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No.302 カンマンボロンから 瑞牆山2230m
平成24年(2012年)10月22日 快晴 マイカー利用

みずがき山自然公園の駐車場から瑞牆山を望む
みずがき山自然公園の駐車場から瑞牆山を望む

瑞牆山・略図
なんとなく梵字に見えるかも・・・
カンマンボロン
写真提供: 篠ちゃん
これを見るとホッとする
道標のケルン

洞ヶ岩の一部:この右側がカンマンボロンの入口かも…
行き止まりの大岩

登りコースの上部から八ヶ岳を望む
岩の間から八ヶ岳が…

瑞牆山の山頂でリンゴを齧る
山頂にて:前方は金峰山

夫婦岩
不動沢コースの夫婦岩

まったりと流れ落ちていました
不動滝

えっ? 道がない…!?

《マイカー利用》 中央自動車道・須玉I.C-《車50分》-みずがき山自然公園駐車場〜(カンマンボロン)〜瑞牆山〜不動滝〜林道終点〜芝生広場・みずがき山自然公園-《車20分》-増冨温泉(入浴)-《車30分》-須玉I.C 【歩行時間: 6時間】
 → 国土地理院・地図閲覧サービスの該当ページへ


 「まるで針葉樹の大森林から、ニョキニョキと岩が生えているような…」 と形容したのは深田久弥さんだが、瑞牆山(みずがきやま)の山容を脳裏に描くとき、それは何時も必ず思い出すフレーズだ。本サイトのBBS(掲示板)常連の篠ちゃんの投稿で知ったことなのだが、それらの岩峰群の中に「カンマンボロン」と呼ばれるとても珍しい奇岩があり、先月(9月9日)に放映されたNHKの番組「小さな旅・輝く岩峰」で紹介していたそうだ。そのカンマンボロンを経由して瑞牆山へ登るバリエーションルート(パノラマコース)を篠ちゃんは歩いたという。国土地理院の地形図には破線(登山道)の表示がないルートだ。興味津々、心がわくわくした。
 先月の御座山(おぐらやま)登山の際に大展望の岩の山頂にポンと出る感激を味わい、そのときからずっと(御座山の山頂とムードがよく似ている)瑞牆山の山頂を思い出していた私は、いてもたまらず、サイト検索で確認したルートを2万5千図のコピーに書き写して、満を持して自宅を飛び出した。それは後から思うと衝動買いならぬ“衝動登山”で、準備不足の弊害に悩まされることになろうとは、この時点では想像もしていなかった。

* カンマンボロン: 瑞牆山の山腹にはニョキニョキと突き出た大きな花崗岩が散在するが、そのうちの西側の一つ、梵字のような模様のついた奇岩をカンマンボロンと呼んでいるらしい。雨風の浸食による造形であろうと思われる。ちなみに、カンマンボロンとは不動明王(大日如来)を意味する梵字のことだという。山梨県森林環境部の「瑞牆の森パンフレット」によると、現在では判読できないが、かつて修験者の手によりカンマンボロンが彫られていた、と「口碑伝説集」に記されているそうだ。

