「異星漂流アーティファム」
30 years has passed since the contact of Terranian and Kuktonian. In Cleyad, the
third planet of Ypserlon, both the two mankind live together, and the develop of the
planet is going on the way. It seems there is nothing hardship but friendship. Suddenly,
however, some Terranian people and its army make a revolution, declare the establish
of "Terranian Republic of Cleyad", and oppression to Kuktonian begins. While the two
governments find no effecitve measures, in Cleyad, Kuktonian and many Terarnian
partake in "the Cleyad Alliance", a rebel organization and fight against the Republic.
(by S.Uemura)
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目次
設定
イプザーロンの歴史(2060-88)
年表
年(西暦) | できごと(e=地球、k=ククト; 特に分かりにくいものにのみ付した) |
2060 | 地球軍、ベルウィック占領。
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2062 | この年までにククト新政府、新ククト(コロニー)主要部を制圧。
ククト新政府は首星を正式にククトと定める。
ククト新政府、旧政府の諸禁令を「永久的に」廃止。
ベルウィック・アゾレック大学にククト文化研究所(Clerk-Institute)設立。シャル・サライダ、名誉教授として迎えられる。:e
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2063 | 地球・ククト新政府共同軍、クレアドの旧ククト政府軍を一掃(-64)。
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2064 | 地球・ククト両軍、クレアドより撤兵。
ククト新政府、大統領制に移行。当面レアラ・ジェダが終身(無任期)で在任。
レアラ・ジェダ、地球を訪問。
平和条約
- 地球政府は公式にベルウィック、クレアド両星への侵略行為を認め、これをククト新政府に謝罪。
- 地球はククトに賠償金(実際には物資)を支払う。
- ククトでの内戦に関して今後地球は軍事介入しない。ただし新ククト政府への援助は行う。
- ベルウィックはククトから地球に譲渡、最終的に地球に帰属。
- クレアドは保留。
- 第1、第2、第6―第8惑星(いずれも居住不可能)は全てククトが領有。
ベルウィック・ククト間に定期便運行開始。
ジェイナス、記念博物館に。
移民法制定。:e
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2065 | ククト新政府軍、独力でカインモスを陥落。カインモスはアステロイドベルトにある小惑星の一つで、残存旧ククト政府軍最大の根拠。
産児制限緩和。:k
ククトにククト人初の大学創立、名称はククト大学。
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2066 | 地球・ククト間で交換留学制度開始。
新ククト政府、内戦終結を宣言。
ベルウィック・新ククト間に定期便運行開始。
アルマジロ号事件。新ククトへ向かう地球の民間宇宙船が、旧ククト軍残党によってハイジャック。
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2067 | ベルウィックで原因不明の熱病流行。後にククト人由来のものと判明。
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2068 | ククト政府改めて内戦終結を宣言(「反政府勢力の根絶を確認」)。 |
2069 | 徴兵制度を大幅に緩和。:k
バルチカン条約
- クレアドは両国の共同管理。
- クレアドでは、その国の国民の持つ土地がその国に属する。例えばある地球人所有の土地がククト人に売却されれば、その土地はククトに属することになる。逆も然り。「国有地」は存在せず、全て借り上げ。これは土地の所属が固定化されるおそれがあるため。領域的な「領土」ができると、両国間での領有権争いなどにつながりかねない。
- 帰属未定地は早いものがち。その認定は両国共同設置の「開拓庁」が行う。
- CIEKA = Court of Inter-Earth-Kukuto Affairs(英語に自信なし)
両国共同設置の裁判所。ククト・地球人間で起きたもめ事を解決。ただし上級裁判所であり、原告側の裁判所の判決で決着がつかなかった場合のみ審理される。
- 交通、電気、水道、通信網等インフラは全て民間で。
- クレアド外からの動植物の持ち込みは最低限度で。
- 両国が同等の軍を派遣。治安維持にあたる。
- 両国は将来クレアドが自治制に移行することを目指す。
シャル・サライダ引退。クレアドに移住。
ベルウィック・クレアド、ククト・クレアド、新ククト・クレアド間に定期便運行開始。
クレアド開拓庁、クレアド全土を州に区分。
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2070 | 13人のうち何人かはクレアドに再移住(-75)。
産児制限撤廃。:k
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2071 | クレアドの地球人住民の間で紫斑病(ククトの風土病)蔓延。
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2072 | ル・ゴフ事件。ベルウィックで起きた地球人同士の殺人にククト人が加担していたことが判明。
ククトでコレラ発生。地球人の陰謀との噂が広まる。
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2075 | ホテル・リモージュ事件。クレアドで地球人の経営するホテルで起きた火災の際、地球人が優先的に救助されたことが問題に。ホテルオーナーの「地球人として当然の行為」発言。
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2076 | クレアド開拓庁、各州の下に郡を設置。
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2079 | 移民法改正。同法をクレアドにも適用。:e
各地で移民法反対運動。:e |
2080 | 禁煙法制定。:k
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2084 | シャル・サライダ、クレアドにて死去。
グレダ・デュボア引退。
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2087 | レアラ・ジェダ引退。後任はロージ・オルク。
クレアドで地球人による暴動発生。
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2088 | 地球、ククトのクレアド駐屯軍増強。
クレアド独立戦争勃発。クレアドに駐屯する地球軍と、一部の地球人住民が蜂起。ククト政府はクレアド派遣軍を引き上げ。従って決起軍は全土を制圧、「クレアド・地球人共和国」(Terranian Republic of Cleyad)を宣言。
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概説イプザーロン史
ククト新政府の成立
リベラリスト・グループは、予想外に早く、2062年にはほぼ全新ククトを制圧する。それはコロニー内部からの反乱があったことや、自衛というかたちでの地球軍の援助があったためだ。だが、彼らは軍政時代の残り香の強い新ククトを首都とすることはしなかった。ククト人の中には軍政には反対でも、地球よりの政策にも反感を持つ者がいたからである。そして新政府はこれまでのしがらみを捨て新たな出発を図る意味で、それまでも暫定的に首都であったククトに中心を置いた。
しかし新政府の前途は多難だった。ククトニアンは軍政以外の政治体制をほとんど忘却していたため、リベラリスト・グループは、軍政を擬した指導形態をとっていた(ジェダは大佐。そうカ○フィーのように)。この状態からは一刻も早く脱却する必要があった。そのため、彼らは地球の政治制度に範をとり、地球風の大統領制を導入する。またその他の面でも地球の制度を様々なかたちで取り入れる。2065年の大学設置もその一環であり、翌年には交換留学制度によって、近い将来の人材確保を始める。
