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No.180 恵山(えさん・618m)
平成17年(2005年)7月3日 晴れ・時々霧 マイカー利用

恵山 略図
北海道の山旅・のほほん24日間 [1/8]
迫力の活火山と満開のサラサドウダン

《マイカー利用》 …函館-《車約1時間》-賽ノ河原駐車場〜賽ノ河原分岐〜(権現堂コース)〜恵山〜賽ノ河原…ニセコ昆布温泉(泊)…後方羊蹄山 【歩行時間: 2時間弱】
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 一応、日本百名山の完登をめざしている私達夫婦だが、ヒマとお金の関係で、北海道の9座は矢張り遠い存在だ。
 そんな私達が、かなりのしがらみを断ち切って周到に準備して、北海道への長期山旅を決行した。主なターゲットは一昨年登頂済みの大雪山と北のはずれの利尻岳を除いた7座(後方羊蹄山幌尻岳十勝岳トムラウシ阿寒岳斜里岳羅臼岳)で、予定は24日間、合言葉は「のほほん…」だった。
 その行きがけの駄賃に登ったのが恵山である。

●7月2日(曇): 旅立ち 東京〜青森〜函館
 早朝、東京の自宅を出て、東北自動車道をひたすら北へ走る。青森港からフェリーに乗り、函館に着いたのは夜の8時半頃。函館山から街の夜景を見物したりして、北海道の山旅の第1日目は無難に過ぎた。

●7月3日(晴・霧): 恵山登山 函館〜恵山登山〜ニセコ昆布温泉
満開でした
恵山とサラサドウダン

賽ノ河原をゆるやかに登る
賽ノ河原

広い山頂部の奥です
恵山の山頂

マルバシモツケより一回り小さい
エゾマルバシモツケ
 北海道の朝は早い。午前3時半頃にはもう白々と夜が明けている。いそいそと支度してから、函館郊外の安ホテルを発つ。今日の予定はニセコまでの移動だが、少し寄り道して、函館の東約35Km、渡島半島の東端(亀田半島)に位置する恵山を、まず登ってみよう、ということになった。昨夜の夫婦会議で決まったのだ。議決権は勿論妻の佐知子がもっている。
 恵山は岩崎元郎さんの「新日本百名山」にも選ばれた由緒正しき(?)山だ。登山コースには北面の椴法華(とどほっけ)村から登る「恵山森林浴コース」や「八幡川コース」などがあるけれど、私達は火口原(賽ノ河原)から登る最短コースを選んだ。平成3年に恵山町側(南側)から賽ノ河原までの車道と駐車場が整備されたとのことで、これを利用しない手はないと思ったからだ。
 まだ誰もいない賽ノ河原の広い駐車場(トイレあり)に車を停めて、歩き出したのは午前5時30分頃だった。東面には複式火山(恵山)の凄惨な風景が、西面には海向(かいこう)山へ続くなだらかな雑木林が広がる。遊歩道は整備されていて、道標を頼りに賽ノ河原の南端を東へ向かってゆるやかに進む。辺りには点々とお地蔵様などの石像があって、それらしい短歌を書き込んだ立札が立っている。今年は北海道も遅い夏のようで、ヤマツツジはその花期を既に終えていたけれど、イワカガミは未だ花をつけておらず、サラサドウダンの愛らしい小粒の花が薄紅色に今を盛りにあちこちに咲いていた。恵山のサラサドウダンは大きく成長することで知られているらしい。
 八幡川コースや恵山森林浴コースとの分岐点を右折して、山頂へ向かう権現堂コースへ入り、累々とした火山礫や火山灰のガレた道をジグザグと登る。所々、ウラジロタデが緑のアクセントをつけ、背の低いエゾマルバシモツケは白い花を密につけている。やがて造形芸術的な巨岩・奇岩が目立つようになり、噴煙の風下を通過すると強烈な硫黄臭がしてくる。「風が無い日は、ここは危険かも…」 と佐知子と会話した。
 広い山頂部一帯はガンコウランの群生地になっていて、近くの奇岩群を眺めたり三方に広がる眼下の海や岬を眺めたりして、とても気持ちのよい処だ。
 ふと思った。この津軽海峡を隔てて下北半島に恐山があるけれど、もしかして恵山と恐山は兄弟みたいな関係じゃなかろうか。なんか、山の景観が似ているような気がする。目を凝らして南側の海の先を見つめたけれど、霧が出てきてしまった…。
 山頂にある権現堂(恵山権現)の鳥居と祠の脇で、イソツツジやエゾマルバシモツケやコケモモの花などを観賞しながらコンビニの菓子パンを齧る。ここまでは朝飯前、だったのだ。
 来た道を戻り、賽ノ河原の駐車場に着いたのはまだ朝の8時だった。今回の私達が歩いたコースは登山としては少し物足りない気がした。本来は麓からミズナラやリョウブの林を通り抜けて山頂に達するのが、この山の正しい登り方だと思う。
 恵山は標高(618m)の割には高山植物が多く、荒々しい火口壁や火口原と、それに対峙する溶岩円頂丘(海向山や椴山)のやわらかな緑林の景観が対照的で面白い。海と岬の展望にも恵まれて、流石に新日本百名山だと思った。なお、恵山の山名の由来については、アイヌ語のエシャニヌプリ(岬の山)やイェサン(溶岩が出る)等の説があるらしい。津軽海峡を行き交う漁師さんなどの所謂「山立て」としての神聖な山でもあるという。

 恵山登山を終えた私達は、その麓にある恵山温泉や石田温泉に未練を残しながら、ニセコへ向かい内浦湾の海岸線を北上した。途中、大きくて立派な駒ヶ岳の裾野を通過したり、黒松内にある日本最北のブナの自生地「歌才(うたさい)ブナ林」を見学(歩程約40分)したりして、明日からの後方羊蹄山(しりべしやま)登山の英気を養った。

次項 後方羊蹄山 へ続く



恵山は活火山、でした
雲の向こうにおだやかな緑の山並
硫黄臭が漂っています
前方に霞んで見えているのは銚子岬です
眼下に海と岬

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