タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

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第272話「続々と最終回」


4〜6月期の連ドラも最終回ラッシュ。
そしてユーロ2004も佳境。
もういつ寝ればいいのか分からない。



『愛し君へ』  第10話 衝撃

演出:林徹
脚本:坂元裕二

なんじゃそりゃ。
ラスト2回、多少は期待してたんだけど、
やっぱりダメそう。

もう感覚がズレてるとしか言いようがない妊娠ネタは
最終回を見てから評価するとして、
それ以外の部分も相当ひどかった。

こんな使い方で終わらせるなら
諒子(黒谷友香)を再登場させる意味はなかったし、
鉄雄(泉谷しげる)が俊介(藤木直人)に頭を下げるシーンも
今となっては冷めて見るしかなかった。

俊介が四季(菅野美穂)を想って身を引くというのは
この作品における重要な部分だと思うけど、
諒子を中途半端に使ったり、
死期が迫ってる史也(桑原成吾)の淡い恋心と絡ませたことで
かえって狙いが白々しくて感動できなかったし。

まあ、確かに今回はタイトル通り
「衝撃」的な終わり方ではあったな。
どちらかというと「笑撃」に近いけど…。

             採点  5.0(10点満点平均6)




『ワンダフルライフ』  第11話

演出:木下高男
脚本:福田靖

コテコテの展開だなあ。
でも、これが最終回じゃなかったから
むしろ良かったと受け取るか。

みずき(長谷川京子)が子供達を説得するシーンは
シンプルで悪くなかったし、
桐島(反町隆史)の決勝戦でのセリフ、
“楽しんでやりゃいいんだよ”という言い方も
このドラマでは一番良かった。

最終回をどういう内容にするかだな、問題は。

             採点  5.5(10点満点平均6)




『アットホーム・ダッド』  第11話 良薬主夫に苦し

演出:塚本連平
脚本:尾崎将也

和之(阿部寛)の成長っぷりが
いい感じで描かれていた。
子役が占める割合も
これくらいあると見ていて面白いし。

病気で寝込むシーンって結構難しいと思うけど、
安藤咲良はうまく演じてたな。

それにしても亮太(吉川史樹)のキャラって
よく作り出したと思う。
ていうか、よく採用したと思う。

太い注射されちゃうぞー、と脅されて
ただよけるだけだよ。
もう遊んであげないよ、と言われて
ただ鉄棒にぶら下がってるだけだよ。
隣で同い年の子がモンブランミルフィーユ頼んでるのに
ノーリアクションだよ。

あんな人間になりたいとすら思えてきた。

             採点  6.5(10点満点平均6)




『光とともに… 〜自閉症児を抱えて〜』  最終話

演出:佐藤東弥
脚本:水橋文美江

厳しい終わり方。
でも、世の中がみんな
里緒先生(小林聡美)みたいな人ばかりではない、という現実は、
この作品の最も伝えたかった部分でもあると思うので、
ドラマの締め方としては間違ってなかったと思う。

むしろドラマ前半のこうした部分の描き方は
多少不自然なところがあったので、
この終わり方は良かったと思う。

この手のドラマは、
現実を伝えるというところにウエイトを置くか、
ドラマとしての完成度を上げるかのバランスが難しい。

そういう意味では全体的に
「抱きしめたい」ほどの完成度はなかったと思うけど、
自閉症児を抱える母親の気持ちは
篠原涼子の頑張りもあってよく描けていた。

小林聡美の淡々とした演技も
単にお涙頂戴のテイストにはならず、
静かにその内容を伝える役目を果たしたと思う。

「抱きしめたい」のような
家族にスポットを当てたドラマ、
「君が教えてくれたこと」のような
高機能自閉症者にスポットを当てたドラマ、
そして今回の「光とともに…」のような
自閉症児を抱えた母と
彼女を支えた養護教諭にスポットを当てたドラマ…。

