*** 鎌倉アルプスPart2 *** No.252 港南台から 鎌倉アルプス とっておきの裏コース! |
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行程: JR根岸線港南台駅〜県立横浜栄高校脇〜瀬上市民の森(池の下広場〜瀬上池〜池の上休憩所〜馬頭の丘休憩所〜見晴し台休憩所〜梅沢山休憩所)〜金沢市民の森(エノキの板根〜大丸山157m)〜横浜自然観察の森(カシの森特別保護区〜関谷奥見晴台〜コナラの道〜市境広場)〜天園(六国峠)〜大平山159m〜天園〜天台山141m〜貝吹地蔵〜瑞泉寺〜鎌倉宮〜鶴岡八幡宮〜JR横須賀線鎌倉駅 【歩行時間: 4時間20分】 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ INDEX 天園ハイキングコース@ H20年(2008年)12月08日 天園ハイキングコースA R05年(2023年)01月13日 港南台コース@ H20年(2008年)12月28日 港南台コースA H21年(2009年)01月18日 港南台コースB R01年(2019年)10月17日 鎌倉アルプス・港南台コース@ H20/12/28 横浜駅から港南台駅まではJR根岸線の各駅電車で22〜3分の距離だった。待ち合わせの9時少し前に改札口を出ると、既に到着していたHさんがニコニコして出迎えてくれた。駅前で崎陽軒の冬弁(650円・絶品です!)を買ってザックに詰めて、大通りを南へ向かう。「横浜の港南台から鎌倉アルプス…??」と不安に思っている私を無視するかのように、Hさんはどんどん先行する。この私の不安が間もなく跡形もなく消えて、これからの数時間、驚愕のハイキングに酔いしれることになろうとは、このときは想像もしなかった。港南台駅からアスファルトを約20分ほど歩いて、県立上郷高校(*)の脇から瀬上市民の森へ入ったときから、その素晴らしいトレイルは始まった。 * 上郷高校はこの後(平成21年4月から)港南台高校と再編統合して横浜栄高校となりました。[後日追記] この「瀬上市民の森」やその先の「金沢市民の森」や「横浜自然観察の森」、それに東側の「氷取沢市民の森」、「金沢自然公園」、「釜利谷市民の森」などの円海山周辺の森をはじめ市内の随所にある自然公園を総称して「横浜市民の森」と呼んでいるらしい。その殆どが民有地で、地権者と行政と地元住民が一体となって管理しているというが、それはまったく素晴らしいことだと思う。自然保護の“理念”のもとに、かつては水田などに利用された谷間の湿地(谷戸)や、昔日の里山を彷彿とさせるコナラやクヌギなどの二次林(雑木林)を残そうと手を入れているエリアがあったり、(森林の遷移が進んで)照葉樹の自然林となったエリアをあえてそのまま残すなど、ゾーニングによる多様な自然管理にも目を見張るものがある。 夏にはホタルが飛び交うという「池の下広場」から、瀬上池の脇の遊歩道を登り、「池の上休憩所」を通過する。モミジ類が多いので秋の紅葉が美しそうな処だ。小さな広場の隅で大望遠レンズのカメラを三脚にセットしてじっとしている高齢の男性がいた。カシャッとシャッター音がしたので、小さな声で 「何を撮ったのですか」 と聞いたら 「ルリビタキですよ」 と教えてくれて 「ほらっ」 と云って今撮ったばかりの映像を見せてくれた。小枝に止まっている瑠璃色のきれいな小鳥が画面いっぱいに写っていた。小鳥が止まりそうな小枝にピントを合わせて長い間じっと待っていたらしい。ちょうどその決定的な瞬間に私たちは遭遇したわけだ。その高齢のバードウオッチャーに丁重にお礼を云って、私たちはハイキングを続けた。足元ではコナラ、クヌギ、ヤマザクラ、ケヤキ、ハリギリなどの落葉がサクサクと快い音を立てている。 やがてアラカシ、アカガシ、シラカシなどのカシ類やタブノキ、シロダモ、ヤブツバキ、ヒサカキなどの照葉樹(常緑広葉樹)が目立ち始める。林床はアオキやアズマネザサなどで…、つまりかなり自然っぽい。所々に設置されている解説板などもそれほど仰々しくなくシックなデザインで、自然に溶け込んでいるのが嬉しい。樹林の隙間や見晴らし台休憩所などからは近隣の街並みや低い山の連なりが展望できる。高低差の少ない、膝に優しい遊歩道で、ハイキングというよりはウオーキングといった感じだ。 梅沢山休憩所を過ぎると「金沢市民の森」へ入る。間もなくエノキの老木が現れて、傍らに「エノキの板根」の解説板が立っている。なるほど、みごとに発達した板根(ばんこん)だ。地面に普通に根を張ることができない状態にある木が、自身を支えるために…例えば強風による揺れから樹体を守るために…根を板状にすることがある。ニレ科の樹木ではムクノキの板根が有名だが、エノキは珍しいかもしれない。 尚少し進むと西側が開けていて、街並みの頭上に富士山がすっくと聳えている。不思議だったのは、その街並みの所々に立っている鉄塔で、何故か小山の天辺に位置している。それを不思議に思っていたら、Hさんが得意満面で教えてくれた。 「鉄塔が建ったのは1960年の頃だけれど、その後に付近の山を削り宅地造成したので、鉄塔の処だけがこんもりと高くなってしまったのさ」 道標に従って階段状の坂道を少し登って、横浜市の最高峰という大丸山157mの山頂へ着いたのは10時50分頃だった。