西丹沢 No.345 ミツバ岳(大出山)から権現山 平成28年(2016年)3月29日 |
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→ 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ もう2年前になりますが、このホームページのBBS(掲示板)に常連のHAさんからの投稿がありまして、それで初めて知ったのが西丹沢のミツバ岳でした。山頂部や登山道沿いにたくさんのミツマタ(三叉・三椏)が咲いている、というのです。 HAさんの書き込みやサイト検索の結果などによりますと、ミツバ岳の正しい山名は大出山(おおだやま)というそうですが…。三叉畑のある山→ミツマタバタケ→ミツバタケ→ミツバ岳、と呼ばれるようになってそれが定着してしまった、というのが面白いと思いました。 * 三省堂の「日本山名事典」では“ミツバ岳”となっていて、“大出山”の表記はありません。 このミツバ岳周辺のミツマタはかつて紙幣など高級和紙の原料として植栽されたものであると聞きます。現在ではその需要が無くなって、観賞用に地元の方々が手を入れているとのことですが、それは本当に大変なことであると推測します。神奈川県の案内板によりますと、この山域も「水源の森林づくり・契約地(水源協定林)」になっているようですが、地権者や地元の方々に対し感謝の念を禁じ得ません。 * ミツマタは、中国・ヒマラヤから古くに日本に渡来したというジンチョウゲ科の落葉低木です。枝が3本ずつに分かれることからこの名がつきました。樹皮(繊維)が柔軟で強靱なので、コウゾ・ガンピとともに和紙の三大原料として知られています。 小田急小田原線の新松田駅前から午前7時15分発の西丹沢自然教室行きの富士急湘南バスに乗り約50分、丹沢湖越しに世附(よづく)権現山と思しき山容を見出して喜んでいたら間もなく、浅瀬入口バス停だった。ここで降りたハイカーは私達夫婦を含めて4〜5名程で、平日ということもあるかもしれないけれど、お天気が良い割には少ないと感じた。やっぱりここもマイカーを利用するハイカーが多いのかもしれない。 まずは左手の落合隧道を潜って…丹沢湖の北岸を西へ向かって…枝沢に架かる幾つかの橋を渡ったり洞門を潜ったりしながら、春うららのウオーキング(アプローチ)を楽しむ。歩き始めのころは前方の丹沢湖の上空に富士山の白い頭が見え隠れしていたのだが、それが近くの山影(不老山の右裾かも)に徐々に隠れてしまう。浅瀬入口バス停からの風光明媚なこのアスファルト歩きが約25分、滝壺橋を渡った処がミツバ岳の登山口だった。フサザクラが独特なポーズで紅色に咲いている。キブシがクリーム色の花穂を上品にぶら下げている。ヤブツバキも満開だ。 スギ・ヒノキの植林地帯をジグザグと登る。けっこうな急勾配だ。やがてチラホラと、おぉ、ミツマタだ! こっちにチラホラ、あっちにもチラホラ、微かに芳香を放っている。 「スゴいじゃない! 見ごろよ!」 と佐知子が興奮気味。季節の移ろいが早かった今春だから、花の盛りにはチト遅いかもしれない、と思っていたのが(良い方向に)予想を外した。 そして人工林を抜け出すとコナラ、クヌギ、イヌシデ、アカシデ、イタヤカエデ、ハウチワカエデ、ミズキ、ケヤキなどの明るい雑木林(天然林)で、ミツバ岳の山頂が近くなると、うゎぁ〜!、ミツマタだらけだ! こんなにたくさんのミツマタを見るのは初めてのことだった。自生種であろうが植えたものであろうが、やっぱり美しいものは美しいので感動するしか手はない、と思ってしまう自分に…「キミ、最近性格が変わったねぇ」…と話しかけたい心境だ。 三等三角点834.18m(点名:世附村10)のあるミツバ岳の山頂部では満開のミツマタを愛でたり、丹沢湖を見下ろしたり、白銀の富士山を眺めたり、ウロウロと歩き回って至福のひとときを過ごした。それから北へ向かって、明るい自然林の山稜を進む。なだらかにアップダウンしてから世附権現山への登りになるのだが、この標高差が約230mあり、鍛錬不足の足にはチトきつい。ミツマタが相変わらずあちこちで咲いている。しかし汗びっしょりだ。 山稜の所々に見られるケヤキの大木が印象的だが…。ミツバ岳の登路も尾根筋だったけれど、矢張り大ケヤキが目立っていた。本来は沢筋の樹木とされる(水分が好きな)ケヤキが乾燥しがちな尾根筋に自生するなんて…、何故だろう、と少し考えてみた。