様々な視点で何度もドラマ化していくことが
現実の誤解や偏見、無理解を無くすことにもつながると思うので、
これからも作り続けて欲しい。

             採点  7.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★☆☆
                  演出  ★★★☆☆
                  配役  ★★★★☆
                  主題歌 ★★★★☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★★☆☆☆
                  話題性 ★★★☆☆

           平均採点  7.27(10点満点平均6)




『電池が切れるまで』  最終話

演出:唐木希浩
脚本:江頭美智留

薫(黒川智花)の移植が成功し、
元気に退院したところで終了。

“私の電池は私だけのものじゃない”と、
移植と「命」の詩を絡めたことで
最終エピソードとしての体裁は整っていた。

リスクの高かった母親からの移植にしたことで、
長期入院する子供と親との関係も描けたし。

原作が原作なだけに、
描こうとしている内容は最後まで良かった。
ただ、その作り方が安っぽかっただけで。

スタッフだけでなく、
財前直見にもその責任はあるな。
キャラ設定とは別の次元で品がなかった。

豪華な子役陣を十分に使いこなせなかったのも
かなりもったいなかった。
まあ、すべては脚本と演出が原因だと思うけど。

結局はテレ朝らしい作りの作品だった。
でもこれを見て小さい子が命を大切に思うようになれば
それはそれでドラマ化した意味はあると思う。

             採点  6.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★★☆☆☆
                  演出  ★★☆☆☆
                  配役  ★★★☆☆
                  主題歌 ★★★★☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★★☆☆☆
                  話題性 ★★☆☆☆

           平均採点  6.30(10点満点平均6)




『新しい風』  最終話

演出:三城真一
脚本:後藤法子

小田島(小野寺昭)の辞任まで描いたのは
ちょっと出来すぎか。

でも、国民が政治に参加する、
腐敗した国会に新しい風を送り込むという
理想を描いた作品と考えれば許せる範囲かな。

今回も足の引っ張り合いをする政治家、
それを面白おかしく書くマスコミ、
そしてそれを信じる国民という構図は
分かりやすく描いていた。

年金問題に例えた部分はリアリティーがあったし、
子供が何気なく言ったひとこと
“新聞の広告に載ってたもん”というのは
怖いくらい現実を語っていた。

家族とのつながりについても
綾(小田茜)の存在で何とか最後まで引っ張った感じかな。

この作品、最後まで見ると
かなり真正面から現代を捉えた政治ドラマだった。
1・2話はもっと家族をメインにするような描き方だったので
そういう意味での違和感はずっと拭えなかった。

初回の脚本家がそれ以降一度も書いてなかったりするので、
何かしらの混乱はあったのかもしれない。

少なくとも真子(ともさかりえ)が絵本作家になるパーツは
最後まで活かせなかったし、
結果的にはジャマなエピソードになってしまった。

ただ、それぞれのシーンに関しては、
このドラマは一貫して丁寧に作られていたと思う。
視聴率は最低で営業的には失敗だったけど、
スタッフのセンスや志は
今期のドラマの中ではトップクラスだったと思うし。

キャストも豪華で見ごたえがあった。
とくに寺田農、伊藤蘭といった役者を脇で使えたのは
作品全体に重みを出せたと思う。

本当にもったいなかったな。
現実の参院選公示日に最終回を迎えるという
タイミング的にもバッチリだったのに
見てもらえないんじゃ…。

マイナス面も多々あったので
見逃した人は損をした、とまでは言えない。
でも、個人的には今期このドラマがあって助かった。
今回のスタッフにはまた別のテーマで
質の高い作品を作って欲しいと思う。

             採点  7.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★☆
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★★★
                  主題歌 ★★★★☆
                  音楽  ★★★★☆
                  新鮮さ ★★★☆☆
                  話題性 ★☆☆☆☆

           平均採点  6.86(10点満点平均6)




