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No.319 高登谷山(たかとやさん・1846m)
平成26年(2014年)5月28日 晴れ マイカー利用

西側の県道から高登谷山を望む
西側の県道から高登谷山を望む

高登谷山・略図
芽吹きの新緑が美しい
ミズナラの純林を登る

三葉土栗:バラ科キジムシロ属
ミツバツチグリ

生憎、山頂部に雲が・・・
山頂から八ヶ岳を望む

こちらも小ぢんまりとした山頂だった
高登谷山の山頂(南峰)

左奥に茅ヶ岳・・・
天狗岩にて塩ラーメン

野外ステージ駐車場
駐車場に下山

失敗談がまた一つ二つ…

《マイカー利用》 中央自動車道・須玉I.C-《車50分》-高登谷高原・川上村野外ステージ駐車場〜高登谷尾根登山口〜高登谷山・本峰1846m〜南峰1862m〜天狗岩〜中沢新道登山口〜野外ステージ駐車場 【歩行時間: 2時間15分】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ


 日本有数のレタス産地として知られる長野県南佐久郡の川上村は、じつは、山と自然が好きな人にはたまらない処でもある。その行政区画の北端には千曲川の最上流部を隔てて(男山や天狗山などの)特異な山容を誇る南佐久の山々が並び、東端から南端にかけては(三国山、甲武信ヶ岳国師ヶ岳金峰山小川山瑞牆山横尾山、などの)奥秩父の主峰たちが勢揃いしている。そして、西面にはJR小海線の走る野辺山高原を隔てて八ヶ岳連峰が大きい。そんな川上村のほぼ中央、信州峠のちょっと北東に、高登谷山は優しくひっそりと聳えている。マイカーを利用すれば(南麓から)半日で周回コースを歩くことができるという。
 ということで初夏の平日、今回は一人で、交通渋滞が始まる前の早朝にいそいそと出かけた。実際、この日の高登谷山は、とうとう誰とも出会わない、嬉しくも悲しいほどの静かな山だった。

 中央自動車道の須玉I.Cからカーナビの女性の声に導かれ約50分、信州峠を越えて山梨県から長野県へ入ると間もなく、別荘地帯でもある高登谷高原の野外ステージ駐車場に着いた。15台〜20台程度の駐車スペースはガラ〜ンとしていて、何処に車を停めたらいいのか迷うほどだ。でもやっぱり性分で、一番奥の隅っこにちょこんと慎ましく停めて、仕度して歩き始めたのは午前9時少し前だった。運転の疲れか寝不足か、頭が少しボ〜っとしている…。
 閑散とした別荘地の舗装路を、新緑を愛でながらゆるやかに登る。ポイントになる箇所には道標があり、心配はなさそうだ。清々しいそよ風が肌を抜け、天気は上々。ハルゼミもエゾハルゼミも鳴いている。道端にはミズナラやシラカバやカエデ類などに交じって、ひときわ目立つ桜のような花の咲いている樹があった。「これはズミ(=コナシ:バラ科リンゴ属)だろうか、それともこれがヤマナシ(バラ科ナシ属)で、別荘の住人たちが植栽したものだろうか」などと考えながら歩いていたら、頭も身体もようやくすっきりとしてきた。ほどなく右手に登山口があり、ここから急登が始まる。
 高登谷尾根を辿るこの山道は、ジグザグせずに真っ直ぐに山頂へ向かっている。だから急角度のきつい登りになる。でも、辺りは私の好きなミズナラの純林だ。時々立ち止まってはぐるっと首を一回転させて、芽吹きの新緑をたっぷりと楽しむ。深呼吸すると森の精気が身体の中に入ってくるようだ。シジュウカラが元気よく囀っている。ハルゼミたちは相変わらず悲しい声で鳴いている。
 やがて植栽したと思われるカラマツ林を通り抜ける。こちらの新緑も初々しくて美しい。足元にはミツバツチグリの黄色い小花が可憐に咲いている。そして(タチツボ?)スミレもまだ咲いている。「山路来て何やらゆかしすみれ草(芭蕉)」…だ。
 ゆっくりと歩いたつもりだが(正味の歩行時間:約70分)、案外あっけなく高登谷山の頂上(北峰=本峰)に着いてしまった。駐車場からの標高差は地形図で読むと凡そ400mだが、急勾配が続いたので所要時間が短縮されたようだ。思ったよりも狭い山頂は西面が開けていて、権現岳・赤岳・横岳などの南八ヶ岳の峰々がよく見えている。まだ雪化粧が残っていて美しい山肌なのだが、それらの山頂部に雲がかかってしまっているのが残念だ。周囲の樹種はアカマツ、カラマツ、ダケカンバ、シラカンバ、ツツジ類などで、なんとなく二次林的(遷移の途中というか初期というか、の感じ)だが、居心地はすこぶる良い。
 本峰のピークから南東の方向へ少し下ってから、トウゴクミツバツツジの咲く稜線を登り返すと南峰のピークで、こちらも小ぢんまりとした空間だった。本峰と似たり寄ったりのロケーションで、こちらではヤマハンノキのような樹が目立っている。
 ところで、標高1862mのこの南峰の方が本峰よりも16mほど背が高いのだが、高登谷山の標高を表示するときは何故か(ガイドブックも山の事典類も)本峰の1846mを採用している。何か理由があると思われるが、私には分からない。とりあえず、本項のタイトル部の標高表示も本峰のそれを記載したが…。長い物には巻かれてしまう自分がちょっと情けない。
 南峰のピークから南西方向へ、これも急な坂道(中沢新道)を5〜6分ほども下ると、落差4〜5mほどの岩塊が眼前に立ちはだかる。これを攀じた処が天狗岩の岩上で、ここが本日一番の展望箇所だった。小川山〜金峰山〜瑞牆山〜茅ヶ岳〜南アルプス(このときは雲の中)〜横尾山〜女山〜八ヶ岳、など、南面から西面にかけてほぼ200度の眺望だ。その横尾山と女山の麓(もちろん川上村だ)のレタス畑を覆っているマルチ(農作物栽培用のビニールシートのようなもの)が、白く光って印象的だ。どっかと腰を落として、予定通りここで少し早めの昼食だ。