推測だが…、多分この山稜は水っけに恵まれているのだろう。土壌との関係もあるのかもしれない。(水分補給のための)霧などが発生しやすい山域なのかもしれない…。 高度が上がってきて地形がゆるやかになってくると、矢張り水っけを好むブナが目立ってきた。と間もなく、広くてなだらかな世附権現山(本権現)の山頂部に到着した。(→丹沢山地に3座あるという権現山を区別するためにそう呼んでいるらしい。) 木製のテーブルやベンチのある広場から右手へ少し進むと二等三角点の標石1018.44m(点名:世附村)や山頂標識があって、ここで早めの昼食にする。ブナやミズナラやカエデ類などが疎に生える明るい空間の、私達好みのステキな山頂だ。北東の方向に位置する檜洞丸方面のかっこいい峰々が、それらの樹林の隙間からはっきりと見て取れる。佐知子手製の梅干のおにぎりがとても美味しい。 下山後の中川温泉での入浴をもう一つの楽しみにしている私達は、しかしそんなにのんびりとはしていられない。昼食が済むとすぐに権現山の山頂を辞し、更に北へ向かって急坂を下る。茅ノ丸(地形図上では無名の849m峰)への登り返しが、標高差にしてほんの40〜50mなのだが、下りに慣れ始めた足には矢張りつらい。しかし目の前にニンジン(立ち寄り湯のこと)がちらついているから、私達はがんばった。 テーブルベンチと「小御嶽山大権現」と刻まれた石碑のある二本杉峠で最後の小休止。そして屏風岩山から畔ヶ丸へ続く主稜を正面に見送って右へ逸れて、よく整備されたスギ・ヒノキ林をジグザグと下る。暫く下るとまたまたびっくり。こちらでもミツマタが大群生している。 このミツマタの花を見下ろしたり振り返って見上げたり観賞して、ハタと気が付いたことがある。それは、花が下向きに咲いているので、上から見下ろすと白色に、下から見上げると黄色に見える、ということだった。なので、山道を歩きながらミツマタの花を愛でるには、上りコースで見上げて観賞するのがベターだと悟ったのだ。それはたわいもないことかも知れないが、そのときの私達にとっては新鮮な“発見”だった。 傾斜がなだらかになってきて…、細川沢の左岸に沿って進み、大室生(おおむろう)神社の鳥居を左に見て右へVターンして、上ノ原の閑散とした集落を通り、細川橋のバス停に下山したのは午後1時の少し前だった。ここから中川温泉「ぶなの湯」まではアスファルトをゆっくり歩いても25分足らずの距離だ。しめしめ、夕方までには帰宅できそうだ。 中川温泉「ぶなの湯」: 神奈川県足柄上郡山北町の日帰り温泉入浴施設。入館したそのときから時間がゆっくりと流れる感じがする。なんとなく落ち着かない入浴施設ってけっこうあるものだが、ここは何故かとてものんびりできるのだ。それはきっと「ぶなの湯」の素晴らしい“個性”だと思う。…どこがどうのといった具体的なことは表現しにくいけれど…、そういう温泉施設ってあるものだ。 泉質は単純アルカリ性、無色透明無味無臭。内湯より外湯のほうが僅かに高温で、どちらとも(多分)一部循環の、それなりにいい湯だ。食堂がないのがちょっと残念だが、飲食については持ち込み自由(アルコールも可)で、もちろんジュースやビールやインスタント食品などの自動販売機もあるので、2階の畳敷き休憩室でまったりすることができる。受付の女性がとても感じのよい人で、(丁度のバス便が無かったので)タクシーの手配など親切にしてもらった。 「町立中川温泉ぶなの湯」のホームページ …夕方の5時頃には帰宅できて、2階に駆け上がってみたら、父が炬燵でお地蔵さまのようにじっとしていた。昨年の夏に母が逝ってからは、90歳の父はとんと静かになってしまった。… 佐知子の歌日記より みつまたの小花かたまりうつむいてミツバ岳の嶺(ね)黄色に照らす 夕餉には間に合うようにと早足で権現山の急坂下る 作る時間ないから買って夕餉とす横浜駅のシュウマイ弁当
「ミツバ岳から権現山」・写真集: 大きな写真でご覧ください。 再び ミツバ岳から権現山 平成29年(2017年)3月24日 山の仲間たち(山歩会)と、ミツマタについての蘊蓄を語り合いながら、和気藹々と、同ルート(浅瀬入口バス停〜滝壺橋登山口〜ミツバ岳〜世附権現山〜二本杉峠〜上ノ原登山口〜中川温泉「ぶなの湯」)を歩いてきました。
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