佐知子の歌日記・第三集
佐知子の歌日記・第三集
平成25年6月〜7月
金魚見る君のまなざし吾に向けよ 新しい服着てるのになあ
明日の晴れ念じて荷物整える 山に登れる喜び詰めて
樹のみどり好む義母連れふるさとへ やさしい雨が降るばかりなり
人ごみの新宿駅では気おくれし やっと座れた渋谷でメールす
散歩後の背中の汗にシャワーして なんだかんだもついでに流す
狭い家けんかの後の避難先 トイレですべていっきに流す
山の名を互いに忘れ二分後に ニヤリと君は「斜里岳・・・」と言う
夏の陽にTシャツの肩すこしあげ「オレ」と云うなり六歳の孫
給食の脱脂粉乳仕方なく飲み込んだ人この指とまれ (H25.6.2)

五年生我とチーズの初対面 歩く前から孫は食むなり (6.2)

遠足の弁当メインはゆで卵 二つも食べた半熟の黄身 (6.2)

「俺に来よ」「我に来てよ」とお互いに 来い来い連鎖の待ちぼうけなり (6.2)

満腹に居眠りしつつページ繰る「短歌入門」行ったり来たり (6.3)

心配の健康診断やり終えてまず一番にケーキを食べる (6.6)

宿根のひまわり咲いてよみがえる一年前の苦いことなど (6.6)

金魚見る君のまなざし吾に向けよ 新しい服着てるのになあ (6.6)

ほしい方コレステロール速達の宅配便でお届けします (6.7)

明日の晴れ念じて荷物整える 山に登れる喜び詰めて (6.7)

 
谷川岳登山 (6.8)
千人の命をのんだ岩峰は鋭く天を刺して聳える 
「楽しい」と云われてうれし山の会 汗の頂あふれる笑顔
頂にあふれる笑顔山の会 汗ふくタオル重たくなりぬ

四十五の子を失った叔母の声 とぎれとぎれに聞く電話口 (6.11)

銀座にて祝いに帯をくれた叔父 病のはてにそっと逝くなり (6.11)

連日の徹夜仕事にストレスか 太めの息子ますます太る (6.11)

六月の雨をもらってあじさいは 背筋伸ばしてにこっと笑う (6.13)

 
義母のふるさとへ (6.13)
樹のみどり好む義母連れふるさとへ やさしい雨が降るばかりなり
好きだった緑の木々を眺めても義母の言の葉聞くことできず
気に入りの緑のもみじ葉見つめても義母まどろみて焦点合わず

広辞苑一版と五版を比べつつ時の流れを思う君なり (6.16)

ひまわりの孫からもらった種三つぶ 双葉本葉とずんずん伸びる (6.16)

人ごみの新宿駅では気おくれし やっと座れた渋谷でメールす (6.16)

散歩後の背中の汗にシャワーして なんだかんだもついでに流す (6.16)

毎日の俳句つくるが生きがいと 百歳老女テレビで笑う (6.19)

水槽の金属音のろ過装置 テレビの音量かき消し居座る (6.19)

つづく雨主婦の我には困りもの 歌詠む我には真珠のしずく (6.20)

 
題 「文房具」
「文房具」思いつくのは紙とペン はてパソコンのカテゴリーはなに? (6.22)
筆箱はピンクのバラのセルロイドだったと思う半世紀前 (6.22)
八桁の家計簿用の電卓は画面の左数字並ばず (6.22)
片面の印刷広告見当たらず ものさしで切るメモ用紙なし (6.22)

 
題 「トイレ、洗面所」
カーテンの裏に隠したわたしの秘密 歯の洗浄剤ポリデントなり (6.24)
狭い家けんかの後の避難先 トイレですべていっきに流す (6.24)

 
題 「爪」
マニキュアをするには少しはばかられ 年中オープンはだかの爪なり (6.24)

