洞丸の東側山頂直下(青ヶ岳山荘付近)から撮影
檜洞丸から蛭ヶ岳〜丹沢山を望む
第1日目
前方に雨量観測所が見えてきた!
ようやく堂平登山口へ到着!

立入禁止の立て札が・・・
堂平ブナ林内は立入禁止!

明るいブナ林がステキ!
丹沢山の山頂は近い!

この右側にずらっと白銀の南アルプスが・・・
丹沢山の山頂から富士山を望む

前方に鬼ヶ岩ノ頭(右)とその奥の蛭ヶ岳(左)
蛭ヶ岳へ向かう

この建物の左側に三角点があります。
蛭ヶ岳山荘に到着!

謎の蛭ヶ岳三角点
忘れられた三角点・・・

蛭ヶ岳の山頂から日没時の富士山を眺める
富士山の左肩に日が沈む…


今年の初歩きは丹沢の主脈と主稜
「山」は中高年から若者たちに“返還”されつつあるのかも…

第1日目=小田急線伊勢原駅前-《タクシー約40分・\8,110》-塩水橋〜(塩水林道)〜雨量観測所・堂平登山口〜丹沢山1567m〜不動ノ峰1614m〜棚沢ノ頭〜鬼ヶ岩〜蛭ヶ岳1673m・蛭ヶ岳山荘
第2日目=蛭ヶ岳山荘〜本ダルミ〜ミカゲ沢ノ頭〜臼ヶ岳1460m〜神ノ川乗越〜金山谷乗越〜檜洞丸1601m〜ゴーラ沢出合〜西丹沢ビジターセンター-《バス》-新松田駅…
 【歩行時間: 第1日=6時間30分 第2日=6時間10分】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ(丹沢山)へ


 平成最後の元日は例年のごとく、家族や年始客などとのチャンチキだったけれど、どうやら3日と4日の2日間は夫婦揃ってフリーに過ごせそうだ。で、今年の初歩きに選んだのは(冬山としてそれほどきつくないと思われる)丹沢山地だった。松の内に夫婦で本格的な登山をするのは(多分)初めてのことで、心が少し躍った。お正月だし、どうせなら(歩いたことのない道を含む)メジャーなルートを歩いてみたいと思った。丹沢のメジャーなルートと云ったらその“主脈”か“主稜”の縦走だ。
 丹沢山地の“主脈”と“主稜”は別物であることは知っているけれど、いつもその段になると、え〜とどっちだっけ、となってしまう。そこでウィキペディアなどで再確認してみた。

* 丹沢主脈とは、塔ノ岳から北へ向かい、丹沢山から蛭ヶ岳(ひるがたけ)を経て焼山に至る尾根。
* 丹沢主稜とは、蛭ヶ岳から西へ向かい、臼ヶ岳(うすがたけ)〜檜洞丸(ひのきぼらまる)〜犬越路(いぬごえじ)を経て大室山に至る尾根。(大室山からさらに菰釣山〜三国山へ至る甲相国境尾根も丹沢主稜に含むとするガイドブックもあります。)

 さて、登山の計画段階も楽しいものだ。…丹沢の主脈と主稜の中で私達夫婦が未だ歩いたことがないのは蛭ヶ岳〜檜洞丸の区間で、今回はこれは外せない。つまり蛭ヶ岳山荘に一泊して、丹沢主脈と丹沢主稜のそれぞれの一部を歩くコース計画だ。問題は入山ルートで、単調なバカ尾根(大倉尾根)は使いたくないし、北からの(焼山方面からの)コースも公共交通利用だと(私達にとっては)ちょっときつそうだ。理想はヤビツ峠から表尾根を通って塔ノ岳経由で蛭ヶ岳へ至る展望の良い超メジャーな人気コースなのだが、何といっても私達の気力体力ではこれも(日の短い真冬だし…公共交通を使ってその日の明るいうちに蛭ヶ岳まで歩くのは)全然無理である。考え抜いて選んだのは、丹沢山に最短で登ることのできる東側からの入山ルートだった。
 という訳で、東側の塩水橋(しおみずばし)から入山して、丹沢山〜蛭ヶ岳〜檜洞丸と“主脈(の一部)と主稜(の一部)”を西へ縦走して、西丹沢ビジターセンターへ下山するコースに決定した。…結果論だけれど、それでも(日常の鍛錬不足の)私達夫婦にとってはけっこうきついコース設定だった。とはいえ、今回歩いたのは流石に名コースで、富士山や南アルプスなどの展望が抜群で、ブナ林などの自然も素晴らしく、変化もあって大満足の2日間・平成最後の私達の新年初歩きだった。

