佐知子の歌日記・第十六集
佐知子の歌日記・第三十八集
令和4年1月〜3月
黒光りしていた髪を茶に染めて静かな孫は何を訴う
本門寺へ小雪降るなか初参り何とはなしに賽銭はずむ
富士山と月見草は似合うけど菜の花も良し小寒の空に
呑川
(のみがわ)を埋めて泳ぐボラの群れ 小鴨の気配に弧を描きたり
よしなにと祈るほかなし明日打つ三度目となるコロナワクチン
黒き山に人工雪の白き肌 北京五輪のシュプール眩し
ホカロンと手編みのセーター送りたし泣くワリエワのロシアコーチへ
スニーカー洗えば見えてくる地肌 空の青さを映して光る
孫たちの合格祝う 鰻重は胸とお腹をいっぱいにする
配達は来週までと灯油屋の声も春めく彼岸三日目
若きらの「こんにちはー」に励まされ八丈富士の御鉢を巡る
坂の名は「長友ロード」わが軽(自動車)はアシスト無しにゴールを目指す
トコトコと座敷をめぐる微笑みはたまちゃんからのお年玉なり (1.1)

黒光りしていた髪を茶に染めて静かな孫は何を訴う (1.1)
 ↑令和5年・第24回NHK全国短歌大会・入選作

コロナ禍に雑煮食みつつ応援す国道で見たし箱根駅伝 (1.2)

重箱と塗りのお椀を仕舞うとき 譲りくれたる母らを思う (1.3)

 池上本門寺へ初詣参拝 (1.6)
本門寺へ小雪降るなか初参り 何とはなしに賽銭はずむ
腰さすりつつ歩く夫半世紀前には居らず膝痛のわれも
きれいとは言えぬ呑川
(のみがわ)を二羽の鴨がスーイスイッと泳いでいたり

お互いに二足歩行を維持するが「ザ・年寄り」という仕草の日々よ (1.7)

 二宮町の吾妻山ハイク (1.9)
富士山と月見草は似合うけど菜の花も良し小寒の空に
1時間待って出てきたハンバーグ ひたすら食べた10分でした
菜の花畑越しに富士山を望む

深窓の令嬢なのと驚かせ「草」のほうよと笑った友逝く (1.15)

呑川
(のみがわ)を埋めて泳ぐボラの群れ 小鴨の気配に弧を描きたり (1.20)

推敲をするほど変な歌になり今日を仕舞いて明日にバトンす (1.24)

よしなにと祈るほかなし明日打つ三度目となるコロナワクチン (1.27)

目薬と眼鏡にたよる日常の現状維持は宝と思う (1.30)

副反応二日すぎれば熱は引き腕は自在にびゅんびゅん動く (1.30)

鴨目指し波打ちぎわをヨチヨチと走るおさなご追う親の両手 (2.5)

黒き山に人工雪の白き肌 北京五輪のシュプール眩し (2.10)

転倒のクワッドアクセルではあるが羽生結弦の魂を見た (2.10)

 
石垣山(一夜城)ハイク (2.12)
三十分並びて入る「漁港めし」銀ダラ煮付け骨までせせる

ホカロンと手編みのセーター送りたし泣くワリエワのロシアコーチへ (2.17)

あおあおと雪柳の芽ふくらんで日ごと近づく春の足音 (2.26)

スニーカー洗えば見えてくる地肌 空の青さを映して光る (3.3)

孫たちの合格祝う 鰻重は胸とお腹をいっぱいにする (3.4)

古今集の解説本をまた買いて文学部へ行く孫に手渡す (3.11)

折たたみストック出すが組み立て方忘れてしまう未使用みつき (3.13)

配達は来週までと灯油屋の声も春めく彼岸三日目 (3.20)

買いたるはわれらが息子冷蔵庫を夫はながめる文句もなしに (3.21)

電力の逼迫の夜は灯り消し夜の銀座をゆく夢を見ん (3.22)

若者の群れをかき分けハチ公を頼りにさがすバスターミナル (3.26)

 
八丈島・2泊3日の山旅 (3.28〜30)
若きらの「こんにちはー」に励まされ八丈富士の御鉢を巡る
坂の名は「長友ロード」わが軽(自動車)はアシスト無しにゴールを目指す
三原山のゆるい階段登りつつスミレの写真あまた撮る夫
カーナビの装備は無しのレンタカー「さっきもこの道走ったよねぇ…」


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