No.15-2 再び 谷川岳1977m 矢張り魔の山か・・・!? |
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INDEX @ 中ゴー尾根を下る: 1995年5月 A 巌剛新道を下る: 2012年7月 B 天神尾根を往復: 2013年6月 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ |
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A 巌剛新道を下る * 歩行時間についてはバテバテのタイムです、ので… 谷川岳は“近くてよい山”だ。東京駅06:32発の上越新幹線「たにがわ401号」を利用すれば、脚力の弱い中高年でも日帰り登山は充分に可能だと思えた。で、谷川岳に是非登ってみたい、というT君の要望に喜んで応えることにした。ただ…、私が選んだコース取り(下山路に巌剛新道)に若干の無理があり、少しメタボで高血圧で膝痛のT君を辛い目にあわせてしまったのが、重々反省すべき点だった。 谷川岳ロープウェイの天神平駅からさらにリフトで天神峠(天神山1502m)まで、金に糸目をつけずに文明の利器を利用する。じつは、天神平からでも天神峠からでも、その体力的な差はそれほどでもないのだけれど…。 歩き始めたのは午前9時30分頃。ガスの切れ間から近くの谷川連峰の山々が見え隠れしている。青色の装飾花が美しいエゾアジサイや黄色い小花のハナニガナなどを愛でたりして、いったん少し下ってから天神尾根を進む。 南面を振り返ると、湯檜曽谷の右手に台形で聳える吾妻耶山と、左手奥のこれも際立った台形(テーブルマウンテン)の上州三峰山の山容が目立ち、その少し奥の子持山の金字塔も意外な迫力だ。それらの近景の山々の頭上に、薄ぼんやりと影だけになって見えているのが榛名山に違いない。とすると、左奥のコニーデ型の美しい山影は赤城山だ! 一つの山名が分かると連鎖的に次から次へと同定できる、そんな瞬間が「山」の醍醐味のひとつかもしれない。行く手には大きな耳二ツ(谷川岳)が待ちかまえ、左前方には懐かしの中ゴー尾根(→前項「谷川岳(1)」)、そして右前方には下山予定路の西黒尾根がけっこうな角度で裾を伸ばしている。 ミヤマキンポウゲやカラマツソウなどの咲く肩の小屋前の広場で昼食。例によってT君はギタギタのトンカツ駅弁で、私はコンビニのおにぎり2個。デザートは大きな桃を半分ずつだ。かなり大勢のハイカーたちが憩っていたけれど、そのほとんどは女性だった。つまり山オバサンと山ガールだ。山オバサンはどの山にも出現するが、この谷川岳を歩くファッショナブルな山ガールは(多分)高尾山クラスの卒業生だ。もうすでに、中級の山にまで山ガールが押し寄せてきているのだ。山オジサンとしては嬉しいかぎりだけれど…、う〜ん、このトレンドがいつまで続くものやら…、とネガティブで心配性な私です。 広いクマザサの原を登り切るとトマの耳1963mの頂だ。ここで記念の証拠写真を撮ってから、少し下って登り返したオキの耳1977mでも中休止。曇り空で360度の展望は限られていたが、一ノ倉沢やマチガ沢などの恐怖の大絶景を見下ろしたりして悦に入った。可憐に咲くヨツバシオガマやコメツツジなどの高山植物も観察したり、ここまでは確かに順調だった。 踵を返し、トマの耳から西黒尾根を下り始めたころから徐々にT君の様子がおかしくなってきた。下山路に標高差約1200mのマチガ沢経由(西黒尾根〜巌剛新道)を選んだのは、特に膝の悪いT君にとっては、あとで考えると無謀なことだった。滑りやすい岩場が続く、いわゆる悪路なのだ。 ガレ沢の分岐の辺りから、T君はヨレヨレになってきた。超スローで、しかも体をふらつかせている。総合的に判断しても、シャリバテや水バテではないようだ。二人用のツエルトも、一晩を過ごせるほどの水分と非常食も、ザックには入っているが…。 声を掛け合って、休み休み、慎重に下った。前方のT君の挙動に気を取られていた私が、なんでもない平らな箇所で、苔生した岩に足を滑らせて思いっきりコケた。T君が心配そうな表情で振り返る。じつは脛をちょっと怪我したのだが、「ぜんぜん大丈夫!」 と答える。それにしても、ヨレヨレのT君がとうとう最後まで転ばなかったのが、不思議といえばものすごく不思議だ。若いころに鍛えた“山の感”が彼を支えていたのだろうか。 T君がネットで買い求めたという新兵器(超安価な高度計のこと)を駆使して、現在位置の標高を休憩の度にチェックするのだが、なかなかその高度が下がってこない。