佐知子の歌日記・第十六集
佐知子の歌日記・第三十三集
令和2年10月〜12月
ニュース見て東の空に確かめるほんに中秋の名月である
東京のGoToトラベル始まりて胸張り山へ行く行け行くぞ
感性の鈍きを刺激するためか金木犀は強く香りぬ
外は雨うすい上着を羽織りつつ千年前の歌にふるえる
日の暮れの早まる秋と競いつつ ひたすら下る霧降高原
おいしいと無口な孫の小さき声 カボチャスープをおかわりしつつ
ラーメンと焼きソバの袋を取り違え焼きソバ風のラーメンを食う
鈴ならし落ち葉踏み分け山道へ「クマさんどうぞどうかお先へ」
湯舟からどっとどっととあふれ出る晶子も浸かりし霧積温泉
GoToのクーポンを手になつかしの峠の釜飯九つを買う
生まれたる曽孫うれしと友打てば一直線のホールインワン
入り組んだ海岸線の島原に南蛮船の影をさがしぬ
マスクがけを常と見ている赤子にはわかるだろうか素の人の顔
目の前を断片のみの言の葉が点滅しながら早足に過ぐ
燗か冷やか にんまり悩む宵の夫いただきものの旨酒ゆえに
二人して御幸路たどり山上へ八丁池は静かに凍る
この部屋で「伊豆の踊り子」は書かれたと宿の主人は力強く言う
かすれてるパットブーンの歌声をカセットテープで聞く十二月
レコードやカセットテープがわからない十四歳に実物を見す
ニュース見て東の空に確かめるほんに中秋の名月である (10.1)

東京のGoToトラベル始まりて胸張り山へ行く行け行くぞ (10.1)

「鳴ってるよ」聞こえぬわれに告げる夫 体温計のピピピ悩まし(10.3)

感性の鈍きを刺激するためか金木犀は強く香りぬ (10.5)

わが歌を口ずさむ友よあなうれし 忘れしという三句目あれど (10.7)

外は雨うすい上着を羽織りつつ千年前の歌にふるえる (10.8)

キャンセルのキーを押す指進まずにツイてないねと夫はささやく (10.9)

 
霧降高原の山旅 (10.12〜13)
幾筋も赤くそがれた山肌の赤薙山に惑いつつゆく
ツナピラフ コンロで作る君がいて食べるばかりのわれとなりたり
日の暮れの早まる秋と競いつつ ひたすら下る霧降高原
紅葉をちらりちらりと見たのちにヒル住む道を足早に行く
丸木橋を渡らんとして足上げたはずの我が靴水中にあり
乗るバスの発車時刻が気になりて霧降の滝せわしく眺む
晴れてれば体力あればと泣き言を秘めて次回の山行を練る

鉛筆を持ちて天井見上げれば暇そうだねと夫がつぶやく (10.20)

おいしいと無口な孫の小さき声 カボチャスープをおかわりしつつ (10.23)

ラーメンと焼きソバの袋を取り違え焼きソバ風のラーメンを食う (10.24)

 
鼻曲山と剣の峰小浅間山 (10.27〜29)
鈴ならし落ち葉踏み分け山道へ「クマさんどうぞどうかお先へ」
湯舟からどっとどっととあふれ出る 晶子も浸かりし霧積温泉
山旅の始まりである鼻曲山 四半世紀前は運動靴で
紅葉と澄む青空に励まされ足の痛みをしばし忘れる
GoToのクーポンを手になつかしの峠の釜飯九つを買う

この冬もよろしくと言い灯油屋が勝手口にてサンダルを寄す (11.1)

幾度も夜中に起きたと夫は言う口内炎の痛み激しく (11.6)

至急にと夫に頼んだ正露丸 飲めば治まる甘柿四つ (11.6)

生まれたる曽孫うれしと友打てば一直線のホールインワン (11.7)

第三波のコロナ浮上し人類はワクチン欲しと漂うばかり (11.13)

 
雲仙岳の山旅 (11.16〜18)
レンタカーの手続き中に店員は大丈夫かと幾度もきく
入浴の時間割りあるホテルにて部屋番号を表に記入す
噴火から三十年の普賢岳平成新山を畏れつつ見る
関東と少し違うと植物の同定に迷う夫の視線
夕日撮る露天風呂へと急ぐ夫転んでカメラと浴衣を濡らす
入り組んだ海岸線の島原に南蛮船の影をさがしぬ

めっきりと会話は減るが十代の孫らの耳は全方位向く (11.20)

マスクがけを常と見ている赤子にはわかるだろうか素の人の顔 (11.20)

目の前を黒く小さなもの飛びてレーザー治療の置き土産らしい (11.23)

在宅の仕事休みに目覚めたかゴミ十袋出す息子なり (11.23)

目の前を断片のみの言の葉が点滅しながら早足に過ぐ (12.1)

燗か冷やか にんまり悩む宵の夫いただきものの旨酒ゆえに (12.4)

足元が見えると息子にこやかに十キロ減のおなかをさする (12.5)

小雨のち晴れたる空を味方としホールインワンを引き寄せにけり (12.10)
 老人会のグラウンドゴルフ大会にて

横浜の皆がマスクの地下道に人ごみとしてわれは歩けり (12.12)

 
中伊豆へ:八丁池鉢窪山〜太郎杉 (12.17〜18)
初めての第二東名走りけり ぐんぐん迫る大き富士山
二人して御幸路たどり山上へ八丁池は静かに凍る
この部屋で「伊豆の踊り子」は書かれたと宿の主人は力強く言う
倒木に通行禁止の看板よ九合目にあり鉢窪山の
帰りには伊豆スカイライン運転し 遠い昔を思い出す夫

かすれてるパットブーンの歌声をカセットテープで聞く十二月 (12.22)

レコードやカセットテープがわからない十四歳に実物を見す (12.24)

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