また、新ククト方面での平和の確立に努める一方で、クレアドに依然として居座る旧政府軍の掃討にも着手する。これは地球側の強い要請により、両国の共同軍というかたちで実行される。もちろん地球側には、クレアドに対する実効的な影響力を保持しようと言う意図があったのは言うまでもない。
2064年に地球とククト新政府の間で平和条約が結ばれた。停戦から4年を要したのは、一つには地球側が、果たしてリベラリスト・グループがククトでの支配体制を確立するのかその趨勢を見守っていたためである。実はこの間に旧政府側の地球への接触も秘密裏に行われていた。この条約で地球側は侵略行為を認めたものの、ベルウィックは地球領となり、地球が名を捨て実を取るかたちとなった。というのはベルウィックはイプザーロンにおける地球側の橋頭堡の役割を果たしていたからである。例えば2062年の時点でアゾレック大学が活動しているように、停戦直後から地球人のベルウィックへの移民が小規模ながら再開され、「地球化」は既成事実となっていた。また結局リベラリスト・グループが旧政府打倒にあたって、地球の手助けを受けざるを得なかったという力の関係もあった。
この4年間、クレアド問題について何度となく交渉され、平和条約締結を遅らせる別の原因となっていた(クレアドへの共同軍はこれには触れない形で派遣された)。しかしこれは結局当面棚上げとなる。その理由はやはりベルウィックに比べて、クレアドがあらゆる面で豊かであり、どちらにとっても絶対退けない一線だったからである。そしてまた2058年の時点で地球の入植がほとんど進んでいなかった同星の帰属は灰色だった。
この後、ククト新政府の支配権は揺るぎないものとなったが、旧政府軍の残党を一掃するにはなお数年を要した(年表中の「カインモス」は「パーフェクト・メモリー」、「大図鑑」に出ているのを流用)。それはベルウィックを地球に譲り渡して以後、新政府への公然たる非難の声はもちろんのこと、旧政府軍を援助し出す者もあったからだ。またクレアド平定や、平和条約で思い知らされたバランス関係を可能な限り均衡状態に是正するために、ククトが独力でこれを達成しようと試みたからである。ククト側のこの思惑のため、クレアド問題の決着も引き延ばされた。
クレアド領有問題の帰趨
そしてククト政府としては満を持して2069年のバルチカン条約を迎える。この条約でクレアド問題はようやく解決をみることになる。2058年の開戦から11年が経過していた。それでもなお、クレアドは「共同管理」という微妙な状態に置かれることになった[*1]。だがこれは、クレアドを地球領とククト領に分割するものではない。この共同管理は一種の実験だった。クレアドでは両者が完全に混住することを目指していた。そのために両国家の統治はきわめて緩いものにとどめられた。公的権力、とりわけ行政権はクレアドの中にはほとんど及ばなかった。クレアドには地方自治体や国会のようなものは存在しない。司法については両国とも幾つかの裁判所を設置し、また両国民間の訴訟を解決するためのCIEKAが置かれてはいたものの、人口の分布がまばらであるために、いつでも現実的に利用可能というわけではなかった。結果として(当然であるが)、クレアドは全ての物事が私的に解決される傾向の強い星となった。また、クレアドへの移民は当面希望制とされた。
そのため地球・ククト人間のトラブルは最初のうち意外なほど少なかった。初期に地球人住民がククトニアンの伝染病に罹患したのは重大な事件だったが、これもすぐに解決した。移住希望者は地球ではまず「ククト人」という手つかずの巨大な市場を開拓しようという人々だった。彼らはここでククト人の生活習慣や社会、文化などあらゆることを実地に体験しようとしていた。また、ククトの地球にはない科学技術を学んで新たな産業を興そうとする人々もいた。一方で単に自然環境がベルウィックより苛酷でないという理由で選んだ者もあったが、多くの人にとっては自然や猛獣(例:ギャンザー)より、何より「人間」がもっとも恐ろしい存在だった。ククト人にとっては、既に述べたように彼らは文化の面で地球人におくれをとっていたために、それを吸収しようとやって来る者が多かった。あるいはかつてのクレアド系ククト人の子孫であり、彼らはクレアドの地理を完全に把握していたため、鉱山や油田などを再開発、経営していった。
このようにしてクレアド共同管理の最初の10年は順風満帆だった。しかしその成果をふまえて2079年、地球は移民法を改正する。移民法では一定以下の納税額の者は、つまり貧民は事実上強制的に移民させることができた[*2]。これはそれまでベルウィックにのみ適用されていた。しかしこの改正によって、クレアドへも強制移民が行われることになった。この改正が行われた理由は、クレアドへの移住が希望制だったため、人口の伸びが緩慢だったこと、しかも地球人の割合がより少なかったことである(そのためこの改正はククトに受け容れられた)。これは、多くのククト人がそれまでの軍政の息苦しさから解き放たれ、そして新しい国づくりという使命感をもっていたため、地球人と接触できるクレアドを選ぶことが多かったためである。もちろんこれは地球人と比べた場合であり、ククトニアン全体で見ればククト本星への「帰還」希望者の数が遙かに多かったのは言うまでもない[*3]。
暗雲
地球人新規入植者の間には急速にうっせきがたまった。彼らと早期に移民した人々、特にククト人との間には経済的に大きな格差があった。この隔たりを埋めるのは彼らだけの力では難しかった。しかしクレアドでは先述のように行政がほとんど介入しない代わりに、政府の援助も少なかった。確かに一方でそれに相応して課税も軽かったのだが、それはどちらかといえば富める者にとってこそ恩恵となりえた。彼ら貧民層の生活状況は新天地でも改善されなかった。だから、それは本質的には地球政府の政策への不満だった。しかしそれはともすれば、目の前にいるククトニアンへの敵意に転化しがちだった。実際本来正統な住民であるククト人は先述の理由で、比較的豊かな生活を営む者が多かった。クレアドはククトに近い分だけ、地球がクレアドに投資するより遙かに多くのククト人資本が投入されていた。また、予備知識なしにやって来た新移民者が、ククトニアンと共存する、あるいはククトニアンのもとで働く生活になかなか馴染めなかったのも確かである(断っておくが、それは彼らが物質的に貧しいからではなく、それがむしろ自然なのだ)。2087年には暴動が起き、両国は軍を増強する。だがそれは裏目に出た。地球軍はほとんど全て徴兵された兵隊からなっていた。彼らもやはり(徴兵を避けることのできなかった)貧民出身であった。彼らは軍に強制的に(と彼らは感じていた)入隊させられた上に、目と鼻の先に異星人の軍がいる、もっとも危険な(と彼らは感じていた)地域に配置されたことに強い不満を持っていた。しかも彼らは除隊後、そのままクレアドに留まることになるのはほぼ確実だったから、いっそう自暴自棄になっていた。彼らは2088年に再び起きた暴動で、暴徒の鎮圧をボイコットした。彼らはクレアド駐屯軍司令官を処刑し、貧民移民者と形の上では結託して蜂起する。しかし反乱は実質的には軍のフェリクス・レナード(Felix Renard)大佐の主導となっていった。それは地球政府からの独立であると同時に、ククトニアン排斥の偏狭な運動であった(なんだか昨今の民族主義問題を反映したような感じだ)。クレアドからククト人を追い出し、かわりに地球人の国家をうち立てようというのである。
もちろん即座に地球・ククト共同軍の派遣が提案された。イプザーロンにおいて緊急時に最終決定権を持つのはベルウィックの司令である。地球の指示を待つだけの猶予はなかった。ところが、ゴードン・オコーナー(Gordon O'Corner)は躊躇した。旧地球クレアド駐屯軍の大半は某国軍だった。その発言力と意向を無視するわけにはいかなかった。結局彼の回答は、地球軍の一部が反乱を起こしたのだから、あくまで地球の問題であり、ククト軍の「干渉」する余地はないというのである(無論この論理には無理がある)。また、共和国が独立を達成したところで、彼らが結局は親・地球に傾くことは明白であるから、ここでクレアドを実質的に地球の勢力圏に引き入れてしまおうという計算もあったのかも知れない。一方ククト側は前年にジェダが引退し、指導力が低下していた。ククト政府の運営は、今までのところジェダの個人的能力に頼るところが大きかった(ちなみに後任の人物は名前だけで性別も決めていない)。彼が身をひいたのは、そのような状態からより安定した組織への移行をうながすためであり、その点で彼の洞察力は卓越していた。だが、それがこのような事態の発生と重なったのは不幸な偶然だった。ククト政府は地球人にむやみに攻撃して、いたづらに戦火を拡大させることを恐れ、軍隊を撤退させた。結果的に共和国軍はほとんど無血でクレアドを制圧し、当面ククト人住民にも死者は少なかった。共和国軍は惑星の全土に展開しているとはいえ、広大な土地を完全に掌握することはできなかった。
ククトの要求によりオコーナーは、クレアドについてどちらか一国のみの問題は存在せず、すべて両国が共同で解決に当たることを確認した。しかし次には「共和国」代表との対話によって事態を打開するかの議論が長引いていった。オコーナーはあくまで地球からの指示を待つつもりだった。その間にクレアドに残ったククトニアン住民と多数の地球人住民(多くは古くからの移民者)がゲリラ組織「クレアド同盟」を結成して共和国軍に抵抗を始めた。そして数ヶ月がたった……。
RV & メカニック
