No.27-1 大菩薩嶺2057m Part1 明るくたおやかな広い山稜 |
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INDEX @ よい山だ!: H8年5月 A 牛ノ寝コースで下山: H16年10月 B 山の仲間と再び: H17年9月 C いい山はやっぱりいい!: H23年6月 D 時代は変わった…かも: R4年7月 E ガスってもいい山はいい: R4年7月 F 2月の大菩薩嶺: R6年2月 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ(大菩薩嶺)へ |
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大菩薩嶺@ 第1日目は足慣らし程度。最近新築したばかりの長兵衛山荘はモダンな山小屋だが、車が入れる場所の割には、セコさが少々気になった。風呂があるのは、予想していなかっただけにうれしかった。狭い風呂だが無いよりはマシだ。 第2日目に大菩薩嶺登山。ハイキングらしい穏やかなコース。しかもリーズナブル。 大菩薩嶺の山頂はコメツガやシラビソなどの樹林に囲まれていて展望はなかったが、カヤトの尾根道からの南アルプスや富士山などの眺めは素晴らしい。明るくたおやかな広い稜線…。よい山だ、と思った。 休み休みゆっくり歩いて、丸川峠を経由して裂石に下山したのは午後3時頃。運良く(悪く?)丁度通りかかったタクシーに乗車、川浦温泉へ。明日は西沢渓谷へ足をのばす予定だ。
大菩薩嶺A 気心の知れ合った山仲間(HさんとJさん)と、大菩薩峠にある山小屋(介山荘)に一泊して、秋たけなわの大菩薩連嶺を堪能した。お天気にも恵まれて楽しい山行だった。 今回のコース取り(下山路に「牛ノ寝コース」)の自慢は、美しい自然林と下山地に「小菅の湯」が待っている、ということだ。 第1日目: 地平線上の僅かな空間がグルっと横一線に晴れ渡っている、なんともめずらしい高曇りの空模様だった。 塩山駅前からは、上日川峠の更に先、福ちゃん荘まで、ズルをしてタクシーを利用した。文字通りカラマツの多い唐松尾根を辿り、見晴らしのよい主稜線上の雷岩まではたった1時間の歩程だ。 雷岩から大菩薩嶺の三等三角点(山頂)を往復し、「親不知ノ頭」で、例によって「大宴会」。Jさんの重たいザックからは、まるで魔法のように色々な食料が出てくる。コンロに網をのせて焼いたメザシは特に美味かった。日も傾き始めて寒くなってきたので、介山荘の建つ大菩薩峠へ千鳥足で下る。「大名登山だね」 と三人で苦笑いした。 秋色に染まり始めた主稜線上からは、南アルプスや奥秩父や奥多摩の峰々がスッキリと見えていた。道志や御坂の山々を従えた富士山はひときわ大きくて、威厳に満ちている。甲斐駒ヶ岳と八ヶ岳の間には、遠く北アルプスの乗鞍岳も、薄っすらと雪を被った姿を見せている。頭上に染まる美しい夕焼けは、生涯忘れることのできないほどの、空一面の錦絵だった。 この日の介山荘(収容人員100名)は約30名の宿泊客。充分なスペースでゆっくりとくつろげた。お茶は飲み放題。夕飯は御替り自由の美味しいカツカレーライスで、カップ1杯の白ワインがサービスされる。その他にもポテトサラダや干し柿などの沢山の料理。デザートのブドウ(巨峰と甲斐路)もたっぷり。朝食もおかずが多くて食べきれないくらい。記念のボールペンもいただいたりして、これで一人6,600円は安いと思った。 今は亡き初代のご主人(益田勝俊氏)は「日本百名山」の深田久弥氏と小屋で一晩を飲み明かしたという人物。二代目の益田繁氏はとても優しい感じで、今日も小屋に顔を出しており、お元気だった。現在は三代目の真路氏(まみちさん・確か36歳)が事実上仕切っているようだ。歯切れのいい、山男の朴訥な面影の残る、感じのよい好青年だ。 夜、小屋の外へ出てみると満天の星空。南西の眼下には塩山市から山梨市へ続く街の明かりが宝石箱のようにキラめいていた。 第2日目: 思った通りの快晴だ。未明から小屋の外へ出て、稜線上をあっちへ行ったりこっちへ来たり、思う存分、移り変わる朝の山岳風景を楽しんだ。ご来光は奥多摩三山(左から御前山・大岳山・三頭山)の右端、水平に引かれた薄雲の上からひょっこりと顔を出した。反対側の南アルプスや富士山がオレンジ色の朝日に照り映えて美しい。これがあるから山登りは止められない。 