「私達の山旅日記」ホームへ

No.227 乗鞍岳3026m 散策
平成19年8月28日〜29日 雨のち曇り


乗鞍岳 略図山頂部と山腹を別々に楽しむ

第1日=新宿-《高速バス4時間35分》-平湯-《バス1時間》-畳平〜剣ヶ峰〜畳平 第2日=畳平(大黒岳に登ってご来光)-《バス30分》-三本滝〜夜泣峠〜一の瀬園地〜観光センター前〜金山登山口〜見晴峠〜白骨温泉(泊)… 【歩行時間: 第1日=畳平から剣ヶ峰往復3時間 第2日=大黒岳往復30分、乗鞍高原散策3時間、乗鞍高原から白骨温泉2時間30分】
 → 国土地理院・地図閲覧サービスの該当ページへ


  超有名な信州の白骨温泉にいつか泊まってみたかった。 そしてその白骨温泉は乗鞍岳登山の下山地、と前々から決めていた。 ここ数年は毎年のように計画するのだが、何故か縁がなかった。
  日にちを決めても宿の予約が取れなかったり、今年こそはと思って気合を入れていると例の白骨温泉入浴剤混入事件(2004年7月)が明るみに出て、「もう少し様子を見てみるか…」ということになったり…。 昨年10月のシーズン末期には畳平の小屋や白骨温泉にもようやく予約が取れたのだが、その当日になんと大雪が降り、乗鞍岳行きの路線バスが運休となり、松本駅からすごすごと引き返した“悲しい思い出”もある。
  今回も2ヶ月前から予約して宿を確保した。 そしてようやく“その日”を迎えることができたのだが…、何気に、お天気がパッとしない。 どうも私達夫婦は乗鞍岳とは相性が良くないらしい。
咲いていた花: ウサギギク、シラネニンジン、ミヤマキンバイ、ヨツバシオガマ、ミヤマアキノキリンソウ、コバイケイソウ、タデ類、など
畳平のお花畑
祠にはシャッターが・・・。手前に三角点。
剣ヶ峰の頂上(飛騨側)
下方に見えるのは東大宇宙線観測所
ガスが切れてきた!

バックは魔王岳
乗鞍白雲荘

  第1日目(8月28日・雨のち曇り) 新宿から午前7時発の高速バスに乗り、平湯温泉でガラガラの路線バスに乗り換えて、乗鞍岳の山頂部(畳平・標高約2700m)に着いたのは午後1時近かった。 霧の中の大駐車場も休憩所の広い待合室も閑散としている。 風と雨の最悪のコンディションだが、お天気は徐々に快方に向かっているとの予報を信じて、雨具に身を固めて、方角を確認しながら歩き始める。 佐知子の赤いカッパが風にたなびいている。
  ウサギギクやタデ類などがきれいに咲いているお花畑を突っ切り、自動車も通ることのできる整備された道へ出て尚も南進する。 間もなく霧の中から肩ノ小屋が現れた。 この少し先からが乗鞍岳22峰のうちの最高峰・剣ヶ峰への上りだ。 ガレた石ころなどは火山性のもので、複雑に入り組んだ地形といい、この山が(成層)火山であることがよく分かる。 植生は流石に高山型だ。 所々にはハイマツやコメススキが緑のアクセントをつけ、足元にはイワギキョウやイワツメクサがひっそりと咲いている。
  剣ヶ峰の頂上には背中合わせに二つの祠があった。 飛騨側の祠(本宮神社奥宮)のほうが信州側のそれ(乗鞍神社)よりも大分大きい。 手を合わせようとして正面を見たら、なんと“シャッター”が下りている。 仕方がないので裏側(信州側)の小さな祠に丁寧に参拝したけれど、ご利益は“シャッター”には関係なかったかもしれない。 周囲は一面の濃霧で、しかも冷たい強風が吹いていた。
  頂上の1等三角点の周りをウロウロしたりして、霧が晴れるのを辛抱強く待った。 近くに大きく聳えるという御嶽山などを展望したかったのだ。 しかしとうとう視界が開けず、あきらめて来た道を下り始めた。 と、そのとき、一瞬霧が切れて眼下に肩ノ小屋と東大宇宙線観測所の建物が見え、その頭上には白いドーム(コロナ観測所)を頂いた摩利支天岳がのっそりと聳えていた。 近くの峰々も時折姿を現し始めたので、ようやく山頂部の全体像が理解できた。 それまで沈痛なムードの私達の表情に笑みが浮かんだ。 雨も止んできたようだ。
  “標高3000mの稜線散歩”を終えて畳平に戻り、それから鶴ヶ池を中心にぐるっと辺りを一周してみた。 あちこちのザレ場にはコマクサやトウヤクリンドウなどが点々と、しかも無造作に咲いていたが、これはなんとゴージャスなことだったろう。 今日の宿、白雲荘に戻り着いたのは午後4時10分頃だった。