『離婚弁護士』  最終話

演出:光野道夫
脚本:林宏司

前回から続く話の後半部分なのにも関わらず、
ストーリーにメリハリがあって楽しめた。

結局、小沼(岡田眞澄)の本質的な問題から
十和興産側の戦略が綻んだり、
セクハラに苦しんでいた女性たち自身が立ち上がって
問題を解決した展開も良かった。

もちろん、間宮法律事務所のメンバーも
それぞれの特徴を活かして頑張ったわけだけど。

個人的には間宮(天海祐希)のやり方を支持しつつも、
柳田(佐々木蔵之介)が由里(鈴木紗理奈)に
裁判の覚悟をして欲しいと頼みに行くシーンが好きだったな。

最後は十和興産の顧問弁護まで手に入れるあたり、
間宮のしたたかなキャラもよく表現していた。

このドラマ、終盤は本当に安定して面白くなった。
話がよく練られていたということもあったけど、
一番の要因はやっぱり天海祐希のコメディーセンスだろう。
シリアスなシーンが格好良く演じられるので
余計にコメディー部分が面白かった。

コメディーの経験豊富な佐々木蔵之介だけじゃなく、
ミムラもその流れに乗ってうまく笑いを取っていた。
順調に成長してるな、ミムラは。

ただ、役者がうまく演じていただけに
映像で遊びすぎたのはやっぱり残念だった。
とくにカット割りの細かさは役者の表情を見る余裕もなくて、
最後までもったいない感じだった。

この作品も当初発表されていたメイン脚本の田渕久美子は
結局、第1話を書いただけ。
でも「新しい風」同様、その後の脚本家がよくリカバーしたと思う。

決して完璧な作品ではなかったけど、
トータルではかなり出来の良いドラマだった。

             採点  7.5(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★☆
                  演出  ★★★☆☆
                  配役  ★★★★★
                  主題歌 ★★★☆☆
                  音楽  ★★★★☆
                  新鮮さ ★★★☆☆
                  話題性 ★★★☆☆

           平均採点  6.86(10点満点平均6)




『ホームドラマ!』  最終話

演出:酒井聖博
脚本:岡田惠和

家族の形態をそのまま続けるという終わり方は
ちょっと予想と外れた。

でも、制作者側の想いとしては、
最後に将吾(堂本剛)に言わせた
“この世界にはつらいことが多すぎるよ。
 それにつらいことがあって、その気持ちが癒された人たちより、
 癒されないまま、救われないままの人の方が多いと思うんだ。
 でも、それがもし神様にとって、この世界にとって必要なことなら
 せめてその人たちにも一緒に笑える、
 心を開ける人を与えてあげて欲しいんだ”
がすべてなんだろうな。

つまりこのドラマは理想というか、願いが前提にあった。
だからバスの事故後はリアリティーがあまりなかった。

ただそれは、一話完結のような後半の構成や、
まるで舞台のワンシーンのような
食後ソファーに座ってみんなが話す演出などから判断しても
かなり意識的にやっていたようにも思える。

実際、自分も他のドラマに比べれば全体を客観的に見ていたし、
どの登場人物にも感情移入してなかったしな。
そういう意味では作法に実験的な試みがあった、
と言えるかもしれない。

いずれにしても、
スタッフが作りたいと思っていたものは
かなり忠実に作れたんじゃないだろうか。
もちろんその中で岡田惠和のテクニックが
最大限に発揮されたことは言うまでもないけど。

あとは見た人の好き嫌いの問題だと思う。
個人的には嫌いではなかった。

             採点  7.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★☆
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★★★
                  主題歌 ★★★☆☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★★★☆☆
                  話題性 ★★☆☆☆

           平均採点  7.09(10点満点平均6)




『農家のヨメになりたい』  全5回

制作統括:内藤槇介、大加章雅
プロデューサー:平部隆明
演出:新城毅彦
脚本:小松江里子
原作:「GREEN〜農家のヨメになりたい〜」二ノ宮知子
音楽:窪田ミナ
主題歌:「うらうらら」Every Little Thing
共同制作:NHKエンタープライズ21
制作:NHK、ホリプロ
出演:深田恭子、中村俊介、宮本信子、玉山鉄二、加藤武、松本莉緒、
   伊藤裕子、松山英路、鈴木ヒロミツ、吉田智則、石井智也、
   ガッツ石松、宮崎美子、星井七瀬、他

