No.391 都留アルプス 令和2年(2020年)1月10日(金) |
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できたての低山アルプス → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ(蟻山)へ 当サイトのBBS(掲示板)で、常連のssさんからの投稿で知ったのだが、山梨県都留(つる)市のほぼ中央に「都留アルプス」というのがあるらしい。富士急行線の都留市駅と東桂駅の区間の南側に連なる…都留市街に沿った全長約8Kmの…標高約500mから700mほどの低山域のことで、山域としては西道志(道志山塊)に属しているようだ。駅から駅のハイキングにもってこいで、興味津々だ。ネット検索で調べたら、都留アルプスというのはつい最近名付けられたようで、お披露目のハイキングイベントが行われたのは2017年11月26日のことであるらしい。 「アルプス」と聞くとじっとしていられないのが私達夫婦だ。幸いなことに都留市の公式サイトから分かりやすいコース地図(都留アルプス・ハイキングMAP)が提供されている。地理院地図の地形図(電子国土Web)の該当箇所もプリントアウトして必要情報を書き写して、さてこれで準備は充分だ。 温暖化の影響か、特に寒くない1月の午前8時30分頃、富士急行線の東桂駅前から歩き出す。閑散とした国道139号線(富士みち)を東へ進み、ローソン前を右折して桂川やその支流に架かる橋をいくつか渡って、数体の石像(馬頭観音)の脇を通り、由緒謂れのありそうな「おなん淵」を左手に眺めたり、当地出身の偉人・神戸挙一(かんべきょういち・1862-1926・日本の実業家)の石碑を右手に見物したりして、とんとん拍子の里歩きは快調だ。 道標に従って左にぐるっと回って民家の建ち並ぶ細い道を進み、鹿や猪などの害獣避けのフェンスを開けて、住吉神社の石段を上る。…ここが都留アルプスの西側の起点(登山口)になっているのだ。瀟洒な住吉神社に丁寧にお参りしてから少し進むと、森に囲まれた古城山583mの山頂で、ここはすんなりと通り過ぎる。心配していた凍結や残雪は全くなく、軽アイゼンはザックの重りになるだけのようだ。 私達が歩いているのはいわゆる「がっつりコース」で、都留アルプスの完全縦走だ。そのコース上のかなりの部分は送電線に沿っていて…、もしかして東電の巡視道を利用したものかもしれない。なので、いくつもの鉄塔下を通ることになる。それはそれで、地形図上の今いる地点が正確に把握できるので、それも面白いと思う。周囲はスギ・ヒノキの人工林が主だけれど、コナラ、ヤマザクラ、ミズキ、アカシデ、ホオノキ、クヌギ、アカマツ、モミ、シラカシ、アラカシなどの天然林もけっこう交ざっていて、気分はとても良い。それらの樹々の隙間から、左手(西面)には三ッ峠山や本社ヶ丸などの御坂の山々、右手(東面)には二十六夜山や御正体山などの道志の山々が見え隠れしている。 落枝や落葉を踏みしめながら進むと、やがて「やまびこ競技場(十日市場駅方面)」からの道が合流して、遊歩道はさらに歩きやすく幅広になってくる。ミツマタ群生地を過ぎ、ケヤキとアブラチャンの目立つ小平地で小休止。それから少し登って本コースの最高地点と思われる713m峰の辺りを通り過ぎてなだらかに下った処…「千本桜の植栽地」からの北・西面の眺めが秀逸だった。今は未だ苗木(幼木)なので植栽地は絶好の展望箇所になっているのだ。都留市街を隔てて立ち並ぶ御坂の山々から南大菩薩へ至る大パノラマを、何回も立ち止まって観賞する。そしてこの少し先の友愛の森(谷村第一小学校の学校林とのこと)のベンチに腰かけて、アンパンとメロンパンの昼食だ。 天神山582mを挟んで2つの由緒ある水路橋(水道橋)があるが、地元では親しみを込めて「ピーヤ(橋脚の意)」と呼んでいるそうだ。都留アルプス会の説明板によると、発電所に水を引くためのもので大正9年に完成したらしい。このコースのアイドル的な存在であるらしく、なるほど渋い佇まいの、なにか物語を感じさせる空間だ。橋の下で手をたたくと微妙な反響音(鳴り龍)がして、これも面白い。 パノラマ展望台でも市街地越しの山々の景色を堪能して、それから長安寺山654m〜白木山625mと…タヌキのタメフンに注意しながら…なだらかにアップダウンして進み、電波塔のある蟻山(烽火台跡)658mのピークでも小休止。この烽火台跡からも富士山を眺めることができる筈だが、やはりこの日は雲が多くて、ほとんど心眼と心願の富士山だ。 小さなダム湖(池?)の先の、富士山展望台でもたっぷりと(富士山以外の)展望を楽しむ。それから導水管に沿って、都留市街を前方に見下ろしながらコンクリートの道をジグザグと下り、谷村(深田)発電所の脇にドスンと着地する。時計を見ると午後2時10分。あとはもう、都留市駅の殆ど隣に位置する「より道の湯」に立ち寄って、湯上りの冷えたビールを一気飲みするしかやることはない。 