No.381 秋田駒ヶ岳1637m 令和元年(2019年)7月22日(月) |
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第2日(7/23)=国見温泉-《車》-抱返り渓谷・遊歩道…田沢湖一周観光…乳頭温泉郷「黒湯温泉」 【歩行時間: 抱返り渓谷・遊歩道にて約1時間】 第3日(7/24)=黒湯〜乳頭山登山…乳頭温泉「妙之湯」 第4日(7/25)=妙之湯…森吉山登山…打当温泉 第5日(7/26)=打当温泉…角館・武家屋敷などを散歩…秋田空港…羽田空港 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ(秋田駒ヶ岳)へ ●第1日目(7月22日): 八合目から秋田駒 羽田発7時00分のJAL161便が離陸して水平飛行に入ると、トレイテーブルを倒して買ってきた空弁を食べる。それから機内サービスのコーヒーをゆっくりと飲んでいたら、左の窓から鳥海山と思しき山容を雲の切れ間に“発見”する。「早いねぇ〜もう秋田県だよ」などと夫婦で会話していたら機は下降を始め、あれよあれよと云う間に(定時の8時05分に)秋田空港へ着陸する。飛行機利用の山旅をする度に思うことだが、時間が空間を殺しているようで、なんか、とても勿体ない気がする。…ともあれ「花と展望・秋田の山旅5日間」の始まりだ。 秋田空港からは予約しておいたレンタカーを利用して、正味70分のドライブで田沢湖の北東に位置する「アルパこまくさ」の大駐車場に到着。シーズン中は交通規制が行われているので、ここからシャトルバスに乗り換えることになる。30分〜40分間隔で発着しているのでそれほど待ち時間のストレスは感じない。この日のシャトルバス(現地では代替バスと呼んでいる)の乗車率は6〜7割といったところだった。 ブナ林を伐り拓いたアスファルトをバスはくねくねと上り、駒ヶ岳の“最もポピュラーな”八合目登山口に着いたのは10時半頃だった。ここは標高既に1363m。気温は摂氏20℃くらいだろうか。歩くには半袖のTシャツ1枚でちょうどいい。トイレを済ませてから、大きく息をしてストレッチして、南西へ向かって片倉コースを歩き出す。 と、途端にハナニガナ、シロバナニガナ、ハクサンチドリ、モミジカラマツ、オニアザミ、ミヤマハンショウヅル、トリアショウマ(ヤマブキショウマ?)、…などの花が足元で微笑んで、私達を優しく迎えてくれる。もう既に森林限界付近の(ダケカンバは姿を消し、ミヤマハンノキ、ミネカエデ、ミネザクラ、キャラボク、ミネヤナギ、アカミノイヌツゲ、ハクサンシャクナゲ、ナナカマド類、そしてハイマツなどの)灌木帯で、空が開けてとてもいい気分だ。所々のササ(ネマガリダケ)もなんか懐かしい感じだ。 ヤマハハコ、トウゲブキ、シロバナトウウチソウ、…そしてニッコウキスゲやヨツバシオガマやハクサンシャジンなどの群落を愛でながら、男女岳(おなめだけ・1637m)の西側の山腹をなだらかにトラバースして高度を上げる。途中の片倉岳展望台などからは周囲のなだらかな峰々や薄靄に浮かぶ田沢湖が見えている。 湿原の木道を進むと、前方にひっそりと佇む阿弥陀池が見えてくる。複雑な地形をぐるっと見回してみても、足元のスコリアを見ても、この山が火山であることが改めて理解できる。更に進んで阿弥陀池の東岸に建つ避難小屋付近から北東方面を眺めると、雲海から岩手山が、黒々とした(片富士の)山影を突き出している。 とりあえず、ミヤマダイコンソウやエゾツツジやハクサンボウフウなどの咲き乱れる急坂(スコリアと木段)を往復して、一等三角点(点名:駒ヶ岳)のある男女岳の山頂で360度の展望を楽しむ。 この男女岳は割と若い寄生火山だそうで、駒ヶ岳の最高峰・つまり秋田県第一の高峰だ。しかし、駒ヶ岳の本峰は近く(南西方向の直線距離にして凡そ1km)に聳える男岳(おだけ・1623m)であるらしく、そのピークには駒形神社が祀られているという。ちょっとややこしくなるが、男岳の更に南には火口丘の女岳(めだけ・1512m)などもあり、片倉岳や横岳や小岳などを含めて総称した独立峰・円錐状二重式の活火山(ランクB)が駒ヶ岳、ということになるらしい。“昔は女人禁制の信仰の山であった”というが、そのことについてはなるべく夫婦の話題にはしないようにしている。「だからなんなのよ」 と(佐知子に)云われるに決まっているから…。 