主役メカ「アーティファム」についてさえ名前しか決めていない。何も考えていないのではないが、こういう方面にはからきし弱いのでご勘弁願いたい。
あれから30年を経ているのだから2058年当時のRVは一線を退いているだろう。ただし同盟軍は、払い下げの作業用RVだったバイファムあたりを使っているかも知れない。もちろん武装は外されているが、そもそもライフル以外になかったりする。クレアド同盟が自前でRV開発するのは無理があると思う。ベルウィックやククトの支援組織が持ち込んだりするあたりがせいぜいじゃないだろうか。そもそもゲリラのくせにそんな大型の兵器を運用できるものだろうか。
地球・ククト双方がお互いの技術を取り入れたRVを開発しているか、あるいはもっと積極的に共同開発している可能性はある。ただしイプザーロンにしろテラ・太陽系(地球のある太陽系)にせよ、ここ20年比較的平和だったので、RV開発のペースはそれほど速くないはずだ。面倒くさいのは、共和国軍とゲリラで似た、あるいは同じRVを使用していると、観ていて分かりにくくなりそうなことだ。しかもゲリラ軍はククトニアンが一つの中心となっているから、「バイファム」のARVみたいなのばかりになるのが理屈だ。しかしそれは見てくれが悪すぎる。RVの名前にしても、地球軍が「××ファム」で、同盟軍はククト風の名前になることになるが、それは避けたい。さらには主役メカ・アーティファムを子どもたちはどうやって手に入れるのか。彼らが搭乗するRVを一人づつ変えるにはどうすればいいのか。共和国軍は地球から持ち込んだ最新鋭のRVを使っていることにでもしようか。要するに全ての根っこは「差別化」にある。敵味方の差別化、そして子どもたちのRVの差別化。
「可変RV」なんてものは登場しない、と言いたいところだが、上述のようにRVをどのように運搬するのかが重要問題となる。「バイファム」と同じ設定のままなら、RVは自力で常に移動し続けるというのは駄目だ。また仮に「バイファム」と同じく3機のRVを主役メカに据えるとして、それを載せたキャリアーが走っていたらあまりに目立ちすぎるのではないか。
だから、RV自体に長距離移動能力を持たせることになるかも知れない。たとえ変形させてでも。とは言っても「飛行形態」ではない。戦場に迅速に到達するのが目的ではないからだ(飛べないと人気が落ちそうだが…)。だからせいぜい車くらいの速さで効率よく走ろうということだ。と言ってもメカについてはまるで詳しくないので、それが現実的かどうか分からない。
あるいは地上用という位置づけで、小型化されたRVを導入するべきだろうか。小型RVというよりは大型ウェアパペットと呼ぶべきメカだ[*4]。全高7mくらいのものだ。地上で作業をするにはこれくらいの方が小回りが利くということで、それなりに説得力はあるだろう。ただ、「バイファム」では子どもたちがディルファムを使って色々やっていたので、多少齟齬が生じる。加えて上述の旧式RVは恐らく全く無用のデカ物になってしまう。そしてそこまで違えてしまうと、もはや「バイファム」の続編と呼ぶにはふさわしくなさそうだ。それでも、地上がほとんどなのだからと言ってディルファムみたいなのばかりにはしたくはない(単にカッコ悪いから)。何か適度な味付けがほしい。
先ほど問題にした移動手段についてだが、物語を続ける都合上、旅は長くしなくてはならない。そのためには移動距離を長くするか、移動速度を遅くするかどちらかだ。「バイファム」は前者だった。今回は、「バイファム」よりスケールダウンされたのだから、後者とするしかない。だから、空を飛ぶようなことはしない。もっともそんなことをしたら一発で敵に見つかるが。従ってまた、あまり大きな乗り物を使うわけには行かないだろう。せいぜいトレーラーかバスくらいの大きさの装甲車あたりだろう。それでも車を使う限り道を通らなくてはならないのが問題だ。しかもRVを運搬しなくてはならない。おまけに、「バイファム」の感想で何回か指摘したように(1998.7.30など)、地上だと、どうしても手持ちぶさた、所在ない子どもができてしまう恐れが強い。これらを合わせて解決するために何か適切な乗り物が必要である。とは言っても、宇宙では宇宙船以外はありえないが、地上では色々と選択肢があるわけで、全編を通してなにがしかの同じ乗り物で旅を続けるのではなく、乗り捨てを繰り返しつつ進むことになりそうだ。鉄道や船などだ(まるで修学旅行だ)。そうすると、RVの方も何度かやむを得ず置いていくことになるかもしれない。あるいは大破させてしまうとか。これは一度なら、主役メカを交替させる意味でできなくはないが、そう何度もやれないだろう。
どうもあまりに解決しなくてはならないことが多すぎるのでRVを放棄しようかとも思った。地上用RVなんて"Round Vernian"とは呼べないだろうし。エピソード(の断片)を考えていても、町のガキンコグループとンカして云々、お約束の「覗き」、ククトニアンであることを隠すために変装など、RVとはおよそ無縁な話ばかり思いついてしまう。だが、かといって子どもたちに白兵戦を(ケンカのことじゃないよ)させるのも無理がある。互角に戦えないだろうということのほかに、流血を見せたくないからだ。困ったことだ。
これはRVではないが、宇宙船は地表から直接飛び立つことになる。ククト人は2058年の段階でそれを実現しているのだから当然だ。またこれによってゲリラ側は、たやすく惑星外からの支援を受けることができる。もちろん共和国軍も宇宙軍を持っているはずだが、あまり充実はしていないと思う。従って艦のデザインも地上に着地できることを考慮したものになる。あるいは(ヤマトの第3艦橋みたいなのが「あり」なら)海などに着水して運用する(でもそれだけの浮力を持たせるのは無駄な気がする)。
クレアドの地理
自然
「バイファム」はクレアドから物語が始まったのだが、クレアド自体は舞台ではなかった。恐らくクレアドについての設定もほとんどないのだろう。「バイファム」中で描かれる限りでは地球とよく似た惑星ということだ。だから、基本的には地球と同じように描かれる。話を面白くしたいので、あちこち、寒いところから暑いところまで移動することになる。
しかしよく似ているとはいえ、クレアドは地球とは別の惑星だ。従って、自転や公転の周期、大きさをきちんと考えなくてはならない。ここで問題になることが2つある。一つは、それを正確に設定するのは面倒くさいこと。もう一つはそれをやりすぎると、あまりに別世界になりすぎて、話が荒唐無稽な方へ進んでしまいかねないこと。
動植物はクレアド固有種を多く考えなくてはならない。だがこれも過度に設定するのは禁物。例えば、牙と角と両方ある哺乳類とか、「肢」が6本ある脊椎動物とか。また、地球のそれに似た動植物には同じ名前が付けられている。栽培植物や家畜の中には地球から持ち込んだものもあるが、バルチカン条約でクレアド外の動植物の持ち込みは制限されているため、そう種類は多くない。ジャガイモ、トウモロコシ、米など特に高い収穫率が見込めるものだけである。その他はクレアド原産の農作物でまかなっている。
人口
2088年の時点で5000万人くらい。うちククトニアンは3300万人くらいだ。大して根拠のある数字ではない。日本の人口より少なく、人口密度はごく稀薄だが都市人口が多い。ただし都市住民の多くは低所得者。
しかしたった20年でこれだけの人間が暮らせるだけの水準まで発展できるのか、何とも言えない。とくに地球から一度にどれほどの人間を運べるのかさっぱり分からない。例えばアメリカ合衆国への移民では、1901-20年の間の移民者は1500万人だ。果たしてこれを上回る規模での移民を受け容れることができるのだろうか?
しかしどうにかしてある程度の人口にしないと、話を作れない(いっそ「2099」にしちゃおっか、ってそれだとロディが50がらみ……)。
産業
まず農業が盛ん。粗放的な大規模経営が中心。その多くはククトニアンの「メジャー」(Major)と呼ばれる企業による。個人の耕作地も極めて広大である。自給率は100%。また主にベルウィック向けの輸出も行われている。当たり前だがベルウィックに地球から食料を運ぶことは非現実的だ。全般に漁業や畜産など第一次産業が主流。
一方、ハイテク産業も活発。ククトと地球の共同研究・開発が進められている。鉱産資源は潤沢だが、大部分は原料のままベルウィックや新ククトへと輸出されている。従って重工業はまだそれほど盛んではないが、軽工業は発展しつつある。
参考: クレアド世界地図
クレアドの社会(2088年以前)
地名の管理
ペンブローク州モンベリアル郡セリニアン村セリニアン
セリニアン村の中心部の住所だ。クレアドにおいて、住所は完全に土地の区分としての機能しか持たない。つまり、「セリニアン村」という行政単位はない。
クレアドは無人の星だった。従って地名も全く存在していなかった。ククト人が住んでいたのははるか以前のことである。彼らは全ての土地の地名を記録に残していたわけではない。また、当面人の住んでいない土地に地名をつけるのは無駄なことだ。
開拓庁はまずクレアド全土を州に分割した。1つの州の面積は日本かそれ以上の大きさを有することがほとんどだ。後になってさらにその下に郡を置くが、それ以上のことはしなかった。
ある人が無人の土地を自分のものにしようと思ったら、開拓庁(やその出先機関)に申請しなくてはならない。もちろんその登記は地図を用いてなされるが、その時所有者となった人はその土地を自分の好きなように命名することができる(しなくてもいいが不便)。こうしてその土地はA州B郡Cという地名を持つことになる。Cはどの市町村にも属しないが、それで法的には問題ない。また、実際クレアドの町や村は未開の原野を海とするなら、そこにぽっかりと浮かぶ小島のような存在だから、それが理にかなっている。