山の名を互いに忘れ二分後に ニヤリと君は「斜里岳・・・」と言う (6.25)
 H26年度NHK全国短歌大会の入選作です。 後日、本頁に追加しました。

 題「プール」
小学校中学校にもプールなく 四十歳まで金づちの我 (6.26)
東京湾プールだったら人口の一割くらい水泳選手 (6.26)

生梅の甘いかおりにつつまれて 窓開けるのを少しためらう (6.27)

九年目の梅干し作りかさ増して 二十四キロを漬け終えるなり (6.28)

新聞社の額絵配布はゴッホの絵 オルセーに見し群青の空 (6.30)

えさのびんふたを回すとその音で金魚近づきねだる目をする (6.30)

百合の香を鼻にいっぱい吸い寄せて 睡魔呑みこむ午後の濃いお茶 (7.1)

エアコンのフィルター洗い夏よ来い 山の冷気を思い出しつつ (7.1)

我が短歌ホームページにデビューする とまどう顔してウフフと笑う (7.2)

夏の陽にTシャツの肩すこしあげ「オレ」と云うなり六歳の孫 (7.2)

入れたはずハンカチどこへいったやら 最近多い不明のグッズ (7.5)

一人きり菓子パンかじる昼食を 皿は出さずにのびのび食べる (7.6)

 近所の商店街で見かけました
ロケ中の沢口靖子ほほこけて 女優というはきつい役らし (7.6)

 八街(千葉県)の親戚が採りたてのトウモロコシをもってきてくれました
生のままトウモロコシを食べてみる 作った人のやさしい味す (7.7)

夏が来て冷蔵庫のドア開けすぎか なかなか出来ぬ氷を待つなり (7.9)

 横尾山とカンマンボロンの日帰りハイク (7.12)
春蝉の声の後押し山のぼり ゆっくり我を鎮めてくれる
精密な網の目えがき紫のあやめ立つなり乾いた山に
みどりの葉みどりの風に抱かれて 背中の汗はどこかへ消える
迷いつつやっと見つけた瑞牆のカンマンボロンご利益あるぞ
メガネかけ虫メガネ手に葉っぱ見る君はそう森林インストラクター

一人住むとなりの家に夜のあかり つけば安心帰ってきたね (7.14)

しゃれ男しゃれた犬つれつまづけり 見ないふりなどできずに見たわ (7.15)

しらが染め五歳若いとうなずいて 今日はピンクのTシャツを着る (7.18)

この夏は赤い鼻緒の下駄はいて 花火でなくてゴミ出しに行く (7.18)

わが腹の主たる住人スパゲッティー 今夜の体重計るのやめる (7.21)

病院の待合室にひとあふれ 呼ばれしわが名何やらいとし (7.22)

大雨でモザイクかかるBSテレビ 見ていた映画の犯人だあれ (7.23)

流される時間の中でもがいてる 我の浮輪をつかまえたくて (7.24)

うなずいてあとは居眠り車椅子 母は世の中見るをやめたか (7.26)

荒天に予定の登山あきらめて 天気図にらみきゅうりを漬ける (7.26)

虫かごとあみを手に持ち父子連れ 忘れないでね公園の夏 (7.28)

「目玉焼きさえあればよし」と云った君 マンネリ弁当ほんとにいいの (7.29)

 題「晴れ」
いつかくる晴れ晴れとした表情で君と話せるその日がいつか (7.29)
晴れと雨我の心のスイッチはせわしくゆれてときどき曇り (7.29)

 題「おどろく」
おどろくなんてもんじゃないこの我が短歌なるものにのめりこんでいる (7.29)
背泳ぎで参加するなりマスターズ 九十九歳の老女の負けん気 (7.29)
テレビをみて

 題「食べる」

長年の働き者よ胃袋さん 何でも入る不思議な小部屋 (7.29)
シェルパらの作りし食事受け付けず 高山病のエベレスト街道 (7.29)

 題「東京」
六代目だと思うなり東京の隅っこにいる早口の我は (7.29)

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