佐知子の歌日記・第十六集
佐知子の歌日記・第三十集
令和2年1月〜3月
おだやかな日差しあふれる床の間に赤子をかこみ新年寿ぐ
新春の都留の峰より眺めたる霞む富士でも富士は富士なり
母編みて二十年経るセーターのほつれをかがり今日もぬくまる
三代のよき人の顔うかびくる 向かいの家をクレーンが潰し
ひとまわり土俵を大きくしたならば大技小技珍技あるべし
声援は小兵力士の炎鵬へ 勝っても負けても館内が沸く
小雨降る鷹取山の頂上に病い癒えたる友をことほぐ
麗しき言の葉なんぞは浮かびこず今日のお昼はお好み焼きだ
さくら草小さき鉢ごと盗まれてこの冬空を如何に見上げん
公園の白梅すでに八分咲き 見上げるわれを追い越す若人
長ズボンまくし上げたる少年ら 池の蛙をつかみ見せ合う
濃い紅茶それともあれかと眠られぬ夜を作った犯人捜し
桁違いではあるけれど升に盛る節分の豆七粒を食う
ピーチとう艶めかしき名の飛行機にスイカの産地成田より乗る
末永くいつの世までもと願われた みんさー織のバッグをねだる
海ぶどう・紅芋・もずく・みな美味い されど恋しい北国の米
寒いねと満月見つつ足早に帰る七十歳
(ななじゅう)もう25時
樟脳の匂い消すべく窓を開け十年ぶりに雛様飾る
世界中コロナウイルス漂いて流す石鹸の泡にも怯える
暖冬にもみじの新芽出できたり米粒ほどの緑やわらか
朝刊の三十四ページそれぞれにコロナウイルス棲息してる
薄曇りの雨巻山
(あままきさん)に風強し声あげたわむ小楢の冬木
グエッグエッと鳴き声ひびく田子蛙
(タゴガエル)沢の清水に五匹が泳ぐ
山里の大犬の陰嚢
(オオイヌノフグリ)輝いて小さき青色お空を見上ぐ
しっとりと春雨の降るこんな夜は胸打つ歌が生まれるかも・・・ね
館内に行司の声の高らかに響く大阪無観客場所
部屋内に花粉を運ぶすきま風 夫の目徐々に三日月となる
菜の花は土手をおおいて渡良瀬の県境などはかまわずに咲く
一日中パジャマ姿の夫である 退職後なじむ制服のごと
オリンピック延期とさせて蔓延のコロナウイルスいったい何者
題名を思い出せずに検索す“映画 マフィア アル・パチーノ”と
 →答え・・・ゴッドファーザー
おだやかな日差しあふれる床の間に赤子をかこみ新年寿ぐ (1.1)

恒例の駅伝見物取りやめて三浦の山へゆく夫とわれ (1.2)

山鳩が木の実啄む玄関前じいっと見入る夫と三分 (1.4)

 都留アルプス (1.10)
新春の都留の峰より眺めたる霞む富士でも富士は富士なり
外壁を黒に塗られた箱型の駅前温泉に気取って浸かる

母編みて二十年経るセーターのほつれをかがり今日もぬくまる (1.11)

声援は小兵力士の炎鵬へ 勝っても負けても館内が沸く (1.13)

三代のよき人の顔うかびくる 向かいの家をクレーンが潰し (1.14)

ひとまわり土俵を大きくしたならば大技小技珍技あるべし (1.15)

より速い記録をめざし我先に厚底シューズにたよる人間 (1.21)

 
鷹取山ハイキング (1.23)
小雨降る鷹取山の頂上に病い癒えたる友をことほぐ

渋谷では案外少ないマスクの人コロナウイルスと騒いでいるが (1.25)

麗しき言の葉なんぞは浮かびこず今日のお昼はお好み焼きだ (1.31)

さくら草小さき鉢ごと盗まれてこの冬空を如何に見上げん (1.31)

雪柳みどり小さく芽を出だし連なる枝にあふれる日差し (2.2)

公園の白梅すでに八分咲き 見上げるわれを追い越す若人 (2.2)

長ズボンまくし上げたる少年ら 池の蛙をつかみ見せ合う (2.2)

濃い紅茶それともあれかと眠られぬ夜を作った犯人捜し (2.2)

桁違いではあるけれど升に盛る節分の豆七粒を食う (2.3)

 石垣島の山旅 (2.6〜8)
ピーチとう艶めかしき名の飛行機にスイカの産地成田より乗る
二月の夜上着二枚を脱ぎ捨てて石垣島のコンビニへ行く
ぬれている岩につまづき転ぶ吾の額と手首がだんだん腫れる
青く澄む珊瑚の海は島守りか 東シナ海の大波を避く
杖ほどの太く長い根が絡みあうヒルギ群落の汽水に立てり
末永くいつの世までもと願われた みんさー織のバッグをねだる
海ぶどう・紅芋・もずく・みな美味い されど恋しい北国の米
寒いねと満月見つつ足早に帰る七十歳
(ななじゅう)もう25時

樟脳の匂い消すべく窓を開け十年ぶりに雛様飾る (2.13)

世界中コロナウイルス漂いて流す石鹸の泡にも怯える (2.21)

もう少し感度良き眼と耳ほしい 広くて深い純なハートも (2.22)

女子会におもてなしと言う夫が挿す一輪ざしのさくら草なり (2.24)

暖冬にもみじの新芽出できたり米粒ほどの緑やわらか (2.25)

店の棚 除菌のたぐいは品薄くコロナウイルスを恐れる人類 (2.28)

朝刊の三十四ページそれぞれにコロナウイルス棲息してる (3.3)

 
雨巻山登山 (3.5)
薄曇りの雨巻山
(あままきさん)に風強し声あげたわむ小楢の冬木
グエッグエッと鳴き声ひびく田子蛙
(タゴガエル)沢の清水に五匹が泳ぐ
山里の大犬の陰嚢
(オオイヌノフグリ)輝いて小さき青色お空を見上ぐ

仕舞うため手袋もせず掴みいる鋼の雛段わが指をきる (3.7)

きょうの歩数どのくらいかとたずねれば健康番組見る夫の苦笑 (3.10)

しっとりと春雨の降るこんな夜は胸打つ歌が生まれるかも・・・ね (3.10)

館内に行司の声の高らかに響く大阪無観客場所 (3.13)

部屋内に花粉を運ぶすきま風 夫の目徐々に三日月となる (3.13)

 高尾山から景信山・ハイキング (3.15)
春の雪とけてぬかるむ4号路 跳ねて泥つくベージュのズボン
味噌汁のなめこ掴めず指ふるえ気温零度の景信山頂

 
渡良瀬遊水地を散策 (3.19)
菜の花は土手をおおいて渡良瀬の県境などはかまわずに咲く
渡良瀬の池畔の柳わか葉出で緑の風を水面に送る

 三毳山・万葉自然公園かたくりの里 (3.19)
カタクリの花うつむいて三毳山
(みかもやま)うす紫の裾模様なり

一日中パジャマ姿の夫である 退職後なじむ制服のごと (3.23)

オリンピック延期とさせて蔓延のコロナウイルスいったい何者 (3.24)

題名を思い出せずに検索す“映画 マフィア アル・パチーノ”と (3.25)
 →答え…ゴッドファーザー

退職にご苦労様と孫よりの花束もらい涙ぐむ夫 (3.27)

在りし日の面影はなく棺に入る良き人の声偲びておりぬ (3.30)
 義従弟の葬儀に参列

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