市町村の名前は、複数の土地の所有者が開拓庁に登録することで生まれる。「複数の」は土地にかかるのであって、1人の所有者が複数の土地(=別の名前を持つ土地の集まり)を持っている場合でも可能だ。またククト人、地球人が混じっていても問題ない。しかし、それらの土地は隣接している必要がある。当然だが、それぞれ100kmも離れたばらばらの土地の場合は不可能だ。また、その時その市町村は、その下に属することになるどれかの土地に、同じ名前の土地を持ってなくてはならない。というのはその土地が市町村に属するかどうかはその所有者が決めることなので、所属を取り消すこともできるからだ。「市町村」は地理的な概念なので、そうした登録/抹消によって、市町村の範囲がむやみに移動してしまっては困る。そのために不動の中心としてその市町村と同じ名前の土地の存在を義務づけている。
そこが市/町/村のどれになるかは、そこの住民に任されている。見栄っ張りな住民ばかりなら、数十戸の「市」ということも(可能性として)あり得る。実際、開拓庁は市/町/村という区分自体は管理していない。彼らが管理しているのは、例えば「セリニアン」という名前だけであり、純粋に管理上、地名を階層化したほうが便利であるために登録させている。だから「村」というのは通称に過ぎない。このようなプライベートな地名(通称)は小さな地名などにしばしば見られる。
しかし大きな町では単純な地名だけでは不十分で、番地などが必要になってくる。この場合、番地はプライベートなもので済まされることがほとんどだ。開拓庁からは地名のない土地として扱われる。あるいは別のやり方で実現していることもあるだろう。しかしその場合でも市町村の自治体が独自に管理していることがある(自治体については次項)。
地方自治体
市町村は公的な存在ではない。しかしどんな小さな村にも自治体が、たとえ我々の観念では団地の管理組合と同程度であれ、確かに存在し、また大きな町であれば、機能上は我々の知っているのと何ら変わるところのない役所や議会を備えている。
それらの自治体は、警察や消防署などの公安機関、学校(教育機関)、場合によっては福祉・厚生施設までも維持・管理している。しかし自治体はあくまで住民が自主的に運営しているに過ぎないから、財政は基本的に「自給自足」である。つまり国――地球あるいはククト――からの支援はない(ただし学校や病院は、開設にあたってその所有者が属する国の認可がいる、そしてそれらに対しその国からの援助がある)。クレアドの住民はククト人であれ、地球人であれ、国に納める税金の額が極めて少ないので(このような仕組みなのだから当然だ!)、負担が重すぎるということはない。
こうした自治体は住民がその必要性を感じて、自然に発生したものであり、それ故その権威は住民自身に由来する。少なくともその自治体の中では。とはいえ、自治体は実質的な機能を持っているので、ほかの自治体に対しても権威を有する事実上の公的機関となっている。
自治体の治める範囲は、常識的には地理的な区分と一致する。しかし自治体は今まで述べてきたような性格を持つものであるから、必ずしもそれと一致している必要はない。例えばある町が周りの村を吸収した際に、地名の公式な変更はせずに済ませているということはある。
財政的に完全に自立しているため、各自治体の独立性は非常に強く、時には入市税をとり[*5]、小独立国家の観を呈するものもある。一方で逆に全く住民自治体の存在しない町もある。この町では、自分の身は自分で守り、公共機関はすべて私立で置き換えられている(私立学校、私立病院……)。もし火事が起きたら? その時は「消防会社」(普段は建築物解体を業務としている)に連絡すれば、有料で鎮火にあたってくれるだろう。あなたが保険に加入していれば損害は十分に償われるはずだ。
自治体内の住民は、理想的にはククト人、地球人混在であり、従って住民はククト国籍か地球国籍を持ち、自治体内の土地もククト領と地球領に分かれている。それでも何ら不都合を生じないのが、クレアドの自治体の特長である。だが、両者の反目が消えるかどうかは別の話であり、事実とりわけ大都市ではそれは深刻な問題だった[*6]。この点では、上からの押しつけではない自主性に任せた共同体ならば、自ずと対立も消えるだろうという期待は裏切られたと言える。
また別の問題は、市町村以上の自治体がないことである。今のところそうした広域的な機関の必要性は薄いが、個別的に市町村の代表同士の集まりが持たれている地域も存在する。特に下水処理では、河川の上流と下流の町でしばしば協議がなされている。
こうした状況は2088年に大きな転換を迎える。しかし共和国、同盟とも、各地の独自色があまりに強いため、前者はその取り込みに(もっと言えば併合)、後者はそれぞれの統合・調整に腐心しているものの、必ずしもうまくいっていないのが実状である。中には同盟に参加せずに共和国に抵抗しているものもあれば、完全に中立を維持しているところもある。
2088年のイプザーロン
クレアドの情勢
クレアド・地球人共和国
フェリクス・レナード(Felix Renard)大佐が実権を握っている。当然軍事政権であるが、行政機構も形の上では整備されつつある。特に都市部におけるククトニアンの管理・監視体制は既にできあがっている。共和国軍は全土に展開し、都市や幹線交通網を制圧・支配している。しかし元々クレアドの治安維持はククト軍と合同で行っていたので、戦力の絶対数が不足している。クレアドを代表する国家を標榜している以上、どの地方も明け渡さないつもりだが、マーガリンのように薄く広く軍を分散配置しているのは、決して得策とは言えない。兵員、装備の拡充に努めてはいるが、どう考えても「チンピラ」くずれの兵士が多い。
共和国支持者は(もちろん全て地球人)、主に都市部に多い。彼らは地方の荒蕪地("backblocks")で開拓に従事したくはないが、かといって都市でククト人のもとで労働するのも望まないといった人々である(ドイツのネオナチに近いかもね)。あるいはまた、ククト人企業の経営する大農場、鉱山、油田その他の権益を手中に収めようとする上層軍人や資本家である。彼らの思惑は、ククトニアン追放・独立達成である。しかしその後については、改めて独立国家として地球連邦に参加するか、あるいは完全に地球からは独立を守るのか、明確なビジョンは持っていないようである。
クレアド同盟
幾つかあるゲリラ組織のうち最大の勢力を有する。指導者は地球人のローマン・タウンゼント(Roman Taunsend)。2046年地球に生まれる。2049年に両親に連れられベルウィックに移住。2066-70年にかけ地球に留学した。優秀な人物。ベルウィックに戻ってから政治運動を始めるが、挫折。2073年クレアドに渡り、ククト人の知己を多く得る。2077年にククト人、アルノー・クーム(Arno Cuum)と結婚。2085年頃からクレアドでの地球人住民のヒステリックな行動に危機感を抱き始め、作家・評論家として穏健な改革を呼びかける一方、有力なククトニアンには万一の事態に備えるよう密かに警告する。2087年に最初の暴動が起きると、各地の反・急進派の連絡組織を結成する。この動乱の勃発を見越していながら、それを未然に防ぐ最大限の努力はしていなかったとも見られている。ピューター・アリス(Pjuter Alice)はククトニアンの元軍人で、彼の右腕(アリスは姓で、男)。同盟軍の規模などは明らかではないが、ククト軍のクレアド撤退の際に武器弾薬を秘密裏に引き渡されている。また惑星外の支援組織やククト系の兵器会社からも密かに援助がある。それでも今のところは正に「ゲリラ」で、大規模な抵抗活動は始まっていない。しかしククトニアンへの弾圧が徐々に厳しくなっていく中で、それまでは静観していたククト人資産家の支持も着々と集まってきている。現在同盟の本部がどこにあるかは不明。しばしば移動を繰り返しているとも言われる。
他惑星の状況
ベルウィック
イプザーロンにおける地球の本拠はベルウィックであり、ここが首星だ。ベルウィックはクレアドを上回る勢いで開発が進められ急速に発展している。主な産業は重工業だ。だが必ずしも快適に生活できる惑星ではない。にもかかわらず、クレアドからの食料輸入のめどがたってからは、人口はうなぎ登りである(それまではククトから輸入)。しかしそれは裏を返せば地球からそれだけ多くの人間が追い出されてきたということである(自然増もあるにせよ)。今のところ、クレアド問題の陰に隠れて目立たないが、ベルウィックの住民も地球の施政にかなりの不満を持っている。地球は四十余光年の彼方の存在であり、地球政府はイプザーロンの事情を把握しきっていないのに、あれやこれやと難題を押しつけているのだ。
しかも、今回のクレアド問題で地球が緊急時に決してあてにならないことが明らかになってしまった。彼らにとってはむしろククトの方が頼りになる存在であることがはっきりしてきたのだ。恐らくやがて彼らは「地球人」よりも「イプザーロン人」としての意識を持ち始めるだろう。
ククト
ククトニアンの政治、経済の中心であり、またイプザーロンでも最も発展した惑星。事実上イプザーロンの首星。農産物も豊かで、クレアドの再開拓が始まるまではベルウィックの食料庫だった。現在でも主に新ククトに向けての輸出が継続されている。工業は新ククトに任せている。