想像していたよりずっと面白かった。
4話の最後で誠(中村俊介)が和子(深田恭子)に
好きだというシーンはかなり雑だったけど。

深田恭子にこういうキャラを演じられちゃうと、
うまいとかヘタとか関係ないしな。
“和子にはかなわない”というやよい(松本莉緒)の嘆きは、
同世代の女優全員の嘆きかも。

冷たくされても、ジャマにされても、ドジをしても、
とにかく畑仕事を手伝う和子の姿は
やっぱり可愛かった。

あと、星井<なっちゃん>七瀬。
意外と自然に演技してるんでビックリした。
タレントとしての彼女にはまったく魅力を感じないんだけど、
もしかしたら女優業はやっていけるかもしれない。

この手の連続ドラマで伊藤裕子の
きれいなお姉さん役を見るのは久しぶりだったなあ。
こういうポジションが一番しっくりするよな、彼女は。

お婆ちゃんにしては若かったけど宮本信子も良かったし、
最終回のガッツ石松も良かった。

軽く見られた割には得した気分のするドラマだった。

             採点  6.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★☆☆
                  演出  ★★★☆☆
                  配役  ★★★★☆
                  主題歌 ★★★★☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★★★☆☆
                  話題性 ★★☆☆☆




『もっと恋セヨ乙女』  全6週(24回)

制作統括:鈴木圭
演出:大友啓史
作:岡田惠和
音楽:おかもとだいすけ
主題歌:「明日へ架ける橋」倉木麻衣
制作:NHK
出演:真中瞳、佐藤藍子、酒井若菜、筧利夫、小野武彦、山口あゆみ、
   石塚英彦、斉藤こず恵、与座嘉秋、瀬戸カトリーヌ、平良とみ、
   吉澤ひとみ、忌野清志郎、RIKIYA、杉浦太陽、高知東生、
   金子貴俊、楊原京子、他

別のヒロインで見たかったのに、
結局、真中瞳のままだった。
しかもまだ続けそうな感じ。

蜷川幸雄の舞台を経験したりしてたから
もう少し何とかなってると思ったんだけどな、真中瞳。

岡田惠和も今回は遊びすぎ。
もちろん岡田惠和らしい良さも随所にあったけど、
ノリツッコミがしつこすぎて冷めることが多かった。

強いて言えば第4週の路上詩人の話が一番面白かったかな。
あと、第2週で「ニコニコ日記」のキャラクター、
ガイセイバーが出てきたのは嬉しかった。

あ、そうそう、
オタカラの受付嬢のひとりが楊原京子だったんだけど、
後ろで小さく映ってるだけの時って
何か違う人っぽかったなあ。

もう楊原京子も忙しい身だろうから、
吹き替えてても不思議じゃないけどね。

中途半端な終わり方ではあったけど、
できればパート3はナシにして欲しい。

             採点  5.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★★☆☆☆
                  演出  ★★☆☆☆
                  配役  ★★☆☆☆
                  主題歌 ★★★☆☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★☆☆☆☆
                  話題性 ★★☆☆☆





<ドラマ別レビュー:2004年4月〜6月編>
 
愛し君へ             フジ系・21時       
ワンダフルライフ         フジ系・21時  
 
アットホーム・ダッド       フジ系・22時         
光とともに…           日テレ系・22時       
電池が切れるまで         テレ朝系・21時
 
新しい風             TBS系・22時       
 
離婚弁護士            フジ系・22時         
ホームドラマ!          TBS系・22時  
 霊感バスガイド事件簿       テレ朝系・23時15分     
仔犬のワルツ           日テレ系・21時        
オレンジデイズ          TBS系・21時

ドリーム〜90日で1億円〜/農家のヨメになりたい/もっと恋セヨ乙女 





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