 未明の中央自動車道を走り、明るくなり始めた須玉インターを降りてから約50分、閑散とした「みずがき山自然公園」の大駐車場に着いたのは午前7時頃だった。軽登山靴に履き替えたりして、いそいそと準備する。ここいら辺りも整備されて随分と変わってしまったなぁ…、東にデ〜ンと聳える瑞牆山の岩峰群がかっこいいなぁ…、などと思っているとき、はたと気がついた。やべぇ〜、弁当を忘れた!
 いつもザックに入っている非常食(カロリーメイトです)があるから何とかなるだろう、と、半分やけくそで、とりあえず歩き出す。今回はソロだから、そろそろと歩こう! なんて駄洒落を云っても一人だとやっぱりつまらない。コピーの2万5千図とコンパスを頼りに、アスファルト(みずがき林道)を南へ少し戻ってから左側のカラマツ林(遊歩道)へ入る。このカラマツの人工林にはモミの苗木が点々と植えられてあり、針葉樹同士の複層林へ導いているようで、山梨県もなかなか粋なことをやるもんだ、と感心していたら、道が心細くなってきて、やっぱり進むべき方向が分からなくなってきた。カンマンボロンを示す標識は何処にもない。
 再びコンパスを取り出して、曖昧な分岐では東へ向かう。北杜市と北杜警察署の注意書きには 『この先の登山道は荒れていて迷いやすいため通行はおすすめできません…』 と書かれてあったが、ここは(予定通り)それを無視して突き進む。いつの間にか辺りはミズナラ、モミ、カジカエデ、ツツジ類などの自然林になっている。踏み跡が益々頼りのないものになってきたが、白とか赤のテープや赤ペンキやケルンが所々にあって、よい道標になっている。暫くは天鳥川の右岸を進むが、その瀬音が段々と遠ざかっていく。
 小1時間ほども歩いただろうか、急に道が険しくなってきた。前方に洞ヶ岩と思しき大岩(岩峰)が立ちふさがり、道型が左右に分かれている。進むべき方向は右手なのだが、とりあえず左手の岩の間を抜けて進んでみる。するとロッククライミング(フリークライミングとかボルダリングとか…)のゲレンデになっていると思われる垂直な岩壁が右手に見え、行く手は完全に塞がっている。目標のカンマンボロンが近そうなのは「感」で分かっていたので、この近辺を随分とウロウロと探し回った。しかしとうとうその入り口を発見できず、あきらめて分岐へ引き返した。下山後に篠ちゃんから教えてもらって分かったことだが、じつはその分岐の右側上部(少し下って登り返した処)に“細い岩の隙間”があり、そこを進むのが正解だったらしい。短気を起こしていた私は足元ばかり見て、ずんずん進んでしまったが…、短気は損気、返す返すも残念だ。
 急坂をずんずん進んだのはいいけれど…、えっ? いつの間にか道がなくなっている。引き返そうと思って後ろを振り返ってもやはり道はない。ええぃままよ、と、ひたすら東へ向かって進む。シャクナゲの藪漕ぎ(おぉ〜なんと贅沢な!)をしたり、ガレ岩や泥壁を登ったりする。木の根か岩角か、ガツンと脛をぶつけて、息が止まるほど痛い思いをしたのはこのときだ。しばらくはじっとしていたが、そっと足を動かしてみて問題がないことを確認してほっとする。でも、その左足の脛から血が流れている。もうほとんど遭難者の気分だ。
 ツガとダケカンバの木の間に座ってまずは小休止。付近の地形を観察したり、何回も地図を見たりコンパスで方向を確かめたりして、今いる自分の状況を把握した。自信をもつということはすごいことで、この小休止の後は心も随分と落ち着いて、じっくりと着実に(道なき道を)進むことができた。やがて待望の白テープ(道標)を発見。そこからは踏み跡と数少ない白テープに今まで以上に留意して、ロープ場など、一歩一歩安全を確認しながら登り進む。西面を振り返ると、岩や木々の隙間から八ヶ岳や南アルプスの一部が、快晴の青空をバックに時折くっきりと見えている。大ヤスリ岩の下部を巻きながら更に高度を上げ、(進入禁止の)ロープを跨ぐと富士見平方面からの一般登山道と合流する。歩き出してから初めて見る人影に、やはりホッとした。
 そして(期待通り)大展望の岩の山頂にポンと出る感動を味わい、悦に入る。薄ぼんやりとだが、なんと白銀の富士山も見えている。しかし腹が減った〜。非常食のカロリーメートを食べ終えると少し身体が落ち着いて、妻の佐知子がザックに入れてくれた紅玉(リンゴ)のことを思い出した。これには救われた。主食(弁当)を忘れるなんて、この日の私はまったくどうかしていた。サーモスの熱いコーヒーが胸に沁みる。
 あっという間の昼食の後、山頂部の岩上を行ったり来たり、小川山や金峰山などの奥秩父の山々や八ヶ岳などの景色もおさらいする。相変わらず登山者で賑わうこの瑞牆山の山頂を辞したのは午前11時20分頃だった。
 下山路の不動沢コース(黒森コース)はそこそこに道がはっきりとしていて、カンマンボロンコースと比べればずっと歩きやすい。コースに沿って弁天岩、王冠岩、矢立岩、魔天岩、夫婦岩…等々、次から次へと現れる巨岩や奇岩の眺めは一流だ。苔生したコメツガ林も味わい深く、不動沢の水は限りなく清らかだ。出合い近くの枝沢(大双里沢)に位置する不動滝は落差20m近くはあっただろうか。意外と静かな瀬音で、優雅に艶めかしく流れ落ちている。真新しい木橋や紅葉の見ごろが始まった山腹の自然林の様子など、なにもかにもがとてもよかった。
 林道へ出てから暫くだらだら下っていると標識のある分岐があった。左手の遊歩道へ進むと芝生公園に出られるようだ。振り出しの「みずがき山自然公園」の大駐車場はその芝生公園の隣り(奥)にある。事前の準備不足でカンマンボロンを見損なったのは残念だったけれど、ルートファインディングの楽しさや山頂からの大展望など、山登り本来の醍醐味を充分に堪能した一日だった。満ち足りた気分でマイカーに辿り着いたのは午後2時半頃。帰路の増冨温泉入浴も楽しみだ。