タウト星は(あるいはまだ残骸が)あるだろうが、登場しないのでどうなったかは不明。旧タウト星は存在すらおぼつかない。考慮外。
新ククト
小惑星地帯のコロニーは放棄されてはいない。工業生産はイプザーロンでも随一である。とくに無重力地帯でのみ生産可能な合金製造などはここの基幹産業である。逆にそれ以外は急速に廃れつつある。またいまだに旧政府軍が生き延びていたり、あるいは反政府勢力の温床となりかねないので、軍もそれなりに駐屯している。ただし工場ばかりで今では人口は少ない。多くの人々はククトやクレアドに出ていった。
- *1
- 地球側にはイプザーロンの他に植民星はないという設定にしている。だから今のところイプザーロンに執着せざるをえない。宇宙のどこでも数ヶ月で行けるのだから、さっさと他の無人の惑星を探せばいいのにと考えるとこの話がなりたたなくなる。
- *2
- ちなみにこの時代、地球では、より多く税金を納めているものは、それだけ国家に貢献しているのだから、その他の義務は軽減されてしかるべきであるという考え方が支配的になっている。
- *3
- とは言ってもククト人は狭いコロニーで暮らしていたため、産児制限があり、人口は地球人よりずっと少ない(具体的にどれくらいかまでは考えていないが)。
- *4
- 現在(1998.11)観ているアニメに影響されているわけではない、はず。
- *5
- それは地球でもククトでも違法であるはずだが、誰も止め得ない。市内の道路は有料であるということになっている。
- *6
- このようなかたちの自治体では、低所得者への経済援助まで手がまわらない場合がしばしばで、彼らの不満が「ククト人が富を独占している」というようなかたちになるからである。しかし、クレアドでは都市を出れば、未開だが豊かな土地はまだまだ残っているのであり、彼らがそこを手に入れようとせず、都市に居残りたがるのにも問題があるといえる。
物語
セリニアン村[*7]
ここに一つの村がある。名前はセリニアン。ただし「ムラ」で済まされることがほとんどだ。戦争中とはいえ一見普通の村である。しかしこの村の住民は全員ゲリラだ。ゲリラといっても直接戦闘に参加している人は少なく、要するにゲリラ活動を(密かに)支持している村だ。そういう村は全土にあり、その中の一つである。村には当然ククト人と地球人が一緒に住んでいるし、子どもたちも両方だ。中にはミリーのような混血児もいる。
村の形態について触れておく。数十戸の家が一所に集まっているわけではない。直径15km程の円の中にぽつぽつと一軒ずつ、あるいは数軒が固まって散在している。円の中心には(広義の)公共施設が固まっている。学校(兼集会所)や医者(無医村ではない)、村人が共有する資産(軽飛行機、作業用RVとか)の倉庫から、居酒屋、雑貨屋まで。村は行政的(一応この言葉を使う)には地球とククトに二分されているが、社会としては完全に一つである。村には村民の中から投票で選ばれた村長がいるが、これは法的には何の地位も持たない単なる住民の代表である。従って行政機構の末端に連なっているのではないが、クレアドにはそもそもそのような縦割りの「行政機構」がないのだ(クレアドの社会(2088年以前)参照)。彼は村民の共通問題の最終的な決定者であり、もめ事も通常彼が解決する。現在村長は地球人である。村民の目下の関心は現金収入のために酒の密売をおこなうかどうかだ[*8]。
学校の建物は村人の共同出資であり、建設・管理・維持全てが村民の負担だ。具体的には、村民共有の農地の生産物の代価を充てている。この辺が高くつくのがクレアドの問題だ。だから公立学校というものは存在しない。先生は、教員の組合組織から派遣される。教師の資格自体は地球やククトの国家が認定する。
建物としての学校はこの時代にはなくなっていてもおかしくないが、そうすると現代と隔たりがあるので敢えてやめる。理由をつけるとすればCAIの試みがうまくいかなかったとかだ(ちょっと無理があるかな)。コンピュータの補助はもちろんあるが、人間の教師の存在は不可欠とされている。ただし、倫理や道徳といった科目は家庭で教えることとされている。つまり学校では本当にプロに習うほうが効率的なことだけが教えられている。家庭が教育費を抑えられる一方で、教師も負担が少なくてすむからだ。だから感覚としては集団で雇った家庭教師といったところだ。教師は1人か2人で、中学生程度のことまでを教える。高学年の子が小さな子を教える助教制度が最大限に活用されている。高校以上の教育を望む子どもは町の学校に進学する。
子どもたち
今度は11人、実質的には10人だ。数を減らしたのは、後述するようにうまく役を割り当てきれずない子どもがでてきてしまいそうだからだ。最初もっと少なくしようと思っていたのだが、人数が減ると人間関係がそれだけ単純になってしまい、面白みがない。誰かが何かしたときに波のように反応が連鎖していくということがなくては「バイファム」ではないだろう。
ただし3人少なくなった分は年少組を犠牲にしたので、その年頃の視聴者には不満だろう。それだけ対象年齢が高くなるということでもある。
名前 | 年齢 | 性格、容姿、特徴 |
性別 |
---|
人種? |
ディーヴ・アルマン | Diev Alman | 15歳2ヶ月 | 多少強引なところがあるが指導力、実行力はあり、まとめ役。細かいことにあまりこだわらない。仕切りたがるのが難。
年の割に体が少しばかりでかい。筋肉質。(注: ジャイアンとは違う)
いつもは子どもっぽいがいざというときは割と冷静。
|
男 |
ク |
サラ・フォアステッド | Sara Forestead | 15,9 | ディーヴをあまりこころよく思っていない(最初のうち)、牽制役。実務家。
とっつきにくく、近づきづらいところがある。
ふだんは沈着だが、何かあるとムキになる。
男っぽくはない、かといって母親役に適しているとも言えない。
学級委員長をやってそうなタイプ。真面目で義務感が強いからだが、やりたくてやるわけではない。
長髪、黒髪、スカート。 |
女 |
地 |
ミリー・マーリング | Milly Marling | 14,7 | 内気、常に一歩退いている。役目はそつなくこなす。
仲間が二つに割れたときは居場所がない(性別であろうと人種であろうと)。昔話のコウモリのような存在。
金髪、繊細。マリの裸を見ても赤面したりする。
この子は大きく成長する。やがて自ら決断しなくてはならないような場面が訪れる。
|
男 |
混 |
シン・パゥアー | Sinn Pouer | 13,2 | ややサラびいき。
父親が既に死去。成人した兄がいるが、町に出ている。
意見ははっきり言う。さっぱりしているので反感はかわない。
少々うっかり者、あわて者。実は下ネタに強い。
眼鏡着用、別に秀才タイプではない。ちょっと長髪で、髪を後ろでしばっている。 |
男 |
ク |
パム・フリンダース (ベルトラン) | Pam Flinders (Beltrann) | 13,5 | 元々村の人間ではない、家出して親戚のところへやって来る。一番最後に登場。
一見おてんばだが悩みを抱えている、実は両親とも共和国の指導的立場の人物。父親はたたき上げの軍人。
彼女自身はククト人への偏見はないが、誤解はたまに見られる。
意外に物事はきちんとこなす、親のしつけの賜物。それが厳しすぎるきらいがあるのでジャジャ馬している(ククト人差別がどうこうで家出したのではない)。
母親役をサラと二分、ただしこの子一人だけ都会っ子。タクを叱るのはたいてい彼女。
栗色の髪、短パン。
後に自分の親のしたことに気づき深刻に悩む。
ベルトランは父方の姓であり、本姓だが、ゆえあって母方の旧姓であるフリンダースを名乗っている。
一人称は普段、「ボク」。シリアスなときは(本来は)「わたし」。 |
女 |
地 |
ジュリオ・クティナ | Julio Ktina | 10,3 | 明るい、活発、スポーツマンタイプ。
性格は対照的だが、何故かミーコとウマがあう。
他人をからかったりするガラではない。意地っ張りなところがある。
食べ物の好き嫌いが多い。グリンピースが嫌い。キュロット着用。
脇役。 |
女 |
ク |
ミーコ・カジン | Miiko Khazin | 10,4 | 静かでおっとり、体は丈夫ではないほう。
甘ったれたところがあるがわがままではない。
ジュリオと仲良し、村では幼なじみで、近所同士。
音楽、とくに歌がうまい。
脇役。
父親は画家。
|
女 |
ク |
タク・ヒューイット | Taku Hewitt | 9,6 | わんぱく。マリをしょっちゅう泣かす、トーグとはそのたびにケンカ。
オリガをからかったり、リオにもちょっかいを出す問題児。
生き物に優しい。生活力はあり、料理もうまい。
母親が既に死去、淋しい一面もある。村では一番辺鄙なところに住んでいる。
後頭部に十円ハゲあり、それは絶対秘密。 |
男 |
地 |
トーグ・ハクスフリー | Thorg Haxflley | 6,1 | マリの兄。
マリの面倒は自分一人でみようとするがなかなかうまくいかない。「きかん坊」かも。 |
男 |
地 |
マリ・ハクスフリー | Mari Haxflley | 4,7 | トーグの妹。
ちょっとぽっちゃりしている。下ぶくれの顔。気は強いが泣き虫。
トーグが自分の世話を焼きたがるのには反発、自分はオシアンの面倒を見る。 |
女 |
地 |
オシアン・グレイ (通称: オージー) | Osyan Gley (Orsie) | 0,8 | 「はいはい」が出来るため、うっかり目を離すと……
