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No.326 熊倉山1427m(奥武蔵・秩父)
平成26年10月16日 曇り時々薄晴れ

熊倉山・略図
「スズメバチに注意!」の看板が・・・
城山コース登山口

日の当たる林床にオオバアサガラの群生
スギ・ヒノキ林を登る

道標No.6の小ピークから熊倉山方面を望む
山頂部(?)が見えた!

ドウダンツツジ(?)の紅葉
色付き始めた山稜

長細い山頂部
熊倉山の山頂

下山路の渓流
5番目の(ヤバい)渡渉

手掘りのトンネル
矢通反隧道


ひたひたと脳裏に近寄ってくる寂峰

西武秩父駅-《タクシー20分》-城山コース登山口〜展望大岩〜熊倉山〜笹平(水場)〜官舎跡〜三又〜(沢道)〜林道出合〜日野コース登山口〜寺沢集落〜矢通反隧道〜秩父鉄道武州日野駅 【歩行時間: 5時間30分】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ


  山域で云うと奥武蔵の北西の外れ、奥秩父の東や奥多摩の北の名峰たち(和名倉山雲取山酉谷山など)と至近距離にあるのが熊倉山だ。 いくつかの峰々を従えたその容姿は、秩父盆地の北西側から眺めると、左に見える武甲山に勝るとも劣らない容量で目立っている。 私の独善だが、秩父で(山岳風景として)目立つ山のベストスリーは武甲山両神山とこの熊倉山、だと思う。 麓からの標高差は1100m以上あり、決して侮れない山である。