阿弥陀池畔に戻ってから三等三角点(点名:氷倉)のある横岳1583mに登ってみる。すると山稜の南側には横長根を挟んでまったりとした谷(通称:ムーミン谷)がすぐ近くに見下ろせて、木道(馬場の小路)の白っぽい線がはっきりと見て取れる。そのずっと奥の雲間からは和賀山塊だろうか、の山々も見えているが…。 「明日、大丈夫かしら…」 と佐知子が呟く。明日の私達の予定は南側(岩手県側)の国見温泉から(再度)秋田駒に登ってムーミン谷などを歩く、というものだったのだけれど、天気予報がイマイチなのだ…。 横岳からは北の山稜(県境の尾根)へ針路をとり、スコリアのザレ場(焼森)に咲くコマクサやイワブクロなどをじっくりと見つめる。保護のロープが張ってあって(咲いている花の位置が)遠いので、メガネを押さえてじっくりと見ないと良く分からないのだ。…それから乳頭山へ続く主稜を右に見送って、ミネザクラの赤い実やミネヤナギの柳絮(りゅうじょ)などを観察しながら赤倉尾根(シャクナゲ尾根)を下って、八合目登山口に戻り着く。14時40分発のシャトルバスに楽々と間に合った。 “豊富な高山植物と珍しい火山地形と展望に優れた名山”に圧倒されっぱなしの仕合わせな数時間だった。とはいえ…、あまりにも速い本日の流れだった。コース計画が少し“楽”過ぎた(=歩き足りなかった)かも…。 国見温泉石塚旅館: 秋田駒ヶ岳の南麓、岩手県側に位置する「日本秘湯を守る会」会員の宿。「アルパこまくさ」からは車で1時間弱の距離だった。バスクリンみたいな緑色の湯が特徴で、泉質は含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩泉の濃い成分であるらしい。この日はやや熱め。男女別の外湯や内湯、そして混浴の露天風呂などの石造り(一部木造り)の浴槽がなかなかシブい。もちろん源泉掛け流し。飲料可だが、ちょっと苦い味。1泊2食(トイレ付き)で一人10,950円は割安感かも。 宿の対応もとても良かったのだけれど、ただひとつ、私達の泊まった部屋の番号が「No.42」には流石にびっくりした。なんか不吉な感じがして、少し嫌な気がした。特に佐知子はこの手の“迷信”に敏感で、この山旅の5日間はず〜っと「帰りの飛行機、落ちないかしら」と本気で心配していた。 「国見温泉石塚旅館」のホームページ
●第2日目(7月23日): 抱返り渓谷と田沢湖 私達が秋田の山旅1泊目に国見温泉を選んだのは、翌日に国見温泉コースを歩いて駒ヶ岳登山をしたかったからだが、宿での7時30分からの朝食のときも、まだ迷っていた。外は小雨が降っていて濃い霧が出たり消えたりしている。天気予報は曇りマークと雨マークだ。…なのでやっぱり、「いちおう昨日は秋田駒を垣間見ているし、今日の南側からの往復登山は中止しよう!」ということになった。私達夫婦の「結論」は、だいたい低い方へ流れる。 で、宿をゆっくりと発って、5日間契約のレンタカーをフルに利用して、抱返(だきがえ)り渓谷の遊歩道(抱返り神社から回顧の滝を往復・正味約1時間)を歩いたり、田沢湖をぐるっと観光したりして過ごした。抱返り渓谷については、その南側に小さく聳える巨樹の森・小影山へ登った13年前の思い出が私にはあったので、とてもなつかしく感じた。また田沢湖一周観光では東岸(春山)の食堂で稲庭うどんを食べたり、北岸の「辰子の鏡石」を見たり(裏山登山的なけっこうなアルバイト)、お定まりの「たつこ像」見物をしたりした。日中は薄日も射したりして、けっこう(それなりに)よい天気だったのだ。…まぁ、結果論だけれど…。 この日は午後4時前には乳頭温泉郷「黒湯温泉」に着いて、ゆっくりと英気を養うことができた。この「黒湯」は乳頭山の登山口でもある。 次項「乳頭山」へ続く 乳頭温泉郷「黒湯温泉」については次項「乳頭山」を参照してください。 佐知子の歌日記より 夢のごと 令和元年文月の秋田駒ヶ岳に登頂す うつむいて駒ヶ岳に咲く紫の白山沙参は秋田美人なり ザレ地には強き風にもくじけずに女王コマクサ一面に咲く 迷信と心のなかでつぶやいて四十二号室にそっと入りぬ 入浴剤五箱分ではたりないか国見温泉は濃い緑色 あおあおと流れは速く抱返り渓谷の夏静かに涼し 山々に囲まれ深い田沢湖の淡いブルーのさざ波が聞こゆ 秋田駒ケ岳は花と火山地形と展望の名山!
↑男女岳の山頂にて …岩手山が雲海に浮かんでいた!… ↓焼森の山頂にて このページのトップへ↑ ホームへ |