お池にはまってさあ大変。
そうでなくても肝心なときに泣き出したり、ククトニアンであることがばれたりして厄介なことこの上ない。 |
女 |
ク |
注: ククト語のアルファベットによる正書法(orthography)はいまだ確立されていない。殊に固有名詞の場合、当事者(人名なら本人)の個人的な好みが関わってくるため、同じ名前でも別の綴りになることがある。
13人とは似てもにつかない子どもたちである。当然計算尽くであり、あえて違えてある。子どもたちは皆クレアド出身だ。彼らにとってはクレアドが故郷であり、母星であり、「地球」なのだ。パイロットはディーヴ、シン、*ミリー、パム、*ジュリオだ。"*"をつけた二人は、いつもというわけではない。とくにミリーは前半は乗らない。
「いかにも」という性格の子はいないし、「ですますでございます」などと非現実的な話し方はしない。個性に乏しくなる恐れはあるし、性格が分かりにくくなるかも知れない。とりわけ今のような微妙な性格づけでは動かしづらいと思う。シャロンみたいな性格の子どもをいれるべきたったかも。
名前はもしかしたらどこかで聞いたことがあるかも知れないが、なにぶん短い音の数だと組み合わせが限られているので、別に誰かにちなんだと言うことはない。またククトニアンなのに地球人っぽいの名前の子がいるのは、以前にククト人の間で地球風の命名がはやったことがあるからだ(ということにしてある)。
今のところシンだけはどうもピンとこないので、性格などをご破算にする可能性もある。主役タイプの子はいないので、彼をそうするのも悪くない。とは言え、後述するように真の主人公は別にいるのだが。また一般に下の方の子どもになるほど、設定は手抜きになっている。つまりは物語の展開にあまり関わらないからだが(求む意見)。
キャラクターデザイン・声優
これらについては考えていない(というかそこまで考えるのは正気じゃない)。もしやるとしたら前者は「13」の近永健一でもいいが、彼本来の絵柄がどんなものか知らない。芦田豊雄でもいいと思っている。「バイファム」にはもはやそぐわないが、これは「バイファム」のシリーズであって「バイファム」そのものではないのだ。誰か候補がいたらメールで教えて下さい。ことぶきつかさ、園田健一、梅津泰臣などは却下。声も、暇な人は考えてメールでも送って下さい。玄田哲章、青野武、千葉繁とかいう冗談は遠慮しておきます(声が合わないと言っているのであって、この人たちが嫌いというわけではない)。「バイファム」で子どもたちを演じた人を出すのは、もしふさわしい役なら一風変わったファンサービスとなりそうだ。
旅立ち
最初の1クールは「バイファム」と同じようにやる。村を舞台に子どもたちの目から見た戦争をしばらく描く。初めのうちは主役となる子どもたち以外に多くの子どもがいて、誰が残るのかは分からないことにする。この時点では大人たちがいるので、子どもはほとんど戦闘に参加しない。そもそも毎回戦闘があるわけではない。
上にだらだらと書いたような経過は冒頭のナレーションで説明したりはしない。戦争が既に日常になりつつあるこの村をいきなり映し出して、後から徐々に明らかにしていくという方法を採りたい。いや「していく」ではなく「なっていく」のほうが適切だ。学校の授業や、大人たちの会話などを通して、ということだ。また、Op.は少なくとも最初の1クールは「バイファム」からの歴史が何となく分かるような絵にしたい。何にせよ観る人には、「異星人ククト人と地球人が仲良く暮らしていた星、クレアド。この星で地球人の中にククト人とケンカを始めた奴らがいる」、これだけ分かってもらえれば十分だ。「ククト人」を外国人かなにかと同義にとってしまってもかまわないくらいだ。
話としては、村祭り(夏至あるいは収穫祭);町への遠出;勝手にRVを動かして怒られる(ってこれはフレッドだぞ);誰かの家族の一人が死んでしまう;共和国兵の巡察;近くの山への「遠足」;同盟との接触;共和国軍の輸送部隊奇襲、といった具合だ。その合間に家事や畑仕事(と言っても手作業ではない)、学校に行ったりなんてこともするだろう。「名作劇場」ばりの生活芝居だけの回もあるかもしれない。子供同士しょうもないことでケンカしたりとか。大人たちも時としてククトニアンと地球人で意見が対立したりする。実はゲリラの中でも、元の体制、自治、独立と路線の違いがあるのだ。
第8話くらいでパムが村へやってくる。町から来た地球人の子どもということで大人たちは警戒する。彼女は伯母を頼ってきたのだが、伯母自身彼女を疑っているふしもある。もっとも彼女の素性を明かすようなことはしないが(墓穴を掘るから&パムを心配しているから)。子どもたちも最初のうちはうちとけないが、きっとふとしたきっかけですぐに仲良くなるだろう。
村人たちは村を捨てることを考えている。理由は、村が孤立しかけているとかそんなところだ。例えば周りの村は地球人ばかりとか(捨てることが大事なんで)。そのために何度か同盟軍と接触を持つことになる。
別の案はより具体的で、共和国による村長選挙が公示されたからだ。この村は先に述べたとおり、選ばれた村長がいるが、そうではなく共和国法に基づいた選挙が行われるのである。その実、当日は確実に軍がやってきてその監視のもとで行われるだろうし、それによって村の内情やククト人の数を調べてしまおうというのが村民の推測だ。
何にせよ、やがてその日がやってくる。遠足気分で準備をする子どもたち。彼らはそれぞれ別行動をとってある場所に集結することになるが、ここで子どもたちははぐれる。深い峡谷に橋が架かっていて、まず子どもたちをまとめて渡したところで敵襲があって、とかだ(これもはぐれるのが肝要なのだ)。そして旅が始まる。旅の目的はもちろん両親に再会することだ(今度は「母をたずねて」かよ、という声が聞こえてきそうだ)。しかし今回はリフレイド・ストーンみたいなものはないから、かなりしんどそうだ。とは言っても得体の知れない謎の敵を相手にするわけではない。それに、宇宙を旅するのと違い、様々な援助を期待できる。
だがそれは一面的なことで、やっぱり苛酷な旅になるのは間違いない。何を当たり前のことを、と思われるかも知れない。が、「バイファム」で、ジェイナスで航海するという設定はまことによく考えられている。というのは移動の苦労がないからだ。なにしろ船旅ではただ乗っているだけ(「ただ」ではないが)で目的地まで到達できるからだ[*9]。今回、地上を漂流するにあたって、一体何を移動手段にするのが適当だろうか。これについてはRV & メカニックで触れた。
13人
年表に書いたように、クレアドに帰った子どもたち(もう大人だが)がいること以外は、ほとんど考えていない。2064年のベルウィック・ククト第1便にはきっと搭乗しただろうし、同じ年の博物館開館時にはもちろん式典に出席しただろう。そして2084年にはサライダの葬列に加わっていただろう。ただ、「その後の13人」(1998.7.12)に書いたように、彼らはあくまで普通の人としてベルウィックかクレアド、あるいはもしかしたらククト(カチュア)で暮らしている。だから彼らはほとんど登場しないだろう(ましてミューラァやケイトは絶対出てこない。だいいち見たい?)。クレアドに住んでいる連中も、だ。もしかしたら彼らは家族の安全が第一で、既に避難しているかも知れない。僕の中での大人になった13人は、残念ながらすっかり所帯じみていて、冒険なんてとんでもない、あの頃は若かった、というイメージだ。
真実を見つめるまなざし・ロディ
ただし一人だけ準レギュラーを予定している。それはロディだ[*10]。何故彼かというと、それはやはり一応「バイファム」の主役だからだ。彼はもう40代のおっさんで髭づらである(と考えている)。ひょっとすると、女運がなくていまだ独身かも。ともかく、これも書いたように(その後の13人参照)、クレアドで報道カメラマンをしている。しかし戦争勃発により急きょ戦場カメラマンになる。それは彼なりの、戦争参加への答えだ。武器をとって戦うことはしたくないが、ただ逃げることもしたくない。
その彼が子どもたちに出会うことになるわけだ。カメラマンとしては格好の被写体であることもあるし、かつての自分と同じ境遇の子どもたちに興味を持つのも当然だ。カメラマンなので一応傍観者を決め込んでいるが、それがどこまで続くことか。この辺は良心の問題だが、やはり手助けすることもあるだろう。ただ、RVの操縦とかはさせたくない。あくまで主体は子どもたちなのだから。あたりまえだが、子どもたちはロディが子どものときに何をしたか、なんて知らない。なにしろ30年も前の出来事だ。そして視聴者もそれを知らなくてよい(知ってればより楽しめるが)。
「写真はレンズで決まる」[*11]
ロディの使うカメラは当然ニコンだ。僕の趣味です。キヤ○ンじゃダメ。いわんや実田や、Z会、OMその他は論外(ユーザー、並びに関係者の方々ごめんなさい)。機種はF…と言いたいところだが、さすがにデジタルスチルカメラかあるいはそれより進んだカメラが主流(というかそれだけ)になっているだろうから、Fシリーズではなくなっているだろう。でもニコンなので、Fマウント採用で(つまり互換性は一応残る、と言っても90年も先の話だが)、レンズはもちろんNikkorだ。言うまでもないが、シ○マ、トキ○ー、タム○ンなどのレンズは使わない(これまたユーザー、並びに関係者の方々ごめんなさい)。使うレンズは……と、戦場カメラマンってどんなレンズを使うんだろう?