 第1日目(1月3日) 塩水橋〜丹沢山〜蛭ヶ岳山荘
●まず、塩水橋から林道歩き(8:10〜9:50):
 小田急線伊勢原駅から丹沢山への東側の入山基地・塩水橋(しおみずばし)までのアプローチについては…例の必殺技を使って(距離と体力をお金で買って)…タクシーを利用した。…タクシー料金の8,110円は、やっぱり、ちょっと懐が痛かったけど…。(^_^;)
 塩水橋からは車止めのゲートをすり抜けて長い(約5Km)の林道歩き。標高877mに位置する雨量観測所の向かい(左側)が丹沢山の登山口(堂平登山口)になっている。この林道歩きの標高差約450mがけっこうなアルバイトだった。

●堂平ブナ林の脇を通過(10:30頃):
 登山口から暫く進むと植林地帯が切れ、待望のブナ原生林だ。そのなだらかな地形や豊潤で湿った土壌がブナの生育に向いているのだろう、すくすくと育った大きなブナたちが美しく立ち並んでいる。この堂平のブナ林は「かながわの美林50選」にも選ばれているようだ。植生保護のためのロープが張ってあり、登山道から林内には入れない。

●天王寺尾根を進む(11:30頃):
 分岐で左からの天王寺尾根に合流。明るい山稜のブナ林を進む。冬枯れの森にモミやアセビの常緑樹が緑のアクセントになっている、森林浴の尾根道だ。→アセビのトンネルや、ツガやモミやミズメも自己主張するブナの原生林です。
 丹沢三ツ峰からの道が右手から合流して少し進むと、懐かしの丹沢山の山頂に到着する。

 * 今回の入山コース(塩水橋〜丹沢山)の植生などに関する詳細については、本サイト(私達の山旅日記)のNo.297「塩水橋から丹沢山」の項を参照してみてください。

●丹沢山の山頂(12:10〜13:00):
 みやま山荘の建つ丹沢山の広い山頂部には数組のハイカーたちが静かに憩っていた。今日は快晴で、富士山や南アルプスや近くの丹沢の山々がよく見えている。この(展望の)ご褒美があるから山はやめられない。 大休止して、おにぎりのお弁当を食べたり、山頂標識や一等三角点の標石を確認したり、もちろん何度も富士山やこれから登る蛭ヶ岳などを眺めたり…まったりと時を過ごす。
 この山頂に来るといつも思うのだが、なんか時間がゆっくりと流れているような、そんな気分になる。

●丹沢主脈の一部を歩く(丹沢山〜蛭ヶ岳):
 丹沢山1567mから不動ノ峰1614m〜棚沢ノ頭〜鬼ヶ岩ノ頭〜中ノ沢乗越〜蛭ヶ岳1673mと、アップダウンしながら徐々に高度を上げて、富士山見放題の明るい主脈を進む。この展望の尾根歩きは本当に気分がよい。尾根道沿いのノイバラには未だ赤い実をつけているものもあり、これがつまりローズヒップだよ、と佐知子に説明する私の声もハイトーンだ。いゃ〜じつにいい気分だ。…しかしやっぱり(アップダウンの連続で)少し疲れたかも…。
 丹沢山塊のほぼ中央に位置する蛭ヶ岳。丹沢の最高峰だから丹沢全山が見渡せる、その蛭ヶ岳は、もう近い。

 ●蛭ヶ岳山荘に到着(15:20):
 山荘のこの日の宿泊客は私達夫婦を含めて19名。1畳に一人でまずまずだった。夕飯のメインは“おでん”だったが、本格的なお節料理がバイキング形式の食べ放題で、これにはびっくりして嬉しかった。 * 蛭ヶ岳山荘については「ユーシンから蛭ヶ岳〜丹沢三峰」の項を参照してみてください。
 今回、蛭ヶ岳山荘の裏手(南側の奥)にうらぶれた三角点の標石を“発見”した。地理院地図(電子国土Web)では蛭ヶ岳山頂部には三角点は無いことになっている(標高点のみの表示)ので、なんか変だなと思って写真に撮っておいた。帰宅してから調べてみたら、国土地理院の成果では「亡失」になっていた。“見捨てられた三角点”あるいは“忘れられた三角点”といったところだろうか。なんか、少し侘しい。
 夕食後、山荘裏手の小広い山頂広場へ出て、陽の沈むのをずっと見ていた。…寒かったけれど、山歩きをやっていて良かったと思う至福の時間だった。(日没は16:45頃)
 夜は缶ビールを飲んだり座間〜厚木方面の宝石箱のような夜景を楽しんだりして過ごした。同宿の面々はその殆どが(行儀のよい)若い人たちで、昭和30年代〜40年代の山小屋を彷彿とする(少し静かすぎるかもしれないけど)情景がそこにあった。今…「山」は中高年から若者たちに“返還”されつつあるのだな、と感じた。
 そんな若者たちの歓談の声を遠くの耳で聞きながら、消灯時間の20時前には、私達は夢の中だった。