* 乗鞍白雲荘: 乗鞍岳の広大な山頂部の北側に位置する畳平(たたみだいら)には3軒の宿泊施設が建っているが、私達が予約を取ったのはそのうちのひとつ、魔王岳麓の白雲荘だった。 2階の個室の窓からは鶴ヶ池が眼前に広がり、富士見岳や摩利支天岳などがよく見えていた。 こんなに標高の高い(2700m)処まで有料バス道路(乗鞍スカイライン)が開通したのは今から50年以上も昔(昭和28年)というから、これは驚きだ。 もう都会並みになっていると思っていたのだが、予約の段階で 「旅館ではありませんよ、山小屋ですよ!」 と念を押された。 そしてそれは全くその通りだった。 アスファルトの自動車道路が近くを走るロケーションだが、食材などの乏しさはまさに「山小屋」だった。 勿論、私達には何の不服はない。 この日は口数の少ないご主人が私達夫婦を含めて5〜6名の宿泊客を一人で仕切っていた。 私がお酒を注文したら 「ここは標高が高いから(高山病の影響で)少しの酒でもよく酔えるよ」 とニコッと笑って冗談を言ってくれたのが印象に残っている。
  ガイドブックには“風呂付き”とあったが、現在は風呂は立てていないとのこと。 水は、ここでは貴重品のようだった。 1泊2食付きで一人8,500円は、安いとも云えるし高いとも云える金額だ。

大黒岳にて
朝の大黒岳にて
ご来光を仰ぐ
同じく、朝の大黒岳にて
ちょっと寒いです

乗鞍高原散策
シラカバとカラマツの林へ入る
白骨温泉へ向かう
  第2日目(8月29日・曇り) 10時間は寝ただろうか。 目が覚めて雨戸を開けたら、もう空は充分に明るかった。 慌てて、まだ死んだように眠っている佐知子を起こして、急ぎ足で表へ出てみた。 近くの小屋に泊まっていたハイカーたちの数人も出ていて、東側の空を眺めている。
  20分ほどで大黒岳2772mの細長い山頂部へ着いた。 東の地平線上に湧いている雲のために日の出が遅れたのは、朝寝坊の私達にとってはラッキーだった。 放射状にオレンジ色の光を放ちながら、太陽は正面からゆっくりと昇ってきた。 左手の雲海から頭を出しているのは槍ヶ岳と穂高岳だ。 右手には剣ヶ峰などの乗鞍岳山頂部の峰々が至近距離で見えている。 山の朝は、とくに高い山の朝は素晴らしい。 辺りにはコマクサ、トウヤクリンドウ、ミヤマアキノキリンソウ、イワギキョウ、イワツメクサなどの花が朝日を受けてきらめいていた。

  6時半からの小屋の朝食を済ませてから、乗鞍高原へ向かうシャトルバスに乗った。 何時の間にか晴れ間は雲で覆われていたが、何とか今日一日は持ちそうな気配だ。 バスの乗客は私達の二人だけで、何処も彼処もひっそりとしている。
  乗鞍高原上部の三本滝バス停で降り、午前中は高原散策を楽しんだ。 乗鞍自然園のオオシラビソ原生林やシラカバやカラマツの林を観察したり、夜泣峠あたりからのミズナラやウリハダカエデの林にうっとりしたり、ちょっと公園っぽい一の瀬園地を逍遥してみたりした。 ぐるっと乗鞍高原をほぼ一周して、観光センター前の食堂で早めの昼食にした。
  午後は観光センターの北西側にある旅館「福島屋」の脇(金山登山口)から登山道へ入り、見晴峠(標高1885m)を経由して白骨温泉へ下った。 登りの標高差約450m、下りの標高差約500mの峠越えのトレイルだったが、これがなかなか乙な山路だった。 山腹はカラマツの人工林だが、稜線近くになるとシラカバ、ダケカンバ、(オオ?)シラビソ、コメツガ、トウヒ、ウラジロモミ、ミズナラ、シナノキ、ウリハダカエデ、ガマズミなどの天然林の中を歩く。 登山道沿いには朱赤色の花をつけたフシグロセンノウやヤマホタルブクロなどが咲いていた。 休憩時などのヤブッ蚊が少し煩かったが、静かで心休まる山道だった。 気を遣うことのない平凡な森は、心のセラピーにはもってこいだ。
  正味2時間ほどの“峠越え”でドスンと舗装道路へ出る。 前方には霞沢岳が形良く聳え、その左下の沢に見え隠れしている渋い建物郡が白骨温泉の辺りに違いない。 トチノキ、サワグルミ、ヤマハンノキなどが生い茂る湯川に沿ってだらだらと下り、閑静な温泉街に入る。 坂を登った最奥の宿が予約のやっと取れた当地の老舗「湯元斎藤旅館」だ。 午後3時少し前。 今日も“時間管理”はバッチリだった。