介山荘の朝食を済ませ、歩き出したのは7時少し前。熊沢山を越え、少し下ったササ原の鞍部(石丸峠)の先で主稜線と別れ、左へなだらかに下る。この東へ真直ぐに伸びている尾根道が“牛ノ寝通り”で、玉蝶山、榧ノ尾山(かやのおやま)、狩場山などを通過していくのだが、どの山も特に際立ったピークではない。展望はそれほど望めないが、コメツガ、シラビソ(少々)、ダケカンバ(少々)、ブナ、ミズナラ、カエデ類などの明るい自然林が素晴らしい。林床のササはミヤコザサからスズタケへ徐々に移りゆく。分岐のある大ダワや高指山などの要所には最近立てられたと思える立派な道標があり、以前はけっこう分かりにくかったそうだが、現在はめったに道に迷うことはないと思う。この牛ノ寝通りは、(北側の)多摩川と(南側の)相模川の分水嶺でもあるらしい。 下山途中、ちょっとした「事件」…実際は事件にはならなかったのだが…があった。牛ノ寝のポイントを通過した辺りで、地元の山菜取りと思われる男性から 「この少し先でクマを見たから気をつけろ!」 と注意された。何でもそのクマは登山道を横切って右下のカリバ沢へ向かっていった、とのことだった。熊よけの鈴をもっていない私たちは、それから暫らくの間、大声で会話をした。その会話の内容は、矢張りクマのことだった。 「今年は台風などの影響でドングリが少なくて、クマが里へ下りてきているんだ」 とHさん。 「生きるために里へ下りてきて人間に撃たれて殺されたんじゃ、クマも可哀想だね」 とJさん。 「あそこにもここにも、ほら、ミズナラのドングリがいっぱい落ちていますよ」 と私。 幸いクマに出会うことはなかったが、落葉の下山道を歩きながら少し考えてしまった。木の実を好んで食べる本州・四国のツキノワグマは、ブナ林などの落葉広葉樹林に生息する森の動物で、本来は優しい性格なんだと思う。そんな優しいクマが人間を襲うなんて信じられないけれど、鉢合わせして驚いたときや子連れだったときには攻撃するという。しかし、クマも人間が一番怖い筈だ。もしもバッタリ出会ってしまったら、至近距離でなければ、落ち着いて後ずさりすればまず大丈夫、と以前読んだ本に書いてあった。何れにしても、山で一番会いたくない野生動物がクマ、であることに変わりはない。 里に近づくとコナラ、クリ、アカマツ、シデ類などの雑木林になってくる。所々、クリの実が沢山落ちていたので、暫し三人で無心になってクリ拾いをした。 麓の小菅村に着いたのは11時50分だった。多摩源流の枝沢を流れる小川(山沢川:小菅川の支流)に架かる橋を渡り、閑静なアスファルト道を約5分歩くと、お目当ての「小菅の湯」が見えてくる。 多摩源流「小菅の湯」: 小菅(こすげ)村の日帰り温泉施設。今年の元旦にリニューアルオープンしたらしい。山梨県の東、東京の奥多摩に隣接する位置にあり、村を流れる小菅川は奥多摩湖に注いでいる。標高700m弱に位置する閑静な山里だが、この温泉施設はナカナカ立派なものだ。大浴場、露天風呂、ジャグジー、サウナなど、設備は多彩。ほとんどクアリゾートだ。大広間や宴会場もあり、個室も用意されている。泉質は高アルカリ性とのことだが、詳しい成分などは不明。3時間コースは600円、1日コースは1,200円。無料送迎バスもある。私たちにとってはちょっと立派すぎる、くらいだった。 介山荘に宿泊すると、この「小菅の湯」と裂石にある「大菩薩の湯」の割引券をもらえる。 * この後、引越してリニューアルされた公式ホームページには詳しい泉質が書かれてあった。それによると泉質はアルカリ性単純泉(高アルカリ性温泉・PH=9.98)とのことで、掘削深度は1500mであるらしい。[平成22年12月現在] * 施設利用料金について、この後750円(時間制限なし)と変更されている。[令和元年5月現在] 「小菅の湯」のHP 「大菩薩の湯」については当サイト(私達の山旅日記)の和名倉山の項を参照してみてください。
大菩薩嶺B ただし初日はバス利用で、裂石から山道(昔の大菩薩道)を歩きました。自動車で上日川峠まで行けるようになった現在、けっこう自慢のできるアプローチだったかもしれません。 緑深い9月の大菩薩もステキです。いいコースは、何回歩いてもいいですね。 奥多摩三山に昇る太陽(介山荘前より) ↑左から御前山〜大岳山〜三頭山↑ このページのトップへ↑ 次頁「大菩薩嶺Part2」へ続く ホームへ |