 佐知子の歌日記より
 小屋泊まりのほとんどは若者で静かに話し静かに食べる
 あかねさす日の出おろがむ夫とわれ 零下六度の正月四日



第2日目
蛭ヶ岳の山頂から撮影
丹沢山の上に御来光!
三浦半島や房総半島も…

蛭ヶ岳の山頂から撮影
蛭ヶ岳の山頂
朝日を浴びた富士山

見た目ほど怖くないです
白ザレのクサリ場を下る

変化があって楽しい尾根歩き!
神ノ川乗越にて

山頂では数組のハイカーたちが憩っていました
檜洞丸の山頂

前方正面に富士山!
ツツジ新道を快調に下る

白い岩が印象的!
ゴーラ沢出合を通過
 第2日目(1月4日) 蛭ヶ岳山荘〜檜洞丸〜西丹沢VC
●蛭ヶ岳山頂から御来光を仰ぐ(6:45頃):
 5時に起きて、5時30分からの朝食を摂って、それからザックを背負って山荘裏手の山頂広場へ出る。小屋番さんの話によると今朝の気温はマイナス6度とのことで、のほほんとした都会生活を送っている身にとっては、やっぱりかなり寒い。
 しかし、東の空がスゴいことになっている。昨夜からのきれいな“夜景”は未だ残っていて、その地平線の上空が横一線のオレンジ色に染まっている。やがて空が益々明るくなってきて、丹沢山の頭上に陽が昇る。と、その朝日を受けた西側の富士山や南アルプスが否応なくクローズアップされる。…山の朝の壮大なドラマが佳境に入っているのだ。

●いよいよ丹沢主稜へ!:
 朝日を受けた富士山や、その手前の(これから目指す)檜洞丸などに向かって急坂を下り始めたのは7時頃だった。睡眠充分な私達だったけれど、未だ昨日の疲れが残っているようで、身体が重い。…う〜ん、それはたんに太り過ぎが原因かもしれないけれど…。(^_^;)

●まず、クサリ場を急降下(7:20頃):
 蛭ヶ岳の山頂から西へ進む尾根道(主稜コース)は、いきなりの岩っぽい急坂で、本コースで最も注意を要する区間だ。しかし心配していた凍結はそれほどでもなく、アイゼンは全く必要ない。とはいえ油断は禁物。慎重に下って本ダルミ(蛭ヶ岳とミカゲ沢ノ頭との鞍部)に着いてホッと一安心。同じルートを辿る蛭ヶ岳山荘の同宿の面々(2組3名)が、この間に、先頭を歩いていた私達をあっさりと追い越していく。まぁ〜いつものことだけれど…。
 明るい自然林(ブナ林)に囲まれた臼ヶ岳(うすがたけ・1460m)の山頂は保護柵内にあるので立ち入ることはできず、少し手前に作られたベンチで一休み。朝の冷気が気持ちよい。

●そして丹沢主稜をさらに進む:
 臼ヶ岳から先も、神ノ川乗越〜金山谷乗越とアップダウンが続く。所々に左右が切れ落ちた狭い尾根道があったりアルミの梯子があったり、なかなか気は抜けないけれど、変化があって飽きないのが良いと思った。道沿いのアセビが赤茶色の花芽をたわわにつけて春を待っている。…ブナの原生林が続く。…前方の檜洞丸の金字塔が段々と近づいてくる。

 佐知子の歌日記より)
 足がつり芍薬甘草湯を飲む 薬の世話になる歳なのだ
 幾たびも上着を着たり脱いだりと体温調節しながら登る

●檜洞丸の山頂に到着!(11:10):
 檜洞丸の別名は青ヶ岳というそうだが、その別名を冠した青ヶ岳山荘の脇をひと登りすると公園広場のような檜洞丸1601mの山頂だった。18年ぶりの懐かしい山頂の筈だが、私も佐知子も殆ど憶えていない。う〜ん、こんなんだったけっかなぁ〜と云い合いながらここで大休止。持参のメロンパンやアンパンを食す。