左を振り返ると、マチガ沢の大絶景が頭上を覆う。枝沢の冷たい沢水で顔を洗うと生き返った気持ちになる。しかしT君はなかなか生き返らない。ナメクジのように私たちは進む。道端にはクガイソウがきれいに咲いている。 樹林帯に入ってからも、もうずいぶんと下っている。沢筋を歩き始めて道も緩やかになってきたのに、T君の高度計は相変わらず無慈悲だ。前方の木々の隙間から白毛門や笠ヶ岳が大きく見えている。その山腹に夕日が当たっているが、その明るい部分が徐々に上昇して、とうとう山頂部も日が陰ってしまった。いよいよビバークか、とあきらめかけていたそのときに、ひょいと舗装道(マチガ沢出合)へ出た。午後6時35分。日没ぎりぎりセーフ、だった。T君の疲れ方は尋常ではなかったが、彼の高度計も、この日は相当に調子が悪かったようだ。 ほっとして、電車の時刻表をよく調べた上で、暗くなり始めた土合口でタクシーを呼んで、上毛高原駅まで行ってもらった。なんとか日付変更線は超えないで帰宅できそうだ。予定していた湯檜曽温泉での入浴がスポイルされてしまったのが、ちょっと残念だったが…。 帰路、ガラガラの上越新幹線の車内で飲んだ缶ビールは五臓六腑に沁みこんだ。このときT君から話を聞いて納得したのだが、前夜は一睡もできず、体調絶不調だったらしい。まるで遠足前夜の子供のようだね、と笑った。ハックルベリーフレンドのT君にとっても、やはり谷川岳は「魔の山」だったようだ。 谷川岳・花の写真集へ
B 天神尾根を往復 山の仲間たち(山歩会)と新緑の谷川岳に行ってきました。中高年の軟弱集団ですから、もちろんロープウェイを利用しての天神尾根往復です。ガスったり少し晴れたりの微妙な空模様でしたが、幸運なことにオキノ耳の山頂ではよく晴れて、周囲の山々や東面直下の一ノ倉沢やマチガ沢の恐怖の絶景も見ることができました。 谷川岳は案外と花の多い処で、その季節の到来ということもあり、あちこちにたくさん咲いていたのが嬉しかったです。ロープウェイの窓から山腹を見下ろして、多分それかな、と思った花はタニウツギやミズキやホウノキでした。登山道沿い(天神尾根)の足元に目立って咲いていた花はショウジョウバカマ、シラネアオイ、イワウチワ、イワカガミ、ミツバオウレン(ミツバノバイカオウレン?)、ナエバキスミレなどで、木の花ではオオカメノキ、タムシバ(いい匂い)、ムラサキヤシオ、シャクナゲなどでした。そして、山頂周辺にはハクサンイチゲやミネザクラがきれいに咲いていました。 肩の小屋下には雪が未だ大分残っていましたが、アイゼンは必要ありません。 「キャッ!キャー!」 とはしゃぎながら、スキーの斜滑降や階段登行の要領で、ちょっと滑ったりもしましたが、楽しく愉快に往復しました。 復路でちょっとアクシデント。なんと、先頭を歩いていた私が(ぽろっと崩れた足場のせいで)コケて転倒。手のひらを岩角に突いたため負傷してしまいました。血が結構出たのでみんなびっくり。私もびっくり。小休止して傷の手当てをしました。幸い浅い傷で大したことはありませんでしたが、またまた“反面教師”をやってしまい、今回も面目丸つぶれです。山の午後2時過ぎは魔の時間ですね、ほんとうに。 トホホ…。 下山後は予約済みの湯檜曽温泉「林屋旅館」に立ち寄りました。入浴後の、予約のタクシーが到着するまでの時間、仲間たちと軽口を云いながら、家庭的な雰囲気の中で飲んだ生ビールは、もう最高! 帰路の上毛高原駅からの上越新幹線の車中でも、和気あいあい、大変盛り上がりました。 今こうして机上でキーボードを叩いていると、手のひらのバンドエイドが時々ひきつって、その度に、谷川岳での楽しいひとコマが思い出されます。 ^_^; 佐知子の歌日記より 千人の命をのんだ岩峰は 鋭く天を刺して聳える 「楽しい」と云われてうれし山の会 汗の頂あふれる笑顔 湯檜曽温泉「林屋旅館」: 谷川岳ロープウェイの土合口駅前からはバスで7〜8分程の距離。バスの運転手さんは宿の真ん前に停めてくれた。与謝野晶子・鉄幹夫妻も投宿したという、こじんまりとした老舗の宿。日帰り入浴も一人800円で受け付けてくれる。露天風呂はないけれど、時代を感じさせるタイル貼りの内湯には源泉掛け流しの湯がこんこんとあふれ出している。泉質はアルカリ性単純泉、無色透明無味無臭。やや広い浴室とやや狭い浴室があり、今回の山行は女性が多かったこともあり、男性は狭いほうの浴室を利用したが、それでも5〜6人はゆったりと入れるほどの広さだった。 「林屋旅館」のHP |