  池袋から午前6時50分発のレッドアロー号(ちちぶ3号)に乗って、終点の西武秩父駅に着いたのは8時12分だった。 当初の計画では、この先の(秩父鉄道の)白久駅まで行って、そこから歩き始めるつもりだった。 しかし、昨日にやってしまった(この季節恒例の)軽いギックリ腰(腰痛)のこともあり、久々の単独行だし、何となく不安だった。 で、やっぱり、駅前からタクシーを利用して、城山コースの登山口まで行ってもらうことにした。 これで標高差約300mは楽をすることになる。 お金で体力そのものを買うことはできないけれど、多少の“効率”ならば買うことができるのだ。
  ところが、私が乗ったタクシーの(私と同じくらいのトシの)運転手さんは、熊倉山の“城山コース登山口”を知らないという。 さて困った。 私がもっている25000図のコピーを見せて説明したら、そういえば15〜6年前頃に行った記憶がある、とのこと。 う〜ん、なんか、とても不安だけれど、とにかくタクシーは発進した。
  ウトウトしている場合ではなくなった。 地形図と首っ引きで、運転手さんと相談しながら、熊倉林道のそれらしき方向へ進む。 下山路に予定している日野コースの登山口を通過したので、もしかして近いかも、と喜んでいたら何時の間にか道はどんどん下っている。 なんか変ですね、と、運転手さんも私も気がついて、やっぱり戻ってみよう、ということになった。 運転手さんは申し訳なさそうに料金メーターをここでオフにしてくれた。 Uターンして暫く上ると、少し開けた峠っぽい処に(見落としていた)道標や案内板があり、ここが城山コースの登山口だということが分かった。
 「下山してきた登山者を迎えに行った昔(15〜6年前)は、確かここいら辺はヤブ(ササ?)だらけで、その登山者たちが藪からひょいと出てきた思い出がある…」 と運転手さんは言う。
 「今は登山道が整備されて、すっきりとしたんですね」 と私が応答する。
  タクシー料金は3,970円だった。 多分、ちゃんと走っていれば3,700円くらいだったと思う。 でもまぁいいか。 人のよさそうな、私と同じ年頃の運転手さんだもの…。
  なにやかやで、登山口から歩き始めたのは9時頃だった。 と、いきなりの急登。 ドロ壁のようなこの小幡尾根の急斜面が、これからずっと続くことになる。 道標はしっかりとしているようで、まずは一安心だ。 その道標にはナンバーがつけられていて、山頂までの大まかな位置が分かる仕組みになっている。 No.11→No.10→No.9と、スギ・ヒノキの人工林をひたすら登る。 やがてコナラ、ミズナラ、シデ類、クリ、ホオ、リョウブ、ヤマハンノキ、ヤマザクラ、イヌブナ、オオバアサガラ、カラマツ(少し)、…などの雑木林も交ざり出す。 クマとの突然の出遭いを恐れて、「がんばんべぇ!こんちくしょう!」などと意味不明の掛け声をかけながら登る。 50分に10分の割で休憩して、ポッキーを食べたりサーモスのコーヒーを飲んだりする。 そしてまた登る、登る、登る…。
  No.6の道標を過ぎたころから前方に熊倉山の山頂部と思しき山影が樹林の隙間から見えてくる。 岩っぽくなってきて、若干のアップダウンもでてくる。 (ロープを使わなくても済む)ロープ場なども出てきて、油断は禁物だ。 所々に国有林の境界標があり、それによると右側(尾根の西側)が国有林で左側(東側)は民有林のようだ。 林相は右も左も似たり寄ったりで、ヒノキ林にツガやイヌブナやカエデ類などが交ざり、低木ではアセビやツツジ類が目立っている。 やがてブナが台頭して、木々の色付き(紅葉)も鮮やかさを増し、とてもいい感じになってきた。
  本コース唯一の展望地という「展望大岩」の岩上に立ったが、残念なことに、見えるはずの(北面の)両神山や御荷鉾山などは雲の中だった。 気を取り直して更に進み、下山予定の日野コースとの分岐を右折して7〜8分ほども登ると、そこが熊倉山の(道標No.1の)細長い山頂だった。 腕時計を見ると11時50分。 腰痛の私としては上出来だ。
  3等三角点の標石と、その奥にある石祠が象徴的な、樹林に囲まれてひっそりとした山頂だ。 山頂部の最奥(南端)には奥多摩の酉谷山へ続く破線ルートがあり、木々の隙間からは和名倉山なども望めるはずだが、やはり薄いガスのため何にも見えない。 まぁ、晴れていても展望がそれほど期待できる山ではないので、ここはあっさりとあきらめて、おにぎりをゆっくりと食べてから、山頂部周辺の樹木を観察することにする。 例によって樹種などをメモってきた。→『…多い順に…ヒノキ、アセビ、ツツジ類、ダケカンバ(東側)、コミネカエデ、ツガ、リョウブ(朔果)、ミズナラ…など。 ヒノキが淘汰されつつあり、自然林に遷移している最中のように思える…』
  小1時間ほどいた山頂に別れを告げ踵を返し、くだんの分岐を右折して日野コースへ入る。 まずはヒノキ林を大きくジグザグと下る。 奇岩の脇を通ったり、シロヨメナの群生を見たり、左手に水場のあるやや平らな斜面(笹平)をトラバースしたり、トタンなどの残骸が生々しい「官舎跡(旧・営林署?)」を通過したり…、いい加減膝がガクガクし始めたころ、足下の瀬音が大きくなってきて、ひょいと沢筋へ下りた。 ここが三又と呼ばれる処で、なんとも云えずホッとする、気分の良いロケーションだ。
  三又から林道出合(林道終点)まで、歩行時間にして正味20分程度の区間だが、この情緒ある“沢下り”がとても楽しかった。 渓流の渡渉を6回繰り返すのだが、昨日までの雨の影響で増水していたこともあり、けっこう緊張した。 特に5番目の渡渉は文字通り丸太の一本橋で、ストックを活用してなんとか無事に渡り切ったが、ちょっとヤバかったかもしれない。 沢が終わってから慌てて辺りを見回したり思い出したりして、樹種をメモした。 →『…サワグルミ、トチノキ、カツラ、ケヤキ、イタヤカエデ、チドリノキ、カラスザンショウ、ヤシャブシ(?)、フサザクラ、オオバアサガラなど、矢張り沢筋の樹種が多い…』
  だらだらと下る林道歩きが長かったが、静かでおっとりとした里の風景に飽きることはなかった。 清らかな川が流れる寺沢の閑散とした集落を過ぎ、下り勾配の矢通反隧道(やとおそりずいどう)と呼ばれる小さな手掘りトンネルを通ったりして、秩父鉄道の武州日野駅に着いたのは午後4時少し前だった。 駅前の自動販売機で買ったスポーツ飲料水を飲んでいるとき、下りの電車が到着して、降りてきた通学の子供たちに「こんにちは〜」と挨拶された。 思わず顔がほころんで、仕合わせな気持ちになった。 そういえば、今朝のタクシー運転手さんと別れて以来、人間の姿を見たのはこのときが初めてだった。 なんか、不思議な感覚だ。
  不思議といえば、私の腰の痛みが何時の間にか消えているのも、かなり不思議だが…。

* 熊倉山の登山道は「昭和42年の埼玉国体のときに初めて一般登山道が整備された」とのことで、この山の一般登山に関する歴史は新しいようです。 熊倉山の現況をネット検索などで調べると、破線コースやオタクコースも含めると10本近くのルートがあるようで、かなりバラエティに富んでいます。 私が今回歩いたのはそのうちの代表的な一般道で、これだけで熊倉山を理解したと思ったら大間違いなのはよく理解しています。
  鬱陶しい都会での毎日にふと目を閉じたとき、ひたひたと脳裏に近寄ってくる寂峰…、それが私の熊倉山でした。


「わらじカツ弁当」と500ml缶ビールです * 帰路、西武秩父駅前の仲見世で購入した「わらじカツ・ミックス弁当 750円」 と…です。 ボリュームたっぷりで、とても美味しかったです。 (*^^)v
 ←西武線・レッドアロー号の車内にて



苔生したステキな沢
下山路(日野コース)の、苔生したステキな渓流: 三又にて撮影

芸術的な緑の美しさ
スギゴケ(城山コースにて)
赤いのはコハウチワカエデとコミネカエデ
落ち葉(城山コースにて)
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