 佐知子の歌日記より)
 乗るバスの発車時刻を気にしつつ下山の足は素早くはねる

●檜洞丸から下山開始!(11:40〜):
 ブナ林の林床がバイケイソウの群落で有名な箇所を、これも懐かしの(植生保護の)木道でなだらかに下る。…このツツジ新道も正面に富士山を仰ぐ気持ちのよい道なので、ゆっくりと歩きたいのだが、バスの時間が気になって、私達としては少し気合を入れた早足だ。
 石棚山稜への道を左に分けてからゴーラ沢出合までは急坂だけれど、主だった箇所は木段になっていて、これは18年前よりはかなり歩きやすくなっている筈だと思った。
 道沿いのミズメの樹皮を爪で引っ掻いて匂いを嗅いでみる。サロメチールの香りが鼻腔を刺激して、疲れが少し癒えるような気がする。
 ゴーラ沢出合付近の広い河原は、ここも石英閃緑岩であるらしいが、目に眩しいほどの白い岩が印象的だ。岩がゴロゴロしているからゴーラ沢と云うんだろうな、やっぱり。
 14時10分、車道(県道76号線)へ出て左折して、10分間ほども歩くと西丹沢ビジターセンターに到着。14時40分発の(谷峨駅行きの)バスに余裕で間に合った。
 …で結局、今回の“松の内登山”は疲れたけれど大満足だった。

 (佐知子の歌日記より)
 ブナの木をぬうように敷く木道に二十年前をやっと思い出す

下山後の話:
 じつは、帰路で大問題。西丹沢ビジターセンターからのバスを中川バス停で途中下車して、楽しみにしていた下山後の温泉入浴・中川温泉「ぶなの湯」へ向かったのだが、なんとこの日(1月4日)まで休館とのこと。確かHPでは4日から営業再開、だと書いてあったんだけれどナァ〜と後悔しても後の祭り、すごすごとタクシーを予約して新松田駅まで。このタクシー代金が7,680円で、行きのタクシー代(伊勢原駅〜塩水橋)の8,110円といい、交通費にずいぶんと散財してしまった。まぁお正月だからいいかぁ〜。
 この話にはまだ続きがある。…やっぱり下山後の風呂に入りたいので、小田急線をこれまた(鶴巻温泉駅で)途中下車して「弘法の里湯」へ向かったのだけれど、なななんと、ここも本日は休館とのことで、ここで佐知子と二人で大笑い。…もう少しでキレそうだったけれど…。^_^;
 結局、立ち寄り湯はあきらめて横浜駅ジョイナス地下の「ライオン」で打ち上げということに。この日の風呂はいつもの自宅の狭い風呂だった。

 (佐知子の歌日記より)
 「ぶなの湯」へ行けど休みにそれならと「弘法の湯」へ寄れどここも×
 温泉をあきらめビールをたんと飲み ローストビーフもたんまり食べる


  丹沢山〜蛭ヶ岳〜檜洞丸・写真集 大きな写真でご覧ください。


* 丹沢主稜と丹沢主脈に関しては次のページも参照してみてください。ちょっと古い山行記録ですが…。
 No.50 丹沢主脈縦走: 1997年9月
 No.131 檜洞丸(ひのきぼらまる): 2001年11月
 No.240 加入道山から大室山(大群山): 2008年6月
 No.241 畦ヶ丸(あぜがまる): 2008年6月
 No.250 塔ノ岳(丹沢表尾根縦走): 2008年11月
 No.272 菰釣山(こもつるしやま): 2010年2月
 No.297 塩水橋から丹沢山: 2012年4月
 No.349 ユーシンから蛭ヶ岳〜丹沢三峰: 2016年9月
 No.351 大洞山〜三国山〜鉄砲木ノ頭 (三国山稜): 2016年12月.他

中川温泉「ぶなの湯」についてはNo.345「ミツバ岳から権現山」、鶴巻温泉「弘法の里湯」についてはNo.194-2「夏の鍋割山」の頁を参照してみてください。



朝日を浴びた蛭ヶ岳の山頂から
朝日を浴びた富士山
モルゲンロートの残る…

同角ノ頭〜富士山〜檜洞丸
モルゲンロートに映える…

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