佐知子の歌日記・第十六集
佐知子の歌日記・第三十一集
令和2年4月〜6月
メモ帳に記(しる)す樹木は少なくて夫の視線は由布岳東峰
格安のレンタカーにて旅すれば最後の仕上げは車内の掃除
世界中のコロナウイルス無くなれと赤赤燃えるスーパームーン
日本間にはそぐわぬパソコン置く息子 本日からはテレワークなり
「人類は滅亡するか」SFのタイトルのごとし コロナに怯ゆ
「見つけた!」と状袋に二十枚 弟からのマスクが届く
人はいさ柿の葉萌黄に染まりゆきもみじの緑ひごと深まり
もう五月いやまだ五月 終息は何時のことかとコロナに問えど
もったいないから使えない使わないからもったいない絹の風呂敷
公園の藤波に飛ぶクマンバチ 春と夏とを行ったり来たり
(コ)来ぬ人を(ロ)路傍で待ちし(ナ)夏の日に(ウイ)憂いの指もて(ルス)留守電さぐる
夕闇にまぎれて爪に目をやれば あらほんのりと桜色だわ
雨風にさらされ生うる野の草よ人とコロナを如何に見いるや
あじさいの花芽日ごとにふくらんで しばし忘れる世の中のこと
宣言が解除されるも外出は鎧のごとくマスクをつける
釣り物の白鱚いただき白砂と寄せる波音想いておりぬ
忘れたと引き返すまでの五分間マスクは無しのわがアウトロー
拉致されし娘(こ)の四十年横田氏があの世から見む遠い半島
ほとんどが密を避けての二人連れ 三頭山を静かに歩く
マスクしてまたは小声の「こんにちは」 山でのあいさつ新しくなる
小雨降る静かな夜は歳わすれ謎めく歌を書きたいけれど…
二週間経る胸痛はつまずいて転んだものよ恋ではないの
まぶしさにかなしくなりぬ黒髪や眼鏡無しやの古いアルバム
葉を照らす光零れる玉原のぶなの森には妖精が住む
まずは桶よくよく洗い口閉じて湯舟につかる日帰り温泉
手作りの赤いチュニックいただいて背すじを伸ばし鏡と向き合う
南高梅三十四キロ漬け終えて甘い香に酔う腰をなでつつ
 福岡・大分の山旅 (3.31〜4.3)
幾とせも大楠木は根を張りて太宰府天満宮におわす
湯の宿のあちらこちらに生け花がすがすがしくも飾られており
英彦山の参道沿いの雨のなかグオッガオッと蛙の輪唱
街並の東も西も煙立ち別府温泉にぎわいにけり
メモ帳に記
(しる)す樹木は少なくて夫の視線は由布岳東峰
プール程の露天風呂から由布岳を眺めておりぬ湯布院の宿
格安のレンタカーにて旅すれば最後の仕上げは車内の掃除

安倍首相緊急事態宣言す コロナウイルスまだ潜みいて (4.7)

世界中のコロナウイルス無くなれと赤赤燃えるスーパームーン (4.8)

外に出てあっ忘れたと引き返すマスクをつける今の日常 (4.11)

 不要不急?
一年に一度のこと故許されたし誕生日ケーキ買いに行くこと (4.12)

学校へ行きたいと孫らは言えりコロナ休校に二月
(ふたつき)が過ぎ (4.15)

藤・躑躅いきいきと咲く公園をコロナウイルス恐れて歩く (4.16)

マスクかけコロナ対策十分に速歩
(はやあし)でゆく公園の散歩 (4.19)

日本間にはそぐわぬパソコン置く息子 本日からはテレワークなり (4.20)

「人類は滅亡するか」SFのタイトルのごとし コロナに怯ゆ (4.23)

国よりのコロナ対策届きたり一家に二枚「アベノマスク」が (4.25)

「見つけた!」と状袋に二十枚 弟からのマスクが届く (4.28)

消える日が来るのだろうかわが歌や新聞・テレビにコロナの文字が (4.28)

人はいさ柿の葉萌黄に染まりゆきもみじの緑ひごと深まり (4.28)

もう五月いやまだ五月 終息は何時のことかとコロナに問えど (5.1)

もったいないから使えない使わないからもったいない絹の風呂敷 (5.1)

冷蔵庫・米びつすぐにすき間でき 健やか息子の在宅ワーク (5.1)

公園の藤波に飛ぶクマンバチ 春と夏とを行ったり来たり
Tamu(5.1)

 
ことば遊びの折句です
(コ)来ぬ人を(ロ)路傍で待ちし(ナ)夏の日に
      
(ウイ)憂いの指もて(ルス)留守電さぐる (5.2)

夕闇にまぎれて爪に目をやれば あらほんのりと桜色だわ (5.4)

百歳になるはずの父 まぼろしの十七回目の誕生日かな (5.4)

二メートルの間隔保ちレジを待つコロナ秩序のつづくスーパー (5.8)

雨風にさらされ生うる野の草よ人とコロナを如何に見いるや (5.8)

鎮まらぬコロナウイルスうらめしや予約が消えたスイスアルプス (5.11)

ドラえもん共に見ながら笑いしが 食後孫らはスマホをはじく (5.15)

あじさいの花芽日ごとにふくらんで しばし忘れる世の中のこと (5.17)

昨日より少なくなれとニュース見る新型コロナの感染者数 (5.18)

コロナにて中止が決まる甲子園マウンドに沈む球児の涙 (5.20)

宣言が解除されるも外出は鎧のごとくマスクをつける (5.28)

釣り物の白鱚いただき白砂と寄せる波音想いておりぬ (5.30)

忘れたと引き返すまでの五分間マスクは無しのわがアウトロー (5.30)

マスクごしに安否気づかい声かける四月
(よつき)ぶりなる歌会の皆皆 (6.2)

 グラウンドゴルフ復活!
蒸し暑さ吹き飛ばすごとまっすぐに赤いボールを素早く打てり (6.4)

朝行く子十時に帰る子行く子いて分散登校始まっている (6.5)

拉致されし娘
(こ)の四十年横田氏があの世から見む遠い半島 (6.5)

平熱が六度三分は普通だがわれにとっては気怠い目盛り (6.7)

 都民の森から三頭山 (6.9)
家ごもりやめ奥多摩へ 緑濃き都民の森に春蝉の啼く
ほとんどが密を避けての二人連れ 三頭山を静かに歩く
マスクしてまたは小声の「こんにちは」 山でのあいさつ新しくなる

小雨降る静かな夜は歳わすれ謎めく歌を書きたいけれど… (6.13)

二週間経る胸痛はつまずいて転んだものよ恋ではないの (6.13)

まぶしさにかなしくなりぬ黒髪や眼鏡無しやの古いアルバム (6.19)

 
玉原高原(鹿俣山)ハイキング (6.21)
駐車場に関東ナンバー並びおり おとといからは往来自由
葉を照らす光零れる玉原のぶなの森には妖精が住む
まずは桶よくよく洗い口閉じて湯舟につかる日帰り温泉

手作りの赤いチュニックいただいて背すじを伸ばし鏡と向き合う (6.24)

南高梅三十四キロ漬け終えて甘い香に酔う腰をなでつつ (6.26)

雨に濡れ草木かがやく朝の庭 それぞれの葉にそれぞれの青 (6.28)

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