タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

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第251話「注目の2作品が終了」


今期、名作をリメイクした
「白い巨塔」と「砂の器」も注目だったけど、
SMAPの木村拓哉と草なぎ剛がそれぞれ主演した
まったく正反対の2作品、
「プライド」と「僕と彼女と彼女の生きる道」も
ある意味、対決の様相を呈していた。

結局、「プライド」の最終回は28.8%(関東)、
「僕と彼女〜」の最終回は27.1%(関東)という視聴率だった。

…おしい!

怖いモノ見たさの力ってすごいな(笑)


『プライド』  FINAL period

演出:中江功
脚本:野島伸司

いつ帰ってくるか分からない恋人を
待ち続けていた亜樹(竹内結子)と、
そんな彼女を古き良き時代の女性と感じ、
ゲームとしてのつき合いを提案した
愛することを知らないハル(木村拓哉)。

この2人が最終的に真実の愛に気づき、
待っているとも、待っていて欲しいとも
約束をしないまま3年間を過ごし、
ハッピーエンドを迎える。

この大枠のストーリーは間違っていなかったと思う。
ただ、そのストーリーを紡ぐディティールが
ほとんどすべてお粗末だったという感じ。

この最終回に関しても
ハルの兵藤(佐藤浩市)に対する接し方などはかなり唐突だった。

「氷の女神」に関する描き方は失笑ものだったし、
ハルが氷の女神を見たあとの試合シーンなどは
B級コミックを見せられているようだった。

もちろん、最初からいわゆる野島伸司的シリアスドラマを
やるつもりはなかったのは分かる。
それにしても、野島伸司ならもう少し
主人公以外の人物も丁寧に描くと思っていたのに…。

寒いセリフのオンパレードに関しては
野島伸司と木村拓哉の相性の問題が大きかったと思う。
まあ、そういう意味でもこのスタイルを通した
野島伸司の選択は失敗だったと言えるわけだけど。

それでもラスト30分のまとめ方は
映像スタッフの力と共に
テクニックがあったと認めてもいいかもしれない。

しかもクランクアップをしたのは
オンエアの前日、日曜日の夕方だったらしい。
アラ編集はしていたんだろうけど、
そこからあのサイズにまとめたスタッフは立派だったと思う。

スタッフロールが流れるオープニングムービーは
確かに良い出来だった。
個人的にはゴールが決まって
亜樹が両手を上げるカットが一番好きだったんだけど。

最後にこのオープニングムービーに繋げたラストカットは
格好良かったと思う。

……ま、精一杯に褒めてそれくらいか(笑)

どんなに叩かれても
野島伸司の才能を認める人は多かったと思うけど、
今回の「プライド」は
さすがに今後への不安を隠せない内容だった。

             採点  5.5(10点満点平均6)

                  脚本  ★★☆☆☆
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★☆☆
                  主題歌 ★★★★☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★★☆☆☆
                  話題性 ★★★★☆

           平均採点  5.91(10点満点平均6)



『僕と彼女と彼女の生きる道』  最終話

演出:平野眞
脚本:橋部敦子

ストーリーとしての意外な展開はなかったので
穏やかで静かな最終回だった。

徹朗(草なぎ剛)と可奈子(りょう)の最後の話し合い、
ここがテーマの結論であり、山場だった。
見終わったあとの印象がもの足りなかったとすれば、
最終回の構成として、
その山場が比較的早い時間に来てしまったのが原因だろう。

でも、この物語としては
ゆら(小雪)も幸せになることが絶対に必要だったと思う。
そのためには凛(美山加恋)が神戸に行ったあと、
かなりの時間を経過させることが必要だったので、
こういう構成になったような気がする。

まあ、ハーモニカを吹きながらの名場面プレイバックは
ムリに入れる必要はなかったけど…。

おそらく、ゆらも小さい頃に両親の離婚を経験しているんだと思う。
つまり、ゆらは単に凛の気持ちが分かるという存在ではなく、
凛=ゆら、という構図で存在していたのではないだろうか。

一度は人を信じることさえできなかったゆらが、
大切なもの、大切な人を見つけて幸せになる。
これは凛の将来を暗示するためにも必要だったのだろう。
だからこそ最後のセリフは
凛に好きな男の子ができたという内容だったのではないだろうか。

さらには凛が神戸に発つ最後の夜のシーン、
徹朗の家からゆらが帰るシーンなどから、
ゆらは凛のママになってもいいと思っていたかもしれない。

でも凛は最後までゆらを「先生」としか思っていなかった。
そして凛にとって母親は可奈子ひとりであることも
ゆらが一番分かっていた。
このゆらの描き方がこのドラマは秀逸だったと思う。

細かな点を言えば、
やはり可奈子が凛をおいて出ていった心理と、
短期間で可奈子が高収入の、
しかも専門的な仕事を得られた理由が描かれなかったのは残念。

とくに凛をおいていった心理については、
あの成長日記がなくても
凛自身の言動によって可奈子が凛を大事に育てたのは分かるので、
余計に詳しく描写してもらいたい点だった。

子供を持った夫婦の離婚後をメインとしているのは分かるけど、
ストーリー上、これは可奈子に感情移入するためにも
重要な項目だったと思うので。

あと、この最終回は凛の「ハイ」が多すぎた。
明らかに制作者側が意識して「ハイ」を多く入れてしまった感じ。
せっかくの“最も短い名セリフ”も
最後は逆効果になってしまった。

さて、こうして「僕生き」シリーズ第2弾は終了したわけだけど、
全体的には、徹朗、可奈子、凛、ゆらだけでなく、
徹朗を育てた義朗(大杉漣)、
可奈子を育てた美奈子(長山藍子)も含めて
夫婦の絆、親子の絆を描いた点が丁寧で最も印象的だった。

義朗と徹朗の関係、
徹朗の人間性を明確にするために
みどり銀行のキャストも丁寧に描いていた。
もちろん、徹朗の新しい仕事先、
洋食レストランのコック(松重豊)も。

「クレイマー・クレイマー」との類似が指摘されていたけど、
主人公に関わる人物まで細かく描いていたという点だけでも
映画と比べるのは無意味なことだと思う。

可能な限りムダな言葉を削り取った脚本、
その隙間を埋める繊細な役者の演技、
そしてそれを最大限に活かす映像。

すべてが高い水準で絡み合った
愛にあふれたドラマだった。

             採点  7.5(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★★
                  演出  ★★★★★
                  配役  ★★★★★
                  主題歌 ★★★★☆
                  音楽  ★★★★★
                  新鮮さ ★★★☆☆
                  話題性 ★★★☆☆

           平均採点  7.83(10点満点平均6)





<ドラマ別レビュー:2004年1月〜3月編>
 
プライド             フジ系・21時   
 乱歩R              日テレ系・22時     
ファイアーボーイズ・め組の大吾  フジ系・21時  
 
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ちょっと待って、神様/3時のおやつ/
  STAR’S ECHO 〜あなたに逢いたくて〜/
  それからの日々/恋する京都





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