広く開けた空間で、ベンチやテーブルもあり、数名のハイカーたちが憩っていた。広場の柵越しには、八景島シーパラダイスから野島・横須賀港…と続く三浦半島の東海岸が眼下に望め、東京湾を隔てた対岸には房総の低い山並も見えている。休憩するにはここも絶好の場所だが、まだお昼には早いので、中休止してから山頂を辞した。それにしても…、この大丸山山頂部の樹木は(展望のために?)随分と伐られてしまったようだ。6年ほど前に他のコースからこの大丸山に登った思い出が私にはあるが、この山頂からの展望は樹木に遮られていたような記憶がある。まぁ、季節の違い(新緑の前回と冬枯れの今回)ということもあるかもしれないけれど…。それ(展望を得るために周囲の樹木を伐採すること)が是か非かは、まったく別の問題ではある…。→下欄の比較写真を参照してみてください。 それから「横浜自然観察の森」へ入り、カシの森特別保護区を通り、ここも明るく広い関谷奥見晴台を過ぎ、コナラの道を進む。樹木の観察にはもってこいのロケーションが続き、市境広場からは横浜市と鎌倉市の市境を暫らく進む。道沿いの藪の中や樹上からガサゴソと音がする方を見ると、それはタイワンリスだ。随所で発見したのだが、すばしっこいので、カメラを向けるとすぐにいなくなってしまう。 これもかつての要塞としての鎌倉名物の遺構だろうか、規模は小さいが切通し状の狭い道をくぐる。右手に横浜霊園の墓地がチラッと見えている。僅かに登り返すと天園ハイキングコース(鎌倉アルプス)と合流して、ここからは先日歩いた道(鎌倉アルプスPart1)と同じだ。天園(六国峠)を経て大平山山頂手前の広場に着いたのは12時半頃。ここで食した崎陽軒の“冬弁”が美味かったのだ。 日だまりの中での昼食後は来た道を少し戻って、鎌倉アルプスの南半分を進む。天台山や貝吹地蔵を経て瑞泉寺へ下り、アスファルトを鎌倉宮→荏柄天神社→頼朝の墓→鶴岡八幡宮と参拝しながら進み、喧噪の小町通りを歩いて鎌倉駅へ着いたのは午後3時半頃だった。駅ビルのレストランで「打ち上げ」をやって、「今年ももう僅かだね」などと行く年に名残りを惜しんだりして、充実した一日は終わった。いいコースを紹介していただいたHさんに感謝感激! * コースについて補足: 今回の鎌倉アルプスのバリエーションルート(港南台から鎌倉アルプス)は、官民一体となって横浜市が残したギリギリの自然(横浜市民の森)を、そのギリギリの線で鎌倉へ辿る、奇跡的な超ハイキングコースです。高低差の少ないまったりとしたトレイルですが、けっこう距離があって変化もあり充分に楽しめます。ただ、人影が多いこのコースでの、特にご婦人に関心のあるトイレの問題が気になりました。本項でご紹介したコース上の「横浜市民の森」にはトイレはひとつもありませんでした。出発地の港南台駅や下山地の瑞泉寺を除けば、天園と大平山の中間に公衆トイレがひとつあるだけです。また、横浜市民の森は「火気厳禁」とのことで、休憩広場などではコンロを使えませんが、これもスポイルされる点です。(鎌倉側はコンロを使えそうですが…) まぁ、ハイカーにとって都合がいいようにはなかなかならないものですが、それらの減点を補って尚余りある良さがこのコースにはあると思います。
鎌倉アルプス・港南台コースA H21/01/18 各種の雑木林を歩き通し、ほどよい疲れのお昼、大平山の山頂広場の草むらに車座になって鍋を囲みました。今回はたっぷりときのこの入った寄せ鍋です。 「今年もよろしく!」 とみんなと挨拶しました。おかげさまで、このコースも“きのこ鍋”も大好評でした。
鎌倉アルプス・港南台コースB R01/10/17 ところが、この鎌倉アルプスも台風(9月9日の15号と10月12日の19号)の影響で殆どのハイキング道は通行禁止になっていました。…じつは、それでも歩いてしまったのですが、いたる処のギャップ(倒木や崩落崩壊)で、けっこうな冒険登山になりました。(もうハイキングレベルではありません。) 幸いなことにメンバーたちはそれなりのベテランなので、慎重に倒木を越えたり潜ったり高巻いてヤブを漕いだり…して、なんとか歩き通すことができました。 メンバーの下山後の感想は「貴重な経験をした。緊張したけれど楽しくて面白かった」 に集約されました。…下山路でひっそりと、しかし美しく咲いていたツリフネソウが印象的でした。 それにしても、自然の災害って本当に怖いですね。それは“自然”なのだからある意味仕方がない…、とはとても思えないような台風被害です。被災者の方に心からお見舞い申し上げます。 * コース現況(補足): 本文にも書きましたが、鎌倉アルプスの殆どのコースは通行禁止になっています。仮に歩くときは(自己責任において)それなりの装備と覚悟が必要です。特に、大丸山の山頂部一帯は完全に閉鎖されていて登頂は(道義的にも)困難です。各所で倒木や崩壊・崩落が起こっています。史跡の貝吹地蔵(瑞泉寺の裏山にある北条高時の首やぐら)などは特に崩壊がひどい状態でした。 佐知子の歌日記より 台風に数多の樹木倒されて山道消える鎌倉アルプス 茶店跡の更地に生える草深し四年前にはおでんを食べた |