この都留アルプスを逆コースで歩いた理由は…そうなのである…下山地にこの温泉入浴施設を配したかったからなのだ。私は特に、そこ(温泉)を目指して歩くと何倍もヤル気が増すのです。 * 都留アルプスを初めて歩いてみての感想ですが、心にも身体にもやさしい里山歩きの良さ…自然と人工物の絶妙なコラボレーション…が凝縮されているトレイルだと思いました。ボリューム的にも(私達にとっては)必要かつ十分で、いろいろなコースを選べ、エスケープルートもたくさんあって、安心ハイキングが楽しめるのが何よりです。…しかしこの日、コース上で出会ったのは一人の男性ハイカーだけ…、というのは(平日とはいえ)ちょっと寂しい気がしました…。 一つ云えるのは富士山展望の物足りなさです。この山域としてはその展望箇所が少なくて、しかも(杓子山などの)手前の山に下半身を隠されて頭の部分しか見えないのです。 とはいうものの、この日は御坂や道志などの近くの山々の眺めが抜群で、富士急沿線の市街地などの眺めもとても素敵で、曇りがちでイマイチの富士山展望を補って余りあるものがありました。 都留市が発行しているハイキングマップのコースタイム(5時間30分)は…私達夫婦としては超珍しく…甘いと感じました。 より道の湯: 例によって何でもありの、ちょっと高級感のある、シックすぎるほど(入り口がどこだか分らないほど)シックな、入浴料もやや高めの…宿泊も可能な温泉入浴施設。異業種(当地の製造業)のWAYS株式会社が割と最近(2018年4月30日)にオープンしたものらしい。外湯や内湯など風呂は(これでもかというほど)多彩。ナトリウム・カルシウム・硫酸塩泉(低張性アルカリ性低温泉)、加熱半循環、無色透明無味無臭。駅前温泉と呼んでも差し支えないほど、都留市駅のすぐ近くに位置しているのがとてもいい。都留アルプスのコース上なのも温泉ハイキングには好適だと思う。 館内のBGMはオルゴールのいい音色だったけれど、よく聴いていると、山下達郎の「クリスマス・イブ」が周期的に流れている。今は正月なので、ちょっと季節外れの感もあったりして…。 * なお、都留アルプスの下山後の立ち寄り湯については、都留市駅前からタクシーまたは路線バス(都留市内循環バス)を利用して芭蕉月待ちの湯を利用することも選択肢にあります。「芭蕉月待ちの湯」については道志二十六夜山の頁を参照してみてください。 佐知子の歌日記より 新春の都留の峰より眺めたる霞む富士でも富士は富士なり 外壁を黒に塗られた箱型の駅前温泉に気取って浸かる
千本桜植栽地から都留市街越しの山岳風景を楽しむ
御坂山塊(三ッ峠山・本社ヶ丸・鶴ヶ鳥屋山)〜南大菩薩(滝子山・黒岳・雁ヶ腹摺山など) 都留アルプスのコース上に二つのピーヤ(水道橋)
再び都留アルプス
ファミリーコースを歩く 都留文科大学前9:00〜楽山公園〜千本桜植栽地〜元坂水路橋(ピーヤ)〜天神山582m〜鍛冶屋坂水路橋(ピーヤ)〜パノラマ展望台〜長安寺山654m〜蟻山(烽火台跡)658m〜富士山展望台〜谷村(深田)発電所〜より道の湯(入浴)〜13:00都留市駅… 【歩行時間: 約3時間】 ●令和5年(2023年)10月20日・金・晴れ時々曇り: 山歩会の下見も兼ねて、夫婦で都留アルプスを歩いてきました。東桂駅から都留市駅までのフルコースではなくて、都留文科大学前駅からのショートカットコース(ファミリーコース)で、正味3時間足らずの楽々コースでしたが、秋晴れのよい一日を過ごせました。低山でも何でも、山って、ほんとうにいいですね。 富士山には二重のレンズ雲。足元ではハナニガナやリュウノウギクなどがきれいに、しかし少し、咲いていました。 佐知子の歌日記より UFOのような笠雲あらわれて富士の頂きを被いはじめる 風強く大木の葉はどこへ行くひらりひらひら流されながら ●令和5年(2023年)10月31日・火・曇り時々晴れ: 山の仲間たち(山歩会)と都留アルプスのファミリーコースを歩いてきました。先日の下見の甲斐もあって、スムーズに歩けました。 真っ白な富士山は、電車の車窓からは良く見えていましたが、なんといっても都留アルプスは頭の部分だけの眺望です。まぁ、そのかわり千本桜植栽地などから都留市街越しの山岳風景…御坂の山々(三ツ峠山〜本社ヶ丸〜鶴ヶ鳥屋山〜高川山など)から滝子山などの南大菩薩の山々の展望…が素晴らしかったです。 下山後は都留市駅近の「より道の湯」で山の汗を流して、帰路の大月駅で途中下車して予約しておいた濱野屋の「ほうとう御膳」に舌鼓。今回も甘露甘露の大団円でした。 * 2019年の12月に中国・武漢での拡大が判明し、2020年1月以降には日本でも大ブレークした新型コロナウイルス。その感染症法上の位置付けが、今年(2023年)の5月8日に2類相当から5類に移行されました。…で、ようやく堂々とアウトドアを歩けるようになった昨今です。なかなか仲間たちと山歩きのできなかったここ数年間を、しみじみと回顧したこの日でもありました。 |