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No.387 城ヶ島ハイキング
令和元年(2019年)10月3日(木) 曇り時々晴れ

城ヶ島の略図

京急の「みさきまぐろきっぷ」を利用して三浦半島へ

京浜急行電鉄・三崎口駅-《バス》-三崎港(食事)-《バス》-城ヶ島・白秋碑前〜城ヶ島公園〜ウミウ展望台〜馬の背洞門〜長津呂崎〜城ヶ島バス停-《バス》-三崎口駅…三浦海岸駅=三浦マホロバ温泉(入浴)… 【歩行時間: 2時間弱】
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 夫婦揃ってヒマを持て余していた秋の朝、はたと思い当たった。「そうだ! 京急の『みさきまぐろきっぷ』を利用して三浦半島へ行ってみよう!」 …で、そういうことになった。

* 「みさきまぐろきっぷ」とは: 京浜急行電鉄(京急)が発売する企画乗車券。「電車&バス乗車券」と「まぐろまんぷく券」と「三浦・三崎おもひで券」がセットになっている。ちなみに、品川・京急蒲田・京急川崎などの主要駅からは大人一人(一日)3,570円で発売。まぁ、割安です。

 まず、京急蒲田駅で「みさきまぐろきっぷ」を購入。ちょうど到着した下りの特急(三崎口行き)に乗る。その車内で、「品川からと京急蒲田からとの(みさきまぐろきっぷの)値段が同じなのは納得がいかないね」 「やっぱり城ヶ島へ行ってみましょう!」 などと相変わらず脈絡のない会話をする私達だった。
 約70分の乗車で京急久里浜線の終着駅・三崎口に着く。私的には、城ヶ島への行きがけの駄賃に自然環境がよく保全されているという「小網代(こあじろ)の森」を散策してみたかったので、三崎口駅前からは油壺(あぶらつぼ)行きのバスに飛び乗った。「小網代の森」が油壺の近くにあることだけは何となく知っていたので、その手前の「小網代」というバス停で降りれば何とかなる、と軽い気持ちだった。しかし暫く進むとバスの車窓から『小網代の森⇒』の案内板がちらっと見えた。何となく嫌な予感がしたのでパンフレットをよく読んでみたら、小さな字で「(小網代の森の入口は)引橋バス停で降りる」 と書いてある。のんびりと構えていたので、もう引橋(ひきはし)はとっくのとうに通り過ぎている。慌てて下車して、歩いて油壺入口のバス停まで戻って、そこから上りのバスに乗り直して引橋で降りる。ほっとして指導標に従って「小網代の森」の入口まで来てみてまたまたびっくり、目が点になる。なんと、先月(9月9日)の台風15号の影響により立入禁止になっていたのだ。今回も事前の情報不足のために(つまり行きあたりばったりのせいで)、ここでも右往左往することになる。…妻の佐知子の表情が険しくなっている。お彼岸はとっくに過ぎたけれど、今年の秋は何時までも暑い。アスファルトの反射熱で私達はもうすでに汗だくだ。
 もうお昼近くになっていたので、城ヶ島の手前の三崎港で途中下車して、「まぐろまんぷく券」を利用して漁港前の料理屋でマグロ料理を食べる。ついでにビールも少し飲んでいい気分になったりしていると、佐知子が益々表情をこわばらせて嘆いた。「まるでカズオ・イシグロの小説『充たされざる者』みたいだわ。なかなか目的地(城ヶ島)へ着けない…」

* 「小網代の森」について(補足): 帰宅後にネットなどで調べて分かったのですが、小網代の森を歩くには反対方向からでもOKで、この場合はシーボニア入口または小網代のバス停からでもよかったのです。このときの「立入禁止区間」は引橋バス停方面からの上流部で、シーボニア入口側からならば下流方面の一部は歩くことができたようです。何れにしても京急は、顧客に対する案内(最新情報の提供など)についてはあまり力を入れていないようです。…まぁ、結果論ですが…。
 外部サイトへリンク 神奈川県のサイト/小網代の森について