まさか80-200mmf2.8などを持ち歩くわけにもいかないだろう。かといって標準ズームだけでもないだろうし。いや意外と50mmf1.4一本で何でも……まあいいや、これ以上余計な話をしてもつまらない。
また、もしゲストで13人のうち誰かを登場させるとしたら、という案として次のようなものを考えている。この二人なのは個人的な思い入れが強く反映されているようだ。
悩める中年・スコット
彼は相変わらずお人好しである。「クレアドを地球のくびきから解放する」という共和国軍の甘言にのせられて、共和国政府の役所に勤務している。しかもかつての"the Janus Kids"の一人として、ククトニアンの残虐性についてプロパガンダを書くよう要求されている。さすがに自分がとんでもない過ちを犯したことに気づいた彼はどうにかしたいのだが、きっかけが掴めない。どうやら彼の身辺は監視されているような気配がある。
自分一人ならともかく、今や彼には愛する妻ハンナ(クレアじゃない)、長女のリン、長男のジュールという家族がいるのだ。しかし長女のリン(19歳)などはスコットがどうしても態度を決めかねているのに強く反発している。一本気で正義感が強い彼女はどうかすると家を飛び出しかねないくらいだ。
そこへ子どもたちが、ロディとともに転がり込んでくる。しばらくかくまってくれというのだ。地球人だけならともかく、中にはククトニアンまでいる。もちろん彼は引き受けるのだが、いつまでもこの状態を続けているわけには行かない。スコットの境遇に気づいたロディは一緒に脱出することを持ちかける。そしてスコットもついに決断。休暇と偽って田舎へ行くフリをする。途中で気づかれてしまうが、一行の協力で何とか追っ手をまいたスコット一家はベルウィックへと旅立っていく[*12]。
「バツイチ」・シャロン
彼女はある町で、戦争で精神的に傷を負った子どもたちを収容して彼らの心を癒す施設に勤めている。そこではククトニアンの子どもたちも平等に扱っているのだが、こういった組織にも共和国の風当たりは強い。
というネタを考えてはみたのだが、これをどう料理するか。このままだと、単なる挿話にしかならないだろう。この時はロディもいなくて、本当に束の間の出会い。彼女は今一人者のさびしい時なので、同じく独身のロディと再会するのは、ちょっと(「黄昏流星群」のノリはねえ)。もしかすると、「バツイチ」どころではないかも。
カチュアの30年後などはまるきり想像がつかないのでパス(容姿、人生ともに)。やらない、やれない、やりたくない。13人の誰を登場させるにせよ、キャストを変えなくてはならないだろう。ファンにとってはイメージが狂って幻滅する可能性はある。
クレアド漂流
前半の鍵はパムだ。彼女の身の上はカチュアを意識している(言動はマキかシャロンに似ているが)。そして同じようにかなりさっさと素性をばらす(あるいは、ばれる)。しかし騒ぎ立てるのは、子どもたちよりは途中で出会うであろう大人たちだ。敵味方を問わず。子どもたちも、何か旅が行き詰まると彼女に当たったりするようなことがあるだろう。ただし、彼女自身はまだそれほど自分の境遇を身につまされていないようなところがある。中盤から後半にかけてはミリーの心の成長を大きく取り上げる。彼の生い立ちはミューラァを踏まえている(もっとも外見はむしろカチュアだ)。髪の色も彼を意識しているが、(カチュアのような)華奢な感じも強調している。この時代には混血児の数はもっと多いが、ミューラァと同じ悩みを抱えているのは変わりない。自分が地球人でもククト人でもないのではなく、地球人であり、かつククト人である、そのことに気づいてほしい。
子どもたちの旅が実際にどうなるのか、厄介なところだ。これはクレアド版「母をたずねて」なので(開き直り)、あちこち引きずり回されたり、入れ違いになったりするだろう。最初の目的地(これはかなり近所)にたどり着いたらいなかったというのは確実だ。旅の間のイベントは一週見逃してしまうようないい加減な視聴者でもそれなりに分かるようにしたい。最低でも週一で観ていることだけを期待する(つまりビデオで繰りかえし観て「復習」することは要求しない)。一応こんなキーワードを考えてはいる:敵兵との交流;大人を助け、助けられる;味方が捕虜をリンチ;戦争プロパガンダ;「共和国軍」支配下の町に潜入;野戦病院;修道院;戦場で死を待つ老夫婦;慰労劇団;捕虜収容所;敵の少年兵;旧ククト政府軍の残党;出来心で盗みを働く;ある町の解放に参加;路銀を稼ぐためにバイト;味方の裏切り;敵の捕虜に;戦争をビジネスと考えている傭兵;温泉;アーティファムを盗もうとするマヌケな盗賊3人組;駅で迷子になったトーグがきれいなお姉さんとひと時をすごす;古い坑道を通って山越え;古代ククトニアンの遺跡。また、「大人と子ども」を強調したい。別に両者を対立させるのではない。例えば年長組は大人の理屈に反発するが、その年長組の決めたことに小さい子たちが文句を言うとかだ。つまり今回はジェイナスの中の子どもたちだけのドラマではない。旅の途中で多くの人と出会い、分かれる。そういう話だ。敵側にレギュラーがいるかというと、考えていない。
強引だが、中盤で宇宙篇を少し。ただクレアドを旅しているだけだと、2クールくらいで終わってしまうだろう。計3クールとなる。TVアニメはすべからく1年放映すべきと考えているので、あと1クール分の穴埋めだ。また「バイファム」で地上だけだと物足りないのも悩みの種なので。これは、一度宇宙に出てから直接目的地めがけてピンポイント降下(?)しようという計画である。当然それは妨害にあい、あまつさえ月軌道まで撤退するはめになる。その後改めて大気圏突入を行うが、予定ポイントに到達できないのはお約束。しかしあまり長くなりすぎないように注意したい。あくまで地上篇の「おまけ」と考えてほしい(引き延ばしっぽく見えるかも)。
物語の決着については、戦争は終わらないが、(「バイファム」と同じく)新たな局面を見いだしたところで幕を下ろすことにする。それにはロディと子どもたちに一役かってもらう。彼らは共和国軍のククトニアン虐殺を目撃することになる。カンボジアのキリング・フィールドみたいなのだ。クレアドの件についてはようやく地球の対応がイプザーロンに届こうしとているのだが、くだんの虐殺をカメラに収めたロディの発表が反共和国の機運を後押し、ベルウィックも重い腰を上げ、ククト政府と共同軍を送ることを決める、というわけだ。ロディが報道するにあたって、共和国軍に追いかけられながら、どうデータを届けるのかあたりが問題になったり、ということも考えている。この時子どもたちはロディに協力するか迷うかもしれない。両親のいるところはもうすぐなのだが、データを届けるためには再会を遅らさねばならない。どっちを優先するのか……。虐殺から後、パムがとことん悩むのは言うまでもない。両親との再会直前には「パパに会える、ママに会える」が歌われる。もちろんロディに教わるからだ。
さらに両親と再会したあと、ベルウィックへ避難するまで話を続ける。宇宙をまた出すのと、1クールの残りをこなすためだ。ただし、このエピローグをあまり長くもできればしたくない。中途半端な印象がどうしても出てきそうなので。ところで、もう一度言っておくが「避難」だ。両親に会ったあとは、再会もつかの間、強制的に安全な場所に移されることになる。冒険から日常に引き戻されることで旅の終わりを強調したい。ベルウィックに着けば当面もとの生活が待っているのだ。まあひょっとしたら年長組の一人か二人くらい、例えばパムはそのまま残るかもしれないが……
- *7
- 知っている人もいるかもしれない名前だ。
- *8
- かつての軍政期のククト人社会では酩酊・泥酔は治安と風紀を乱すとされていた。一般人にとって酒は特別の催し事のときにのみ許されたものであった。従って飲酒の習慣はほとんどなかった。現在ではこの禁令はなくなっているが、ククト人の多くは今でもアルコールに対して抵抗力がないので、飲酒にそれほど固執しない。(「バイファム」中でミューラァが酒らしき飲料を飲んでいるが、あれは特権階級だから、という上村オリジナル設定)
- *9
- だから、彼らは(少なくともジェイナスの中では)いつもこぎれいな格好をしている。泥や汗にまみれたりしなくていいのだから、非常にスマートな設定と言える。
- *10
- すっかり中年になった、あるいは働き盛りになった13人でも、それでも彼らを見たければ、ロディ以外も登場させてもまあいいんじゃないだろうか。ただあくまで新規ファンを主力視聴者と念頭においているので、やりにくいと思うけど。(1998.9.1版)
- *11
- ニコンレンズ総合カタログより。
- *12
- 誰でも気軽にベルウィックへ行けるわけではない。
タイトル
「バイファム」の続編であることをタイトルの中で示すにはどうすればいいか。考えてみると「バイファム13」も制作側の苦労が忍ばれる命名である。今回の新作では「銀河漂流」はもはや使えない。主たる舞台がクレアドだからだが、実際のところ子どもたちだけで銀河の海を渡っていく、という設定で「バイファム」と差別化した話を作るのはもはや無理だろう。(RVの名称としての)「バイファム」の方も、「バイファム」(これは番組名)中で、この世界では新機種に「ファム」で終わる別の名をつけることが慣例とされた。かといって、新作中で活躍するRVの名前を作品タイトルにしても「バイファム」の続編だと分かりにくそうだ。
仕方ないのでとりあえず「バイファム」の後に、年号をいれてみたが、作中でバイファムが登場するわけではない。この場合の「バイファム」はあくまで作品世界の名称として、だ。
次に「惑星漂流××ファム」というのを、「漂流」と「ファム」が入ればシリーズものと分かりそうなので候補としたが、いまいちだ。「銀河」と「惑星」では、言葉の響きにかなり差がある。「海賊」にはロマンを感じるが、「山賊」はただの野盗にしか聞こえないみたいなものだ(でも英語の"bandit"はカッコよく響く)。
そこで「惑星」を「異星」に変えた。「異星」はもちろん舞台となるクレアドのこと。ただ、主人公たちにとっては「異星」ではなく「地球」なのだが。だから視聴者にとっては、ということだ。このような曖昧さはアニメ作品ではよくあることだ(だったらいいのかって?)。