 絶景を眺めながらの、甘露甘露の(野菜とわかめと卵入り)塩ラーメンだったのだが…、それを食べ終わるころ、コンロから異音が聞こえてくるのが気になった。とっくに火は消したはずなのになんか変だ、と思ってコンロに触ってみると、冷たいはずのそれが持てないほどに熱くなっている。ボンベとバーナーのねじ込みが不充分だったらしく、そこから漏れたガスに引火しているようだ。異音はその炎が風に吹かれたときのものらしい。ぞぉ〜っとして、慌てて息を強く吹きかけて、火が完全に消えたのを確認した。調べてみると、バーナーの点火装置のプラスチック部分やコードも(熱のため)融けていた。幸いだったのは、バーナーの点火装置は既に故障していた(いつもライターで火をつけている)ので、それは(私にとっては)どうでもいい部品だった、ということだ。多分、バーナー本体はおじゃんにはなっていないと思う…。
 びっくりしたのは、後片付けのときにボンベとバーナーを外そうとしたときのことだった。シューッという大きな音とともに、あっという間にボンベのガスが全部出てしまったのだ。どうやら熱で(ボンベの)パッキンなども融けてしまっていたらしい。もしもまだ火が付いている状態だったら…、と考えて、再びぞぉ〜っとした。

 天狗岩からも急坂だったが、気を取り直して、カラマツ林やミズナラ林をずんずん下る。「信濃わらび山荘」への山道を左に分けると間もなく、あっという間に別荘地へ下り着く。舗装路を右折して少し歩くと野外ステージの駐車場で、今朝と同じように隅っこに一台でぽつんと、青色のマイカーは停まっていた。腕時計を見ると昼の12時半。まだ陽は頭上に照っている。
 ほっとしてマイカーに近づいてまたまたビックリした。なんと、車のキーがドアに差し込んだままになっているのだ。つまり、鍵を掛けるのも抜くのも忘れて登山してしまったのだ。慌てて車内を点検したが、幸いなことに、これも結果的にはセーフだった。
 私の(山での)失敗談がまた一つ二つ、増えてしまった。トホホ…。

* コース等について補足: 高登谷山は健脚派にとっては簡単すぎる山で、近隣の山々と併せて登る山なのかもしれない。しかし、この山のよさはさびれた展望と悲しいほどの静けさで、ミズナラの純林が続く尾根歩きも捨てがたい風情がある。やはり、“ついでに登る山”としてしまうには、ちょっともったいない気がする。
 JR小海線の信濃川上駅から川上村営バスを利用して、北東側の小川口バス停から入山して(道は少し荒れているようだが)山頂へ至り、南側の高登谷高原を経て原橋バス停へ下山、という縦走ルートも面白いかもしれない。しかしそれはアスファルトの里歩きが長く、丸一日のロングコースで、私の今の状況では難しい。それも悲しくて淋しいが…。


むかわの湯 南アルプス釜無温泉「むかわの湯」: 高登谷山の下山後に立ち寄ったのは山梨県北杜市武川町の、平成13年オープンという「むかわの湯」だった。帰路の日帰り温泉施設について、水曜日のこの日は「増冨の湯」も「健康ランド須玉」も「たかねの湯」も定休日で、近隣ではここだけが火曜定休だったのだ。しかし結果オーライで、時間が早かったせいもあると思うが空いていて、ゆっくりと入浴を楽しめた。岩と石貼りの露天風呂も石タイルや檜造りなどの各種の内湯もとてもよかった。泉質はナトリウム-塩化物泉、ヌルヌル感あり、殆ど無色透明無味無臭、循環・加熱と思われる。風呂上がりのビン牛乳が五臓六腑に沁み渡る。玄関前の広場や駐車場から北の八ヶ岳と東の茅ヶ岳(ニセ八ツ)が、距離の関係でほぼ同じ容量で眺めることができるが、これは面白いと思った。小川村の野外ステージ駐車場からは車で約45分。須玉I.Cまでは約10分だった。
 外部サイトへリンク 「むかわの湯」のホームページ



高登谷山の山稜にて
可愛らしくて美しい!
カラマツの新葉

あちこちに咲いていました
五分咲きのトウゴクミツバツツジ

足下のレタス畑が印象的な眺望でした
天狗岩から西面を望む(横尾山〜南八ヶ岳) ・ レタス畑のマルチが光っている

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