 そんなこんなで、城ヶ島の白秋碑前バス停から歩き始めたのは午後1時を過ぎていた。近くにある北原白秋の詩碑(城ヶ島の雨)を見物してから県立城ヶ島公園をぐるっと一回り。クロマツの並木やほっそりとした灯台のある安房崎(あわざき)の景観を堪能する。南房総の安房を望むことから名が付いたそうだが、なるほど、左手の海(東京湾)の彼方にはギザギザ頭の鋸山(のこぎりやま)や双耳峰の富山(とみさん)などがぼんやりと見て取れる。そして右手に目をやるとただっ広い太平洋だ。…水平線を眺めていると地球が丸いことを実感する。
現証拠:フウロソウ科の多年草
ゲンノショウコ(フウロソウ)
 それから城ヶ島の南岸に沿った小道(遊歩道)へ入り、城ヶ島灯台方面を目指す。所々にハマカンゾウがきれいに咲いている。白花のゲンノショウコが可憐に咲いている。ヒガンバナもまだ咲き残っている。やはり今秋は例年よりも(1週間以上は)季節の移ろいが遅れているようだ。チラホラと観光客が歩いている。
 ウミウ展望台から眺めた(左下の)赤羽海岸の切り立った断崖は迫力があったけれど、(県の天然記念物の)2000羽にも及ぶというウミウが飛来してくるのは冬(例年11月から翌年4月にかけて)とのことで、今はひっそりとしている。それから少し進んで階段を下りて、海食などにより自然が造り出したという岩の芸術品「馬の背洞門」を見物する。打ち寄せる波の音だけが騒いでいる。
 ここ(馬の背洞門)から西へ(城ヶ島灯台方面へ)向かって磯伝いにハイキング道は続いているのだが、露岩帯を歩くこのコースに相応しい靴(トレッキングシューズとか、少なくとも運動靴とか…)を私は履いてこなかった。…つまり買ったばかりのタウンシューズだったので、階段を登り返して、丘の上に磯道と並行している遊歩道(水仙ロード)を歩くことにした。両側を背の高いシノダケに囲まれた気持ちのいい遊歩道で、所々に海を見渡せる展望所やベンチもあったりして、この小道も私達を飽きさせない。…とはいえ、今度いつか城ヶ島を歩く機会に恵まれたときは(足の準備をしっかりとして)磯伝いに歩いてみたいとも思った。
 千畳敷の広々とした長津呂崎(ながとろざき)へ出る。前方には由緒ある城ヶ島灯台が近くに見えている。私はここでとうとう我慢しきれなくなり、買ったばかりのタウンシューズだったけれど、左手の海際に向かって地層の重なる露岩帯の荒磯を歩き出した。佐知子が仕方なさそうに私のあとについてくる。城ヶ島は…、特にこの長津呂の磯は、私が30歳代のころに(当時の趣味だった磯釣りで)さんざん通った場所だ。…何時の間にか佐知子は後方に消えていて、私一人で、思い出のサラシ場を捜しながら海際を随分と歩き回った。…ふと気がついて、そして気を取り直して、踵を返して磯の入口へ向かって歩いていたら、途中の岩に腰掛けた佐知子が退屈そうにしていた。
 今は殆どシャッター通りの…土産物店の並ぶ細道(ここもものすごく懐かしい)を通り抜けて、今日のハイキング予定コースの終点・城ヶ島バス停に着く。そのとき、磯の風と匂いが後ろから追いかけてきて、私達を優しく包んだ。

温泉マーク 三浦マホロバ温泉: 京急の三浦海岸駅前から無料送迎バスが出ているが、歩いても10分足らずの距離に建つリゾートホテル「マホロバ・マインズ三浦」の温泉施設。(株)四季の自然舎が経営している。入浴のみ(日帰り入浴)も可で、「みさきまぐろきっぷ」の「三浦・三崎おもひで券」が利用できる。地下1500mから湧き出るという源泉はナトリウム-塩化物強食塩泉(弱アルカリ性高張性温泉)、36.2℃、PH7.9、殆ど無色透明で舐めると(海水と同じ)しょっぱい味。3階の「きらら」と4階の「湯津楓」のふたつの大浴場があって、時間制で男女が入れ替わる。この日の私は4階の「湯津楓」に浸かったが、外湯がなくて景色が閉ざされているのがちょっと気になった。入浴後に佐知子に聞いてみたら女湯(3F「きらら」)には外湯もあったとのことだった。まぁ、広さも気分も申し分はなかったのだが…。「入浴後にビールなどが飲める場所はありますか」と受付の若い女性に聞いたら「ありません!」と即座に云われて…、ものすごくがっかりした。
 なので、横浜駅で(これまた)途中下車して、「みさきまぐろきっぷ」は利用できないけれど、なじみの「ビアホール・ライオン」で旨いビールと食事を楽しんでから家路についた。
 外部サイトへリンク 「マホロバ・マインズ三浦」のホームページ

  佐知子の歌日記より
 京急の「まぐろきっぷ」の名につられ三崎港にて鮪丼を食う
 城ヶ島の荒磯歩きなつかしむ釣り三昧の夫の三十路を


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海食が造った自然の造形
馬の背洞門にて: 今回はカメラを忘れたので、旧式スマホで撮ったこの1枚だけです。<(_ _)>

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