* 十石山経由の下山コースについて: 白骨温泉へ下るコースとして、当初、私達は畳平から桔梗ヶ原〜硫黄岳2554m〜十石山2525m〜白骨温泉というルートを考えていた。 しかし最新の登山地図(昭文社)を図書館で借りて見たときにびっくりした。 桔梗ヶ原から十石山までの山道を示す赤破線が消えてしまっていたのだ。 おまけにそこには小さな字で“ガレがひどく通行危険”と書いてある。
  これについては相棒(妻)の佐知子と随分と激論を交わした。 しかし、いつものように彼女の強烈な主張に従って本コース取りとなった次第である。 “冒険”は安全の範囲内でなければするべきではない、というのが私達の「山」に対するスタンスでもある…。
  そのおかげで、乗鞍高原散策という時間をもつことができたし、“見晴峠越え”という白骨温泉へ下る静かでさわやかなルートも歩くことができた。 「・・・変化のある風景と情趣とは、この山においては無尽である。・・・」 と深田久弥氏が“百名山”の該当項のなかで述べられていたのが、全くその通りだな、と実感できたのだ。
  あぁ、しかし…。 子供の頃、トムソーヤの冒険に感動して始まった私の「山」の、その“冒険性”がつとに磨耗していると感ずる昨今である。
* 白骨温泉「湯元斎藤旅館」の番頭さんの話によると、白骨温泉と十石山を結ぶコース(十石東尾根コース)については、地元有志の人達が整備を行っているとのことで、通行に支障は無いようだ。

白骨温泉「湯元齋藤旅館」 白骨温泉「湯元齋藤旅館」: 湯川(梓川の支流)に流れ込む湯沢沿いの山懐に点々と(10軒ほどの)湯宿があるのが白骨温泉だ。 泉質は含硫黄-カルシウム・マグネシウム・ナトリウム-炭酸水素塩温泉(硫化水素型:中性低膨張性高温泉)で、湧出時には透明な湯が時間の経過によって白濁するとのことだ。 胃腸病には飲用すると効果があるらしい。 硫黄の臭いのする湯を口に含むと微かに甘酸っぱい味がした。 外湯も内湯も浴槽はモルタル(?)で、床は石タイル貼り、壁は木材だった。
  いくつかのランク付けされた宿泊棟があるが、私達の部屋は最もエコノミーな「牧水荘」。 風呂場まで三つのエレベーターを乗り継いでいく、というのはいくらなんでも少し遠すぎた。 それでも1泊2食付一人19,050円と“高級”だ。 サービスも料理も(加熱)源泉掛け流しの湯も、確かに素晴らしいものだったが…。
  宿の翌朝はどしゃぶりの雨…。 付近を散歩する予定を取り止めて、バスと電車を乗り継いで、私達はひたすら自宅のある東京へ向かった。
  白骨温泉の公式HP



乗鞍岳の山頂部と山腹
バックは剣ヶ峰方向
朝の大黒岳にて
乗鞍高原(乗鞍自然園)のオオシラビソ原生林
山腹のオオシラビソ原生林
まだ咲いていた! 畳平の花たち 第2日目(8/29)に撮影
この近くにはイワギキョウも咲いていました
ミヤマアキノキリンソウと
ヨツバシオガマ
ちょっと珍しいかも
イワツメクサと競合する
コマクサ
バックは魔王岳と鶴ヶ池
ミヤマゼンコ、他

このページのトップへ↑
No.226「富士山」へNo.228「箱根外輪山周廻歩道」へ



ホームへ
ホームへ

ゆっくりと歩きましょう!