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ササのラッセル…
山王帽子山の山頂
前方に太郎山と…
小太郎山へ向かう
小太郎山の山頂
太郎山の山頂
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ミヤコザサとコメツガと展望の山
《マイカー利用》 三毳山(前々日)…刈込湖・切込湖(前日)…光徳温泉-《車10分》-登山口(山王峠の近く・標高約1725m)〜山王帽子山2077m〜ハガタテの頭〜小太郎山2328m〜太郎山2367m[往復] 【歩行時間:
5時間50分】
→ → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ
光徳温泉「日光アストリアホテル」の7時30分からの朝食を済ませてから、マイカーで山王林道を北上する。昨日の刈込湖・切込湖ハイクの際に下見をしておいたので、10分足らずの運転で、太郎山登山口はすぐに見つかった。下見をしていなかったなら、多分、車ではちょっとわかりづらい登山口なので、見過ごしてしまったかもしれない。近くの駐車スペースに車をとめて、歩き始めたのは8時10分頃。今日も昨日同様、はっきりとしない空模様だ。
まずカラマツ林を登る。カラマツが黄葉するのは秋の終わりごろなので、標高1700メートルを越えているここでも未だ色付いていない。けっこうきつい斜面だ。ミヤコザサが一面に繁茂して、狭い登山道に覆いかぶさっている。まだ朝露がたっぷりとついているのでズボンはびしょびしょだ。カッパを穿こうかどうしようかと迷ったけれど、妻の佐知子と相談して、面倒臭いしうっとおしいので、そのまま歩いた。思ったほど寒くはなく日差しも出てきたので、そのうち乾くだろう、と思っていた。赤い実をつけたナナカマドやドウダンツツジ属の葉っぱが、明かりを点したように真っ赤に色付いている。今日も何処かでシカが鳴いている。ササの“ラッセル”が続く。
やがて、黄・茶色の葉を落とし始めているダケカンバや常緑針葉樹のコメツガが主役の自然林へ入る。森の脇役のミネカエデやオオカメノキの赤茶色の落葉が豪華な絨毯のようだ。
登山道沿いに明るく開けたササ原が何箇所かあり、立ち枯れて骸骨のようになった針葉樹(コメツガなど)が、まるで大台ケ原のミニュチュア版のような景観を見せていた。これも矢張り“シカの食害”だろうか。それとも単にコメツガがミヤコザサに負けただけなのだろうか…。
歩き始めてから丁度1時間ほどで山王帽子山(さんのうぼうしやま)の山頂に着いた。樹林に囲まれていて見晴らしはあまりよくないが、それでも北側の樹林の隙間から南会津の山並が見えている。心休まる小さくて静かな空間だ。
山王帽子山からは前方に太郎山を眺めながら急坂を下るが、途中なだらかな箇所があり、そのササ原にも立ち枯れたコメツガなどがたくさんあった。山腹の紅葉のまだら模様が、なんとも云えず美しい。鞍部から少し登り返すと「ハガタテの頭」で、ここは光徳からの登山道との分岐でもあるのだが、そのハガタテルートは沢筋の崩壊が激しいらしく、現在は通行禁止となっている。アズマシャクナゲが目立ってきた。
深くて急なコメツガ・ダケカンバ林を抜けると、アルペン的な岩場になってきて、ついに360度の視界が開けた。ここが小太郎山の山頂(太郎山の西峰)で、近くの日光連山は勿論のこと、尾瀬や会津の山々などの絶好の「展望台」になっている。しかし、ウ〜ン、ちょっと残念。近くの男体山や女峰山などの山頂部は雲に覆われているし、遠望は薄霧の中だ。それでもときたま雲が流れて、中禅寺湖の一部や戦場ヶ原の辺りが鮮明に見えてくる。山腹の紅葉の絵模様といい、それだけでも充分に素晴らしい景色だ。この山頂付近は、今は何にも咲いていないが、夏には高山植物の咲き乱れる処でもあるらしい。
お昼も近いので、この小太郎の山頂で、とりあえず、雲の切れ目からの眺望を期待しつつ、サーモスの熱いコーヒーを飲みながら、コンビニで買ってきたメロンパンを齧る。ササの朝露が沁みこんでしまって、ズボンや靴の中はグチョグチョになっている。佐知子はそれほどでもなかったが、古くてくたびれた靴を履いている私は重症だ。山で横着はよくない。やっぱり面倒くさがらずにカッパのズボンかスパッツを履くべきだったと反省した。この日は着替えの靴下を2足ザックに入れておいたのだが、それが本当に助かった。
背が低くなってきた黒木(オオシラビソのようでもあるしトウヒのようでもあるし…)を観察しながら、岩混じりの明るい尾根道を登り返す。右手の眼下には旧火口の“お花畑”が見え隠れしている。小太郎山のピークからは30分ほどで、三等三角点の標石と2つの石祠のある太郎山の山頂へ着いた。4人の品のよい中高年男性グループが先着していて、写真を撮り合ったりした。話を聞くと、新薙(しんなぎ)ルートからの往復登山であるらしい。この太郎山登山で出遭った唯一のハイカーたちだった。振り返って眺めると、山王帽子山の右手に昨日歩いた刈込湖・切込湖の辺りがよく見えている。
マイカー登山なので、下山は来た道を戻ることになる。山頂から歩き始めたとき思った。素晴らしいコースならば往復登山は全然苦にならないものだな、と。なんとなれば、素晴らしい植生と展望をダブル(往復)で楽しむことができるのだから…。実際、ミヤコザサの露はもう蒸発していて歩きやすくなっていたこともあるけれど、紅葉と景色の美しさについて見たり語り合ったりしながら、とても楽しく下山できた。振り出しの登山口へ戻り着いたのは午後4時10分頃だった。
太郎山は男体山と女峰山の長男だという。つまり日光連山の中央に位置する、静かでおっとりとした愛すべき山なのである。
光徳温泉「日光アストリアホテル」: 前項「切込湖・刈込湖」 を参照してください。
小太郎山から雲の男体山
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山道沿いの紅葉
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