またもや英語にならないタイトルである(「異星」なんて英語はないだろうから)。「アーティファム」はまあ適当に言葉をみつくろっただけだ。"artifact"から由来している。
実は自分の中では「2088」が定着してしまっているのだが、このパターンは「火の鳥」とか「YAMATO」とそっくりなので、なるべく避けたい。ありがちだし。それにいかにも「バイファム」の後日譚的続編だと言っているようなものだ。シリーズの新しいスタンダードとなるくらいの作品にふさわしいタイトルにしたい(誇大妄想)。もっともこの命名パターンはそう何度もできそうもないが。
追補編
これは「13」の次の「バイファム」の新作では決してない。ただ単に「13」第1話感想(直見版)で言った「あるべき姿」の新作を自分なりに考えてみたものだ。あれだけこきおろしたのだから、少しは建設的なことを書かないわけにもいかない。話は、年表をご覧になれば分かるとおり、「バイファム」の30年後が舞台だ(きっかり30年なのにあまり意味はない[*13])。しかし同一の世界の物語であるだけでは「バイファム」ではないだろう。そこでこれまた僕なりに「バイファム」のエッセンスをひねり出してみた。それは「子どもたちが力を合わせて戦場を生き延びる」だ。もっと端的に言えば「子どもと戦争」だ。だから主役はまた子どもたちだ。マンネリっぽいが、どうせあの「ガンダム」だってひょんなことから主人公の子どもがガンダムを手に入れて、人の革新とか、親子の葛藤とか、そんなパターンを何度もやっているし、それに比べればかわいいものだと納得することにしている。
自分はバイファム・ファンとしては偏ったほうだと自覚している。なので、続編、新シリーズの展開についても、よく言えば独創的、悪く言えば独りよがりになっていると思う。
まず「30年」すっとばした理由から説明するのがよいだろうか。30年でなくてはならない理由はないのだが、続編を妄^H構想するにあたって何より第一に考えたことは、「13人」とはおさらばする、ということだ。個人的にもそれは非常に辛い。だが、どういう続編にせよ13人を登場させ続けることは所詮不可能だ(言ったかも)。「何が『バイファム』か」ということを模索するときに、「13人」に行き着いてしまうと、選択肢が急速に狭まってしまう[*14]。だったら、すっぱり彼らにはご退場願おうと初めに決めた(身を切られるような思いで)。確かに「バイファム」の冒険は彼らにとって重大だったが、彼らの一生を変えるほどではない(カチュア、ジミーは除く)。彼らはごく平穏かつ平凡な小市民的一生を送るのであって、何度も戦争に巻き込ませるようなことはしたくない。あまりに酷だ。そのためには30年くらいは時計の針を回してしまおう、ということだ。ロディをひっぱり出したのは、あくまで旧作ファンへのサービスだ。彼はまがりなりにも主人公だから、損な役回りをしてもらうことにした。
実は僕としては2年後の彼らですらあまり見たくない。いわんや20代(年長組)の彼らなんてなおさらだ。彼らは2058年の彼らだからこそ「バイファム」がなりたつのであって、それは2度と起こり得ないのだ、というのが僕の持論だ。だって「ケイトの記憶」にすら、その一端を感じざるを得なかったし。例えば、2年たったら、シャロンはマキくらいになっているし、マルロはジミーくらいだ。そうなったら13人の人間関係も「バイファム」の時とは絶対変わるだろう。我々は果たしてその変化に耐えられるのか?
だからといって40代ならいいというのは、確かに勝手な話ではあるが。
そして、これは書いたことだが、「バイファム」の新作が制作されるとしたら、まず子どもに観てもらいたい。恐らく「バイファム」放映当時せいぜい中学生くらいだったバイファム・ファンの「バイファム」への感動を、今の子どもたちにも味わってほしい。そのためにはどうしても子どもを主役に据える必要があるし、必然的に13人はせいぜい端役でしか出てこない。
考えてみれば、「バイファム」が始まる前は我々の13人に対する愛着だってなかった。だったら、新しい子どもたちにもきっと13人と同じくらい、思いを寄せられるはずだと思うのだ。特に今の子どもたちにとっては、彼らにとってのかけがえのない「13人」になるだろう。
確かにそういうお膳立てでは「魔法少女モノ」(さすがに「戦隊モノ」とは少々異なると思う)のそしりをまぬがれることはできないし、それは重々承知だが、やむを得ないことと割り切っている。いや、もっと積極的にそれでも構わないとさえ確信している。(以上3段落極私的偏見)
さて「30年後」なのにはもう一つ、消極的な理由としてあまり無闇に戦争の起きる歴史にはしたいことがある。現実には今この瞬間にも世界の至る所で戦争が行われているのだが、だからといって戦争の悲惨さが目減りするわけではない。やはり戦争はそう軽々しく扱えるものではない[*15]。年表は確かに結構シビアだが、一応希望は残されているような展開にしてある。3年とか、5年とかいう単位で戦争が頻発するようではあまりに暗すぎる。だから年表の中には戦争以外のことも意識的に多く載せている。腥さを消すための薬味のようなものだ。要するに中庸を好むということだ(一つ間違えると「凡庸」になる)。実は、当初
一向に解決への糸口が見つからないクレアド帰属問題に、地球の世論はまっぷたつに割れていた。強硬派と穏健派である。2067年、軍部を主体とした強硬派はついに、クレアドに大軍を派遣し…
一方穏健派もベルウィックで独自に勢力をたくわえ、強硬派に対抗すべく極秘裏に新型RV…
不気味に沈黙するククト政府、その思惑は…
かつての13人はそれぞれの思いを抱いて再び戦争に身を投じる。
三つ巴の様相を見せるイプザーロンの戦乱の行方は!?
などという案を抱いていたのだが、そういうわけで却下した(地球側が二分される辺り一応「アーティファム」の原型とはなっている)。
以下は1998.9.1版の内容。一応残しておく。
*
もしどうしても13年後がいいのなら、「2088」を変更することもできる。白状すると、「30年後」ということと、舞台となる時期のクレアドの状況をまず考えてから年表を埋めていったので、所詮は都合よく作ったものに過ぎない。だから代わりに、
- 旧ククト軍は支持基盤を失い、急速に勢力を弱める。
- 並行して、クレアドの帰属問題もかたがつく。
そうして、13年後つまり2072年('59年から)に戦争が始まる。僕の場合、設定過剰に陥りがちだと認識しているので、これくらいすっきりしていたほうが、かえっていいかもしれない。それに「13年後」は「13」へのあてつけとしてはうってつけだ(意地悪)。ただし、その場合でもTVシリーズでの彼らの出番はなるたけ減らしたい。代わりに、OVAを企画する。このOVAは「そのとき彼らはどうしていたか」という内容であり、本編と相補的な位置づけになる。1巻に1人くらいづつあてるオムニバス形式だ。TVシリーズで欲求不満になったマニアなら絶対買うだろう。そうなれば商業的にも大成功間違いなし。言い方は悪いが、マニア向けというタコ壺としてのOVAだ。
ただ、一度13人を活躍させてしまうと、味をしめてそういう話が氾濫してしまう恐れがある。特に13年後程度だと、じゃあ次はその2年後で、などというのはいかにもありそうなことだ。これはやりたくない。
ちなみに一番やりたくない続編は、ロディ(23歳)あたりが軍人になっていて、新しい主人公とともに戦うってやつだ。こういうのも絶対ナシね。上の破棄した企画も、そうだったりする……ヤでしょ?
(13年後という案は、惑星開発に一定の長期間が必要なので、却下された。)
*
今の時点ではこれが最後の改訂だ。これ以上やると、実際に話をつくり始めることになってしまう。ところがそのためにはRVの設定を煮詰めなくてはならない。それは僕にはできそうにないし、かりにやれたとして、全52話も自分で小説を書くのは、きちがい沙汰だ。
最後に、最初の版に対して何人かの方々に感想と激励をいただいた。多分やたらに長くてちまちました文章を最後まで読みとおせる人などいないと思っていただけに、心から感謝している。おだてられるとのりやすい性格なので、つい本業も省みずに一度投げ出したこの企画にまた取り組んだ。こういうものをたやすく開陳でき、しかも反応を受けとることのできるメールやウェブのありがたさを噛みしめている次第だ。その割に意見をあまり反映させられなかったのはごめんなさい。
- *13
- 「13(十三, thirteen)」だから「30(三十, thirty)」とかいうわけではない。いや、ホントに。まして新谷かおるの漫画とは絶対関係ない。
- *14
- OVAから「サウンド・ノベル」まで連綿と続く「ジェイナスの日常」の外伝はもう飽きた。「うる星やつら」じゃあるまいし、そのうち毎日事件が起きていることになりそうだ(ひとのことは言えた義理ではないが)。後日譚は、何年後かに13人全員がまた顔を揃えて冒険を始めるなんてできるだろうか? もしできたとして、オトナの関係になっているバーツとマキとか、見たくないのは僕だけだろうか?
- *15
- 宇宙戦争ものでしかもギャグのアニメがあるけれど、そういう理由であまり好きではない、個人的には。そりゃまあ、エンターテインメントなんだけれど。
Society of Cleyad added... Vd: 1999.7.23
Minor revision... Vd: 1999.7.14
Minor revision... Vd: 1999.5.26
A pilot novel begins to run on... Vd: 1999.3.9
Revised... Vd: 1998.11.8
Some precedent thoughts posted... Vd: 1998.10.29, 1998.10.30, 1998.11.1, 1998.11.2, 1998.11.5, 1998.11.6, 1998.11.7, 1998.11.11 (archived in aV: misc.)
Current title announced... Vd: 1998.10.28
Post Script added... Vd: 1998.9.1
Originally released as "VIFAM 2088"... Vd: 1998.8.21