* 瑞牆の森: 山梨県の公式サイトによると、この一帯(1600ha)を「瑞牆の森」と命名し、“北杜市(旧須玉町)と協力して自然体験を得る空間として整備した” とのことで、ゾーニングによる森づくりを推進しているようだ。「みずがき山自然公園」はそのうちの一部で、平成13年5月20日に開催された「第52回全国植樹祭」の主会場跡地約1.1haのエリアを利用したものであるらしい。この山梨県の試みは、私的には、とても素晴らしいことだと思う…。
 「瑞牆の森」の整備方針のひとつに、なんと、“野生植物ゾーンを瑞牆山登山の基地として活用し、今は使われなくなった「カンマンボロン」から瑞牆山へ至る歩道を再整備する” という項目がある。今回私が苦労して(ルートファインディングにヒーヒー云いながら)歩いたカンマンボロンコースは、そのうちメジャーな一般登山道として生まれ変わるのかもしれない。嬉しいような寂しいような…、ちょっと複雑な気持ちだ。

 末文になって恐縮ですが、今回の変化に富んだ素晴らしい周回コースを紹介していただいた篠ちゃんに感謝感激です。コースの情報やカンマンボロンの写真なども提供していただき、重ね重ねありがとうございました。

  増富温泉「増富の湯」については当サイトのNo87.瑞牆山を参照してみてください。



下山路(不動沢)で見たもの

少しズームしてみました
ニョキニョキと岩が生えているような…
ゆで卵の黄身みたい・・・
見上げると黄色い岩が…

間もなく林道終点
紅葉が見ごろに


カンマンボロン リベンジ成る!
平成25年7月12日 晴れ マイカー利用

 この9ヶ月後の夏、「信州峠から横尾山へ」の帰路、「みずがき山自然公園」手前の駐車場に車を置き、カンマンボロンを往復しました。ようやく…、しっかりと確認ができました。(歩程約2時間)
 “大岩が立ちふさがり、道型が左右に分かれている”突き当たりを右折して、(道標の)ビニールテープに導かれ、ちょっと危ない急勾配を少し下って少し登り切ると、普通サイズの人間がやっと通れるほどの大岩の隙間があり、そこがカンマンボロンの入口でした。通り抜けると、左側(南面)は崖っぷちで、思ったよりもずっと狭い空間です。そして右側の頭上に、その岩壁(奇岩)はひっそりとありました。とうとう私もカンマンボロンを見ることができたのです。(*^^)v
 しかし、随行した妻の佐知子は終始 「…だからなんなのよ〜??」 といった感じで、けっこう醒めた表情をしていました。あとで真意を訊いたら、「(道なき道で)恐かったの…」 と云っていましたが…。

迷いつつやっと見つけた瑞牆のカンマンボロンご利益あるぞ佐知子の歌日記より)

ドロ壁を登りつめた所にあります
ここがカンマンボロンの入口です
お相撲さん的な人はちょっとムリかも・・・
この後ろ側は開けていて絶壁です
そして、小空間から見上げると…ウォッ!
でも、案外と小規模だったです・・・

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