佐賀県・3日間の山旅日記・その③ No.455 天山(てんざん・1046m) 令和5年(2023年)3月15日(水) |
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草原の山稜は天空のプロムナード! ※移動はレンタカー → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ 2021年11月にその最終回が放送されたNHK(BSプレミアム)の『日本3百名山ひと筆書き・グレートトラバース3・日本三百名山・全山人力踏破(う~ん、長い!)』で、田中陽希さんが日本三百名山以外で敢えて登った山に肥前の名峰・天山(てんざん・1046m)がある。彼の父の故郷の山、ということもあったのだろうが、「天山は山頂からの展望がいいよ~」と従兄弟に背中を押されたことも引き金になったようだ。地元ではかなり人気の山であるらしく、今回の佐賀県の山旅ではぜひ登っておきたかった。お天気にも恵まれて、山旅の最終日にそのチャンスがやってきた。 田中陽希さんはもちろん麓から徒歩だけれど、私達夫婦は何時もの通り“なるべく楽をして”南側の九合目駐車場(上宮駐車場)・標高約850mから歩き始めることにする。この駐車場については「八合目…」と表記しているサイトもあったりで、なんか判然としないけれど、数学的な割合でいったらその「八合目」が正解かもしれない。…広々としていて南面の展望…有明海方面だろうか…にも優れている。 その九合目駐車場の片隅(登山口の脇)には立派な銅碑が置かれてあり、小城市教育委員会の解説文によると、明治の三筆の一人・中林梧竹(ごちく・1827-1913)の鎮國之山銅碑(富士山頂に建立されたものの複製)とのことだった。近くには石板の歌碑もあって、それらをじっくりと読んだりして、けっこう時間を潰した。 * 中林梧竹の歌: あら嬉しふるさとちかくなりにけりくもまに見ゆる小城のあめ山 午前9時頃、指導標に従って擬木の丸太階段を徐に歩き始める。50mほども進むと天山(あめやま)神社の上宮を通過する。背の低い石鳥居が印象的だ。水の神様でもある弁財天が祀られているらしい。登山道はこれ以上は無いと思えるくらいによく整備されている。 辺りの樹種はミズナラ、ヤマザクラ、ヤシャブシ(多い)、ネジキ、リョウブ、ツツジ類、シラカシ、ヒサカキ、イヌツゲ、アカマツ、…そして(伐り残された?)スギ・ヒノキなど、何れも疎に茂っている。明るい林床の主はミヤコザサのようだ。 やがて間もなく視界が大きく開け、ミヤコザサと草原の気持ちのよい山稜を歩くようになる。展望が何処までも大きく開けているという点では、東北の一部の山々(大白森や森吉山など)、西伊豆の金冠山や達磨山など)、佐渡のドンデン高原~金北山、信州の飯盛山や鉢伏山・高ボッチ山、そして美ヶ原や霧ヶ峰…、などにも似ていると思った。佐賀市などの地元の市民活動(草原復元活動)には心からエールを送りたい。 歩き始めてから50分足らずで天山のただっ広い山頂に着いた。“北に玄界灘、南に有明海と佐賀平野…”などの大展望だ。地形図とも見比べてみて分かったことだけれど、この天山山頂は佐賀市、唐津市、多久市、小城市の4つの市の境界にもなっているようだ。中央部には足利尊氏に敗れた阿蘇惟直(あそこれなお=阿蘇八郎=郷土天山の守り神)の墓碑が祀られていて、傍らには石造りの方位盤や一等三角点の標石などがある。色々な記念碑などが立ち並ぶけれど、とにかく広い山頂部なので、煩くは感じない。あちらへ行ったりこちらに来たり、四方に設置されている展望図と景色を見比べてみたり、至福の時間を過ごす。それは、この山の人気を納得した瞬間でもあった。 そしてそれから東(七曲峠方面)へ向かって、その広い主稜線(天空のプロムナードだ!)を30分ほどをかけて、途中まで往復してみた。「展望のよい草原の道」として定評のある処だ。田中陽希さんがスキップを踏んだのも頷ける。 来た道を分岐まで戻り、下山は雨山(あめやま・996m)経由を選ぶ。この雨山の山頂も…こじんまりとしているが…開放感のあるステキな山頂だった。風も止んでポカポカしてたので、草の上に横になって暫くウトウトした。こちらも至福の山頂だった。 南側の舗装道へドスンと下り、それからはその静かな舗装道を…フキノトウやスミレ類を横目で見ながら…なだらかに下る。途中、割と大きな小鳥のコジュケイ(キジ科)を間近で観察することができた。「ピープルケィ、ピープルケィ」という鳴き声だけは今までもあちこちでよく聴いていたけれど…こんなに近くで目にするのは初めての経験だった。それもこれも、とても楽しくて嬉しい天山登山だった。 九合目駐車場に戻ったのは昼飯前の11時半頃だった。 かなりのんびりと歩いたつもりだったけれど、帰路は夜便の飛行機を予約してあったので、時間がかなり余ってしまった。なので、この日の午後は弥生時代にタイムスリップしたような吉野ヶ里歴史公園を、じっくりと観光することができた。この吉野ヶ里歴史公園も、思っていたよりはかなり広大な面積で歩きがいもあって、楽しく半日を過ごすことができた。 レンタカーを返してから、福岡空港のレストランで飲んだ生ビールが旨いのなんのって、ほんとうに山旅って最高!…と思った瞬間だった。 佐知子の歌日記より 天山の頂上稜線平らかで思わず弾むわが赤い靴 券売機に迷いておればスタッフは「シニアの方はこちらです」と言う 身分の差弥生時代はすでにあり吉野ヶ里には家の大小 |